プロジェクト体制図の書き方は?良い・悪い例と有効活用するコツを解説
作成日:2025/09/29
「プロジェクト体制図はどうやって作ればいいの?」
「良い例と悪い例の違いや、作成のポイントを知りたい」
このように、プロジェクト体制図の必要性は感じていても、具体的な書き方や注意点が分からないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プロジェクト体制図が果たす役割や含めるべき役職、良い例と悪い例の特徴を分かりやすく解説します。
さらに、実際の作成手順や効果的に活用するためのコツも紹介するので、プロジェクト管理を一任されている方はぜひ参考にしてください。
目次
■プロジェクト体制図が果たす3つの役割
(1)役割と責任範囲を整理する
(2)関係者間のコミュニケーションをつなぐ
(3)意思決定を迅速に進める
■良いプロジェクト体制図を設計する3つのポイント
(1)シンプルで一貫した指揮命令系統
(2)役割と情報フローが一目で分かる表記設計
(3)変化に強い柔軟性・拡張性
■失敗を招くプロジェクト体制図の3つの特徴
(1)誰の指示に従えば良いか分からない
(2)一人の担当者に業務が過度に集中している
(3)役割・責任の境界が曖昧になっている
■プロジェクト体制図の作成手順【5STEP】
(1)プロジェクトの目的とゴールを設定する
(2)参加メンバーと必要な役割を洗い出す
(3)指揮命令系統と報告ルートを決定する
(4)ツールを使って図に落とし込み清書する
(5)関係者でレビューし最終調整を行う
■プロジェクト体制図を有効活用するコツ
(1)プロジェクト開始時に全員で内容を共有する
(2)進捗に合わせて定期的に見直し更新する
プロジェクト体制図が果たす3つの役割

プロジェクト体制図は、単なる組織図ではなく、現場を動かす実務ツールです。
ここでは、プロジェクト運営を支える体制図の3つの役割を整理して解説します。
(1)役割と責任範囲を整理する
体制図の第一の役割は、プロジェクトに関わるメンバーの役割と責任範囲を整理することです。
誰がどのタスクを担い、どこまでが責任範囲なのかを図に示せば、重複や抜け漏れを防ぎ、効率的に作業が進みます。
さらに、「自分の業務」としての意識が強まるため、当事者意識を持って主体的に動ける環境が整います。
結果として、業務スピードや精度が上がり、プロジェクト全体の生産性を高めることにつながります。
(2)関係者間のコミュニケーションをつなぐ
体制図は、複数部署や外部パートナー、顧客を巻き込むプロジェクトにおいて、関係者間の橋渡し役を果たします。
相談窓口や承認ルートが明示されていれば、誰に連絡すべきかを迷わず判断でき、無駄な確認や情報の行き違いを防げます。
特に外部顧客とのやり取りにおいては、窓口が明確であることが信頼構築の基盤となります。
体制図が共通の指針として機能すると、情報共有が加速し、組織内外の連携をスムーズに進められるのです。
(3)意思決定を迅速に進める
プロジェクト体制図を作成すると、意思決定を迅速化できる点も大きなメリットです。
決裁権を持つ人物や承認ルートが明確に整理されているため、課題や計画変更が生じても、エスカレーション先に迷うことがありません。
その結果、承認待ちで作業が止まるリスクを抑え、必要な判断を逃さず進められます。
変化の多い環境でも柔軟に対応でき、プロジェクト全体を滞りなく推進する力が維持されるのです。
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プロジェクト体制図に含めるべき主要な役割

プロジェクト体制図を機能させるには、関係者の役割を明確にして図に反映することが重要です。
規模や目的によって必要な役職は異なりますが、多くの体制図に共通する基本的な役割があります。主な役割は、以下のとおりです。
- ・顧客:最終的にサービスやプロダクトを受け取る当事者
- ・ステークホルダー:成果物に影響を受ける社内外の関係者や組織
- ・プロジェクトマネージャー(PM):全体を統括し、計画管理や進行を指揮する責任者
- ・プロジェクトリーダー(PL):現場を率いてメンバーを管理し、計画通りに遂行させる中心人物
- ・チームメンバー:専門知識やスキルを生かして、具体的なタスクを実施する担い手
- ・サポートスタッフ:事務作業や後方支援を担い、プロジェクトを下支えする存在
これらの役割を体制図に明示すれば、「誰が何を担当するのか」が全員に共有され、報告ルートや責任の所在も明確になります。
結果として、チーム全体が迷わず行動できる強固な基盤を築けるでしょう。
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良いプロジェクト体制図を設計する3つのポイント

