BPOが企業に与える価値とは?特徴とメリット、デメリットを復習

最終更新日:2024/02/02
作成日:2020/03/04

社会や市場を取り巻く環境が急速に変化する現在、効率的な業務を実現し、事業拡大のために企業自体も変化に柔軟な対応が求められます。

業務改革の手法として注目を浴びているBPOやBPRですが、両者は混同されがちです。BPOの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説しながら、BPOとBPRの違いを紹介します。

 

 

目次

■BPOとは何か?簡単にわかりやすく解説
(1)BPOとは
(2)BPOの対象となる業務
(3)BPOはITを活用するのが一般的

 

■BPOは従来のサービスと何が違うのか
(1)従来のアウトソーシングとの違い
(2)BPOとシェアードサービスの違い

 

■BPOを導入するメリット
(1)経営資源をコア業務に集中することができる
(2)業務の効率化を実現できる
(3)大幅なコスト削減が可能
(4)グローバル化や多角化経営への柔軟な対応

 

■BPOを導入するデメリットと注意すべきこと
(1)情報漏えいのリスクや従業員のモチベーション低下のリスク
(2)社員のモチベーションの低下
(3)再度社内業務に戻すことが困難

 

■BPOの契約形態について
(1)委任契約
(2)準委任契約
(3)請負契約

 

■BPOを導入した成功事例
(1)三菱日立パワーシステムズ株式会社
(2)株式会社ブリヂストン
(3)ENEOS グローブ株式会社

 

 

BPOとは何か?簡単にわかりやすく解説

BPOとは何か?簡単にわかりやすく解説

(1)BPOとは

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、業務改善・コスト削減のためのプロセスの1つです。具体的には、自社業務の一部を外部委託することで、業務効率化とコスト削減、さらには積極的な事業拡大を目指すものです。

 

円高不況やバブルの崩壊、リーマンショックなど、これまでも企業では事あるごとに業務改善やコスト削減を行なってきました。しかし、これまでと異なるのは、企画・設計から実施まで業務の一切を専門業者に外部委託することです。これによってコスト半減を実現している企業も見られます。

(2)BPOの対象となる業務

BPOによる業務改善を行なう上で最も大切なのは、どの業務をアウトソーシング化し、どの業務は内製化するか、その見極めを間違えないことです。企業によって自社の強みは異なります。

 

強い部分までアウトソーシングの対象としてしまえば、ノウハウや技術の蓄積ができなくなってしまい戦略上競争優位性を確保することが難しくなってしまいます。そこで大切なのが「コア業務」と「ノンコア業務」の線引きです。

 

コア業務とは、企業の業績に直接関係する業務ノンコア業務とはコア業務のサポート的な業務のことで、直接的には利益を生むことがない業務ということです。ビジネスプロセスアウトソーシングによる委託業務の対象となるのはノンコア業務、つまり人事・経理・総務といった部署や情報システム運用・ソフトウェア開発・コールセンター・配送、流通です

 

これらは企業の売上に直接結びつく部門をサポートする意味で、間接部門やバックオフィスとも呼ばれます。このバックオフィス業務は業務量が非常に多く、また変動が大きいという特徴があるため、効率性がより重視されます。

 

(3)BPOはITを活用するのが一般的

 

また、給与計算や事務処理などは定型化された業務が多いため、バックオフィスツールなどITを活用するのが一般的になっています。そこで、社内でバックオフィスに関わる部署を持つのではなく、ビジネスプロセスアウトソーシングサービス導入による外部委託を進めるケースが増えてきているのが実情です。

 

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BPOは従来のサービスと何が違うのか

BPOは従来のサービスと何が違うのか

(1)従来のアウトソーシングとの違い

さて、ここまで見てきてBPOがこれまで企業で一般的に行なわれてきたアウトソーシング・外部委託とどこがどう違うのかわからないという方もいるかも知れません。

 

BPOと従来のアウトソーシングは何が違うのでしょうか。ビジネスプロセスアウトソーシングによる委託業務と、従来のアウトソーシング・外部委託の一番の違いは、委託する業務の範囲にあります。

 

従来のアウトソーシングは人手不足を補うための手法に過ぎませんでした。たとえば「自社にノウハウがないから委託業務として外部の業者に任せる」「人が足りないから一時的に人材派遣サービスを利用する」といったようなことです。毎日の帳簿記入を代行してもらったり、ソフトウェアの開発を代行してもらったりと、あくまでも業務の一部を委託するのが従来のアウトソーシングです。

