SAPエンジニアとは?将来性の有無や仕事内容・資格・年収まで解説
作成日:2025/12/01
SAPエンジニアは、企業の基幹業務システムであるSAPの導入やカスタマイズ、運用保守などを専門とする職種です。
高い専門性が求められる一方で、需要の増加に伴い将来性が期待されています。
本記事では、SAPエンジニアの仕事内容や年収、将来性について詳しく解説します。必要とされるスキルや資格なども紹介するので、SAPエンジニアへの理解を深め、今後のキャリアを考える参考にしてください。
目次
■SAPエンジニアとは
(1)SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違い
(2)年収は経験やスキルで変動
■SAPエンジニアが担当する仕事内容
(1)要件に合わせて機能を追加するアドオン開発
(2)モジュール機能を調整するパラメータ設定
(3)システム導入後の稼働を支える運用・保守
■SAPエンジニアの将来性が高いと言われる理由
(1)「2027年問題」で需要が急増
(2)クラウド化の推進により導入のハードルが低下
(3)企業のグローバル化に伴いSAPの導入が加速
■SAPエンジニアはやめとけと言われる理由
(1)常に最新技術を学ぶ意欲が求められる
(2)プロジェクトが大規模で責任が重い
(3)残業が増えることもある
■SAPエンジニアに必要なスキルや資格
(1)SAP独自のプログラミング言語ABAP
(2)担当する業務領域に関する知識
(3)グローバル案件で重宝する語学力
(4)スキルを証明できるSAP認定資格
■SAPエンジニアの仕事をするには
(1)未経験からSAPエンジニアになれる?
(2)SAPエンジニアへ転職するのは難しい?
■SAPエンジニアのキャリアパス
(1)上流工程を担うSAPコンサルタントへ
(2)高収入が期待できるフリーランスとして独立
(3)知見を活かして他のERPエンジニアへ転向
そもそもSAPとは

SAPとは、ドイツのSAP社が提供するERP(Enterprise Resource Planning)ソフトウェアのことで、企業の基幹業務を一元的に管理するシステムです。
SAP社のERPソフトウェアは、財務会計・人事・販売・生産管理といった多様な業務プロセスとデータを統合管理し、経営資源であるヒト・モノ・カネの情報を可視化します。
これにより、企業はリアルタイムでデータに基づいた素早い意思決定が可能です。
また、SAPの読み方は「サップ」ではなく、「エス・エー・ピー」とされています。
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SAPエンジニアとは

SAPエンジニアとは、ドイツのSAP社のERPシステムの導入やカスタマイズ、運用保守などを担当する職種です。
経営資源を一元管理し、業務効率化や意思決定の迅速化を図るために、SAPシステムは多くの企業で導入されています。
SAPエンジニアは、SAPシステムを企業に合わせて最適化する技術的なスペシャリストです。システムの設計から開発、テスト、運用、保守まで幅広い業務を担当します。
(1)SAPエンジニアとSAPコンサルタントの違い
SAPエンジニアとSAPコンサルタントは、SAP製品に関わる点で共通していますが、役割に明確な違いがあります。
SAPエンジニアは、主にSAPシステムの設計や開発、導入後の運用・保守を担当し、技術的な側面からシステム構築に携わる職種です。
一方でSAPコンサルタントは、顧客企業の課題をヒアリングし、SAP導入による解決策を提案します。システム導入における要件定義やプロジェクトマネジメント、導入後の効果測定など、より上流工程を担当する点が大きな違いです。
SAPエンジニアが技術的な実現を担うのに対し、SAPコンサルタントはビジネス要件に基づいた最適なソリューションを導き出す役割を担います。
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(2)年収は経験やスキルで変動
SAPエンジニアの年収は、個人の単価や経験、スキルによって大きく変動します。未経験者と経験者を例に、SAPエンジニアの平均的な年収を比較してみましょう。
未経験者や経験が浅い場合、正社員としての年収はおおよそ300万から450万円前後の傾向にあります。
しかし、専門知識を深めて経験を積み、フリーランスとして高単価な案件を獲得できるようになると、年収800万から2,000万円超といった水準への到達も期待できます。
特に、ABAP開発のスキルや特定のSAPモジュールに関する深い知識、要件定義などの上流工程の経験は、年収を引き上げる要素となり得ます。
個人の実績や得意分野を磨くことで、高収入の実現へとつながっていくでしょう。
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SAPエンジニアが担当する仕事内容