プロジェクト体制図は、誰が見ても読み解け、運営にそのまま使える設計が要です。
ここでは、良いプロジェクト体制図を設計するためのポイントを3つ解説します。
(1)シンプルで一貫した指揮命令系統
プロジェクト体制図は、指揮命令の流れを一本化し、誰が指示を出し、誰に報告するのかを明確に定義することが重要です。
基本はプロジェクトマネージャーからプロジェクトリーダー、そして各メンバーへと伝わる縦の流れで構築し、横の連携は情報共有に限定するのが望ましい形です。
さらに、承認段階は二層までといった基準を設定し、体制図上で明示しておけば、判断の迷いや優先順位の混乱を避けられます。
シンプルかつ一貫したルートを示すことが、混乱を防ぐ最初のポイントです。
(2)役割と情報フローが一目で分かる表記設計
優れたプロジェクト体制図は、氏名や役職だけでなく、担当領域・責任範囲・承認権限といった各メンバーの役割が一目で把握できるようになっています。
たとえば「デザインを担当し、レビューの承認をプロジェクトリーダーが担う」といった形で記載すれば、役割分担を直感的に理解できます。
また、進捗報告や課題の共有、承認の依頼といった情報の流れも、色や線ではなく凡例や注記で整理しておくと、混乱を防げます。
さらに外部パートナーや顧客については、図中で枠組みを分けることで関係性が明確になります。
誰が見ても迷わず理解できる表記設計が、プロジェクト体制図の質を高めるポイントです。
(3)変化に強い柔軟性・拡張性
プロジェクトは常に変化するため、体制図にも柔軟性を持たせる必要があります。
主要ポジションには代理担当者を設定し、兼務可能な範囲や代替ルートを図中に明記しておくと、急な離脱にも対応できます。
また、新チームの追加や人員増減に備え、ボックス単位で増設できるレイアウトを採用すると更新が容易です。
さらに、体制図の修正版を出す手順や通知ルートをあらかじめ定めておけば、変更があっても現場は混乱しません。
変化を前提とした設計が、長期プロジェクトの安定性を高めます。
失敗を招くプロジェクト体制図の3つの特徴

一方で、誤った構造を持つ体制図はプロジェクトの停滞や混乱を招きます。
役割や責任が曖昧だったり、情報の流れが不明確だったりすると、チームは迷い、意思決定も遅れがちです。
ここでは、失敗につながりやすい典型的な3つの特徴を解説します。
(1)誰の指示に従えば良いか分からない
指揮命令系統が混乱しているプロジェクト体制図は、失敗の大きな要因となります。
一人のメンバーが複数の上司から直接指示を受ける状態では、矛盾した指示や異なる優先順位に翻弄され、業務が進みません。
その結果、作業効率は著しく低下し、メンバーの精神的な負担も増大します。
指揮命令ラインが複数存在する体制は、プロジェクトに深刻な混乱をもたらす典型例です。
(2)一人の担当者に業務が過度に集中している
業務が特定の担当者に集中する体制も、プロジェクトを失敗に導く危険があります。
キーパーソンに負荷が偏れば、その人がボトルネックとなり、進行全体が遅れる恐れがあります。
さらに、過度な負担は担当者を疲弊させ、品質低下やモチベーション喪失を招きます。最悪の場合、休職や離職につながり、プロジェクト自体が立ち行かなくなる場合もあるでしょう。
属人化を防ぐためには、業務を適切に分散し、複数人でカバーできる仕組みを整えることが不可欠です。
(3)役割・責任の境界が曖昧になっている
役割や責任の境界が不明確な体制図は、プロジェクトの停滞を招く典型的な原因です。
担当範囲があいまいだと、「自分の業務ではない」という意識が広がり、タスクの押し付け合いや放置が発生します。
その結果、業務の抜け漏れや遅延が起こりやすくなり、成果物の信頼性も損なわれます。さらに、責任が曖昧なままでは当事者意識が育たず、チーム全体の結束も弱まります。
こうした悪循環を防ぐには、プロジェクト体制図で役割と責任範囲を明確に示し、誰がどの領域を担うのかを一目で分かる形にすることが重要です。
プロジェクト体制図の作成手順【5STEP】

