DXのコンサルとは?求められる背景と仕事内容、依頼の注意点も解説

デジタルでビジネスを変革させる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に取り組みたいと考える、経営者の方も多いのではないでしょうか。もともと海外と比べてDXの取り組みが遅れていると言われる日本。経済産業省も「2025年の崖」と呼びDXの遅れを警告していました。「2025年の崖」とは日本でDXが進まず国際競争力が落ち、2025年以降年間で最大12億円の損失が出るというものです(※1)。

コロナ禍の影響もあり、多くの企業がビジネスの変革を迫られる時代。日本でもDXを推進する企業が急増しています。ただ日本では「社内にITやデジタルに強い人材がいない」「既存システムが複雑すぎてDXを実現できない」という課題に直面する事例も多いようです。

こうした課題の解決策として注目されているのが、外部人材の活用です。IDCが行った調査によれば、DXに取り組む会社の約8割は何らかの外部サービスを利用しています(※2)。

特に注目されている外部サービスと言えば、DXコンサルティングでしょう。特にITやデジタルに詳しくない会社がDXを推進するとなると、DXの知識と経験を持つDXコンサルタントが強い味方となるはずです。とはいえDXコンサルタントの支援を受ければ解決とはいきません。成功させるには、依頼側がDXコンサルに何を依頼できるのかを理解しておく必要があります。

そこで、DXコンサルへの依頼と考える経営者へ向けて、DXやDXコンサルタントの基礎知識とあわせ、国内事例や支援を受ける時の注意点を解説します。

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1.DXコンサルタントの仕事内容とは

DXコンサルタントの仕事内容とは_みらいワークス

1)DXとは

DXは「Digital Transformation」(デジタルトランスフォーメーション)の略で、日本語では「デジタルによる変革」という意味。なお「trans-」はクロスするという意味で、クロスを意味する「X」がデジタルトランスフォーメーションの略語で使われます。

経済産業省では「DX推進ガイドライン」という資料にて、DXを以下のように定義しています(※3)。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

つまりビジネスにITなどのデジタル技術を導入しただけでは、DXとは言えません。デジタルトランスフォーメーションという名称の通り、デジタル活用によって役立つデータを収集して、ビジネスモデルや組織に大きな変革を起こす必要があります。ここが一般的なデジタル導入プロジェクトとの大きな違いです。

DXというと、IT企業や大企業向けイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には業界や企業規模に関わらず、DXの事例が増えています。ある不動産会社の事例では不動産の査定にAIを導入して、オンラインで査定額を自動で提示するサービスを始めました。

このサービスによって人件費削減を実現しただけではなく、従来少なかった若い世代や海外駐在の人からの査定依頼が増えたそうです。またオンライン査定サービスによって、詳しい顧客データ収集に成功。データを活用した新規事業も検討しています。AIによって新たな顧客獲得に成功、ビジネスの変革につながったDX事例と言えるのではないでしょうか。

2)コンサルタントの業務とは

コンサルタントは、依頼主の課題解決に向けたアドバイスや助言をするのが主な業務。一般的にコンサルタントは大きく「総合系サービス」と「戦略系サービス」に分かれています。戦略系は、経営戦略や事業戦略の立案などをメインにコンサルティング業務を行う人材。総合系は、戦略立案にとどまらずシステム構築や運用まで含めてコンサルティングサービスを行います。

最近では戦略系・総合系という分類だけではなく、専門分野に特化したコンサルタントも増えています。医療やバイオなど特定の業界を専門とするコンサルタントもいれば、AIやRPAなど技術・システムを専門とするコンサルタントもいます。コンサルタントによって得意分野やスキルが大きく違うため、選択肢が多い一方で依頼する側は慎重に選ぶ必要があります。

3)DXコンサルタントの扱う領域とは

企業のDX推進案件を専門に扱うコンサルタントを、DXコンサルタントと呼びます。DXコンサルタントの主な業務は、テクノロジーを活用して新規ビジネスを立ち上げる会社の支援。戦略立案からアイデア創出、組織改革、システム選定、運用体制整備まで、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた支援をします。