SAPエンジニアの仕事内容は多岐にわたり、企業のSAPシステム導入から運用、保守まで幅広く担当します。
技術的な知識だけでなく、企業のビジネスプロセスを理解する能力も求められる専門性の高い職種です。
以下では、SAPエンジニアの主な仕事内容について詳しく解説していきます。
(1)要件に合わせて機能を追加するアドオン開発
SAPシステムは、企業の基幹業務に合わせてカスタマイズが必要となるケースが多いため、既存の機能だけでは対応できない要件に対して機能を追加する「アドオン開発」が重要です。
具体的には、SAP独自のプログラミング言語であるABAP(Advanced Business Application Programming)を使用し、企業の業務プロセスに合わせた独自のレポートや画面、処理などを開発します。
既存システムとの連携を強化したり、新たな機能を追加したりすることで、企業のビジネス要件に最適化されたシステムを実現します。
(2)モジュール機能を調整するパラメータ設定
SAPシステムには、財務会計や販売管理など、多様な業務に対応するモジュールがあります。
各モジュールが持つ標準機能は、パラメータ設定によって企業の特定の業務プロセスや要件に合わせた調整が可能です。
たとえば、販売管理モジュールであれば、販売価格の設定や割引率、配送方法などをパラメータで細かく定義し、企業のビジネスルールに適合させます。
SAPエンジニアは、パラメータを適切に設定し、システムの機能を最適化するスキルが求められます。パラメータ設定は、企業の業務効率を高め、システムを最大限に活用するために重要な仕事の1つです。
(3)システム導入後の稼働を支える運用・保守
SAPシステムの導入後には、稼働を維持するための運用と保守が不可欠です。
SAPエンジニアは、システムの定期的な監視、バックアップ、障害発生時のトラブルシューティングを担当します。
日々の運用業務では、パフォーマンスの最適化やセキュリティパッチの適用など、システムの状態を常に良好に保つための作業が求められます。
予期せぬシステムトラブルが発生した際には、迅速な原因究明と復旧作業を行い、ビジネスへの影響を最小限に抑えます。
システムのインフラ部分の安定性を確保し、企業の基幹業務を支える業務も、SAPエンジニアの仕事です。
SAPエンジニアの将来性が高いと言われる理由

SAPエンジニアの仕事は、企業の基幹業務を支える重要な役割を担っており、その将来性は高いと言われています。
ここでは、SAPエンジニアの将来性が高いと言われる具体的な理由について解説していきます。
(1)「2027年問題」で需要が急増
SAP社の主要ERP製品「SAP ERP 6.0」のうち、最新のEhP6から8については標準サポートが2027年末に終了します。(2030年末まで延長保守の提供あり。EhP5以前は2025年末に終了)
そのため、いわゆる「2027年問題」として、多くの企業が後継製品である「SAP S/4HANA」への移行を迫られています。
大規模な移行には高度な専門知識と技術が必要となるため、既存システムの老朽化や機能不足の解決、DX推進を背景に、SAPエンジニアの需要が急増しています。
多くの企業でSAPシステムの導入や刷新が計画されていることから、今後もSAPエンジニアの需要は高い水準で推移すると考えられるでしょう。
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(2)クラウド化の推進により導入のハードルが低下
SAP製品は、以前は多額の初期投資や専門知識が必要だったため、導入のハードルが高いとされていました。
しかし近年、クラウド環境での提供が進んだことにより、初期費用や運用コストを削減し、システムの柔軟な拡張ができるようになりました。
これにより、中小企業などでもSAPシステムを導入しやすくなり、SAPエンジニアの活躍の場が広がっています。
クラウドベースのSAPシステムは、短期間での導入やリモートでの運用管理が可能です。導入企業側の負担が大幅に軽減されるため、SAPシステムの導入を検討する企業が増加しており、SAPエンジニアの需要が高まる要因となっています。
(3)企業のグローバル化に伴いSAPの導入が加速
企業のグローバル展開が進む昨今、SAPシステムの導入需要は高い水準にあり、SAPエンジニアの需要も引き続き大きくなっています。
多くの企業が海外展開を進める中で、グローバル規模での企業経営の最適化が重要な課題です。
SAPシステムは多言語・多通貨に対応しており、世界中の拠点で統一されたシステム基盤を構築できるため、企業のグローバル化を強力に後押しします。
企業のグローバル化の波が、SAPエンジニアの将来性を高くする理由の1つと言えるでしょう。
SAPエンジニアはやめとけと言われる理由