 

一方、ビジネスプロセスアウトソーシングによる委託業務では、業務を1つのパッケージとしてまるごと外部に請け負ってもらうのが一般的です。つまり、単純な業務代行を外部に任せるのではなく、経営戦略の一部としてコスト削減や業務効率の向上といった課題も外部企業に解決してもらうのが、BPOの本来の目的ということになるのです。

 

従来のアウトソーシングはどちらかと言えば「一時しのぎ」という意味合いが強く消極的な姿勢が目立つものでした。しかし、BPOは「市場環境の急速な変化に対応して、事業拡大を図るために社員を有効活用したい」という積極的な姿勢からくるもので、より広い業務範囲でより持続的な外部委託サービスを求める傾向が強くなっているのが特徴です。

(2)BPOとシェアードサービスの違い

もう1つ、BPOと混同されやすいものに「シェアードサービス」と呼ばれるものがあります。シェアードサービスもビジネスプロセスアウトソーシングと同様に、人事・経理・情報・コールセンターなどのバックオフィス部門を対象とした業務改善のプロセスの1つですが、両者の違いはどこにあるのでしょうか。

 

まず、シェアードサービスについて説明しましょう。シェアードサービスは、アメリカを代表する大企業の1つであるGE(ゼネラル・エレクトリック)社が初めて導入したと言われる経営手法です。GEはいわゆるコングロマリットと呼ばれる複業企業であったため、子会社の数も多く、伝票処理1つとっても膨大な量と時間を費やしていました。

 

そこで、グループ企業内にバックオフィス業務を行なう専門部門を設け、それまで個別に処理されていた経理をはじめとするバックオフィス業務をすべて1つにまとめたのです。シェアードサービスを導入することにより、確かに業務の効率化やコストの削減に効果はありました。

 

また、グループ企業で情報を共有することになるため納期短縮につながったり、人材育成という面の寄与もあったりしました。しかしながら、問題がないわけでもありません。

 

まず、導入にあたっては膨大な初期投資が必要になりますし、これまで別々の方法で行なわれていた業務を標準化にするにはかなりの時間も必要です。異業種とのM&Aを繰り返しているような企業では標準化さえもままならず、サービス低下につながるリスクも否定できません。そうなれば社員のモチベーションの低下も引き起こすことになります。

 

このように、シェアードサービスではグループ企業の社員が人事・経理・情報・コールセンターなどの間接部門を共有することになりますので、そこに外部からの新しいノウハウや技術は入ってきません。

 

一方、BPOではプロフェッショナルな技術を持つ会社に業務委託するため、外部からのノウハウや技術によって根本的な業務改善を実現できる可能性があります。その点で、両者は決定的に異なるのです。

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BPOを導入するメリット

BPOを導入するメリット

(1)経営資源をコア業務に集中することができる

BPOを導入するメリットの1つは、『企業の持つ有限なヒト・モノ・カネ・情報を、コア業務に集中的に活用することができる』という点です。

 

すでにご説明したように、人事や経理、コールセンターや配送・流通といったノンコアの業務は、仕事量が膨大にもかかわらず直接会社の業績につながるものではありません。

 

また、仮に業務改善によってノンコア業務を効率化しようとしても、そこには新しい人材を育成したり、新しいシステムを導入したりするためのコストがかかってきます。コストをかけることを考えれば、その資金でBPOを利用してバックオフィスの業務を委託業務とした方が限られた人材を有効に活用することができます。会社の持つ限られた資金を収益に直結するコア業務に対して集中的に投入することができます。

 

リソースの集中と選択により高品質なサービスを提供することができるようになれば、企業の競争力が高まり、市場における事業拡大を図ることができるでしょう。

(2)業務の効率化を実現できる

業務の改善は決して簡単なプロジェクトではありません。自社内で業務改善を実現しようとすればERPパッケージの導入などに多額の費用が必要になりますし、ERPパッケージを運用・保守・管理するためのプロフェッショナルな知識を持つ人材も必要になってきます。

 

元々バックオフィス部門は会社の業績とは直接関わりのない業務を行なうため、そこまでの費用と時間をかけて改善をしようとは思わない経営者が圧倒的に多いでしょう。

 