ただDX自体の歴史が浅いため、DX案件の経験が豊富なコンサルタントはまだ少ないのが現状です。そのためAIなど特定のテクノロジー導入・開発経験を持つコンサルタントが、DX分野へ転身するケースが主流。つまりDXコンサルタントと言っても、経験や得意分野がコンサルタントによって大きく違うというのが現状です。

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2.DXコンサルタントのニーズが急増している背景とメリット

DXは漠然としたところもあり「経済産業省の定義を読んでもよくわからない」という経営者の方も多いかもしれません。2021年8月に国内で行われた調査によると、「DXを理解している」と回答したビジネスパーソンは23%しかいませんでした(※4)。

新しい概念のため、なかなか理解が進んでいないのが現状です。しかしDXへの基本的な理解がなければ、DXコンサルタントを選ぶこともできません。またDXコンサルタントに依頼した後も、「コンサルの提案や助言は自社で実現できるか?」「自社の事業計画や戦略と整合性があるか?」など社内で判断すべきことも多くあります。

DXプロジェクトの推進にはDXコンサルタントの存在も重要ですが、まず経営層や社内メンバーがDXを正しく理解することが必要です。

・DXは単なるIT導入とは違う

「人手による業務をデジタル化して、コスト削減や効率化ができればDXは成功なのでは?」と考える方も多いようです。しかしこれは本来のDXではありません。DXは経済産業省の定義にある通り、「ビジネスや組織の変革につなげる」ことがゴールだからです。

ある不動産会社の事例では、AIを使った不動産査定システムを開発。オンラインで査定額を自動で提示を始めました。このサービスによって人件費削減を実現しただけではなく、従来少なかった若年層や海外駐在者からの査定依頼が増えたそうです。またオンライン査定サービスにより詳しい顧客データの収集に成功。データを活用した新規事業も検討しています。AIによって新たな顧客獲得に成功、ビジネスの変革につながったDX事例と言えるでしょう。

ここまで理解すれば、ITツールやサービスの導入だけ進めるコンサルタントは要注意ということがわかります。IT化はあくまでDXの1ステップであり、その先にある「ビジネスや組織をどう変革して収益を上げるか?」という戦略が求められます。

・DXを推進する基本の流れ

では具体的にどんなことをすればDXになるのか、と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。DXとIT化の違いを理解するためにも、まずDXの基本的な手順を知っておきたいところです。

一般的なDXプロジェクトは、大きく3つのステップに分けて進めます。

ステップ1:情報のデジタル化(デジタイゼーション)

社内のあらゆる情報・データをデジタル化することがDXの一歩。例えば社内にある顧客リストが紙ベースだけで管理されていては、DXを実現しても情報を有効活用ができません。この情報のデジタル化を「デジタイゼーション」と呼びます

DXというゴールを実現するにはまず社内でデジタル化されていない情報を洗い出し、デジタル化することが必須です。すでに社内のペーパーレス化が進んでいるなど、情報のデジタル化が終わっている場合はこのステップを省略するケースもあります。

ステップ2:業務のデジタル化(デジタライゼーション)

情報とあわせて、デジタル化すべきなのが業務プロセス。全ての業務をデジタル化できるわけではありませんが、人手による業務はスピードが遅くなったりヒューマンエラーが増えたりする問題があります。また業務プロセスのデジタル化によって人手に余裕ができれば、新たなビジネス創造に人員を回せる点もメリットでしょう。DX実現には、業務プロセスのデジタル化にも取り組む必要があります。

ステップ3:ビジネスや組織を変革する

情報と業務がデジタル対応した時点で、本来のDXに取り掛かることができます。例えばアナログで集めていた顧客情報をデジタル化、その結果リアルタイム分析が可能になって新サービスの提供につながったというケースもあります。

このステップでは、ITの視点だけではなくビジネスの視点が必要。「客単価をアップして売上を上げる」「新規事業で経営を多角化する」「ブランディングを強化して競合他社と差別化する」といった発想で、従来のビジネスを大きく変える発想が求められます。そのため単なるITコンサルタントではなく、新規事業立ち上げなどの経験を持つDXコンサルタントの協力が欠かせません。

