今回お話を伺ったのは、日本を代表する大手製薬メーカーA社でIT部門のチームリーダーを務めるX氏。10年前に入社し、以来関東近県にある研究所に勤めていらっしゃいます。
大手製薬企業でありながら、小規模なプロジェクトも多く、社内ベンチャーにも積極的な同社では、フリーランサーはすでにあたりまえの存在として会社にしっかり馴染んでいると言います。
独立して活動するフリーランスの皆さんを「お一人ずつのリソースの幅が広い。これはすごいことだと思います」と評価するA氏。ITベンダーの人材とは違うフリーランスのプロフェッショナル人材ならでは良さについてお伺いしました。
「そんな人いません」と言わないみらいワークスの強み
ある時、私はプロジェクトを進めていく中で、適当な人材が見つからず悩んでいました。そのプロジェクトは購買部門経由で進めていたので、購買部門の担当者にダメもとで、「どこか知りませんか?」と聞いてみました。その時に名前が挙がったのがみらいワークスさんです。だから、フリーランスの方にお願いすることになったのは全くの偶然で、最初からフリーランスの方にお手伝いいただくプランがあったわけではないのです。お話を伺って初めて、「あ、フリーランスの方にも来ていただけるんだ」と知ったというのが正直なところです。
フリーランスの方をご提案いただくまでは、ITベンダーさんやITスキルに特化した人材派遣会社にお声がけさせていただいていました。ただ、昨今はどこも人手不足で、なかなか適切な人材が見つからないのが現状です。「そういった人材はいません」と言われることも増えました。みらいワークスさんをご紹介いただいたのは、「どうしようかな」「困ったな」と頭を捻っている時でしたから、ラッキーでしたね。
今回は「業務委託」という形でフリーランスの方にお願いしていますが、会社に所属してそこから派遣されている方との違いは感じません。弊社はずっと決まったベンダーさんにお願いしていたのですが、ベンダー本社の方が必ず来てくれるわけではありません。関係会社の方や、パートナー会社の方だったりすることもあります。最終的に「ベンダー本社が責任を持ちます」というだけで、どんな方が来るかはわからないのです。ですから、「この会社だから信用できる」という意識は持たずに、一緒に仕事をしてくださるその方自身を見るようにしています。
そのため、弊社には所属先ではなく、個人を評価する土壌があったのかもしれませんね。その方がどんなスキルや経験をお持ちで、どんなふうに動いてくださるのかということが我々のいちばんの関心事です。業務委託の場合、「この仕事をしてください」「この範囲をきっちりこなしてください」とオーダーします。そこに何人入れるかは契約先の事情です。今回みらいワークスさんにお願いしたPMOのような調整役の場合、大きなプロジェクトならそれだけで1チーム5人、6人必要になるでしょう。
ただ、わたしのチームの場合では、そもそもそんなに大きな規模のプロジェクトではありません。1件のPMOに対して1人立つか立たないかなので、その人がどういう役割をできるかに全部かかってきます。今回の場合は「この人ならいけるな」と、直接お話ししてわかりましたし、一緒にお仕事をする中でも、不安や不満は全くありませんでした。
技術だけではなく、周辺にも対応してくれるのが独立プロフェッショナルのよさ
フリーランスとして活躍するプロフェッショナルの方は、一般的なITベンダーの方よりもリソースの幅が広いという印象があります。会社経由で派遣の方を入れてもらうと、その会社に染まった「こういう人しか来ないだろうな」という限界点のようなものが見えてしまう気がします。また、技術系のベンダーさんの場合、技術には特化していても、周辺の他の業務に対応していただくことが難しいと思います。
たとえば技術系に強いITベンダーさんに「技術屋さんじゃなくてPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を出してください」とお願いした場合、技術面には強くても、PMOに関しては割り引いて考えなくてはならないだろうと思わざるを得ません。けれども、フリーランスをたくさん抱えていらっしゃるみらいワークスさんですと、こちらのオーダーにマッチした人材をフレキシブルに出してきてくださいます。そういった人材の豊富さが魅力的ですね。
弊社を含め、ヘルスケアの業界はかなりニッチで、特別な知識が必要なこともありますので、一般的な派遣会社では人材を送り出しにくいだろうと思っています。それもあって、これまではいろんな人材をご紹介いただくのも、それらのケイパビリティ、ご経験がある会社さんとしか契約していませんでした。そういった会社以外から人材を見つけるのは難しいだろうと思っていたのです。
世界の働き方トレンドにフリーで活躍するプロフェッショナルは最適
みらいワークスさんは、ヘルスケア業界にも人材活用の範囲を広げようとされているので、心強いですね。フリーランスの活用はクイックかつローコストなのも素晴らしいと思います。海外ではリタイアした方がスキルや経験を活かして起業する事例も多くありますが、日本ではそういった事例はまだ見られません。ベンダー側では早期退職された方がそうした動きを見せつつありますが、事業者サイドではまだ難しいようです。
弊社はベンチャーや中小企業との協業に積極的で、社内ベンチャーも行なっています。また、新薬創出のための大学との連携などを試みています。こうしたシナジーの出し方はこれからさらに本格化するでしょう。ベンチャーの中には資本関係のある会社も、ない会社もありますし、本社からスピンオフした会社との資本関係をどう見るかという問題もあります。
ある特殊な技術を持った集団がスピンオフをした会社の事例でいえば、その技術を独立元である弊社と業務提携し、スピンオフ会社からのサービスを受けています。要するに、それまでは自社の一部分であったところが切り離され、その技術をほかの企業さんにも提供することになり、弊社も顧客の一つ、という考え方です。海外ではシリコンバレーやサン・フランシスコのベイエリア、MITの周辺などでは行なわれていると思いますが、少なくとも、日本の製薬企業では初めての事例でしょう。
ここ数年で会社の戦略も仕事の進め方もずいぶん変わってきています。以前は研究開発をはじめ事業に関わることを自社で完結させる「自前主義」の傾向がありましたが、いまは世界中どの製薬企業も外部との連携(エクスターナル・コラボレーション)を重要視しています。日本企業もそれに乗り遅れまいとしているところだと思います。フリーランスの活用は、効率的なオペレーションという点でその変化を支える一つの要素になるのではないでしょうか。(後編へ続く)