まず働いてみて、それから採用/入社を考える“お試し期間”は企業と働き手の双方にメリット vol.2

プロフィール

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リンカーズ株式会社
リンカーズオープンイノベーション研究所 所長 小林 大三氏

1983年生まれ。2008年3月早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。同年4月株式会社野村総合研究所(NRI)入社。素材・加工・エンジニアリングといった製造業の新規事業支援、R&D戦略立案、次世代R&Dのテーマ探索、新規技術の市場性評価などのコンサルティングに従事。NRIシンガポール法人駐在を経て、2014年8月NRI退職。シンガポールのベンチャー企業やフリーランスとしての活動では、アジア地域におけるイノベーターピッチイベント「the Chaos Asia」の立ち上げ、3Dプリンタ関連スタートアップでの事業開発や、シンガポールの大手企業と日本の中小企業の技術マッチングなど、活動の幅を広げる。2016年6月リンカーズ株式会社に参画。さまざまなクライアントの案件を手がけて技術マッチングを行なう一方、日本のものづくりとオープンイノベーション活用促進を強化すべく、オープンイノベーションのトレンドや事例について情報発信・普及啓蒙活動を行なう。著書に『2020年の産業:事業環境の変化と成長機会を読み解く』(共著、東洋経済新報社)、『NRI Knowledge Insight 太陽光発電市場の変局点』(共著、野村総合研究所)など。

※役職は、インタビュー実施当時(2018年7月)のものです。

 

◆リンカーズ株式会社◆
2012年4月、宮城県仙台市にて「Distty株式会社」を創業。「多くのイノベーションを生み出す新しい産業構造を創り、産業全体の生産性を最大化する」を企業理念に掲げ、ものづくり系マッチングサービス「Linkers(リンカーズ)」およびWeb展示会システム「eEXPO(イーエキスポ)」の運営を主な事業内容とする。2015年4月、リンカーズ株式会社に社名変更。大手企業のニーズに対して地方の有力な中堅・中小企業および産学官とのマッチングを行なうサービスが好評で、高い顧客満足度とリピート意向を誇り、着々と業績を拡大。2013年に本社を東京に移転。現在では東京・大阪・名古屋にオフィスを構えるほか、米国シリコンバレーに海外拠点となる子会社「Linkers International Corporation」をもち、ものづくり産業支援・地方創生に貢献する。従業員数は約70名(2018年7月時点)。

ものづくり系マッチングサービス「Linkers」などを運営するリンカーズ株式会社は、全国の有力企業のみならず自治体や産業支援機関と連携し、中小企業やベンチャー企業が有する技術を製造業の大手・中堅企業のニーズとマッチング。日本の製造業の発展に貢献し、日本のオープンイノベーションを推進し続けています。

 

 

今回お話を伺ったのは、同社のオープンイノベーション研究所で所長を務める小林大三さんです。技術マッチングの案件に携わる一方でオープンイノベーションの普及促進活動に日々従事されている小林さんは、かつては野村総合研究所(NRI)でのコンサルタント経験やベンチャー企業への参画経験を経てフリーランスとして活動し、みらいワークスにも登録したことがある経歴をおもちでもあります。

小林さんの視点から見た、フリーランス活用のあり方や企業での採用の難しさ、業務委託を通じて正社員採用を可能にする働き方などに関する率直な思いをうかがいました。

 

フリーランスも社員も「自分に合う」が大事

リンカーズオープンイノベーション研究所所長_後編2

 

私にはフリーランスとして活動していた時期があり、案件紹介を求めるフリーランスの立場で、みらいワークスをはじめ数社に登録していた経験があります。今回、フリーランスの方に入っていただくにあたりみらいワークスに仲介を依頼したのは、その経験から「そういえば」と思い当たり、お声がけをさせていただいたという経緯です。ただし、私が登録していた時代は、私が求めていたような製造業の技術系の案件が全くなく、残念ながら案件の紹介を受けることはできませんでした(笑)。

 

1人でのフリーランス活動も楽しく、幸いお客様から直接ご指名をいただくこともあり、自分の得意分野でさまざまな仕事をいろいろ手がけることができました。それでもそのうちに、ともに喜んでくれる仲間と働けるような場所を求めるようになり、巡り会ったのが、NRI時代の先輩であった前田(佳宏社長)と加福(秀亙副社長)が立ち上げたリンカーズと、学生時代にバイトしていた技術系ベンチャーでした。

