「レジリエンス」で折れない心を作る

作成日:2017/12/13

 

心の“折れぐせ”がつく前に

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「レジリエンス」とは、不安や困難、ストレスといった負の要素を“柔らかさ”をもった心でしなやかにかわしていこうとする考え方のことです。

 

世界情勢や市場動向の変化が激しい近年は、経営やコンサルティングの舵取りも非常に難しい時代です。「売り上げが思うように伸びない」「盤石だと思っていた事業に陰りが見えてきた」「独立したいが情勢が不安」――悩みのない人はいないといいますが、こと経営者やコンサルタント、フリーランスで活動する方は多くのストレスにさらされがちです。

 

そうした不安やストレスに負けないようにと毅然と立ち向かう姿勢はすばらしいですが、“硬い”心は負荷に耐えきれなくなると折れやすいという面ももちます。無理をしすぎて大きな負荷に耐えきれなくなったとき、ポキっと心が折れてしまったら……一度折れてしまった心を元のように戻すのはとても難しいことですし、一見持ち直したように見えてもその実、心に“折れぐせ”をつけてしまうこともあります。

 

個人事業主や独立した経営者の場合、1人で仕事をしている方も多くいらっしゃいます。そうした場合、不安や悩みも1人で解決しなければと思い、抱え込んでしまうことも。結果的に、ストレスがより膨らんでしまった……ということにもなりかねません。仮に従業員がいるとしても、仕事上で過度に感情的になってしまうのは避けなければなりませんし、そうした状況の連続では、自身のメンタルヘルスへの影響も懸念されます。

 

そこで、それらの状況下でも感情をうまくコントロールする方法の1つとして注目されている“気持ちの持ちようの技術”「レジリエンス」です。

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困難を“柔らかく”かわす

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「強い自分でいなければならない」と気張って強い気持ちであろうとするのは、いうなれば鋼のような“硬さ”で障害を跳ね返そうとする考え方です。それに対して、「レジリエンス」は、不安や心配事などの精神的に困難なことや、ストレスなどの負の要素を“柔らかさ”をもった心でしなやかにかわしていこうとする考え方です。

 

元をたどると、レジリエンスという言葉は物理領域で「歪みを生む圧力を跳ね返す力」という意味で使われていました。お馴染みの「ストレス」も同様で、こちらは「圧力を加えられたことで物体に生じる歪み」という意味をもっていました。比べてみると、圧力に相対するレジリエンスの考え方がわかりやすく浮かび上がってきます。

 

そして今では、この考え方が「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力」として心理学や精神医学の領域においても応用されるようになってきており、「精神的回復力」「復元力」をもつ心のありようとして注目を集めるようになったというわけです。

 

レジリエンスで実現する心の強さは強い衝撃にも動じない頑強さではなく、打たれても立ち上がることができる力、もしくは打ちつける力をヒラリとかわしていく柔軟性、そうしたあり方でもって逆境を乗り越えることなのです。

 

 

活用の進むレジリエンス

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レジリエンスは、いまや多くの分野で活用が進んでいます。2013年開催の世界経済フォーラム(ダボス会議)では、「先進国各国において、国際競争力と危機管理能力、レジリエンスは比例しており、両方の力をバランスよく備えている」という評価が発表されています。日本でも、2014年に放送されたNHKの特集番組をきっかけに、レジリエンスの考えが広く普及するようになりました。番組によれば、学校でもレジリエンスの授業を採用するところが増えているとされ、レジリエンスに関する多くの本も出版されています。

 

経営やビジネスの世界も例外ではなく、経営者をはじめとして企業で働く人々のメンタルヘルスケアやストレスに対するマネジメント術の一環として広く活用されています。加えて、リーダーシップや営業力強化などの観点でも研修の導入も進んでいます。

 

2016年にはアメリカでトランプ大統領の誕生という非常に大きな“想定外”のニュースがありましたが、その前にも英国のEU離脱問題やリーマンショックといったように、世界の状況は先が読めないことの連続です。日本でも東日本大震災という重大な出来事がありましたし、熊本地震などの天変地異や異常気象も相次いでいます。もちろん、テクノロジーの進化など、喜ぶべき変化もあります。

 

そうした変化に適応しながら、向かいくる困難をしなやかに乗り越えていく必要のあるビジネスパーソンには、レジリエンスという力は必須ともいえるものになってきているのです。

 

 

“心の持ちよう”は鍛えられる

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「そうはいっても、今さら性格は変えられない……」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、レジリエンスは性格ではなく、気持ちの持ち方という技術です。テクニックとしての考え方を身につけて実践するトレーニングを積むことで、年齢や経験を問わず、獲得することが可能です。

 

レジリエンスという逆境力を高めるために、まずはどういう考え方、どういう姿勢が必要とされるかを理解しましょう。前述のNHKの番組では、折れにくい心を育てるために必要な要素として、以下の5つを挙げています。

 

<折れにくい心を育てるために必要な要素>

  • ・自分で感情をコントロールできる
    ・必要以上に自分を卑下しない、自分自身の価値を認められる
    ・自分が成長して前に進んでいると感じることができる
    ・『何とかなる』楽観的なマインドをもち、不安に負けない
    ・何か困ったら助けを求められる人がいる

 

また、『ワーク・シフト』などのベストセラーの著者であるリンダ・グラットン氏も、レジリエンスについて言及しています。グラットン氏は、『未来企業〜レジリエンスの経営とリーダーシップ』(プレジデント社刊)のなかで、“レジリエンスは経営者自身だけではなく企業としてのあり方にも応用が可能”とし、企業としてのレジリエンスを高めるには、以下の3つの要素が重要だとしています。

 

<企業としてのレジリエンスを高めるための要素>

  • ・経営者や従業員の知性と知恵
    ・業務に対して創造性とイノベーションをもたらす精神的活力
    ・企業の活動を支える社会的ネットワーク

レジリエンスの考え方やトレーニング方法については、前述のとおりさまざまな書籍なども刊行されていますし、企業を対象とした研修プログラムなどもいろいろあります。もちろん、個人の方に対してもレジリエンスセミナーなどは各地で開催されています。まずは気張らずにそうした情報にふれてみると、今まで知らなかった発見があるかもしれません。

 

 

レジリエンスは防災面でも取り入れられており、「仮に災害などの予期せぬ事態が起こって一部機能が止まってしまっても、可能な限りすみやかに回復するためのしなやかな力」という考え方をもとに、企業の事業継続計画や地方自治体の防災計画などにも応用されています。

 

このように、レジリエンスという考え方、心の持ちようの本質は「多くのケースをあらかじめ想定をして臨むこと」ではなく「想定外の事態が起こってしまってもそこから回復すること」にあるのです。経営者や働く個人としてのみならず、個人事業主を含めた企業体としても、レジリエンスという考え方によって学ぶことができるものは大きいといえます。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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