マーケティングDXとは?事例や実装のポイントを解説!
さまざまな分野でDX(デジタルトランスフォーメーション)が広がる中、マーケティング分野でもDXを推進する企業が増えています。電通が2020年5月に行った調査によると、なんと日本企業の約8割がマーケティングDXに取り組んでいるという結果が出ています(※1)。従来のマーケティングをデジタル化させ、さらに変革につなげるのがマーケティングDX。
コロナ禍でこれまでのマーケティング手法が通用しなくなってきた今こそ、活用したいと考える方も多いのではないでしょうか。とはいえ
「マーケティングでDXをどう進めればいいのかピンとこない」
「デジタルマーケティングは実践しているけれど、DXとの違いがよくわからない」
という声もよく聞かれます。
そこでコロナ時代にマーケティングDXに取り組む上で、知っておきたいマーケティングDXの基本や活用事例、注意点について解説します!
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1.マーケティングDXの定義とは?
DXは「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション)の略で、日本語では「デジタルによる変革」という意味。なお「trans-」はクロスするという意味で、クロスを意味する「X」が略語で使われます。
DXの定義は企業によって異なりますが、一般的に組織やビジネスのプロセスをデジタル化させるだけではなく、変革を起こすことを言います。
つまり「マーケティングDX」は、市場調査や商品開発、広告宣伝、効果検証といったマーケティングプロセスをITツールやAIを導入してデジタル化。さまざまなデジタルデータをクロスさせ、新しいビジネスや組織を生み出すことを言います。
デジタルマーケティングとはどう違う?
マーケティング業界では、デジタルマーケティングというワードがすでに一般的です。デジタルマーケティングはWebサイトやアプリ、SNSといったデジタルメディアを使ったマーケティング手法のこと。デジタルマーケティングの定義ではマーケティングデータのデジタル化までは実現していますが、ビジネスの変革には至っていません。
データを分析・活用して根本的なビジネスや組織の変革につなげるのが、マーケティングDX。ここがデジタルマーケティングとの大きな違いです。
マーケティングDXでどんな変革が起こる?
では具体的にマーケティングDXによってどんな変革が起こるのか?という疑問が生まれます。マーケティングDXで特に期待されているのが、「顧客体験」の変革です。「顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)」とは、顧客がサービスを認知する段階から購入後のアフターサービスに至るまで一連の体験のこと。ここで重要なのが、あらゆる場面で満足度を上げて顧客のロイヤルティ(忠誠度)を高めるということです。
マーケティングDXでは、顧客体験の大きな変革が期待できます。
例えばコーヒーチェーンのスターバックスの事例。顧客体験を重視する企業として知られていますが、最近はデジタルツールを活用して顧客体験を大きく変革させました。スターバックスではコロナ禍を鑑みて、モバイルアプリで店員と極力接触せず購入できるサービスを推進。ユーザーニーズやトレンドの変化にあわせて柔軟にサービスをブラッシュアップして、優れた顧客体験を実現させています。
2.参考にしたいマーケティングDXの4事例
マーケティングDXに取り組むには、成功している日本企業の事例を参考にしたいところ。ここでは代表的な4つの事例をまとめました。
1) コカ・コーラ:アプリと自販機を連動させる斬新なマーケティング施策を実現
マーケティングDXの成功事例として知られるのが、モバイルアプリ「Coke On」を提供するコカ・コーラ。コカ・コーラではアプリをユーザーが自販機にかざして購入すると、15本購入で1本無料になるサービスを提供。IT活用によって「自販機でもスタンプが貯まって無料特典をもらえる」という顧客体験の変革を実現しました。
リピーターが増えて売上アップも期待できますが、新しいマーケティング施策にもつながっています。例えばアプリで無料チケットを配るサービスによって、効率的なサンプリングを実現。またアプリで収集したデータをもとに、顧客の好みにあうコンテンツやクーポンを配信するサービスも可能となりました。マーケティング分野におけるデジタルトランスフォーメーションの好事例と言えるでしょう(※2)。
2) JTB:観光アプリのデータを分析、新たなコンサルビジネスに参入を目指す
JTBは、2018年に訪日観光客向けアプリをナビタイムやマイクロソフトと共同開発。このアプリは、AIチャットボットが英語で観光情報や問い合わせに対応する機能を搭載しています。AI技術によって、双方向のやりとりをしながら日本観光ができる顧客体験を実現させました。
現在はコロナ禍によって訪日観光客は減少していますが、将来的にはこのアプリで集めた訪日観光客の嗜好データや行動データを分析、自治体や企業向けにコンサルティング事業を始める予定もあるそうです(※5)。
3) グリコ:MAツールを活用してB2B事業のマーケティング変革に成功
グリコは法人向けに名入れノベルティを提供するB2B事業にて、マーケティングDXに取り組んでいます。MAツールを導入して営業手法をデジタル化させ、オンライン営業へ移行。データ分析などができるようになり、オンラインでのリード流入量や成約金額が大きく伸びたと言います。
ここまでは、一般的なMAツールの導入事例かもしれません。しかしグリコでは、この仕組みを他のB2B事業(災害用備蓄販売)にも展開、こちらも受注率がほぼ100%という成果につながったそうです(※6)。他の事業にクロスさせることで、企業のビジネス全体の変革をもたらしたという点がDX(デジタルトランスフォーメーション)と言えます。
4)「U.S.M.H」:従来のスーパーと全く異なる顧客体験をマーケティングDXで目指す
