SAPのモジュールとは?FI・CO・SD・MMなど種類を徹底解説

作成日:2026/02/08

企業の基幹システムERPとして広く使われるSAPは、財務会計や販売管理などの業務領域ごとに「モジュール」と呼ばれる機能群で提供されています。

 

各モジュールがデータを連携させることで、販売・購買・会計といった業務を一つの流れとして管理できます。

 

本記事では「SAPモジュールとは何か」という基本の知識を説明し、主要モジュールの種類と役割をわかりやすく解説します。

 

特にFI/CO(会計)やSD/MM(ロジスティクス)は、多くの企業で使われる中核領域です。まずは各モジュールがどの業務を担当するのかを整理し、SAP全体のつながりをつかみましょう。

 

目次

 

■SAPモジュールの全体像を掴む基礎知識
(1)SAPモジュールとは
(2)SAPの主流はS/4HANAに移行中

 

■SAP ERPの主要モジュール一覧【機能領域別】

 

■【会計系】SAPモジュールの機能と役割
(1)FI(財務会計)
(2)CO(管理会計)

 

■【ロジスティクス系】SAPモジュールの機能と役割
(1)SD(販売管理)
(2)MM(在庫購買管理)
(3)PP(生産管理)
(4)QM(品質管理)
(5)EWM(拡張倉庫管理)

 

■【人事領域】SAPはSuccessFactorsへの移行推奨

 

■【その他】特定の業務領域に対応するSAPモジュール
(1)PS(プロジェクト管理)
(2)PM(プラント保全)

 

■SAP初心者が最初に学ぶべきおすすめのモジュール
(1)会計系かロジスティクス系
(2)キャリアパスから選択する

 

■SAPモジュールに関連するよくある質問
(1)モジュールを後から追加で導入できる?
(2)SAP S/4HANAのモジュールは従来のERPとどう違う?
(3)S/4HANA移行でモジュール構成はどう考える?
(4)モジュール選定はどのように進めるといい?

 

■まとめ

 

SAPモジュールの全体像を掴む基礎知識

ビルの屋上に設置された青色の「SAP」ロゴ看板

SAPを理解する上では「モジュール」という考え方を前提とし、全体像を捉えることが重要です。SAPは、財務・販売・購買・生産といった業務領域ごとに機能が整理されており、これらを組み合わせて利用します。

 

ここでは、モジュールの基本的な意味と、現在のSAP製品の主流であるSAP S/4HANAへの移行について解説します。基礎知識を把握し、SAPの全体像や各機能の関連性を理解するための土台としましょう。

 

(1)SAPモジュールとは

SAPモジュールとは、財務・販売・購買・生産などの「企業の特定の業務」に対応する機能を、ひとまとまりにした単位です。

 

SAPは多機能なERPのため、業務領域ごとに機能が整理されており、必要な領域から段階的な導入・拡張が可能です。

 

モジュール名は、FI(財務会計)やSD(販売管理)のような英語名称の略称で呼ばれます。

 

各モジュールは同じデータを参照しながら処理がつながるため、部門をまたぐ業務でも情報の整合性を保ちやすくなります

 

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(2)SAPの主流はS/4HANAに移行中

2026年現在、SAPの主流製品は、旧世代の「SAP ERP(ECC 6.0)」から最新世代の「SAP S/4HANA」へと移行が進んでいます。

 

背景には、SAP Business Suite 7(ECCなど)のメインストリーム保守が2027年末までとされていることがあり、計画的な移行が企業の課題になっています。ただし、条件により延長保守の選択肢もあります。

 

S/4HANAの特徴は、インメモリデータベース「SAP HANA」を基盤とし、高速な処理や分析を可能とする点です。また、SAP Fioriなどによりユーザー体験の改善も進みました。

 

さらにデータ構造の刷新などにより、従来と比べて機能の再整理・強化が行われています。これからSAPを学ぶ、あるいは導入を検討する際には、S/4HANAを前提とした情報を参照することが重要です。

 

