PMOコンサルの役割とは? 必要とされる理由や求められるスキル・知識、採用方法のポイントも解説
近年は、日本企業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やメタバース、大規模なシステム開発などに関するプロジェクト案件を動かす企業が増加。その状況を受け、「PMO」と呼ばれる担当者・組織の設置の必要性が高まっています。
PMOは社内の人材・部門が担当するケースもありますが、人材が不足している場合やより高度なPMOを必要とするケースでは、外部のコンサルタントにPMOを委託する「PMOコンサル」という選択肢があります。
PMOやPMOコンサルが必要とされるのは、どのような理由・メリットがあるのでしょうか。また、自社に適したPMO・PMOコンサルとはどのようなものなのでしょうか。本記事では、PMO・PMOコンサルの役割、必要とされるスキル、自社に適したPMOコンサルの採用方法など、そのポイントを解説します。
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1.PMOとは?
1)PMOとは
「PMO」という言葉は、「Project Management Office」の略語です。具体的にどのような仕事を担うのかというと、その実態は多岐にわたります。
アメリカの非営利団体PMIがプロジェクトマネジメントの知識や手法、ノウハウを体系的にまとめて解説している「PMBOKガイド(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)」(第5版)では、PMOを「プロジェクトに関連するガバナンス・プロセスを標準化し、資源、方法論、ツール、および技法の共有を促進するマネジメント構造」と定義したうえで、「PMOの責任はプロジェクトマネジメントの支援を提供するところから実際のプロジェクトを直接マネジメントする責任をもつところまで幅がある」としています。
この言及でも「幅がある」とされているように、PMOの職責や仕事の範囲のあり方は多種多様。組織やプロジェクト案件の内容によって対応範囲は異なります。そしてその仕事を1人で担当するケースもあれば、組織として構成・設置されるケースもあり、後述するようにPMO業務を外部のフリーランス人材やコンサルティング会社に委託するケースもあります。
2)PMOとPMの違い
同じくプロジェクト管理に関連する職務に「PM(Project Management/Project Manager)」があります。PMとPMOは混同して語られることがありますが、PMはプロジェクト自体を管理・マネジメントする役割であるのに対し、PMOはプロジェクトマネジメントを管理・サポートする役割を担うものであり、その職責は明確に異なります。
大規模なプロジェクトでは複数のチームを組んで業務を進めることが多く、その規模によってはPMも複数人になりますが、PMだけでは個別のチームのマネジメントとプロジェクト全体のマネジメントを並行することが難しくなることも少なくありません。
そのように、困難な状況が増えているPMを支援してプロジェクトの実行を支えるのがPMOというわけです。PMOはすべてのプロジェクトに存在するとは限りませんが、IT業界、メディカル業界、建設業界などでは案件がプロジェクトベースで進められることも多く、そのほかの業界でもさまざまな組織でプロジェクトが推進されるなか、PMOの必要性は高まっています。
2.PMOフレームワークの種類とPMOの役割
PMOはPMを支援する役割ですが、その業務内容と同様に、PMとの関係性やプロジェクト内でのポジションもケースバイケースです。PMの直下にPMOが配属されるケース、企業経営者などのプロジェクトオーナー直属の組織・ポジションとしてPMOが設置されるケースなどがあります。PMBOK第6版では、PMOの形態を、PMに及ぼす影響の度合いに応じて次の3つに分類しています。
- ・支援型PMO……影響度は最も低く、基本的にはPMの自主性を尊重。PMに対して情報やテンプレートの提供、トレーニング、マニュアル作成や議事録作成などの各種ドキュメント作成といったことを実施し、PMのプロジェクト進行をサポートする
- ・コントロール型PMO……支援型と同様のサポートをしつつ、使用ツールやマネジメント手法を提示するなど、より深いところまでPMに関与してそのマネジメントの定着を支援する
- ・指揮型PMO……PMを直接指揮するかたちで、プロジェクトマネジメントに関与する。PMが新人の場合などに採用される、影響度が最も高いPMOのあり方
また、プロジェクトを成功に導くPMOに求められる知識をまとめた書籍『PMO導入フレームワーク』(高橋信也・著/峯本展夫・監修、生産性出版)では、PMOには次の3タイプがあるとしています。
- ・参謀型PMO……PMの参謀となってリスク検知や課題分析などの対応にあたり、PMの意思決定を支援する
- ・管理実行型PMO……マネジメント手法の導入・実行などを通じてプロジェクト管理を徹底しマネジメントのクオリティを高める
- ・事務局型PMO……会議の設定や社内手続きなどの事務的業務、プロジェクトメンバーの環境整備などを担当し、プロジェクトの遂行を支援する
こうした分類を見ると、PMOのあり方に多様な幅があることがイメージできるでしょう。
3.PMOコンサルが必要とされる理由とは?
