「看板も何もない以上、とにかく動くしかない」 熱い想いを胸に独立を果たした若き起業家の挑戦

作成日:2017年3月10日(金)
更新日:2018年6月13日(水)

無我夢中で走り抜けた先には、とてつもない「楽しさ」が待っていた。

「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは浜崎正己さん。
“尊敬する起業家にならい、生まれてから10,000日目に起業した”というエピソードをはじめ、とにかく熱い想いをお持ちの浜崎さん。現在はメディアの立ち上げや運用支援の仕事に携わっていらっしゃいますが、いずれはご自身の事業やベンチャーキャピタルの立ち上げにも挑戦したいと考えていらっしゃいます。まだ28歳とお若い浜崎さんから引き出される熱いインタビューに、きっとあなたも心を動かされること間違いありません!

浜崎 正己

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

大学卒業後、大手建機レンタル企業を経て兼松グランクス株式会社に転職し、WEBサイトのディレクターを経験。以降、GMOモバイルやザッパラスにて各種メディアのディレクション業務に携わり、2016年3月に株式会社メディアインキュベートを設立。メディアの立ち上げ・運用支援を手掛けるほか、メディアに特化したベンチャーキャピタルの設立も検討中。   株式会社メディアインキュベート:http://media-incubate.com/

浜崎 正己

尊敬する起業家にならい、生まれてから10,000日目に独立

-まだ20代とお若い浜崎さんですが、このタイミングでの独立はもともと考えていらっしゃったのでしょうか?それとも、何かきっかけがあってのことだったのでしょうか?

浜崎さん(以下、敬称略):実はその両方とも当てはまっていました。もともといつかは起業したいと思っていたところに、尊敬している株式会社FiNCの溝口社長という方の「生まれて10,000日目に会社を作った」というエピソードを知り、私自身も生誕10,000日目が迫っていたので、「よし、独立しよう!」と。FiNCはまだ創業4年目くらいのベンチャー企業なのですが、ものすごい勢いで成長していて、しかも名だたる大企業で役員を務めたような方々が参画していらっしゃるので、少しでもFiNCに近づきたいなと思ってそのエピソードを参考にさせていただきました。

-そういうきっかけがおありだったのですね。10,000日目というのはおもしろいですね。FiNC溝口さんのどういった部分を特に尊敬されているのですか?

浜崎:溝口さんが創業後に始められたブログを拝読すると、とにかく熱い方なのです。スタートアップ関連のイベントなどでも、勢いのあるベンチャーとして多くのメディアに取り上げられており、そういった記事を読むうちに、今の私とあまり変わらないくらいの年齢で起業されたということや、私と同じく、ソフトバンクの孫さんを尊敬していらっしゃるということもわかり、勝手ながらロールモデルにさせていただきました。

これもブランディングの一種なのだろうとは思いながらも、溝口さんが仕事にコミットしていらっしゃる姿や、大企業で実績を残してこられた方々にも認められるような“約束は必ず守る”というような姿勢など、メディアを介して拝見して胸が熱くなりました。自分も頑張らなければという気持ちです。起業してもう少しで第1期が終わるのですが、FiNCも2期目以降に一気に拡大していった印象があるので、私も2年目は飛躍の年にしていきたいなと思っています。

-10,000日目での起業というのは、具体的にいつ頃から意識し始めたのですか?

浜崎:26歳くらいでしょうか。学生の頃からずっと起業には関心を持っていたのですが、24、25歳くらいから現実的なこととして考えはじめました。そのタイミングで溝口さんの「生まれて10,000日目に起業した」を知り、そこから強く意識し始めました。

-メディア関連のお仕事を選んだのも起業を意識してのことだったのですか?

浜崎:いえ、そういうわけではなかったのです。当初、忙しくてサロンに行けないキャリアウーマンとネイリストやエステティシャンなどをつなぐウェブサービスでの起業を考えていました。でもいざ始めてみると、そのサービスでお金を稼いでいくためには結構時間がかかるなと思い断念しました。それで、まずは食べていくための仕事として自分ができることは何だろうと考えた結果、大学時代から勉強していて業務の経験もあったメディア関連の仕事に落ち着いたという経緯です。

-大学時代からメディアの勉強をされていたのですね。メディアのお仕事の魅力というのはどういったところにあるのでしょうか?

