コンサルタント依頼の基礎知識!確実に効果を上げる選び方を徹底解説
コロナ禍の影響で、新たな経営課題に直面している企業も多いのではないでしょうか?ある調査によると、コロナ禍によって70%以上の企業が「ビジネスモデルや事業形態を変更する必要がある」と回答しています(※1)。とはいえビジネスモデルの変革となると、社内のメンバーだけでは難しいでしょう。新たに採用しようとしても、人材不足が深刻な現在では優秀な人ほど採用しづらい状況です。
こうした中で活用が進んでいるのが、高度な専門知識を持つコンサルタント。アドバイスだけではなく、課題の本質を突き詰めた上で解決策を提案してもらえます。またコンサルタントはさまざまな企業で実績を積んでいるため、広い視野で幅広い知識を提供してくれる点もメリットです。
最近はコンサルタントの種類も増え、業務範囲も幅広くなってきました。しかし選択肢が多いと、かえって選定が難しい面もありますよね。コンサルタントを活用するなら、まず選び方が重要です!また企業がコンサルタントに相談するとき、おさえておくべきポイントがいくつかあります。
そこでコンサルタントの選び方について、基礎知識から実際に選ぶ手順まで、詳しく解説します。
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1.コンサルタントの業務と働き方を知る
経営課題の解決や戦略・方針策定について何が問題かを明らかにして、専門的な視点で提案するのがビジネスコンサルタントの主な業務。コンサルタントの仕事にはビジネスに関する高度なスキルと経験が必要ですが、それだけではありません。スムーズなヒアリングや実践的なアドバイスにつながるコミュニケーションも重要な仕事です。
多くのコンサルタントは、コンサルティング業務を専門とする「コンサルティングファーム」という会社に所属して仕事をします。一般的なコンサルティングファームは案件ごとにコンサルタントのチームを組んで仕事に取り組みます。チームで取り組むような大規模な案件を請け負うケースが多く、コンサルティングファームへ依頼するにはまとまった費用がかかります。
一方で会社に属さず、個人で仕事をするフリーコンサルタントもいます。日本で多いのが、社会保険労務士や税理士などの資格を持つ「士業系」フリーコンサルタント。ある調査によれば、企業が契約している外部専門人材の上位は以下となっています(※2)。
1位「税理士」(69.5%)
2位「社会保険労務士」(60.8%)
3位「弁護士」(47.3%)
士業以外にも、最近は経営やITなどの専門分野を持って仕事をするフリーコンサルタントも登場しています。フリーコンサルタントは、チームで仕事をするコンサルファームより費用をおさえられます。費用面で言えば、一般企業にとってフリーコンサルタントの方が身近な存在と言えます。
2.多様化するコンサルタントの種類を知る
企業が抱える課題が多様化する中、実はコンサルタントの仕事も幅広くなってきました。一般企業の経営者がよく利用するコンサルタントの種類を知っておくことも、スムーズに選定するポイントのひとつです。
1)IT系コンサルタント
ITシステムの選定や提案といったコンサルティング業務を行います。さらにIT系コンサルタント自身が開発プロジェクトのマネジメントをしたり、ITシステム導入後のサポートを手掛けたりするケースも。
ここ数年は日本でもDX(デジタルトランスフォーメーション)を導入する企業が急増。DX案件を扱えるIT系コンサルタントのニーズが高まっています。
2)経営戦略系コンサルタント
企業の経営層が抱える課題を明確にして、解決策となる戦略を作成・提案するのが経営戦略系コンサルタント。企業全体の経営方針から事業戦略やM&A、マーケティングなど対応範囲も幅広くなっています。
さらに分野特化型のコンサルタントもいます。例えばマーケティングに特化したコンサルタントなら、マーケティング戦略立案やブランディングなどを支援して売上アップにつなげるのが業務です。
3)財務・会計系コンサルタント
財務会計のプロフェッショナルとして、戦略立案作成などの仕事を担うのが財務・会計系コンサルタント。企業の財務状況を分析した上で、資金調達・投資戦略などの戦略を作成します。M&Aに関するアドバイスを行うケースもあります。