近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進やメタバースなどに関する大規模なプロジェクトを手がける企業も増加しています。組織横断で幅広い人材が参画し、多数のチームが構成されるような大規模なプロジェクト案件では、その進行をいかにうまくマネジメントするかが成否の鍵を握りますが、それは決して容易ではありません。
また、社会の変化が激しく先行きを予測することが困難な「VUCAの時代」といわれる今は、予期せぬトラブルでプロジェクトが難航することも珍しくなく、特に中長期的なプロジェクト案件では、そのマネジメントの負担は非常に大きいものとなります。
そうした状況で、PMを支援しプロジェクトの遂行を推し進めるPMOが必要とされるなか、その方法の一つとして注目されているのが「PMOコンサルタント(PMOコンサル)」です。
「SAP HANA」「SAP Analytics Cloud」など、SAP社のERP製品・システム導入を通じてクライアント企業の課題解決を支援するSAPコンサルタントはよく知られています。それと同じように、外部のコンサルティング会社やフリーランスのプロフェッショナルに業務委託してプロジェクトに参画してもらい、コンサルタントにPMOの役割を託すのがPMOコンサルです。
外部のコンサルタントにPMOを依頼することで、そのクライアントとなる企業にとっては以下のようなメリットが期待できます。
- 専門的な知識、多業界の豊富な経験などを有するプロフェッショナルの支援を受け、プロジェクトのマネジメント能力を高めることができる
- クライアント企業の既存の利害関係から離れた第三者として、客観的に支援にあたることができる
- 知識、経験、社外の立場などから多角的な視点をもってPMOにあたり、社内人材だけでは考えが及ばないような課題の解決を提案できる
労働人口が減少傾向にあり多くの業界で人材不足が叫ばれる現在、IT業界に精通する人材も例外ではなく、システム開発などのプロジェクトでPMOを任せられるような人材が社内にいないということも散見されます。新たな人材採用には時間がかかりますし、求める人材が見つかるとも限りません。そうした状況と上記のようなメリットが、外部のPMOコンサルが必要とされる理由といえます。
4.PMOコンサルの主な役割とは?
PMOという職責の役割自体は、社内の人材がPMOを担当する場合でも、外部のコンサルタントがPMOを担う場合でも、基本的には同じです。しかし、外部のPMOコンサルの場合は前述のようなメリットを見込んだうえで依頼されることが多く、PMOコンサルならではの「求められる役割」が生じることになります。
先に述べた「参謀型」「管理実行型」「事務局型」という分類でいうと、一般的にPMOコンサルは「参謀型」に近い役割が求められることが多く、その具体例としては以下のようなものがあります。
1)コストマネジメント力を期待されるケース
企業にとって、ITシステム開発やDX推進などさまざまなプロジェクト案件の実行はその経営や成長を左右するものですが、単に計画どおりに実行できればいいというものではなく、費用対効果が非常に重要なポイントとなります。
そこで経営者がその直下にPMOコンサルを配してプロジェクトの人・物・金をしっかり管理させ、徹底したコストマネジメントを促すことを期待するものです。この場合、PMOコンサルはプロジェクトのマネジメントという仕事に加え、プロジェクト案件の費用対効果向上にその手腕を発揮することが求められます。
2)品質・作業効率の向上を求められるケース
何らかの事情でプロジェクトを迅速に進めなければならないようなケースでは、PM自身がさまざまな仕事に追われがちで、全体の進捗管理やチーム・メンバーのマネジメント、果ては品質や効率まで目が行き届かないことも。
そうした場合に、プロジェクトを俯瞰する立場としてPMの上位にPMOコンサルを配置することで、全体を見渡しつつ品質や作業効率に配慮した適切なマネジメントが行われることが期待できます。
3)複数チームのとりまとめが必要となるケース
大規模なプロジェクトで複数チームを構築してITシステム開発を行う場合、個々のチームのPMとは別にプロジェクト全体の進捗や品質をマネジメントする必要があります。また、DX推進の全社プロジェクト案件で企画・営業・開発部門などの組織を横断してチームを構成する場合などは、利害関係の衝突やコミュニケーションロスといった状況をうまく調整しながらプロジェクトを進めることが不可欠です。
そうしたケースでは、外部のコンサルティング会社やフリーランスのプロ人材がPMOとなることで、各チームやメンバーに不公平感を生じさせない客観的なPM支援が可能となります。
5.PMOコンサルに必要なスキル
PMOコンサルに必要なスキルは、携わるプロジェクト案件の内容・状況や、PMOとして担当する業務範囲によって異なります。ここでは前述の主な役割を踏まえ、PMOコンサルにとって特に重要となることの多いスキルについて解説します。
1)課題を発見・分析・識別する力