浜崎:そうですね、本来は会えないようなすごい人に取材という名目で会えるところでしょうか(笑)。もともと本を読むことも文章を書くことも好きで、小説家や記者になりたいと思っていた時期もあったので、表現できること自体がこの仕事の魅力なのかもしれません。

どんな仕事をする時も“想い”を大切にしたい

-独立前はメディアディレクターのお仕事をなさっていたとのことですが、ディレクターというのは具体的にどのような業務を担うのでしょうか?

浜崎:ディレクター同士でも「ディレクターの仕事って何だろう」という話になることがあります。日本ディレクション協会という団体によると、「開発・デザイン以外のすべて」がディレクターの仕事であると定義されています。デザイナーとエンジニアの仕事以外は雑務を含めて全部ディレクターの業務であると。今のところ、個人的にはこの定義が一番しっくりきます。ですので、マーケティングや広報を担当することもありますし、社内の意思疎通を図るための資料作成や営業も含まれますし、プロジェクトの管理や進行管理、メディアであれば記事をいただく作業や編集作業も含まれます。

-なるほど。メディアの仕事とひとことで言っても、企画・立ち上げ・運用といった段階によって求められる役割も変わるのではないかと思いますが、浜崎さんの得意分野はどのあたりなのでしょうか?

浜崎:ある程度コンセプトが決まっているものをどうやって成長させるか、という仕事が一番長く経験している分野なので、得意ではあります。社名に“インキュベート”という言葉を入れているのですが、いずれは事業投資とか、メディアに特化したベンチャーキャピタルも立ち上げたいと思っています。最近では新規メディアの立ち上げもよくお手伝いさせていただいていて、楽しんでやっています。

-メディアの場合、当初企画したものが運用を回していくうちにコンセプトが変わっていくこともよくあるかと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか?

浜崎:はい、よくあるケースだと思います。ただ、個人的にはメディアのコンセプトというのは立ち上げた人の想いに依存すると思うので、そういう点では他のサービスと大きく違うわけではないと考えています。世の中にある商品やサービスが「こういうコンセプトでこういうデザインで、社会にこういう影響を与えたい」といった想いから作られているように、メディアもそういうプロセスを踏んで作られていて、結果として発信方法が動画やテキスト、イベントであるということですよね。

-新規立ち上げの場合、浜崎さんご自身も色々な想いを持たれていると思うのですが、第三者として参画する時にもその想いは反映できるものなのでしょうか?

浜崎:外部の人間としてお手伝いをしている時は、基本的には“想いはあるものの進め方がわからない”というケースに対して、あくまで黒子として支援をしていく形が多いです。決して想いを持っている人しか支援しないというスタンスではないのですが・・・(笑)。例えば“なんとなく作ってはみたものの、あまり効果もないのでやめようか迷っている”というのはよくある状況なのですが、そうなってしまうと私もお金をもらっている以上お互いに不幸になってしまいます。大事なのはあくまで「集客したい」、「商品を売りたい」といった目的をどう達成するかということですよね。ですので、メディアを作りたいというご相談を受けたとしても、リスティングなど他の広告手段の方が適しているような段階であれば、それは正直にお伝えするようにしています。目的を達成できる方法を見つけるのが大切なのであって、それがメディアであるべきとは必ずしも思いません。

-なるほど。クライアント側に想いがないというケースもゼロではないと思うのですが、仕事を選ばれる際のこだわりはありますか?

浜崎:独立するとお客様を選べるのがひとつの醍醐味だと思います。折角お声がけいただいたのにお断りするというのは、売上面で自分を苦しめることにもなるので、あとで帳簿を見ると「やっぱり受けた方がよかったかな」と悩んだりもしますが(笑)、でも「何が何でもこれを成功させたいです」と言われて、そこに私が少しでも支援できることがあるなら、お金のことは関係なくお仕事をさせていただきたいですね。いつかベンチャーキャピタルを作りたいという話をすると、軽い感じで「じゃあその時はぜひ投資してくださいね」とおっしゃる方が時々いらっしゃるのですが、正直そういう人には投資をしたくないなと思ってしまいます。でも、「どうしてもこの事業を成長させて社会に役立てたいのです」ということを言われると、むしろ私の方から「投資させてください」、「お手伝いさせてもらえませんか」と言いたくなります。こだわりとは違うかもしれませんが、最近そういうことを特に考えるようになりました。

無我夢中だった1年目を経て飛躍の2年目へ

-WEBディレクターとしてクライアントをお手伝いしながら、自分の事業を模索するというワークスタイルを1年間経験されてみていかがですか?