こうした背景から、結局プロジェクトが放置状態となっている企業も数多く見られます。従来は業務改善に関わる人材を社内で育成することも可能でしたが、これからはそうはいかないでしょう。市場環境はこれまで以上にスピードを増して変化していきますので、その変化に迅速な対応しなければなりません。

 

また、国内では高齢化が進行して労働人口がどんどん減少していきます。人材を確保したくてもできない状況が現実的に迫っているのです。

 

そのような企業にとって、プロフェッショナルにすべてを外部委託できるビジネスプロセスアウトソーシングは、業務を大幅に効率化するための施策としてとても有益なはずです。

また、ソフトウェア開発や情報システム運用についてのトラブル対応から自社の業務を切り離すことができるのも、大きなメリットとなるでしょう。

(3)大幅なコスト削減が可能

BPOの導入による間接部門の業務効率化は、コスト削減にも大きな効果を発揮することが期待できます。業務を外部に委託することで設備投資や人件費を減らすもできます。社員採用や社員教育といった直接目に見えないコストの削減にもつなげられます。

 

BPO導入によって、人件費はもちろんのこと、システム運用・管理にかかる固定費などを変動費化できることも大きな魅力です。企業にとって、売上の大きい小さいに関わらず、絶えず一定に発生する固定費をどうやって減らすかは至上命題といっても過言ではありません。収益率に大きく関わる固定費を減らすことができれば、業績の改善に大きく寄与することになるでしょう。

 

そういった意味でも、ビジネスプロセスアウトソーシングの導入による委託業務契約には大きな意味があります。BPOの導入については初期費用を心配する経営者も多いかもしれませんが、最近ではより安くサービスを提供するためにオフショアでBPOを提供する業者も増えてきています。

 

こういった動きによって、今後BPOを導入する企業が増えてくればBPOサービス事業者にとってもスケールメリットが生まれるため、さらにコスト削減効果が大きくなるでしょう。

(4)グローバル化や多角化経営への柔軟な対応

今後、グローバル化による世界市場への展開や多角化プロジェクトを進めていこうと考えている企業にとっても、BPOは効果的です。以前にも増して急激に変化していく市場の状況において、経営者には臨機応変な経営判断とスピード感のある実行が求められます。

 

しかし、自社に蓄積されたノウハウだけでこのような環境に正しく対応していくのは難しいのが現実ではないでしょうか。

 

また、グローバル化や多角化を目指す中で、国や地域による法制度の違いが事業拡大の大きなリスクになることも考えられ、自社だけで対応するのはハードルが高いと言わざるを得ないでしょう。

 

より適切な業務プロセスを設計・実行するためにも、またよりコア業務へのリソース集中を進めるためにも、BPO業者の持つ高度でプロフェッショナルなノウハウやスキルの活用が大切になります。

 

 

BPOを導入するデメリットと注意すべきこと

BPOを導入するデメリットと注意すべきこと

(1)情報漏えいのリスクや従業員のモチベーション低下のリスク

外部の業者に業務を委託するということは、少なからず自社の情報が外部に持ち出されるということでもあります。特に、BPOの場合は根本的な業務改善や業務改革が伴うことになるので、その情報量は従来のアウトソーシングとは比べ物になりません。そこにはどうしても情報漏えいのリスクが生じてしまいます。

 

何を社外に委託して、何を社内で行なうのか、その線引きをしっかりして情報リスクを少しでも減らすことが重要になります。また、情報管理の行き届いた信頼できる業者を選択することも大切になるでしょう。

(2)社員のモチベーションの低下

BPOサービスを利用することになれば、それまで人事・経理・流通といったバックオフィス部門で働いてきた従業員の配置転換やリストラなどが生じます。

 

これまでの仲間がリストラされたら、残された社員の間にも不安が生まれるでしょうし、配置転換により望まない仕事の担当となり、モチベーションの大幅な低下が問題となる場合もあるでしょう。このような社員の精神面への対応もしっかりと行なうことが、経営者には求められます。

 

たとえBPOの導入によってコスト削減に成功したとしても、従業員のモチベーションに問題があれば質の高い商品やサービスを提供することはできません。

(3)再度社内業務に戻すことが困難

一度BPO業者に業務を委託すると、当然のことながら社内にノウハウが蓄積されることはなくなります。

 