会計系コンサルタントは会計業務のプロセス改善や、法改正にあわせた業務見直しなどのコンサルティングを行います。
4)人事・組織系コンサルタント
採用や人材活用、組織改革などの分野で課題解決を担うのが、人事・組織系コンサルタント。人事制度や組織の改革のほか、採用戦略や人材育成戦略の作成・実行などを依頼できる専門職です。
最近では従来の終身雇用制度から脱却して、人事組織制度のグローバル化を目指す企業が増えています。こうした企業の相談相手として、人事・組織系コンサルタントに注目が集まっています。
5)企業再生系コンサルタント
経営が悪化した企業の再建や事業の再構築を専門に扱うのが、企業再生系コンサルタント。コンサルティング業界では企業再生を「ターンアラウンド(方向転換)」と呼び、企業再生系コンサルタントを「ターンアラウンドマネージャー」と呼びます。
市場の変化するスピードが速い今は、従来のビジネスモデルが短期間で通じなくなることも。そこでターンアラウンド(方向転換)という名称の通り、事業や組織を再構築して収益改善につながる経営戦略を立案するのが主な業務です。
3.コンサルタントへ依頼する効果・メリットを知る
ただ漠然とコンサルタントへ仕事を依頼しても、成果は出にくいですよね。まずコンサルタントへ依頼するメリットを把握した上で、コンサルタントに依頼する目的や理由をはっきりさせておきましょう。ここでは一般的なコンサルタントの効果・メリットを解説します。
1)企業が持つ課題の整理・可視化ができる
まず課題の本質がわからないと、ふさわしい解決策は見えてきませんよね。そこでコンサルタントは何が課題かを様々なフレームワークを使ってクリアにした上で、課題解決策を提案します。つまり見えていなかった会社の課題やその要因が、明確になる効果が期待できます。
2)専門的な知識や経験を活用できる
会社の中のメンバーでは、どうしても発想が固定化しやすいです。一方コンサルタントはさまざまな会社での経験で得た、幅広い知識とノウハウを提供してくれます。特に新規事業やビジネスモデルの変革などの案件では、外部の視点を持つコンサルタントと組むことで新しいアイデアが生まれやすくなります。
3)効率よくスピーディに課題を解決できる
トレンドの変化が早い今、競争力を保つためにはスピードが求められます。しかし実際には「会社にノウハウがない」「進行役がいないのでプロジェクトが進まない」という会社も多く、スピーディな対応が難しい現実があります。
こうした問題をクリアできるのが、課題解決の専門家であるコンサルタント。多数の経験を持つコンサルタントは、はプロジェクトを効率よく進めるノウハウを持っています。
4)ステークホルダーの理解を得られやすくなる
課題解決に向けた戦略や方針を立案しても、専門家による監修がないとどうしても説得力に欠けます。こうなると株主や取引先などのステークホルダーの理解を得られず、必要な人材や予算が確保できない結果になることも。
一方コンサルタントはその分野の専門家であり、論理的思考も持っています。さらに社外で客観的な立場のコンサルタントが参加している案件なら、ステークホルダーからの理解を得られやすくなります。
4.コンサルタント選定でおさえるべき4つのポイント
優秀なコンサルタントに仕事を丸投げすれば勝手に成果を出してくれる、と思う方もいるようですがそうではありません!どんなに優秀でも、目標がしっかり共有できていなければ成果は出ません。また会社によって相性というものもあります。
スキルや経験とあわせて、コンサルタントへ相談する前に確認したい4つのポイントをまとめました。
1)コンサルタントへ相談する目的を明確にする
依頼する目的が曖昧なままコンサルティングを依頼するのは、絶対に避けたいところ。優秀なコンサルタントを選んでも、よくよく考えたら目的とマッチしていなかったということになりかねません。
コンサルタントへ相談する目的を明確にするには、以下の「5W1G」をもとに整理するのがおすすめです。
- ・Why(どういう理由で?)
- ・What(どのような問題を?)
- ・Where(どこで?)
- ・When(いつまでに?)
- ・Who(誰のために?)
- ・Goal(どのような状態(ゴール)になりたいのか?)
