DXの意味をわかりやすく解説!定義やIT化・デジタル化との違いも

最終更新日:2025/11/22
作成日:2022/03/18

DXとは、デジタル技術の導入を通じて企業や組織を大きく変革し、新たな価値を創造するための取り組みを指します。

 

DX推進は、企業の生産性向上や業務の標準化、従業員が付加価値の高い仕事に集中できる環境整備など、多くのメリットをもたらします。

 

この記事では、DXの定義、IT化やデジタル化との違い、DXが加速する背景についてわかりやすく解説します。効果的なDX推進のステップと国内企業の成功事例も紹介するので、企業のDX推進を検討している方はぜひご覧ください。

 

目次

■DXとは?
(1)DXとは何の略称?
(2)DX推進とは?
(3)IT化・デジタル化との違い

 

■なぜDXが加速するのか
(1)DXレポートによる「2025年の崖」の警告
(2)コロナ禍の影響
(3)働き方改革の影響

 

■DX推進の3つのメリット
(1)生産性・効率性の向上
(2)業務の標準化・属人化の解消
(3)付加価値の高い仕事に集中できる

 

■DXを進めるための5ステップ
(1)社内の現状把握とゴール設定
(2)DX推進の体制づくり
(3)業務整理と効率化ポイントの見極め
(4)システム・ツール選定
(5)会社へ導入

 

■日本企業のDX成功事例
(1)建設業:コマツカスタマーサポート株式会社
(2)製造業:三菱電機株式会社
(3)不動産業:株式会社長谷工コーポレーション
(4)保険業:住友生命保険相互会社

 

■まとめ

 

DXとは?

雲の上の空間で、太陽光パネルと多くの画像コンテンツを操作する手

まずはDXに関する基本的な知識について押さえ、「そもそもDXとは何か」を深めていきましょう。

 

DXとIT化・デジタル化との違いについてもわかりやすく解説するので、DX推進を具体的に検討する前の準備として活かしてください。

 

(1)DXとは何の略称?

DXは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。

 

Transformationは英語で「変革」を意味し、デジタル技術を活用した変革を指します。

 

IPA(情報処理推進機構)の資料やITパスポート試験などの資格でも頻繁に登場する、IT分野の基本用語にもなりつつあります。

 

(2)DX推進とは?

DX推進とは、企業がデジタル技術やデータ活用を通じて、製品やサービス、ビジネスモデルを大きく変革していく取り組みです。

 

顧客のニーズや市場の変化に柔軟に対応し、新たな価値を創造することで競争力の向上を目指します。

 

IoTやWebサービス、生成AIなどを含むITツールを導入して業務を自動化すると同時に、組織文化や働き方、企業風土といった本質的な変革を伴う点が特徴です。

 

例えば、これまで紙媒体で管理していた顧客データを電子化するだけでなく、「そのデータをAIで分析し、顧客一人ひとりに最適なサービスを提案する仕組みを構築する」などの取り組みもDX推進に含まれます。

 

DX推進は、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するための重要な経営戦略と位置付けられています。

 

(3)IT化・デジタル化との違い

DXとIT化・デジタル化は、それぞれ異なる概念です。

 

IT化は主に業務効率化やコスト削減を目的として、既存の業務プロセスにITツールを導入することを指します。

 

デジタル化は、これまでアナログで管理されていた情報をデジタルデータに変換することを意味し、紙の書類を電子化するなどが該当します。

 

一方DXは、IT化とデジタル化の取り組みをさらに発展させ、デジタル技術を活用して顧客体験やビジネスモデル、企業文化そのものを変革し、新たな価値の創造を目的とした取り組みです。

 

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なぜDXが加速するのか

ノートパソコンのキーボードと周辺に広がるデジタル技術のアイコン

DXが進む背景には、企業を取り巻く環境の変化と、それに対応する必要性が高まっている点が挙げられます。

 

経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」や、コロナ禍における働き方の変化などが、中小企業を含む多くの企業にDX推進の重要性を再認識させ、取り組みを加速させる要因となりました。

 

(1)DXレポートによる「2025年の崖」の警告

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、「2025年の崖」として日本企業が直面する課題が提示されました。

 

多くの企業が抱える老朽化した既存システムやIT人材の不足が原因で、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が発生する可能性があるという警告です。