ビジネスプロセスアウトソーシングのニーズは高まっていますが、もしも状況が変化し再度自社での運用に切り替えようとしても、必要なリソースがまったくない状態では切り替えることができません。

 

また、いちから業務部門を立ち上げプロフェッショナル人材を育てるには多大なコストと時間が必要になります。

 

BPOの契約形態について

BPOには様々なメリットがありますが、契約形態によってはリスクも伴います。このBPOの契約形態は、主に3つの契約タイプがあります。

 

(1)委任契約

委任契約とは、委託者が委任した業務を受託者が自ら行う契約です。

 

委任契約では、受託者は委託者に対して業務の遂行義務と報告義務を負いますが、業務の方法や内容については自由裁量が認められます。

 

委任契約のメリットは、受託者が専門知識や経験を持っている場合に、効率的かつ高品質な業務を期待できること。

 

一方で、受託者が業務を遂行する過程や結果について委託者がコントロールできないことや、受託者が第三者に対して責任を負うことになるデメリットがあります。

 

(2)準委任契約

準委任契約とは、委任契約と同じく委託者が委任した業務を受託者が自ら行う契約。しかし、受託者は委託者から指示や監督を受けることができる契約です。

 

準委任契約では、受託者は委託者に対して業務の遂行義務と報告義務のほかに従属義務も負います。

 

準委任契約のメリットは、委託者が業務の進捗や品質について一定の管理権を持つことで、リスクを低減できること。

 

一方で、受託者の自由裁量が制限されることで、柔軟性や創造性が失われるデメリットもあります。

 

(3)請負契約

請負契約とは、委託者が受け入れるべき成果物を定めた上で、その作成を受託者に依頼する契約です。

 

請負契約では、受託者は成果物の提供義務を負いますが、業務の遂行方法や内容については完全に自由裁量が認められます。

 

請負契約のメリットは、受託者が自分の得意分野やスタイルで最適な成果物を作成できることです。

 

一方でデメリットとしては、成果物の品質や期限に関するトラブルが発生しやすいことや、受託者が第三者から損害賠償請求を受けた場合に委託者も連帯して責任を負うことがあることです。

 

BPOを導入した成功事例

BPOを導入した成功事例

BPOは、多くの企業にとってコスト削減や業務効率化の手段として活用されています。ここでは、BPOを導入した成功事例を3つ紹介します。

 

(1)三菱日立パワーシステムズ株式会社

三菱日立パワーシステムズは、バックオフィス業務をPASONAのBPO・アウトソーシングサービスに依頼しています。

 

案件過多の現状や対応できる地域に限界があることから、BPO導入を決意。結果として、属人的な業務体制が解消でき、受注額も増加したそうです。

 

また、スタッフ教育やフォローなどのリソース削減にもなり、見積り対応率も80%向上しました。

 

参照:https://www.pasona.co.jp/clients/service/bpo/case/mhps/

 

(2)株式会社ブリヂストン

株式会社ブリヂストンは、オペレーション業務をトランスコスモスに依頼しています。

 

高品質なサービスを提供したいと思いつつも、慢性的な工数不足に悩まされていたブリヂストン。

 

設計者の業務を安定化させるために、トランスコスモスにオペレーション業務を依頼。開発業務が15%向上し、不備率も大幅に減少したそうです。

 

参照:https://www.trans-cosmos.co.jp/customercase/customer/bridgestone.html

 

(1)ENEOS グローブ株式会社

ENEOSグローブ株式会社は、帳票管理業務をキヤノンマーケティングジャパンに依頼。

 

全国に取引先を持つENEOSグローブは、請求書の発送業務が重複したり、業務の遅延が続いたりしていました。

 

そこで、ペーパーレス化するために、トランスコスモスにオペレーション業務を依頼。請求書の発送漏れが減少したそうです。

 

参考サイト:https://canon.jp/business/case/bpo/eneos-globe

 

まとめ

 

BPOは業績に直接関係しない間接部門について外部業者へ委託する経営手法です。

 

ただし、従来のアウトソーシングとはまったく異なり、業務をまるごと専門業者に委託することで、自社がこれまで抱えていた経営的な課題を解決しつつ、大幅な業務改善・コスト削減を目指す手続きになります。

 

企業にとって今後ますます重要になってくるであろうBPO。わからないことがあれば専門の業者に相談してみましょう。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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