SAPエンジニアの仕事は需要が高く将来性のある仕事ですが、一方で「やめとけ」と言われることもあります。
技術的な要求の高さやプロジェクトの規模、働き方など、いくつかの側面からSAPエンジニアの業務に対する懸念の声が聞かれるのも事実です。
以下では、SAPエンジニアが「やめとけ」と言われる主な理由について解説していきます。
(1)常に最新技術を学ぶ意欲が求められる
SAPシステムは定期的に新しいバージョンやクラウドサービスがリリースされているため、SAPエンジニアは既存の知識だけでなく、常に最新技術を学び続ける必要があります。
技術の進化に対応できない場合、市場価値の維持が難しくなるでしょう。
「SAP S/4HANA」やクラウド技術、AI、機械学習といった最新技術に関する知識を深め、自身のスキルを継続的にアップデートしていくことが、SAPエンジニアとして活躍し続けるために求められます。
(2)プロジェクトが大規模で責任が重い
SAPシステムは企業の基幹業務を支えるため、導入プロジェクトは大規模になりやすく、SAPエンジニアが負う責任が重くなる点も「やめておいたほうがいい」とされる要因の1つです。
システムの停止や不具合が発生した場合、企業のビジネス活動全体に大きな影響を与える可能性があります。
システムを安定稼働させるためのプレッシャーは大きく、SAPエンジニアは常に責任感を持ちながら業務に取り組む姿勢が求められます。
(3)残業が増えることもある
SAPシステムの導入プロジェクトにおいては、システム設計から開発、テスト、本稼働までの期間、高い品質とスケジュール遵守が求められるため、残業時間が増加する傾向があると言われています。
特に、プロジェクトの納期が間近な時期やシステムトラブル発生時には、対応に追われて稼働時間が増えるケースも少なくありません。
しかし、SAPエンジニアの働き方は一様ではありません。企業によっては、リモートワークの活用によりワークライフバランスを保ちやすかったり、副業を奨励するなど多様な働き方が可能だったりする場合もあります。
「SAPエンジニアは残業が多く過酷な職種」とは一概に言えず、個人の状況やキャリアプランに合わせた働き方を選択できる可能性もあるといえるでしょう。
SAPエンジニアに必要なスキルや資格

SAPエンジニアとして活躍するためには、技術的な専門知識だけでなく、ビジネスへの理解や語学力など、さまざまなスキルが求められます。
ここでは、SAPエンジニアとして働く上で必要なスキルや、キャリアアップに役立つ資格について解説していきます。
(1)SAP独自のプログラミング言語ABAP
アドオン開発など開発系のSAPエンジニアは、SAPシステムをカスタマイズする際に使用するSAP社独自のプログラミング言語「ABAP(Advanced Business Application Programming)」の習得が求められます。
ABAPを習得すると、企業の個別の要件に合わせて、既存のSAP機能に加え新しい機能やレポートを追加開発できるようになります。
ABAPのスキルは、SAPエンジニアがアドオン開発や既存システムの改修などを担当する上で不可欠です。開発に携わるSAPエンジニアを目指す場合は、基礎的な文法や開発手法の習得を検討しましょう。
(2)担当する業務領域に関する知識
SAPエンジニアは、技術的なスキルだけでなく、担当する業務領域に関する知識も必要です。
たとえば、財務会計モジュールを担当する場合、会計基準や税務に関する一般的な知識が求められます。販売管理モジュールであれば、受発注や在庫管理、物流といった全体像の一定の理解が不可欠です。
担当する業務知識とSAPシステムの専門知識を組み合わせることで、顧客企業の課題解決に最適なソリューションを提案し、効果的に活用できるシステムを提供できるでしょう。
(3)グローバル案件で重宝する語学力
SAPエンジニアは、グローバル案件に携わる際に語学力が重宝されます。
特に英語でのコミュニケーション能力は、海外の拠点を持つ企業や外資系企業とのプロジェクトにおいて、円滑な連携を図る上で不可欠です。
SAPシステムは世界中で導入されているため、海外のパートナー企業や技術者と直接やり取りを行う場面も多く、専門用語を理解して的確な情報交換ができる語学力は、プロジェクトの成功につながるスキルと言えるでしょう
(4)スキルを証明できるSAP認定資格
SAPエンジニアが評価されやすい資格の1つに、「SAP認定資格」があります。SAP製品に関する専門知識とスキルを公式に証明するもので、SAPエンジニアとしての市場価値を高めることはもちろん、キャリアアップにもつながる資格です。
SAP認定資格には、モジュールごとの専門資格や、特定のソリューションに特化した資格など多様な種類が存在し、自身の専門分野や目指すキャリアに応じて選択できます。
基礎的なレベルから上級レベルまで幅広い難易度が設定されていますが、資格取得を通じて体系的な知識が身につくため、実務におけるスキルの裏付けとして有効活用できるでしょう。
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SAPエンジニアの仕事をするには

