人生100年時代を迎える一方で、少子高齢化が加速、労働人口の減少が懸念されている日本では、フリーランスの存在感が高まりつつあります。その分野も、エンジニアやライターといったIT・クリエイティブ系から、マーケティング・広報などの職種まで、広範囲に及んでいます。
米GEのグループ企業であり、日本で長きにわたってヘルスケア事業を手がけるGEヘルスケア・ジャパン株式会社も、フリーランス含み多様な人材を積極的に活用している企業の一つです。今回は、GEヘルスケア・ジャパンの執行役員として同社のデジタルビジネスを牽引する三井俊男さんと、人事本部で採用や人材活用などに携わる小田愛子さんに、同社の人材活用についてお話をうかがいました。
必要な人材があれば、社内外問わず幅広く探し活用する
御社がフリーランス人材を活用された事例は、経済産業省の資料をはじめ、いろいろなところで拝見しております。
小田さん(以下、敬称略):過去事例としては、新規事業のサービスのマーケティング業務や広報業務があります。当社工場のなかでも最先端をいく拠点の一つである日野工場は、デジタル化を推し進めるショーケースとして多くのお客様から見学のご希望をいただいております。そこで、工場のブランディングを視野に入れた見学プログラムの作成や、お客様のニーズに応じた見学プランのコーディネート業務を、広報のプロフェッショナルであるフリーランスの方にお願いしました。
御社では、フリーランス人材を積極的に活用されたいというご意向ですか?
小田:当社としては、雇用形態にこだわることなく、幅広く優秀な人材を探しているというスタンスです。ですから、「ぜひともフリーランスの方に」と決めているわけではありません。ヘルスケアの会社として守らなければならない法規を遵守することが最優先、現存社員を活用していくことを第2優先として、そのうえで、それらだけでは足りない知見や経験、能力などがある場合には、社内外、雇用形態を問わず、必要な能力を求めるということです。
「仕事ができる」人を探したい
人材がなかなか見つからなかったとのことですが、どのような人材を探していらっしゃったのですか?
三井:求めていたのは、社内の人間とは違う視点と、新規事業の開拓から実際に事業を立ち上げ、運営するところまで遂行できる能力・経験をお持ちの方で、ビジネスレベルの英語が使える方。当社の場合、お客様はすべて日本の方ですが、新しい事業を進める際にはGEヘルスケア米国本社のチームと一緒に仕事をしていくことになります。ですので、英語力が不可欠なのです。
特に難しさを感じたのはどういった点?
小田:ヘルスケアの分野でビジネス・ディベロップメントの経験や能力があり、かつ英語が堪能、というタレントが市場に少ない点での難しさがありました。ようやく求めるスペックに合致する方がいたとしても、報酬の面で当社の予算と合わないということもありました。
三井:当社もいろいろなステークホルダーを抱えており、他の会社だったらスムーズにいくようなことでも社内調整が必要になるケースもあります。そこを一つひとつ乗り越えていかないといけない。お客様との交渉でも、社内の交渉でも、英語力に加え、交渉力や精神力を含めたタフなパワーが求められるのです。
日本においては、グローバルな環境で仕事の経験がある方がまだ少なく、英語力がフィルタのようになってしまい「仕事ができる人」「交渉力のある人」をふるい落としてしまうことになるというのは、ちょっと残念だなと感じます。英語でのコミュニケーションはもちろん、グローバルなビジネスの現場での交渉力や経験を持つ方が増えることを願っています。
そうした状況の中、みらいワークスにお声がけをいただきました。みらいワークスのプロフェッショナル人材については、どのようにお知りになったのですか?
小田:実は私は当社に入社する前、私自身の働き方としてフリーランスという選択肢を検討していた時期がありました。そのときにいろいろ調べていて、みらいワークスの人材マッチングサービスを知りました。当時の私は、みらいワークスに登録する「フリーランス人材の候補者」側だったわけですが、そこに集められている案件のレベルが質・量ともに非常に高かった印象があり、御社に問い合わせさせていただきました。ご紹介いただきました方にはもう1年近く仕事をお願いしていますが、さまざまな場面で助けられています。
プロとしてのすぐれた能力と社員との相性が事業を推進
フリーランス人材の方が、どのような仕事をしているか教えてください。
三井:基本的に、当社の新規事業リーダーと2人でタッグを組んで動いてもらっています。新規事業リーダーの社員は非常にクリエイティブな発想を持つタイプで、今回のプロジェクトを立案したのも彼です。フリーランスの方には彼の議論の相手になってもらいながら、そこで生まれたアイデアを具現化するためのさまざまな仕事をしてもらっています。アイデアを事業にするためには、ゴールを設定し、ゴールまでのプランを立て、組むパートナーを選定して、実際にその計画をこぎ出すといったプロセスが必要です。そういうところを、彼女が主体的に動いて進めてくれています。
彼女が入ってくださったことで、必要な人をきちんと巻き込み、チームとして動いていけるようになりました。スキルはもちろん、パートナーシップを組む相手として相性がよかった、すばらしいマッチングだったと思います。
仕事のスタイルとしては、社員の方が一つひとつのタスクを指示するというかたちですか?
三井:こちらからは、ミッションとステークホルダーを伝えるだけです。誰にどういうかたちで話を通していくか、ステークホルダーをいかにうまく動かしリレーションを構築していくか、チームとしてタスクをどのように進めていくか、といったことは全部ご本人が主体的に考えて進めてくださっています。社内調整や社外のパートナーづくりの目的で彼女が話をしたいと考えた相手につなぐ必要がある場合は、もちろんこちらから紹介しますが、そのあとはすべて彼女が自分で話を進めています。常に質の高い成果を上げてくださっており、実行力をお持ちで、非常に助かっています。