2)コンサルタントの専門性と過去の実績を確認する
コンサルタントの種類は多様化していて、扱う分野もさまざま。ですから最適なコンサルタントを選ぶには、得意分野と過去の実績をチェックするのもポイントです。
実績は多ければいいとも限りません。やはり自社案件に似た実績が多いかがポイント。実績を見るときは、専門分野や業界とあわせて案件の規模もチェックしておきたいところです。大企業や複数企業が参加する大規模案件を得意とする人もいれば、中堅企業の支援が得意という人もいます。できるだけ依頼案件の規模に近い実績を持つコンサルタントを選びましょう。
3)わかりやすい言葉遣いで説明してくれるかを確認する
高度なスキルや実績が豊富なコンサルタントでも、コミュニケーションがうまく行かないと成果は出にくくなります。依頼元の悩みや状況を深く理解した上で、相手の立場に立って対応してくれるかがポイントです。
コミュニケーション能力を知るには、例えばコンサルティング方針や今後の流れをわかりやすい言葉で説明してくれるか確認しましょう。会社(または業界全体)が持つ悩みの本質を理解しようとするコンサルタントなら、丁寧でわかりやすい説明を心がけてくれるはずです。
案件によっては、長期間のコンサルティングを依頼するケースもあります。お互いにストレスなく仕事をするためにも、初回の面談で確認しておきましょう。
4)相場を把握して妥当な費用かを確認する
コンサルタント活用で気になるのが費用。なるべく費用をおさえたいところですが、安さだけで選んでしまうと求める成果が出ないことも。確実に結果を出すには、相場をもとに業務内容にふさわしい費用を出すことも大切です。
まずコンサルティング業界での報酬の決め方を知っておきましょう。一般的には、3つの方式があります。
- ・プロジェクト報酬(チャージレート報酬)方式:作業時間×単価で計算するシンプルな方式。
- ・成果報酬:成果の達成度に応じて報酬が決まります。ただし完全な成果報酬ではなく、基本報酬(着手金)と成果報酬を組み合わるのが一般的。例えばマーケティングコンサルティングの場合、マーケティング戦略を策定する時点で基本報酬を払います。その後目標としたマーケティング指標を達成した時点で成果報酬を払う方式です。
- ・定額報酬(アドバイザリー契約):作業担いではなく契約で決めた相談回数・時間で報酬が決まります。顧問やアドバイザー契約によく使われる方式です。
報酬方式によって相場は大きく違うので、まず依頼する案件がどの方式になるか想定しておきましょう。また相場をもとに費用が妥当かを判断するには、複数のコンサルタントに相見積もりをとって比較検討するのが基本です。
コンサルタントは専門職なので、それなりの費用がかかるのは事実。しかし個人のフリーコンサルタントを活用することで、費用を抑えられる可能性もあります。フリーコンサルタントは大手ファームより単価も安く、期間なども調整しやすいメリットがあります。また社員採用と比べれば、大幅に費用を抑えられる見方もできます。
5.まとめ
日本のビジネスコンサルティング市場は、ここ数年拡大傾向。IDC Japanの調査によると、2019年から2024年まで年間平均成長率は約5%、2024年には市場規模が5951億円に達する予測を発表しています(※3)。
この調査では、市場が成長する大きな要因をDX(トランスフォーメーション)と解説しています。DXとは、ビジネスの変化に対応するためITを活用してビジネスモデルや組織・業務プロセスを変革すること。企業がDXでビジネスモデルや組織を変革するには、新たな視点でアイデアを出せる人材が必要。そこで社外の視点で新しい発想を取り込めるコンサルタントに注目が集まっているわけです。
なお日本のDX推進は、海外より大きく遅れているのが現状です。経済産業省も日本企業のDX推進が遅れて国際競争力が下がると、2025年には年間約12兆円の経済的損失が出ると試算しました(これは「2025年の崖」と呼ばれます)(※4)。政府も、日本企業のDX推進を後押しする姿勢を打ち出しています。今後数年間はDXに取り組む企業が急増するでしょう。
また新型コロナウイルス感染症の影響もあります。業種によっては従来のビジネスモデルでは厳しいケースも出てきました。こうした会社はアフターコロナを見据え、事業の再構築や組織改革が急務。事業再生や組織改革の実績を持つコンサルタントへの相談が、さらに増えると予想されます。
DXやコロナ禍によって、コンサルタントへ相談する企業が今後も増えることは必至です。優れたスキルと実績を持つコンサルタントは取り合いになる可能性も。自社とマッチするコンサルタントを確保するためにも、ポイントをおさえて選定しましょう!
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典
※1:日本能率協会が『日本企業の経営課題2020』の調査結果を発表(ManegyPowerdbyMS-Japan)
https://www.manegy.com/news/detail/3166
※2:【調査報告】中小企業が外部専門人材に相談したいテーマと実際の活用にギャップ(PRTIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000067309.html
※3:国内コンサルティングサービス市場予測を発表(IDC)
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ46448620
※4:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業相)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html