“自由な働き方が試せる舞台” 人口オーナス期をポジティブに生き抜く働き方とは?
作成日:2017/01/16
人口ボーナス期と人口オーナス期
「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」という言葉をご存知でしょうか。
日本ではワークライフバランスコンサルタントとして有名な小室淑恵さんによって広く紹介されているので、聞いたことがあるという方も多いかもしれません。元々はハーバード大学のデービッド・ブルーム教授が提唱した考え方で、簡単に言えば「人口ボーナス期」とは、働く世代が多く子供や高齢者が少ないため、教育費や社会保障費が抑えられ、経済発展しやすい状態を指します。これに対して「人口オーナス期」とは、働く世代が少なく高齢者が多い状態、つまり、労働力となる人口が減少し、働く世代よりも支えらえる側の世代の方が多くなるため社会保障費が増大し、大きな経済発展は見込めない状態を指します。
人口ボーナス期は、“多産多死”の社会から“少産少死”の社会へ変わる過程で現れると言われており、デービッド・ブルーム教授によれば、「人口ボーナス期の国は経済発展するのが当たり前である」とされています。また、人口ボーナス期はひとつの社会に一度しか訪れない、つまり、一度人口ボーナス期が終わると、二度とその国に人口ボーナス期が来ることはないということもわかっています。日本では、1960年頃から1990年代半ばまでが人口ボーナス期だったと言われています。ということは、私たちの社会は人口オーナス期に入ってから既に約20年も経過しているのです。
そこで今回は、人口オーナス期が続いていくと考えられる未来においてはどのような働き方が可能なのかについて、考えてみたいと思います。
人口オーナス期への突入スピードが速すぎた日本
一般的に、人口ボーナス期から人口オーナス期へは下記のような流れで移行すると言われています。
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(1)経済が発展すると、親が子供の教育に投資する傾向が高まる
(2)子供の高学歴化が進むと、出産年齢が遅くなり、少子化が進む
(3)少子化が進むと、労働力が不足するため、人件費が高騰する
(4)人件費が高騰すると、世界からの受注が減り、仕事が他国に流れる
(5)GDPが上がらなくなる
この流れは、過去に人口ボーナス期を経験したほぼすべての国に当てはまるとされており、中国は今まさに人口ボーナス期の終盤にさしかかっている状態、インドは2040年頃に終了すると言われています。人口ボーナス期から人口オーナス期への移行が、遅かれ早かれすべての社会に発生することなのだとすれば、労働力が減って高齢者が増えることで社会保障費がかさみ、制度の維持が困難になるという人口オーナス期ならではの問題もまた、すべての社会に共通して生じるということになります。
そう考えれば、既に人口オーナス期に入っている日本も、過去にこの移行を経験している他国を参考に対策を講じればよかったのではないか、とも思えるのですが、それができなかった背景には、日本独自の問題があると言われています。それは、日本においては人口ボーナス期から人口オーナス期に入っていく速度が他国よりも速く、かつその速度がいまだに緩まらないという問題です。
では、こうした問題を解消しながら、今後も続く人口オーナス期にも経済を維持していくためには、未来の私たちにはどのような働き方が求められるのでしょうか?
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人口オーナス期は自由な働き方に挑戦できる新たな舞台
人口ボーナス期の日本は、豊富な労働力による安い人件費を武器に、均質な労働者を集めて世界中から仕事を受注し大量生産する、という戦略で経済発展を遂げてきましたが、人口オーナス期にはこの正反対の戦略が求められると言われています。
人口ボーナス期には「できるだけ同じ条件の人を集めて、できるだけ長時間働いてもらう」のが経済発展に効率的だったのに対し、人口オーナス期は「できるだけ違う条件の人を集めて、できるだけ短時間ずつ働いてもらう」方が経済発展しやすい、と考えられているのです。「できるだけ違う条件の人を集める」ことの背景には、短いサイクルで新しい商品やサービスを生み出す必要性があると言われています。
人口オーナス期には市場も成熟し、消費者は均一なものに飽きてしまうため、様々な視点や考え方を持った多様な人たちから広くアイデアを募ることで、市場のニーズに応えやすくなるとされているのです。また、そもそも労働力が不足している状態なので、マネジメントする側の都合で人を選んでいては、働いてくれる人がいなくなってしまうという現実的な問題もあるようです。「できるだけ短時間ずつ働いてもらう」ことが重要なのは、時間あたりのコストが高騰化するからだと言われています。
日本人の人件費は、現時点で中国人の8倍、インド人の9倍とも言われており、この状態で長時間労働を続けると、コストが膨らんで利益がほとんど出ない企業ばかりになってしまいます。そこで、企業は従業員に対し短時間で成果を出せるようなトレーニングをするとともに、評価制度も時間内の成果だけを対象とするようなものに変える必要があると考えられているのです。昨今よく話題になる「ワークライフバランス」や「女性活躍推進」「パラレルワーク」にも、日本が人口オーナス期に突入していることが大きく影響しています。
これらは単に“ゆとりのある働き方”や“プライベートの充実”、あるいは“男女の雇用・昇進機会の均等化”を目指すものではなく、労働力がどんどん減っていく未来、家庭生活に介護が伴い長時間労働が困難になっていく未来において、いかに経済を維持していくか、そのための方法論のひとつとして注目されているのです。人口オーナス期のことをよく知ると、働く側の人間にとっては、過去の人口ボーナス期とはまた違うメリットがあるというふうにも考えられるようになります。
労働力が不足するということは、労働者の側からすれば働く機会に困らなくなるということなので、例えば、人口ボーナス期には躊躇しがちだった独立や起業、チャレンジングな転職などにも挑戦しやすくなりますし、パラレルワークを試したり、会社に縛られずにフリーランスや個人事業主として様々な働き方を試したりすることのハードルも下がります。人口オーナス期は、“経済発展の終焉”というネガティブな捉え方ではなく“自由な働き方が試せる新たな舞台”というポジティブな捉え方をすることで、明るい未来に変わる可能性を秘めているのです。
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いかがでしたでしょうか?
独立や起業にチャレンジしてみたいと思っても、なかなか踏み出せない人も多いのではないかと思いますが、万が一失敗してもこれからは働く場所には困らない時代が続いていく、ということを知っておくだけでも、挑戦への一歩は踏み出しやすくなるのではないかと思います。迷っている方は特に、時にはこういったマクロな視点で、ご自身の働き方を考えてみてはいかがでしょうか。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)