「エイジフリー」とは?企業とビジネスパーソンが抱える課題

最終更新日:2023/07/24
作成日:2016/10/24

 

いま注目の新しい働き方、エイジフリー

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これから超高齢化社会を迎えようとしている日本。高齢者が生き甲斐を感じられる社会の構築が、大きな課題の一つです。

 

例えば、現在多くの企業で採用されている定年退職制度では、長年第一線で活躍し、これからもまだまだ働けるという人でも、定年になれば退職せざるをえません。こうした年齢基準の枠を超えた新しい働き方が今、全国に広がっています。そのキーワードは「エイジフリー」です。今注目を集めているエイジフリーな働き方とは、一体どんな働き方なのでしょうか。

 

エイジフリーとは?

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エイジフリーとは、読んで字のごとく、エイジ(年齢)からフリー(自由)になって働くことをいいます。日本の社会では、新卒で企業に入社し、定年まで勤め上げて、定年に達したら退職するというのが一般的です。この年齢基準の雇用制度を見直し「年齢にとらわれないで働こう」という考えが近年生まれており、これをエイジフリーな雇用といいます。

 

フリーランスや個人事業主として活躍されている方にとっては年齢に縛られない自由な働き方を既に実現されているので注目している人は少ないかもしれません。また、終身雇用制度がある日本企業に勤めている方にとってはあまり耳慣れない言葉でしょう。

 

働き方の選択肢を増やすという点では、昨今リモートワークも話題になっています。こちらは場所にとらわれないで働こうという考え方で、2016年1月にリクルートホールディングスが全従業員を対象に導入したことで注目を集めています。このように、従来の働き方を考え直す動きが活発な中、年齢による雇用期間の制限という点も見直そうというのがエイジフリーという考え方です。

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エイジフリーの効果は?

エイジフリーとは、定年制の雇用を廃止し、働きたい意欲のある人は年齢にかかわらずいつまでも企業に残り、業務に従事できるという雇用の仕方です。高齢化社会を迎えた今、65才という定年を迎えても、まだまだ十分働ける人が沢山いらっしゃいます。長年第一線で働いてきた人のキャリアやスキルは、同じ会社で働く後進にとっても大いに役に立つでしょう。特に、プロフェッショナルとして働くコンサルタントやエンジニアの方の技術やノウハウは、いつまで経っても錆びないので年齢を超えた業務への携り方が実現できます。

 

また、高齢者にとって最も重要なのは、ただ長生きすることではなく、心身ともに健康で長生きすること、いわゆる「健康寿命」です。仕事への意欲がある高齢者にとっては、定年後も継続して業務に従事できることは生き甲斐につながり、社会との接点を持ち続けることで、認知症などのリスクを軽減できます。

 

健康寿命を延ばすという点でも、エイジフリーには期待が寄せられています。これは、生涯現役社会を目指し、要介護者を減らそうと「介護予防」に努める行政の取り組みと方向性を同じくするものです。

 

エイジフリーな高齢者の活用は、企業側にとっても、高齢者にとっても、ひいては社会にとっても良い効果が期待できるものとして、今注目を集めているのです。

 

エイジフリーは諸刃の剣になる危険性も‥

 

ただし、エイジフリーな働き方には注意点もあります。定年以降も業務に従事できるというのは一見メリットが多いように思えますが、そこには実はとてもシビアな前提があります。年齢にとらわれず働けるといっても、定年後も雇用を継続するか否かは企業側の自由。企業が定年後も是非残ってプロジェクトに参画してほしいと思う人材でなければ、エイジフリーな働き方は現実には認められないのです。

 

エイジフリーな雇用という考え方の背後には、実は能力主義が潜んでいるのです。能力があるにもかかわらず定年の縛りがあるために働き続けることができないことが、エイジフリーな雇用を成立させる大前提になります。コンサルティング業界においては、既にこの能力主義を当たり前とする土壌ができていますが、日本の一般企業はまだまだ旧態依然の終身雇用の色合いが強いのも事実です。

 

そもそも定年制度は、終身雇用の枠組みの中で雇用期間を決める必要があったから生じた制度で、定年を否定することは終身雇用を否定することにもつながります。むしろ、定年をなくすことで終身雇用そのものが崩れれば、定年を待たずにリストラされることもありうるのです。

 

例えば、参画中のプロジェクトのPMO案件に参画していたとしても、求められる能力にご自身の力が足りず定年後も企業の戦力になれる人でなければ、エイジフリーな雇用でかえって不利益を被ることにもなりかねないという危険性があります。

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エイジフリーな働き方を導入するためには

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エイジフリーな働き方の拡がりとは、裏を返せば「雇用の流動化」ともいえます。年齢にとらわれずに働けるので、高齢でも能力があり働く意欲のある人にとってはメリットが大きい反面、終身雇用で定年までとにかく勤め上げることを目標とする人からすれば、身分が不安定になってしまうケースも考えられます。

 

エイジフリーな働き方は、高齢者だけでなく若年層の社員にとっても影響を及ぼします。ずっと働き続けようと思えば、より能力が発揮できる会社を求めて転職する人が増える可能性もあります。

 

また、企業側にも変化は起こり、中途採用や転職対応がこれまで以上に増え、採用市場が活性化してよい人材を探しやすくなるかもしれませんが、安定的な終身雇用を基礎に成長してきた日本の企業が果たしてどこまで対応できるのか疑問が生じます。

 

エイジフリーにすることで、退職時期以外の年齢基準も見直されることになるでしょう。昇進など人事面におけるエイジフリー化が進めば、就職しても将来の見通しが一概には立たなくなります。企業側も、福利厚生などでこれまで以上に社員の能力向上に役立つようなプログラムを考える必要が出てくるかもしれません。

 

定年退職制度の撤廃からスタートしているエイジフリー雇用ですが、実は波及する問題がいろいろあるのです。エイジフリーな働き方を導入する際には、これを単に定年退職制度の撤廃と捉えず、終身雇用から能力主義への移行が本当に自社で可能なのかをしっかり見極めることが重要です。

 

また、定年後の雇用を認めるならば、どこでリタイアを認めるのかもきちんと設定しておく必要があります。場合によっては健康上の理由で強制リタイアしてもらうこともあるでしょう。年齢でリタイアを決めない代わりに、自主退職以外のリタイア事由を決めておくことが大切です。

 

エイジフリーな働き方の選び方

 

働き方の多様化が叫ばれる中、年齢制限を排して高齢でも働きやすい環境を作ろうというエイジフリーの考え方は、大きな可能性を秘めています。しかし、定年退職制度をなくすことは終身雇用という日本企業の伝統的な雇用形態を根底から覆すものであるため、活用の仕方によってはデメリットが大きくなる場合もあります。若い人の雇用にも大きな影響を与える可能性もあり、企業で取り入れる際は細心の注意が必要です。

 

エイジフリーな働き方は、高齢者を積極的に活用することで高齢者の健康と労働市場の活性化を図ろうとするものです。既にフリーランスや個人事業主として活躍されている方にとっては別の目的もあることでしょう。今後この働き方を採用する企業が増えると予想されますが、本来の目的が果たせるよう、慎重に検討しつつ導入していくことが必要になるのではないでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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