3.DXコンサルタントのニーズが急増している背景とメリット

DXコンサルタントのニーズが急増している背景とメリット_みらいワークス

DXコンサルタントはここ数年、日本でもニーズが急増しています。コロナ禍などをきっかけにDXに取り組む会社が増えていることも要因ですが、それだけではありません。日本企業が海外と比べてDXの成功率が低い、という事情も実は影響しています。コンサル会社のボストン・コンサルティング・グループが実施した調査によると、日本でデジタルトランスフォーメーションに成功した企業の割合は約14%。海外全体の成功率30%と比べて半分以下となっています(※5)。

またコンサル会社のマッキンゼーが発表した「デジタル革命の本質」によれば、日本企業でDXが進まない大きな理由として、組織の問題があると指摘しています。このレポートでは以下のような組織に関わる問題が、日本企業のDX推進の壁になっていると解説しています(※6)。

  1. システム開発などはアウトソースが多い。そのため社内でDXを推進できるようなデジタル人材が不足している
  2. 経営者の高齢化・在任期間の長期化が進んでいる。そのため経営者自身がデジタルを活用したビジネス変革に着手しづらい。
  3. 海外と比べて日本企業は人材の流動性が低い。そのため外部人材を活用するノウハウを持たない企業が多い。

日本企業ではこうした社内組織の問題によってDXが進まない状況になりやすいというわけです。しかしDXは一般的なシステム開発のように、外部サービスへ丸投げできるタイプの案件ではありません。ビジネスや組織の変革を実現するには、社内からアイデアを創出したり、社内メンバーを育成したりすることが必須だからです。

そこでデジタル技術の知識とスキルを持ちながら、スムーズなプロジェクト進行を支援できる外部人材が必要になります。そこでDXコンサルタントのニーズが高まっているのです。日本特有の事情で成功が難しいと言われるDX。ですが、DXコンサルタントに依頼することでこうした課題は解決につながりやすくなります。ここでは陥りがちな4つの課題をもとに、DXコンサルタントへ依頼するメリットを解説します。

1)どこからDXを進めればいいかわからない

ITやデジタルに関わりの少ない会社では、DXに取り組みたいと思っても「何から始めればいいかわからない」という経営者の方も多いのではないでしょうか。とはいえ他の会社の事例を見ても、自社に応用できるとは限りません。

こういったケースでも、DXコンサルタントに依頼するメリットがあります。コンサルティングスキルの高いDXコンサルなら、自社が抱える課題をスムーズに整理して可視化してくれます。

2)どのようなIT技術やDX人材が必要かわからない

DXでは、AIなど新しいIT技術を活用できるかが重要なポイント。そのため最新のIT技術に詳しく経験豊富な人材がプロジェクトを進める必要があります。しかし経営者や社内メンバーが高度なITスキル・経験を持つというケースは少ないことが多いでしょう。

またDXでは、ビジネス変革のために現行のシステムを捨ててゼロから開発するケースもあります。こうなると付き合いのある業者では対応できないケースも出てきます。どこへシステム開発を依頼すればいいか悩むこともあるでしょう。DXコンサルタントなら、DX推進にどんな技術・人材が必要か適切なアドバイスを行ってくれます。

3)DXに必要な要件定義ができない

通常の社内システム開発であれば、社内や取引先にヒアリングをして要件を定義することができます。一方DXでは新たな技術を使ってビジネス全体を変革するもの。そのため、市場や顧客のトレンドに合わせた要件定義が必要となります。また一旦開発したものをすぐに修正する、と言ったことも増えてくるでしょう。

従来の要件定義では、DX推進が難しいのも事実。そこでDX経験を持つ専門家として、DXコンサルタントのサポートが必要となります。

4)素早い判断や軌道修正ができない

DXで成功するには、社会の変化や顧客・競合他社などの動きに素早く対応する必要があります。状況が変化するスピードが速まっている今、最初に決めたDX 戦略の見直しや軌道修正を迫られることも多いでしょう。またDXでは新しい技術を取り入れる姿勢も求められます。