 

課題を放置すると、国際競争力の低下や経済成長の停滞につながる危険性が指摘されています。

 

「2025年の崖」は、日本企業の間でDX推進の重要性が広く認識されるきっかけの1つとなり、DXに取り組み始める企業が増加しました。

 

参考:経済産業省「産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)」「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)

 

(2)コロナ禍の影響

2020年以降に感染が拡大した新型コロナウイルスは、DXを加速させる要因の1つとなりました。

 

経済産業省が公表した「DXレポート2」では、コロナ禍でテレワークやオンライン化に素早く切り替えられた企業と、従来通りのやり方から抜け出せなかった企業の間で、DX推進状況や競争力の差が開いていると説明されています。

 

特に、押印文化や客先常駐、対面販売といった旧来の企業文化は、変化への対応を阻害する要因として浮き彫りになりました。

 

コロナ禍は、これまで先送りされてきた国内企業のレガシーな文化を見直すきっかけとなり、結果としてDXが加速したと考えられます。

 

参考:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)

 

(3)働き方改革の影響

働き方改革とは、長時間労働や人手不足などの問題を解決するために、「残業を減らす」「正社員と非正規の不公平をなくす」「テレワークなど多様な働き方を広げる」といった施策を、国と企業が一体となって進めていく取り組みです。

 

働き方改革の推進を背景に、Web会議ツールやクラウドサービスを前提とした働き方が広がり、エンジニア職種に限らず多くの職種でDXの必要性が高まっています。

 

この流れはデータにも表れており、総務省が発表した令和2年「通信利用動向調査」では、企業のテレワーク導入率が2019年の20.2%から2020年には約48%へと増加しました。

 

さらに、総務省「令和6年版 情報通信白書」によれば、2021年〜2023年にかけても企業のテレワーク導入率はおおむね50%前後で推移しており、企業の約半数がテレワークを導入している状況が続いています。

 

働き方改革の推進によって、クラウドツールの導入やリモートワークの普及などデジタル技術の活用が不可欠となり、結果としてDXの推進を後押ししていると考えられるでしょう。

 

参考:総務省「令和2年通信利用動向調査の結果(企業編)」「令和6年版 情報通信白書

 

☆あわせて読みたい
『働き方改革とは ~これまでとこれからの働き方~』

 

DX推進の3つのメリット

タブレットを見て思案する男性ビジネスパーソン

DX推進によって、企業は多くのメリットを享受できます。デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを変革し、競争力を高めることも可能です。

 

ここでは、DX推進によって得られる3つのメリットを簡単に解説します。企業を持続的に成長させるために、DXの重要さを確認しましょう。

 

(1)生産性・効率性の向上

DX推進は、企業の競争力強化に欠かせない生産性の向上に貢献します。

 

デジタル技術を活用して業務プロセスを自動化することで、手作業で行われていた業務が効率化され、社員は定型業務から解放されます

 

例えば、AIを活用したデータ分析による市場予測の精度向上や、RPA(Robotic Process Automation)の導入によるデータ入力や書類作成などの自動化が可能です。

 

製造業では、IoTセンサーを活用したものづくりや自動車の生産ラインの最適化、生成AIによる設計支援など、DXの取り組みが進んでいます。

 

手作業によるミスも減少し、業務品質の安定と向上につながるでしょう。

 

☆あわせて読みたい
『RPAとDXの違いとは?推進の事例や自動化ツールの選び方も紹介』

 

(2)業務の標準化・属人化の解消

DXによる業務の標準化と属人化の解消は、企業の安定運営にとっても大きなメリットがあります。

 

デジタル技術を導入すると、特定の従業員のみが持つ知識やスキルに依存していた業務プロセスをシステムで定義し、可視化できます。

 

また、クラウド型の情報共有ツールを活用すれば、業務手順やノウハウを一元的に管理し、社内の誰もが必要な情報へアクセスできるようになるでしょう。

 

実際に物流・医療・小売・飲食店・クリーニング業など、さまざまな業種でマニュアルの標準化や作業手順の見える化が進んでいます。

 

DXによって担当者の異動や退職が発生しても業務への影響を最小限に抑えられ、組織全体の業務効率向上、品質安定化、従業員ごとの業務負荷の平準化に貢献します。

 