 

私は2008年のNRI入社以来、一貫して製造業、技術分野で仕事をしてきており、次世代R&D(研究開発)テーマの探索や技術系の新規事業立ち上げといった領域を得意としていました。フリーランス時代には他分野の仕事をお引き受けすることもありましたが、経験してみると「やっぱり違うな」という違和感を拭いきれなかった。ベンチャー企業での活動をとおして、自分にフィットしない環境で働いたら“悲惨”なことになるというのも身に染みていました。

 

そこで、最初はリンカーズと技術系ベンチャーの両方に業務委託かアルバイトとして入り、自分と会社のフィットネスを確かめようと考えたのです。求めているもの、求められているものにお互いがかなっているかどうか、端的にいえば「この会社で大丈夫だろうか、自分に合うだろうか」ということです。結果的には技術系ベンチャーでの就業開始が遅れ、先行して始めていたリンカーズでの業務委託だけで転職を決めてしまったのですが、リンカーズで3カ月ほど働いて「ここなら大丈夫だな」と判断できたのは非常に有意義な時間でした。

 

“お試し期間”で確かめられるのは「一緒に働きたいかどうか」

リンカーズ_みらいワークス_後編3

他方、リンカーズでは社員として人材採用に関わる立場を務めることがあります。正直な話をすれば、会社にとって最初から正社員として採用するのはとても“こわい”ことです。特に当社のように、求める人材イメージが非常にニッチである場合は、書面や面接などでは図り切れないミスマッチが起こり得てしまいます。もしそうなってしまっても、ほかに何人も採用するというわけにはいきませんし、その方にとっても不幸なことです。

 

そこで、前述の私のケースや今回の当社のように、まず一緒に働いてみる期間を設けてお互いの適性を見極めたうえで、会社は正社員採用を決断し、人材は入社を決断することができるという採用フローは、この点で大きなメリットがあります。人材を迎え入れる企業・社員にとっても、フリーランスの方にとっても、より幸せにつなげやすい方法でしょう。

 

当社も、人材採用に関してはさまざまな試行錯誤をしています。スキルは申し分なく人柄にも問題ない方であっても、“何か”が違うと思えば採用には至らないこともあります。相性がいいと感じても、働き手の方が「今後もフリーランスとして生きていく」と考えていれば、採用は実現しません。人材採用というのは、会社側、フリーランスの方の双方の“人”による部分も大きく、難しいものであるとつくづく実感しています。

 

そして、「この人にうちにきてほしい」と思えるかどうかを判断するにあたって「一緒に働いて楽しいと思えるかどうか」はとても大切で、一緒に働いていて「この人は合う」と思うのは、ロジックではなく“ノリ”なのです。こうした“ノリ”も働いてみることでわかるようになる、非常に重要な部分だと感じました。

 

現状ではこうした“お試し期間”を経ての人材採用が可能になるケースはまだまだ少なく、特にフリーランスの方や雇用されることを望む働き手の方が選ぶというのが難しい場面も多いでしょう。みらいワークスの「大人のインターン(R)」のように、まずは業務委託契約で働き、双方が望んで初めて転職が実現するという流れは、これからの職業選択の姿の一つとして増えていってほしいと思います。

 

貴重な人材の受け皿に期待が高まる技術リサーチ職

みらいワークス_リンカーズ_対談後編4

リンカーズで技術リサーチに携わる職種には、2つのロールがあります。1つは、企画書を作ってお客様のところに伺い、提案して案件を獲得し、その品質をしっかりコントロールするというプロジェクトマネージャー職。もう1つは、オフィスでリサーチの実務をしっかり務めるというリサーチャー職です。後者の場合に重要なのは、コンサルティング経験があって技術に強いということです。

 

今回、リサーチャー職として業務委託契約からに正社員雇用に切り替えた彼は50代の方ですが、その条件を満たしていることは実際に働いてよくわかっており、年齢は全く気になりません。それどころか、年齢を重ねることが、いろいろな技術に対してしっかり向き合い、落ち着いて業務に取り組めるという利点につながっており、「リサーチャー職は年齢を重ねることが不利益にならない」と彼の姿を通して感じています。