つまりDXを推進するには、さまざまなデータを分析する力とあわせて、判断力や社内に説得できるリーダーシップを持つ人材が必須です。とはいえ社内メンバーではスキルが不足というケースも多いでしょう。また社内メンバーが推進役になると、従来の上下関係が影響して意見しづらいこともあります。

一方でコンサルティング経験の豊富なDXコンサルタントなら、状況の分析や判断を担うことも可能。また外部の専門家という立場によって、むしろ社内の理解を得られやすい可能性もあります。

4.DXコンサルタントへ依頼する時の注意点

DXコンサルタントへ依頼する時の注意点_みらいワークス

優れたDXコンサルタントへ依頼しても、依頼側の体制や準備がなければ成功には至りません。特に初めてコンサルタントに依頼する方が気を付けたいポイントをまとめました。

1)経営層が主体となって社内に強くコミットする

DXはビジネスの変革という大きなミッションを持つため、社内の一部部門だけで成功させるのは無理があります。つまり社内の各部門や社外のステークホルダーにも協力してもらう必要があります

周囲の協力を得るには、DXへ取り組む意味や効果について強く社内にコミットさせておくことが必須です。経営層がDXを推進する必要性やビジョンを明確にして、社内に浸透させておきましょう。

また外部からDXコンサルタントを呼ぶとなると、社内のシステム部門などから大きな反発が起こることも予想されます。経営層が率先して、DXコンサルタントを導入する目的や重要性を社内に理解させておきたいところ。DXコンサルタントが持つスキルを発揮するには、環境づくりも大切です

2)社内のDX推進担当者をアサインする

DXがうまくいかなかった事例の中には、現場や取引先がITやデジタル技術に慣れていないため変革が実現しなかったケースもあります。

現場やステークホルダーとの調整は、社内のDX推進担当者によるところが大きいでしょう。DXコンサルタントが力を発揮するためにも、DX担当は重要なポジション。DX担当にはITやデジタルの知識も必要ですが、社内事情に精通しているほか、ステークホルダーとコミュニケーションが円滑にできるスキルが求められます。DXコンサルタントと社内の橋渡し役になれる人材を、担当者としてアサインしましょう。もしいない場合は、若手を育成することも考えるべきです。

ただしDX担当にすべてを押し付け、丸投げしてしまうのは危険です。負荷がかかりすぎてしまい、かえってプロジェクトが頓挫しやすくなります。負荷に合わせてサポートできる人材をアサインするなど、体制を整えましょう。

3)自社が目指すDXの規模・レベルに合うコンサルタントを選ぶ

DXといっても企業によって課題が大きく違うため、案件の規模やレベルも異なります。このため、DXコンサルタントを選ぶときは、得意分野とあわせて自社が目指す規模に近い経験があるかという点も意識しましょう。大企業のDX案件をメインとするコンサルタントの場合、自社の規模に合う提案が出ないこともあります。

また中堅企業のDX推進では、経営者や担当者とコンサルタントの相性も大切です。優秀なコンサルタントであっても、自社のレベルに全く合わなければ会社とコミュニケーションはうまくとれません。DXについて経営者や担当者のレベルに合わせた解説をしてくれるか、といった点で相性をチェックしましょう。

4)コンサルタントの業務範囲を理解し、丸投げしない

上述したように、コンサルタントはアドバイスや助言を行うのが主な業務。実務も含めて依頼するケースもありますが、あらゆる業務を任せる存在ではないことを認識しましょう。頼りすぎないためにも、コンサルタントに相談する前に課題の整理やゴール設定を社内でしておきたいところです。

コンサルタントへ依頼した後も注意が必要です。コンサルタントのアドバイス通りに進めれば成功するとは限りません。「現場で実現可能なプランか」「ステークホルダーの協力は得られるか」など、社内視点での判断が必要なこともたくさんあります。

あわせて注意したいのが、短期で考えないこと。DXでビジネスの変革につなげるには、どうしても時間がかかります。中長期で考えるのが基本のため、DXコンサルタントへ依頼した場合でも社内で中間成果を評価する必要があります。さらにコンサルティングを継続するかどうか、判断するケースも出てくるでしょう。