(3)付加価値の高い仕事に集中できる

DXは、定型的な業務を自動化して効率を高め、従業員がより創造的で戦略的な業務へ集中できる環境を整えます。

 

例えば、これまで手作業で行っていたデータ入力や資料作成などをRPA(Robotic Process Automation)やAIによって自動化すると、従業員は単純作業を行う必要がなくなります。

 

自動化によって生まれた時間を、顧客との関係構築や新たなビジネスモデルの企画、市場分析など、企業の成長に直結するような付加価値の高い業務に費やせるようになるでしょう。

 

従業員のモチベーション向上やスキルアップにもつながるため、DX推進は企業全体の生産性と競争力を高める要素になると考えられます。

 

DXを進めるための5ステップ

ノートパソコンとホログラムの画面を見ながら会議をするビジネスチーム

DX推進は、企業の持続的な成長と競争力強化のために必要な取り組みです。しかし、単にデジタル技術を導入するだけでは、真のDXとは言えません。

 

ここでは、DXを効果的に進めるための5つのステップを解説します。ステップを踏むことで、企業全体の変革を段階的に進められるでしょう。

 

(1)社内の現状把握とゴール設定

DX推進を成功させるためには、最初に社内の現状を把握することが重要です。

 

まず、現在の業務プロセス、使用しているシステム、組織体制、従業員のスキルなどを詳細に分析します。その上で、DXで何を達成したいのか、具体的なゴールを設定しましょう。

 

例えば、「顧客体験の向上」「業務効率の改善」「新たなビジネスモデルの創出」など、目指すべき方向性を明確にするのがポイントです。

 

企業によっては、DX投資の効果を株主や金融機関にどのように説明するかといった観点もゴール設定に含まれます。

 

社内の現状把握とゴール設定は、DX推進の方向性を決定し、その後の取り組みを効果的に進めるための基盤となります。

 

 

(2)DX推進の体制づくり

DX推進の体制を作るうえで、まず経営層がDXの目的やビジョンを定義し、全社的な理解とコミットメントを得るプロセスが不可欠です。

 

次に、DX推進を統括する専門部署の設置や、既存部署から横断的なチームの組成を行い、責任者と担当者を配置します。チームには、業務部門の担当者に加えて、データエンジニアやUXデザイナーなどDXに関わる職種をバランスよく配置するとよいでしょう。

 

社内でデジタル技術に詳しい人材が不足している場合は、外部からの専門家登用や、従業員へのリスキリングを通じてスキルアップを図る必要があります。

 

従業員が自由に意見を出し合える企業文化を育み、失敗を恐れずに挑戦できる環境を整備する視点も重要です。

 

(3)業務整理と効率化ポイントの見極め

DX推進の体制を構築した後は、既存業務のプロセスを可視化し、デジタル技術で効率化できる部分を特定しましょう。

 

現在の業務フローを細かく洗い出し、ボトルネックや無駄な部分を見つけ出す必要があります。

 

業務の整理と効率化できるポイントの見極めは、DX推進を効果的に進めるためのステップに不可欠な要素です。

 

(4)システム・ツール選定

DX推進におけるシステムやツールを選定する際は、以下の項目を総合的に評価するといいでしょう。

 

  • ・自社の課題や目指すDXの方向性に合致しているか
  • ・既存システムとの連携は可能か
  • ・使いやすさ
  • ・導入コスト
  • ・保守・運用体制

 

ツールの選定にあたっては、クラウドベースのソリューションやAI、RPA(Robotic Process Automation)などの最新技術を積極的に検討し、「企業の成長戦略に貢献できるか」を軸に考えるのが大切です。

 

(5)会社へ導入

システムやツールを選定したら、実際に会社へ導入するステップに進みます。

 

まず、少数の部門やチームで試験的にシステムやツールを導入し、運用状況を評価するとよいでしょう。課題が見つかった場合は改善を繰り返し、全社展開に向けて準備を進めます。

 

導入後は、継続的に効果を測定し、必要に応じて改善や調整を行うプロセスも必要です。従業員への研修やサポート体制の整備も忘れずに行い、スムーズな定着を促しましょう。

 

 