プロジェクトには多様な課題がつきものです。PMOとしてそうした数々の課題を発見し、分析・識別して解決につなげる力は、どのようなプロジェクトのPMOでも重要なものとなります。課題発見のためには、論理的思考や、物事を客観的に多面的にとらえる俯瞰などのスキルも欠かせません。
2)伝える力
PMOがコミュニケーションを取る相手は、PMやプロジェクトメンバー、プロジェクトオーナーなど多岐にわたり、伝えるべき事柄もさまざま。その都度、相手や内容に応じて、伝えるべき内容をわかりやすく説明して理解を得るのはもちろん、腹落ちしてもらい実際の行動や結果につながるような伝え方が求められます。
3)聴く力
さまざまな人が関与するプロジェクトにおいてPMOとしての責任を全うするためには、PMをはじめさまざまな人とコミュニケーションを取り、信頼関係を構築することが必要。そのためには「伝える」だけでなく「聴く」こと、いわゆる傾聴が非常に重要です。
4)プロジェクト管理や目標設定の知識・スキル
プロジェクト管理や目標設定については、すでに多様なフレームワークや手法が確立されており、そうしたものを活用することによってその精度や効率を高めることが可能になります。PMの手法提案・助言などに関与する場面では、そうした知識があるとサポート力の強化につながります。
6.PMOコンサルの採用方法とポイント
では、PMOコンサルを依頼する場合、その人選についてどのような点に留意すればいいのでしょうか。そのポイントを3つ解説します。
1)PMOコンサルの目的を考える
そもそもPMOという職務は役割が一定でなく、求められる仕事もスキルも組織や案件の性質によって異なるもの。そこで漠然と「優秀なPMO人材がほしい」と考えると、後々「期待と違った」ということになりがちです。
PMOコンサルの活用で満足する結果を得るためには、具体的にどのような支援を受けたいのか、どのような仕事をしてほしいのか、どのような課題を解決してほしいのか、ということを明確にしましょう。現状の課題を洗い出し、何が足りないのかを分析することが、その第一歩となるはずです。
2)自社に合うPMOのあり方を考える
PMOは外部のコンサルティング会社やフリーランスのプロ人材に依頼するのではなく、社内の人材に担当してもらう選択肢もあることを先に述べました。どちらが自社のケースに適しているのか、外部に委託するとしてコンサルティング会社に依頼するべきかフリーランスのプロ人材を探すべきか、前項と合わせて検討しておきましょう。
専門知識や豊富な経験を有するコンサルタントにPMOとしての力を発揮してもらいたいと考えるなら、コンサルティング会社を通じてコンサルタントに入ってもらう選択肢が適しているでしょう。
フリーランスのプロ人材に依頼する場合でも同様の効果が期待できますが、それと合わせて、社内のPMに伴走するようなかたちでプロジェクトの支援を受け、同時にPMの教育や社内でのノウハウの蓄積も任せるといった依頼も可能になります。
3)構造化面接を実施する
PMO人材を社員として採用するケースでも、フリーランスのコンサルタントにPMOコンサルとして入ってもらうケースでも、自社とのマッチングは非常に重要な要素です。そのマッチングをより高い精度で確認するためには、構造化面接を実施するのも選択肢の一つです。
構造化面接とは、質問項目や評価基準をあらかじめ決めておき、その手順に沿って面接を実施するもの。面接官ごとの質問の違いや評価のばらつきなどに左右されず、キャリアや経験、価値観やカルチャーフィットなどを確認しやすくなります。
7.まとめ
昨今の企業経営にIT活用は不可欠であり、ITシステム開発は多くの企業で行われています。加えてDX推進の必要性も高まるなど、多くの企業で多様なプロジェクトが稼働するようになりました。
プロジェクトを成功させるためには、目標設定やスケジュールの作成にはじまり、進捗管理やメンバーのマネジメント、複数チームが構成されている場合はそのチームのマネジメントなど、プロジェクトマネジメントが欠かせません。そのPMの業務をさまざまな方法で支援することを通じてプロジェクトをサポートするのがPMOです。
PMOは社内人材で対応することももちろん可能で、社内で対応することのメリットもあります。しかし、人材不足が叫ばれる昨今、任せようにも人材がいないという企業も少なくないでしょう。そして、高いレベルのPMOを実行しようとすれば、より高度なスキルも必要となります。
そこで注目されているのが、外部のコンサルタントにPMOを委託するPMOコンサルです。専門的な知識、多様な業界でのPMO経験、キャリアで培ったスキル……クライアントとなる企業にとっては、PMOコンサルに依頼する理由だけでなく依頼するメリットも多々あります。
今はPMOサービス、コンサルティングサービス、人材紹介サービスなどさまざまなサービスが展開されており、自社に適したPMOコンサルもいろいろな探し方をすることが可能です。そうした状況も、PMOコンサルを活用する後押しになるはずです。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)