こうした評価や判断を社内で行うためにも、「コンサルタントに丸投げしない」という意識は重要です。そのためにも、経営層を含めた社内全体でDXについての理解を深めておく必要があります。

5.DXコンサルタントへ依頼する時の注意点

DXコンサルタントにはどんな効果があるのかを知るには、すでに実践している事例を参考にしましょう。ここではDXコンサルタントを導入して、DX推進につなげた国内企業の5事例を紹介します。

1)資生堂は野村総合研究所(NRI)とタッグを組んでサブスクに参入

資生堂は野村総合研究所(NRI)と組み、DXを推進。IoTやAIなどのデジタル技術を活用した新しいサブスクリプションモデル(月額定額制)のブランド「Optune」を2019年に立ち上げました。これはスマートフォンアプリを使って肌の状態を分析。分析データをもとに専用のIoT機器が肌に最適なスキンケア製品や量を提供するという仕組みです。

デジタルデータを活用することで、きめ細かなパーソナライゼーションを実現させました。さらにこのブランドではサブスクリプション制を導入。資生堂として新たなビジネスモデルに挑戦しています(※7)。

残念ながらこのブランドは約1年で終了しましたが、資生堂ではその後もDXを推進。2021年にコンサルティング会社のアクセンチュアと合弁会社を設立するなど、他社の支援を受けながらDXを加速させています(※8)。

2)ワコールはIBMとタッグを組んでオムニチャネル戦略を推進

下着メーカーのワコールはIBMなどのパートナーと一緒にDXプロジェクトを立ち上げました。プロジェクトの結果、AI接客を本格導入した新たなスタイルの店舗を2019年東京にオープンさせています(※9、※10)。

ワコールでは商品が下着のため、従来の店舗ではユーザーが店員にサイズなどを相談しにくいことが課題でした。そこでパートナー企業の技術をもとに5秒で採寸ができる独自の3Dスキャナーを開発。さらにAI接客を導入して、ユーザーが店員と直接対話しなくても買い物ができる店舗を設けました。

これはユーザーの利便性向上だけが目的ではありません。採寸データやAIによるおすすめ情報をECに連携させることで、実店舗とECを融合する「オムニチャネル戦略」の推進が狙い。パートナーの技術を活用することで、ビジネスの変革につなげたDX事例と言えるでしょう。

3)ソフトバンクはアクセンチュアとタッグを組み、BtoB向けオンラインイベントを開催

コロナ禍で対面でのやりとりが難しい現在、BtoBでも営業やマーケティングスタイルの変革が求められています。こうした中でソフトバンクの法人マーケティング部門では、アクセンチュアをパートナーにDXを推進しました(※11、※12)。

この結果、2020年にオンラインでのBtoB向け展示会を開催。オンライン化した最大の効果が集客力の向上です。このオンライン展示会の参加人数・視聴者数は、前年比682%と大幅にアップ。オンライン化によって地域や時間などの制約を取り払うことができ、より広いユーザーへリーチできるようになりました。

またオンライン開催によって、視聴行動データを収集できるようになった点も注目すべきポイントです。IT化によって多くのデータを収集・分析して次のビジネスに生かすのもDXならではの考え方です。

4)ビューカードはアビームコンサルティングとタッグを組んでAI与信システムを構築

JR東本グループの呉ジッドカード事業を手掛けるビューカードは、コンサルティング会社のアビームコンサルティングをパートナーに選び、DXを推進させています。ビューカードではパートナーを選ぶ際クレジットカード業界に精通しているかという点を重視したそうです(※13)。

ビューカードではアビームコンサルタントの支援を受けながら、与信業務にAI技術などを導入。システム化することで、スピーディーで厳格なカード利用限度額の設定が可能になりました。さらに限度額の上限引き上げを積極的に行えるようになり、カード利用の促進にもつながっていると言います。リスク回避と収益向上という2つの課題を同時に解決できたという点で、DXの成功事例と言えるでしょう。

