「グロースハック」とは?メリットや役割・将来性を解説
作成日:2017/12/06
DropboxやCookpadなど、グロースハックを取り入れて急成長する企業が増加中
グロースハックとは、「さまざまなトライアルを実施して得られたデータをもとに、小さな改善を繰り返して成長させていく」こと。
今、注目を集めている開発手法「グロースハック」。DropboxやCookpadなどのWebサービスは、グロースハックを導入したことで大きくビジネスを成長させたと言われています。そこで今回は、従来のシステム開発とは大きく異なる「グロースハック」について、事例からフレームワーク、実践するためのサービスなど詳しく解説します。
グロースハックのポイントは、「開発して完了」ではなく、常にグロース(成長)を目指すという点。特にWebサービスやアプリなどの開発において、グロースハックの人気が高まっているようです。
グロースハックの事例と言えば、クラウド型のストレージサービスとして日本でも人気の高い「Dropbox」が有名です。Dropboxではグロースハックによってさまざまな改善を図りました。例えば「ユーザー登録方法の見直し」。少ないクリック数で登録できるようシンプルな手順に改善しました。また、グロースハックによってプロモーション方法も見直しを行ないました。
特にDropboxで大きな効果を上げたと言われているのが、「友人招待に特典をつける」という施策。友人を招待してくれたユーザーには、特典として無料で追加容量をプレゼント。この施策が大きな効果を上げ、利用者数が一気にアップしたそうです。広告を打たずに大きな効果を上げたグロースハック事例のひとつと言えます。
また、人気のレシピサイト「Cookpad」もグロースハックを導入して大きくビジネスを成長させた事例です。Cookpadでは、無料会員の有料化を進める際に、無料お試し期間を設けたり、クーポンを配布したりといくつかのプランを試し、データをもとに改善策を進めていったそうです。プロモーション内容だけではなく、Cookpadサイト内の導線やデザインなどもあわせて改善しているのがポイントです。
一般的なサービス改善とグロースハックの違い
通常の開発案件では、開発担当とマーケティング担当が分かれていることがほとんどではないでしょうか。グロースハックでは市場やユーザーのニーズをサービスそのものの開発に取り込むため、この境界線は曖昧です。どちらかの視点ではなく、両方からアプローチして改善につなげるスタイルがグロースハックの大きなポイント。そのため、開発エンジニアにもマーケティングの視点が必要です。
グロースハックのメリット
マーケティング面では、広告などを使わず既存のリソースを使って成長を目指すのがグロースハックの基本。Dropboxの事例にもありましたが、既存ユーザーがサービスを拡散する仕組みを作ることで急成長につなげるケースが増えています。グロースハックが注目を集めているのは、ご紹介した事例のように、大きく成功した事例が増えているからです。そこでグロースハックを開発に取り入れるメリットを、大きく3つのポイントにまとめました。
(1)限られたコストでビジネスを大きく成長させられる
大規模な広告を出さなくてもユーザー数アップや売上アップにつなげるというのも、グロースハックの目的の一つです。
(2)トライアル結果のデータをベースにしているため、改善策が進めやすい
担当者や経営者の視点だけで改善しても、思うような結果につながらないことも多いのではないでしょうか。グロースハックでは、ユーザーに実際に使ってもらい、そのデータをもとに改善していく手法。ムダがないというメリットがあります。
(3)リリースまでの期間が短い
新規サービス開発プロジェクトでありがちなのが、リサーチなどに時間をかけすぎてしまい、リリース時期が先延ばしになってしまうケース。問題なのは、リリースまでに時間が空いてしまうと、周囲の状況が大きく変わっているかもしれないということです。昨今新しいサービスやアプリは次々に登場し、トレンドも短期間で大きく変わります。あまり開発期間が長すぎるとよいタイミングを外してしまうかもしれません。
グロースハックではスピードが重視されます。まずはトライアルや無料版などでリリースを行ない、どんどん使ってもらいながら改善をしていくというスタンス。世の中のトレンドにも柔軟に対応できるというメリットがあります。また、改善策がうまくいかないときでも軌道修正しやすいというのもメリットではないでしょうか。
グロースハックを進めるためのフレームワーク「AARRR」
DropboxやCookpadのようなサービスでは、まずは無料会員を増やし、最終的に有料会員化していくことで収益をアップさせるというのが目標になります。こうしたサービスのグロースハックによく使われるのが、AARRR(アー)というフレームワークです。
AARRRでは、ユーザーの行動を以下の5つのステップに分類しています。(ステップの頭文字をとってAARRRという名称がついています)ステップごとに指標を設けて施策を行なうことで、効果的なグロースハックにつなげるという考え方です。
Acquisition(ユーザー獲得)
Activation(活性化)
Retention(継続利用)
Referral(友人への紹介)
Revenue(収益化)
スマートフォンなどのアプリも、まずは無料で配布しその後アプリ内で課金するパターンが多いですよね。最近のアプリやサービスで収益化を図るときはAARRRをベースに考えることが一般的になっています。
グロースハックを専門に扱う企業・サービスも登場
さまざまなメリットがあるグロースハック。とはいえいきなり実践するのは難しいのも事実です。そこで、グロースハックを請け負うマーケティング会社やコンサルティング会社も徐々に増えているようです。
中でもユニークなのが、お母さん目線でママ向けサービスのグロースハックを専門に行なう「ママグロースハッカーズ」。子育て関連のサービスなどのグロースハックを得意分野としています。今後はこうした専門分野を持つグロースハッカー(グロースハックを専門に行なう職種)が増えてくるかもしれません。
また、Webサイトのグロースハックに特化したサービスも登場しています。「kaizen Platform」というサービスでは、グロースハック向けのデータ分析ツールとあわせて、900名超のグロースハッカーたちから改善アイデアを出してもらえるというサービスも行なっています。
グロースハックのトレンドを見ると、「エンジニア中心で開発してからマーケティングを行なう」という、従来の開発スタイルは今後もさらに大きく変化する可能性があります。ただグロースハックでは開発とマーケティングを同時進行していくため、両方の知識を持つ人材が必要です。コンサルタントにとっても、エンジニアとマーケッターの両方のスキルを持つことが求められるケースが増えるかもしれません。
また、開発とマーケティングの境目があいまいになることで、プロジェクトマネージメントの手法も見直していく必要がありそうです。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)