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SAP ERPの主要モジュール一覧【機能領域別】

指でタッチ操作される円形の「SAP」アイコンと、周囲に配置された業務機能を示すアイコン

SAPには多くのモジュールがありますが、まず押さえたいのは「会計系」と「ロジスティクス系(ロジ系)」です。どちらも企業の基幹業務を支える中核領域で、SAPを理解するうえで避けて通れません。

 

ここでは、この記事で扱う主要モジュールを機能領域別に一覧で紹介します。

 

▼会計系モジュール(お金の動きを記録・分析する)

  • ・FI(Financial Accounting):財務会計。仕訳、債権・債務、固定資産、決算など外部報告を担う
  • ・CO(Controlling):管理会計。原価や採算の見える化を通じて、社内の意思決定を支える

 

▼ロジスティクス系モジュール(モノの流れを管理する)

  • ・SD(Sales and Distribution):販売管理。見積から受注、出荷、請求までの販売プロセスを管理する
  • ・MM(Materials Management):購買・在庫管理。調達と在庫の管理を通じて欠品や過剰在庫を防ぐ
  • ・PP(Production Planning):生産管理。需要に合わせた生産計画と製造実行を支える
  • ・QM(Quality Management):品質管理。受入・工程・出荷など各場面の検査と品質記録を管理する
  • ・EWM(Extended Warehouse Management):拡張倉庫管理。大規模・複雑な倉庫業務に対応する

 

これらのモジュールは、それぞれ独立しているように見えて、実際には一つの業務プロセスとして密接に連携しています。

 

【会計系】SAPモジュールの機能と役割

オフィスの机で、書類とノートパソコンを前に打ち合わせを行うビジネスシーン

会計系モジュールは、企業活動で生じるお金の動きを記録・整理するための機能のまとまりです。

 

SAPでは、社外への報告を担う FI(財務会計) と、社内の経営管理を担う CO(管理会計) が中核となります。ここでは、FIとCOについて詳しく解説します。

 

(1)FI(財務会計)

FI(Financial Accounting)は、決算書の作成など社外向けの財務報告に必要な会計処理を担うモジュールです。

 

FIを構成する主な機能は、総勘定元帳(GL)、債権・売掛管理(AR)、債務・買掛管理(AP)、固定資産管理(AA)などです。

 

FIでは、日々の取引データを会計情報として記録し、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などの財務諸表を作成・集計します。

 

また、販売(SD)や購買(MM)などで発生した取引は会計伝票としてFIに記録され、仕訳として会計に反映されます。

 

(2)CO(管理会計)

CO(Controlling)は、社内の経営管理に使う数値を整理・分析する管理会計のモジュールです。

 

COは複数のサブ領域(サブ機能)で構成されます。

 

例えば、部門別のコストを管理する原価センタ会計や、製品・サービスごとの採算を把握する製品原価計算、収益性分析(CO-PA)などがあります。

 

COはFIの会計データとつながって動く場面が多く、実務ではFIとあわせて設計・導入されることが一般的です。

 

【ロジスティクス系】SAPモジュールの機能と役割

デスクに座り、ノートパソコンで業務作業を行うビジネスパーソンの手元

ロジスティクス系(ロジ系)モジュールは、販売・購買・在庫・生産など、企業のモノの流れに関わる業務を管理する領域です。SAPではロジスティクス領域を「LO(Logistics)」と呼ぶこともあります。

 

受注から出荷、発注から入庫といった一連の業務をつなげて扱えるため、在庫状況や進捗を共有しやすくなります。

 

ここからは、SD(販売)、MM(購買・在庫)、PP(生産)などの代表的なモジュールを順に解説します。

 

(1)SD(販売管理)

SD(Sales and Distribution)は、製品やサービスの販売に関する一連の業務プロセスを管理するモジュールです。

 

見積、受注、出荷、請求といった流れをカバーし、営業活動と出荷・請求業務をつなげて扱えます。例えば、受注を登録すると在庫や出荷の処理と連動し、出荷後は請求データが作成されます。