 

そうすると、たとえば企業の研究所で長年にわたり技術分析のような仕事に携わっていらした方が、定年退職などを経てセカンドキャリアを求めている中で、当社でその経験を生かしていただくといったケースがはまる可能性がある。そうなれば、リンカーズは「企業の技術系出身者」という貴重な人材の受け皿になれるかもしれません。

 

人材の点でいうともう一つ考えているのが、当社はアカデミック系、ポスドクの受け皿にもなり得るのではないかということです。私の部署に7月からジョインされたのは熊本大学で助教を務めていらして、ずっと微生物研究をされていた方です。当社の業務は、アカデミック系、ポスドクの方のような人材ともシナジーがあると考えています。

 

いずれにしても、リサーチの知識・経験がないと難しいかもしれませんし、懸念もあります。「技術系の人材」といってもさまざまで、メーカーの技術分野で働いてこられたような方の多くは業務系ですし、研究所でR&Dに携わっていたような研究者の方はもっとコアな領域で活躍する職人集団のようなところもあります。リンカーズは業務系でもなく、ビジネスと技術の間でちょっと技術寄りのリサーチ業務をすることになりますから、マッチングも合いそうで合わないこともあるでしょう。アカデミック系の方についても同様で、実際にシナジー効果を発揮できるかどうかは未知数です。

 

そうした仮説を検証し、実際に貴重な人材の受け皿になれるかどうかを見極めるためにも、業務委託契約での就業を通して採用を実現するのはいい方法だと思います。貴重な人材に適した案件がなかなかないという状況になんとか風穴をあけたいというのは、リンカーズが行なっている技術マッチングとも重なる点であり、そうした面からも日本の製造業に少しでも貢献できればという思いもあります。

 

プロフェッショナルを活用すれば多様な人材が活躍できる

みらいワークス岡本_リンカーズ小林_後編5

私がフリーランスとして活動していた頃は、フリーランスを求める案件自体がそれほど多くなく、さらに私のマッチする分野の仕事は非常に少なかったため、やはりそれなりに苦労しました。それでも以前に比べれば、フリーランスとして仕事を見つけて活躍する場は作りやすく、フリーランスとしてリスクを軽減しながら起業しやすい時代になったのだなと感じたものでした。今はさらに働き方も多様化するなかで、さまざまな分野を得意とするフリーランスの方がより活躍しやすくなっているのではないでしょうか。

 

最近は、事業会社さんがフリーランスの方を求める案件も多いと伺っています。当社では、もともとシステムエンジニアの分野で業務委託の方に入っていただく場面は多くあります。ですから、業務委託という形態にアレルギーはありませんし、そういう形態で仕事をしていただく上で何か特別な対応をしているといったこともありません。ただ、私自身のことでいえば、これまでの業務経験、特にNRIでのコンサルティング経験で、社内の担当者と業務委託のフリーランスの方との仕事の進め方や業務分担のあり方といったことを自然と理解してきた部分もあるでしょう。

 

コンサルティングファームがプロジェクトごとに体制を組む際には、業務領域を定義してタスクの切り分けを行ないます。それを元に、社内のプロジェクトメンバー間で「ここはAさんが担当する」「ここはBさんにおまかせする」といった分担を決めていくのです。こうした手法や考え方は、事業会社でフリーランスの方と一緒に仕事をする場合にも活用できるものです。

 

当社では、足りない人材を補ってもらうというところでフリーランスというプロフェッショナル人材を紹介していただき、最終的に非常に優秀な人材の採用に至りました。フリーランスが人材のプロフェッショナルであるならば、みらいワークスは多様な人材の活用を熟知しておられるプロフェッショナルといえるでしょう。

 

人材をお求めの企業さんはもちろん、その手前でフリーランスという人材の活用方法がわからないとお悩みの企業さんがいらっしゃるのならば、みらいワークスのような会社に相談することでその先の選択肢が見えやすくなるかもしれません。リンカーズも、製造業のネットワーク構築を支援し、日本の製造業の活性化に少しでも貢献できる存在でありたいと思います。

 

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