日本企業のDX成功事例

タブレットで生産管理データを分析する男性の手元

一般的にGAFAを始めとした海外の先進企業のほうが、ITを活用したDXが進んでいるといわれています。しかし、日本国内企業の中にも一定のDX成功を収めている企業が存在します。

 

ここからは、多くの企業の手本となり、国内のDXを引っ張っている企業の具体例を紹介します。

 

(1)建設業:コマツカスタマーサポート株式会社

建設機械メーカー・コマツのグループ会社であるコマツカスタマーサポートは、建設機械に後付け可能なICT装置の開発に長年注力し、日本企業のDX成功事例の1つとして注目を集めています。

 

多くのコマツ製建設機械には通信機能やGPSが搭載されており、稼働状況や機械の位置、燃料の残量などを遠隔から確認可能です。盗難防止やメンテナンス時期の把握にも役立ち、セキュリティ強化、安全性向上、コスト削減につなげています。

 

さらに、測量や施工後の検査にドローンを活用し、3Dによる計画・施工・管理データを活用することで、一連の施工プロセスのデジタル化を目指す『スマートコンストラクション』を展開しています。

 

施工プロセスの短縮や時間、人件費などの負担軽減が図られ、コマツの技術を活用する企業の事業成長戦略にも貢献しています。

 

参考:コマツ「スマートコンストラクション(登録商標)|ICTソリューション

 

(2)製造業:三菱電機株式会社

製造業大手の三菱電機は、FA(ファクトリーオートメーション)関連ソリューションを駆使し、工場全体の最適化を実現しました。

 

仕掛品伝票のバーコード化やリアルタイムの在庫管理システムを自動化し、営業部門と製造部門間の生産計画を連携させている点が特徴です。

 

工場内の機器をネットワークで結びつけ、データを分析・活用することで、スマート工場やシームレスな事業計画を支援しています。

 

三菱電機は「e-F@ctory」構想を通じて20年以上にわたり生産革新を推進し、デジタルマニュファクチャリングを追求する中で、製造業の課題解決に貢献しています。

 

参考:三菱電機FA「FA-IT統合ソリューション e-F@ctory

 

(3)不動産業:株式会社長谷工コーポレーション

大手建設・不動産会社の長谷工コーポレーションは、公式LINEアカウントを活用し、新築分譲マンションの物件探しから見学予約までをオンラインで完結させるシステム「マンションFit」を構築しました。

 

LINE上でいくつかの質問に答えるだけで、希望に合うマンションが紹介され、モデルルームの非対面予約も可能です。顧客は手軽に物件を探せるようになり、不要不急の外出を減らせるメリットがあります。

 

「マンションFit」は従業員の業務負担軽減にもつながり、顧客ニーズに応えながら効率化を図る、日本企業のDX成功事例と言えるでしょう。

 

参考:長谷工コーポレーション「新築マンション探しをサポートする『マンションFit』サービス開始

 

(4)保険業:住友生命保険相互会社

住友生命保険が提供する「Vitality」は、スマートフォンアプリなどで計測した健康増進活動のデータを、保険料に反映させるシステムを導入しています。

 

日々の運動や健康診断の結果をポイント化し、累計ポイントに応じて保険料の割引やさまざまな特典を受けられる仕組みです。

 

加入者が健康増進活動を継続するモチベーションを高め、病気にかかるリスク自体を減らすことを目指しており、実際に「Vitality」利用者の死亡率や入院率は、未加入者と比較して低い水準にあることが確認されています。

 

保険の提供価値を「リスクに備える」だけでなく、「健康増進を応援し、リスクを減らす」という新しい形へと変革している事例です。

 

参考:住友生命「未来を変えていく、健康増進型保険 住友生命『Vitality』」「“住友生命『Vitality』”加入者調査とアンケート結果について

 

まとめ

タッチスクリーンでデータ分析グラフを操作する手のクローズアップ

DX推進は、企業が持続的に成長し続けるための重要な経営戦略です。

 

DXを成功させるには、まず現状を把握し、明確なゴールを設定するプロセスが必要です。そして、DX推進の体制を構築し、業務の整理と効率化のポイントを見極めます。

 

これらのステップを踏むことで、企業は生産性向上や業務の標準化、従業員の付加価値の高い仕事への集中を実現させ、競争力を高めて新たな価値を創造する原動力となるでしょう。

 

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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)

 

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