 

また、販売取引の情報は財務会計(FI)にも反映されるため、売上計上や債権管理などの会計処理につながります。

 

加えて、受注・出荷・請求などの販売実績データを集計できるため、売上の傾向把握や計画立案の材料にすることも可能です。

 

(2)MM(在庫購買管理)

MM(Material Management)は、原材料や部品、商品などの購買・調達活動と、それらの在庫管理を担うモジュールです。

 

欠品や過剰在庫を避けるため、購買依頼から発注・見積依頼・入荷処理・請求書照合といった購買プロセスを管理し、必要なモノを必要なタイミングで確保する仕組みを支えます。

 

また、入出庫や棚卸による在庫調整など、在庫を正確に管理する機能も備えており、品目マスタや仕入先マスタなどの基本データも扱います。

 

(3)PP(生産管理)

PP(Production Planning)は、主に製造業で利用される、生産計画から製造実績の管理までを扱うモジュールです。

 

需要や販売計画を踏まえて、いつ・何を・どれだけ作るかを計画し、現場の製造指示や完了確認、実績管理につなげます。

 

具体的には、資材所要量計画(MRP)によって必要な部品・原材料の量と手配時期を算出し、製造指図を発行。その後、製造の進捗や実績を登録し、完成品の入庫までを管理します。

 

(4)QM(品質管理)

QM(Quality Management)は、製品の品質を維持・向上させるための業務を支援するモジュールです。

 

調達・生産・出荷といった各プロセスに品質検査や記録の仕組みを組み込み、品質のばらつき・不具合の早期発見につなげます。

 

例えば、原材料の受入時の検査(MM)、製造工程内の検査(PP)、出荷前の最終検査など、段階に応じた検査を管理します。

 

あわせて、検査結果の記録、不具合情報の管理、品質証明書の作成といった機能も備えています。

 

(5)EWM(拡張倉庫管理)

EWM(Extended Warehouse Management)は、複雑で大規模な倉庫業務に対応するための高度な倉庫管理機能を提供するモジュールです。

 

従来のMMモジュールに含まれる倉庫管理機能だけでは対応が難しい、多品目の在庫管理や詳細なロケーション管理・人員計画などを実現するために利用されます。

 

例えば、PPモジュールの製造指図やMMモジュールの購買発注情報を受け、リアルタイムな在庫状況に基づき、倉庫内でのピッキングや棚入れといった作業指示を自動で最適化。

 

これにより、倉庫業務の効率化と在庫精度の向上を図ります。

 

【人事領域】SAPはSuccessFactorsへの移行推奨

人材や組織を示すアイコンが浮かぶデジタル画面を操作する、ビジネスパーソンの手

従来、SAPの人事管理はオンプレミスの「SAP ERP HCM(SAP HCM)」で運用する企業が多くありました。

 

一方で現在、SAPは、人事のクラウドスイートである「SAP SuccessFactors」への移行を推奨しており、各社で移行・併用(ハイブリッド)の検討が進んでいます。

 

この流れの背景には、人事の役割が「給与計算や勤怠管理を正確に回すこと」から、「人材を経営資源として活用すること」へと変化している点があります。

 

近年は、タレントマネジメントや後継者育成、従業員エンゲージメントの向上など、経営判断に直結する人事施策が重視されるようになりました。

 

SAP SuccessFactorsは、こうした戦略人事の領域をクラウドで柔軟に支援できる点が評価され、SAPの人事領域における主要な選択肢の一つとして位置づけられています。

 

【その他】特定の業務領域に対応するSAPモジュール

グラフや資料を確認しながら、電卓とタブレットを使って分析を行う様子

SAPには、会計やロジスティクスのような基幹業務だけでなく、不動産など業界別の機能や、特定の業務領域に特化したモジュールも用意されています。

 

また、複数の領域で共通して使われる横断的な機能群として、CA(Cross-Application Components)のような区分もあります。

 