SAPエンジニアの仕事をするには、IT関連の知識や実務経験が求められる傾向にあります。
以下では、未経験でのSAPエンジニアのなり方や、SAPエンジニアへの転職を成功につなげる方法を解説していきます。
未経験からSAPエンジニアになれる?
未経験からSAPエンジニアを目指すことは可能ですが、ITに関する基礎知識や学習意欲が必要です。
システム開発やITインフラに関する実務経験があると、SAPシステムを理解しやすいため、未経験でも挑戦しやすいでしょう。
具体的には、プログラミングスキルやデータベースの知識、クラウドの基礎などを学習しておくと、SAPエンジニアとしてのキャリアをスタートする上で有利です。
SAPシステムの専門性は高いため、学習を継続する姿勢も求められます。
SAPエンジニアへ転職するのは難しい?
SAPエンジニアへの転職は、やや難しい傾向にあるものの、需要の高さから目指せる職種であると言えます。
企業が求める人材像を理解して、自身の強みを効果的にアピールすることが採用への鍵となるでしょう。
特に、IT業界での実務経験やプログラミングスキルは、転職活動を有利に進める上で重要です。未経験であっても、ITに関する基礎知識や学習意欲を、職務経歴書や面接で伝える工夫が必要となります。
求人情報をじっくり確認して、キャリアプランにマッチする会社を探す点も、SAPエンジニアへの転職を成功させるポイントの1つです。
SAPエンジニアのキャリアパス

SAPエンジニアは、多様な専門領域があるため、個々の経験やスキルに応じて目指せるキャリアも広いと言えます。
以下では、SAPエンジニアが将来的に目指せるキャリアパスの一例を紹介します。
(1)上流工程を担うSAPコンサルタントへ
SAPエンジニアがキャリアパスとして目指す選択肢の1つに、上流工程を担うSAPコンサルタントへの転身があります。
SAPコンサルタントは、顧客企業の経営課題を深く理解し、SAPシステムを導入した最適な解決策を立案する専門家です。
システムの要件定義やプロジェクトマネジメント、ベンダーコントロールなど、よりビジネスに近い視点での業務を担当します。
SAPエンジニアとして培ったシステムに関する技術的な知識や経験は、コンサル業務を行う上で役立つでしょう。
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(2)高収入が期待できるフリーランスとして独立
SAPエンジニアとしてスキルや実績を積んだ後は、フリーランスとして独立することで高収入を期待できる場合があります。
企業に属さず、自分の裁量で案件を選択できるため、より高単価なプロジェクトに参画できる可能性も広がります。
フリーランスは、専門性を深く追求したり、複数のプロジェクトを掛け持ちしたりするなど、柔軟な働き方へつなげやすいのも特徴です。
自身の専門スキルや経験を活かし、独立によって新たなキャリアを描きやすい点は、SAPエンジニアの魅力の1つと言えます。
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(3)知見を活かして他のERPエンジニアへ転向
SAPシステムの経験で得た業務知識や技術的な知見は、SAP以外のERPシステムにおいても大いに役立ちます。
種類が異なっても、業務プロセスの一元管理や最適化といった基本的な考え方が、SAPシステムと共通しているためです。
SAPエンジニアとしての経験は、他のERPシステムを扱う場合にも強みとなるでしょう。
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まとめ

本記事では、SAPエンジニアの仕事内容や年収、将来性、そして必要とされるスキルや資格について解説しました。
SAPエンジニアは、企業の基幹業務を支えるSAPシステムの導入から運用保守までを一手に担う専門職です。「2027年問題」や企業のDX推進、グローバル化に伴い、SAPエンジニアは高い需要が見込まれる魅力的な職種と言えます。
また、フリーランスとして独立すれば、会社員のSAPエンジニアよりも高年収を目指すことも可能でしょう。
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