浜崎:私はそのワークスタイルを積極的に選んだというより、他に選択肢がなかったというのが正直なところです。早く自分で事業を立ち上げたいという思いはあるものの、実際には何から始めたらいいのかわからないので、まずはお声がけいただいた仕事をとにかく頑張る、という感じです。でもその分、実際に事業を立ち上げる段階になった時には、お金と時間のバランスについて悩むだろうなと思います。

-事業の立ち上げについては、「どうしたらいいのかわからない」というところから1年経ち、現在はどのようなお気持ちですか?

浜崎:まだまだ未熟ではあるのですが、今ならやれる気がしてきています。根拠は全くありませんが(笑)。この1年、とにかく無我夢中で「まずは死なない」ということを目標にやってきましたが、とにかく発信し続けていたら少しずつ協力してくださる方が出てきたのです。やはり訴え続けるが重要なのかなと今は思っています。私が本気だということが周りの方に伝わってこそ、「手伝ってやろうか」と思ってくださるのだと感じております。なんとか1期目を無事に終えて「あぁ、なんとか生きていける」と実感できたことで自信がついたのかもしれません。

-起業されたことで、人との付き合い方なども変わりましたか?

浜崎:そうですね。今になって思いますが、会社って最高ですね(笑)。生きるか死ぬかという点について、心配しなくていいわけじゃないですか。サラリーマンだった頃はこんな感覚はなくて、ある種の安心感の中で仕事をしていた気がします。上司や取引先とのトラブルなどで心を痛めることはあっても、死ぬ、死なないなんてことは全く考えたこともなかったですね。独立したことで全てが自己責任となり、誰も私を守ってくれないという状況になって、ようやく人とのご縁も含めて色々なことを考えるようになりました。

-なるほど。確かに、死ぬというのは極論かもしれませんが、何をすればいいのかわからないという不安は独立にはつきものかもしれませんね。

浜崎:はい、常に暗中模索している感覚はあります。だからこそ、無我夢中で動いているのかもしれません。周りの方から「いろいろやっているよね」と言われるのですが、とにかく可能性を探り続けるために動いていなければ、『止まったら死んでしまう』くらいの気持ちでいます(笑)。実際、何もしなければ誰にも注目されませんし、会社の看板も何もないのですから、とにかく動かなきゃと日々思っております。

-最後に、これから独立しようと考えている方にメッセージをお願いします。

浜崎:高校の同級生などに会って近況を聞かれた時、「独立して何とか続けられているよ」と言うと、「へぇー、食べていけてるんだ」というような反応が返ってきて、その度に「やっぱり世の中からすると“独立”イコール“不安定”や“食えない”という印象なのだな」と思います。でも私に関して言えば、お金の面でもサラリーマン時代よりずっといい金額をいただけていますし、もちろん不安はあるものの、以前から挑戦したかったことなのでとにかく楽しくて仕方ないのですね。

とはいえ、もともと私も「やりたいけど怖くて仕方ない」というタイプでした。しょっちゅうスタートアップ関連のイベントに足を運んで、違う意味の“意識高い系”のような感じだったと思います(笑)。ですので、昔の自分みたいな人を見ると、小さくてもいい、リスクをとらなくてもいい、会社にいながらでもいいから、とにかく始めてみたらいいのにと思います。とんでもない金額の借金をしたり、訴訟を起こされたりしない限り命まで取られることはないので、そんなに怖がる必要はないですよ。

 

 

-本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

起業1期目を振り返り、「不安の中、とにかく死なないことを目標にやってきた」とも「ずっとやりたかったことだったので楽しくて仕方がなかった」ともおっしゃっていた浜崎さん。一見相反することのようにも聞こえますが、本気でがむしゃらにやってきたからこそ、この上ない楽しさにも出会えたのかもしれません。

浜崎さんのようにフリーで仕事をしながらご自身の事業を模索していくという起業スタイルは、今後ますます増えていくことでしょう。これからもみらいワークスは、そのような皆さまへ働く場を提供するという形で“起業家支援”を続けていきます。