5)ライオンはNTTデータとタッグを組んでDMPを構築

ライオンはより高度なデータ活用を目指し、DMP(デジタルマネジメントプラットフォーム)の構築に取り組んでいます。この開発でライオンがパートナーに選んだのが、NTTデータ社です。NTTデータは複数のツールを組み合わせたソリューションを提案。さらに社内教育や運用面でもNTTデータが支援し、スムーズなプロジェクト推進につながったと言います。なおライオンとNTTデータは、2022年1月にDX推進に関する業務提携をスタートさせています(※14、15)。

【DMP(Data Management Platform)とは】
社内に分散しているサーバのデータを一元管理して、分析できるようにしたシステムの総称。多くのデータをもとに多角的に分析することで、従来気づかなかったポイントを発見できるようになります。またDMPがあれば専門のアナリストに分析を依頼せず、社内で手軽にデータ分析ができる点もメリットです。

データやデジタル技術を駆使してビジネスを変革するDX(デジタルトランスフォーメーション)。日本企業もコロナ禍などをきっかけに従来のビジネスに危機感を感じ、DXに取り組むケースが急増しています。しかし日本ならではの課題もあり、DXを成功させることは簡単ではありません。

そのため自社内だけでDXを推進するケースはほとんどありません。大手企業の事例を見てもわかる通り、ほとんどの企業が外部のDXコンサルタントを導入し、支援を受けています

国内でDXへの意識が高まる中、DX戦略の策定から運用業務まで支援できるDXコンサルタントのニーズも急増しています。一方でDXコンサルタントの数は不足しており、今後さらに獲得競争は激しくなるでしょう。

つまり、できるだけ早いタイミングで自社に最適なDXコンサルタントを探す必要があります。そのためにはまず社内全体でDXをよく理解して、「自社にとってのDXの在り方」を策定することが最優先です。

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

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出典
※1:D X レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
※2:国内DX支援サービスの需要動向調査結果を発表(IDC)
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ47548421
※3:デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(DX 推進ガイドライン)(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf
※4出典:「DX」を理解している人はわずか2割 DXの理解度と取り組み状況を調査(士業とつながる・企業とつながる「Manegy」)
https://www.manegy.com/news/detail/4651
※5:デジタルトランスフォーメーション(DX)に成功している日本企業は14%
DXのサイロ化を超えた包括的な戦略が成功のカギ~BCG調査(ボストン コンサルティング グループ)
https://www.bcg.com/ja-jp/press/28october2020/14-percent-japanese-companies-succeeded-digital-transformation-comprehensive-strategy
※6:デジタル革命の本質:日本のリーダーへのメッセージ(McKinsey & Company)https://www.mckinsey.com/jp/~/media/McKinsey/Locations/Asia/Japan/Our%20Work/Digital/Accelerating_digital_transformation_under_covid19-an_urgent_message_to_leaders_in_Japan-jp.pdf
※7出典:資生堂ジャパン×NRI 最先端の皮膚科学とテクノロジーの融合(野村総合研究所)
https://www.nri.com/jp/journal/2018/1003
※8出典:資生堂とアクセンチュアが7月に合弁会社設立 DX化を加速(WWD)
https://www.wwdjapan.com/articles/1212923
※9出典:株式会社ワコール(IBM)
https://www.ibm.com/jp-ja/case-studies/wacoal
※10出典:5秒で全身を測定するワコール新型店舗 IBMワトソンが下着を提案(日経TREND)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00202/
※11出典:ソフトバンク:初のオンライン開催。「SoftBank World 2020」でマーケ&営業のDXを実現(アクセンチュア)
https://www.accenture.com/jp-ja/case-studies/communications-media/softbank
※12出典:11.9万人を魅了した「SoftBank World 2020」 完全オンライン開催成功の裏側(Marke Zine)
https://markezine.jp/article/detail/35959
※13出典:株式会社ビューカード(アビームコンサルティング株式会社)
https://www.abeam.com/jp/ja/case_study/CS123
※14出典:データ活用で実現する「心と身体のヘルスケア」~生活者起点のビッグデータ×AIの可能性~(NTT DATA)
https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2021/0413/
※15出典:NTTデータとライオン、DX推進で業務提携(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC067HW0W2A100C2000000/