小売業のマーケティングDX事例として注目されているのが、マルエツなどのスーパーを展開する「U.S.M.H」(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)。オフライン(店舗)とオンライン(ECやアプリ)を融合させた顧客体験を目指し、さまざまなマーケティングDXに取り組んでいます。
例えば「Scan&Go」というアプリでは、店内の商品をスマホでスキャンして購入、アプリでキャッシュレス決済もできる機能を搭載。他社にはない顧客体験のデジタルトランスフォーメーションを実現させています。今後はアプリとEC(ネットスーパー)との連動など、トレンドを意識したサービスも予定しているそうです(※7)。
3.マーケティングDXで成果を上げる3つのポイント
マーケティングDXがトレンドになる一方で、どんなケースでも成果が出ているわけではありません。成功事例ばかりではありません。電通の調査によると、取り組んでいる企業は8割に上る一方で、成果が出ているという企業は5割にとどまっています(※1)。ここでは成果を出すために必要な3つのポイントを解説します。
1) 全社で業務や組織の根本的な見直し
ビジネスそのものを変革するには、従来の企業体質を大きく変えることが求められます。そうなると、組織や業務プロセスなどを根本的に見直す必要が出てきます。マーケティングや営業といった部門ごとの対応では不十分。全社でマーケティングDXを導入するためには、経営層がトップダウンで指示するべきでしょう。
マーケティングDXの調査データを見ても、マーケティングDXで成果を上げている企業の約7割がトップダウンで推進しています(※1)。
2) 顧客の視点に立って、顧客体験の変革を目指す
マーケティングDXでは欠かせない、顧客体験の変革。これを実現するには、顧客の視点でマーケティング施策を見直す必要が出てきます。つまり企業側のメリットだけではなく、顧客側にもメリットがあるサービス開発・改善への取り組みが求められます。
例えばグリコの事例では、従来の対面営業からITツールを活用したオンライン営業にシフトしています。これは企業にも業務効率化などのメリットがありますが、クライアントにとってもコロナ禍でも非対面の商談ができるメリットがあるわけです。
マーケティングDXの調査データを見ても、マーケティングDXの成果が出ている企業の8割以上が顧客体験向上に取り組んでいます(※1)。
3) ビジネスの変革までつなげるために、外部のサポートを取り入れる
(1)の「組織や業務の見直し」(2)の「顧客視点に立って顧客体験」の見直しを実現するには、スキル不足やアイデア枯渇の点から社内リソースだけでは難しいという課題があります。
そこで、大手企業では外部人材の活用に注目が集まり始めています。
資生堂では、今後デジタルによる事業変革に向けて2021年にアクセンチュアとの提携を発表(※8)。さらにダイハツやキリンなどの大手企業でも新規事業開発を加速するために副業人材を公募しました(※9,10)。社内にはない経験やスキルが得られるほか、外部の視点によって新たなアイデアを取り込むきっかけにもなるでしょう。
まとめ
SNSやモバイルアプリといったITツールの台頭によって、マーケティングトレンドが大きく変化している現在。最近はコロナ禍によって非対面の取り組みが求められるなど、劇的な変化が起こっています。従来のマーケティングから脱却して、デジタル化を進めるとともに顧客視点を重視していかないと、今後のトレンドの変化には適応できません。
ただしAIなど最新技術を駆使したマーケティングDXを推進するには、社内リソースだけでは難しいのも事実。この機会に専門スキルと経験を持つ、外部のプロ人材活用を検討してみてはいかがでしょうか。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
出典
※1:DXで成果が出る企業・出ない企業の違いって?(電通報)
https://dentsu-ho.com/articles/7518
※2:対応自販機21万台、「Coke ON」IoT革命のインパクト:日本コカ・コーラのデジタルマーケティング3.0(DIGDAY)
https://digiday.jp/brands/coke_on_hot_topic/
※3:資生堂が家庭用IoTスキンケアシステム開発 日々の肌変化に合わせた美容液と乳液を提供(WWD)
https://www.wwdjapan.com/articles/514146
※4:AIであなた専用化粧品 美容スタートアップが攻勢(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54949530Y0A120C2000000/
※5:JTBグループ
https://www.jtbcorp.jp/jp/colors/detail/0148/
※6:戦略的なマーケティングシナリオ設計でノベルティサイトから質の高いリードを獲得(Salesforce)
https://www.salesforce.com/content/dam/web/ja_jp/www/documents/customer_stories/glico.pdf
※7:大手スーパーの事例から見る、リテールDXを加速させる秘訣とは(FUJITSU)
https://www.fujitsu.com/jp/reimagine/retail/article/seminar01/index.html
※8:アクセンチュアと資生堂、DX加速を目的とした戦略的パートナーシップに合意(マーケジン)
https://markezine.jp/article/detail/35499
※9:キリングループで初となる副業人材の公募を実施(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000073077.html
※10:ダイハツ初の副業・兼業限定公募をビズリーチで実施(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000154.000034075.html