体制図を効果的に作成するには、目的から逆算して段階的に進めることが大切です。思いつきで描くだけでは機能せず、論理的なプロセスを踏む必要があります。
ここでは、初めての方でも抜け漏れなく作成できる5つの手順を紹介します。
(1)プロジェクトの目的とゴールを設定する
最初にすべきは、プロジェクトの目的とゴールを明確に定義することです。最終的な到達点が曖昧なままでは、必要な人材やチーム構成を適切に判断できません。
「何を、何のために行うのか」を具体的に言語化し、関係者全員で共通認識を持つことが不可欠です。
たとえば、目的が売上拡大なのか、業務効率化なのかで求められるスキルや人員は大きく変わってくるでしょう。
目的とゴールを軸に据えると、体制図全体の方向性がぶれず、プロジェクトの成果につながります。
(2)参加メンバーと必要な役割を洗い出す
次に行うべきは、ゴール達成に必要な役割をすべて洗い出すことです。
タスクを細分化し、求められるスキルや専門知識を整理し、役割に沿って、適任な人材を社内外から選定して配置していきましょう。
この作業により、人材の過不足が把握でき、不要な属人化も防げます。役割の整理を丁寧に行うほど、実際の運営での混乱を減らすことができます。
(3)指揮命令系統と報告ルートを決定する
役割がそろったら、次は指揮命令系統と報告ルートを明確に設定します。
誰が誰に指示を出し、進捗や問題をどの順番で報告するかを決めておくことは、混乱を防ぐうえで欠かせません。
理想は、プロジェクトマネージャーを頂点に据え、チームリーダーを通じてメンバーへ指示が流れるシンプルな構造です。
同時に、トラブル時のエスカレーションルートを定義しておけば、対応が遅れる心配もありません。
(4)ツールを使って図に落とし込み清書する
決めた体制は図に落とし込み、視覚的に分かりやすく仕上げます。
PowerPointやExcel、Googleスプレッドシートなどを使えば、誰でも理解しやすいプロジェクト体制図を作成できます。
メンバーの氏名や役職に加え、具体的な役割も明記し、矢印や線で関係性を表現しましょう。色分けや配置を工夫すれば、情報が整理され直感的に理解しやすくなります。
専用ツールを活用すれば、より見やすくプロ仕様の図に仕上げられます。
(5)関係者でレビューし最終調整を行う
最後に欠かせないのが、体制図のレビューと最終調整です。
完成版を主要な関係者に共有し、役割分担や責任範囲に無理がないかを確認します。
プロジェクトマネージャーやリーダーだけでなく、必要に応じてメンバー本人の意見も反映させると実効性が高まります。
フィードバックを受けて修正を加え、全員が納得できる状態に仕上げることが重要です。調整を経て完成し体制図は、現場で迷わず活用でき、プロジェクト推進を強力に支える実践的なツールになります。
プロジェクト体制図を有効活用するコツ

作成したプロジェクト体制図を形骸化させず、現場で使い続けるための活用のコツを2つ紹介します。
(1)プロジェクト開始時に全員で内容を共有する
体制図は、プロジェクト開始時に必ず全員で共有することが欠かせません。
キックオフミーティングでの口頭説明に加え、資料として配布し、常に閲覧できるフォルダやツールに保存しておくと効果的です。
これにより、各メンバーは自分の役割や責任範囲を再確認できるだけでなく、他のメンバーが何を担当しているのかを正しく把握できます。
誰に相談すればよいかが分かれば、初動の遅れや連携不足を防げます。全員の目線をそろえてスタートできるプロジェクト体制図の共有は、スムーズな協力関係を築く土台となるのです。
(2)進捗に合わせて定期的に見直し更新する
体制図は一度作成したら完成ではなく、進行に応じて更新する必要があります。
プロジェクトが進む中で、課題対応のためのチーム再編や新メンバーの参加、既存メンバーの異動が発生することは珍しくありません。
変化を反映せず古い体制図を放置すると、誤解や伝達ミスを招き、かえって混乱の原因になります。
そのため、定例会議などのタイミングで体制を確認し、必要があれば速やかに修正することが大切です。
常に最新の状態を保てると、プロジェクト体制図は生きた管理ツールとして機能し続けます。
まとめ

プロジェクト体制図は、関わるメンバーの役割と責任を明確にし、円滑なプロジェクト運営を支援する重要なツールです。
効果的な体制図は、円滑なコミュニケーションを促し、プロジェクトの成功確率を高めます。
本記事で紹介した作成手順や、良い例と悪い例の特徴を参考に、自社の実態に合った体制図を作成し、日々のプロジェクト運営に役立ててください。
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