ここでは代表例として、PS(プロジェクト管理)とPM(プラント保全)を取り上げ、それぞれの役割を解説します。

 

(1)PS(プロジェクト管理)

PS(Project System)は、建設やエンジニアリング、研究開発など、期間・予算が定められたプロジェクトを対象に、計画から実行、完了までの進行管理を支援するモジュールです。

 

プロジェクトでは、スケジュールやコストの状況を把握し、遅延や予算超過の兆候を早めに捉えることが重要です。

 

PSモジュールでは、プロジェクト構造をWBS(作業分解構成)として階層的に定義し、タスクの進捗や予算・実績をタイムリーに管理できます。

 

これがプロジェクト全体の見える化と、採算管理の精度向上につながります。

 

(2)PM(プラント保全)

PM(Plant Maintenance)は、工場設備や機械などの物理的な資産を対象に、安定稼働を維持するための保全活動を管理するモジュールです。

 

設備の故障による生産停止は企業にとって大きな損失となるため、計画的なメンテナンスを通じて、故障リスクや停止時間を抑えることが重要です。

 

PMモジュールでは、設備の台帳管理、定期点検の計画、故障発生時の対応(通知・作業指示)や作業実績の記録などを扱います

 

これにより、設備のライフサイクル全体にわたるコストや履歴を可視化し、予防保全の精度向上に貢献します。

 

SAP初心者が最初に学ぶべきおすすめのモジュール

デジタル画面上に表示された「SAP」の文字に指を伸ばして操作する様子

SAPモジュールは範囲が広いため、初心者は「どれから学ぶか」を先に決めたほうが効率的です。

 

すべてのモジュールを一度に追うのは現実的ではないため、自身の業務経験や目指すキャリアに合わせて優先順位を付けましょう。

 

ここでは、SAPコンサルタントなどを目指す初心者に向けて、学習するモジュールを選ぶ際の代表的な2つの考え方を紹介します。

 

(1)会計系かロジスティクス系

最初のステップとして、SAPの中核である会計系かロジスティクス系(ロジ系)のいずれかの領域に絞って学習を進めることをおすすめします。

 

FI/CO(会計系)やSD/MM(ロジスティクス系)は、多くのSAP導入企業で利用されているコアモジュールであり、幅広い業種で使われている点が特徴です。

 

例えば、経理や財務の業務経験がある場合はFI/CO、営業・購買・生産管理などの経験がある場合はSDやMMから始めると、既存の業務知識と結び付けて理解しやすく、学習効率が高まります。

 

(2)キャリアパスから選択する

目指したいキャリアパスから逆算して、学習すべきモジュールを選択することも効果的なアプローチです。

 

SAPコンサルタントやエンジニアは、特定のモジュール領域に専門性を持つことが多いため、将来どの分野に関わりたいかを意識することが重要です。

 

例えば、経営管理や収益改善に関心がある場合はCO、サプライチェーン全体の最適化に携わりたい場合はSDやMM、PPを重点的に学ぶといった選択肢が考えられます。

 

また、開発者を目指す場合は、モジュール知識に加えてABAPなどの開発スキルを身に付けることで、対応できる領域が広がります。関連する認定資格の取得も、キャリア形成の一助となります。

 

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SAPモジュールに関連するよくある質問

吊り下げられた「Q&A」の文字

SAPの導入や運用を進める中で、モジュールに関して疑問が生じることは少なくありません。

 

そこでここでは、実務でよく尋ねられる質問とその回答をまとめました。プロジェクトの計画段階や日常業務でも、ぜひ参考にしてください。

 

(1)モジュールを後から追加で導入できる?

モジュールを後から追加で導入することは可能です。一度に全てのモジュールを導入する「ビッグバン導入」は稀で、多くの企業は段階的に導入範囲を拡大していきます。

 

まずは財務会計(FI)や販売管理(SD)など基幹となるモジュールを導入し、業務が安定した後に生産管理(PP)などを追加するアプローチが一般的です。

 

(2)SAP S/4HANAのモジュールは従来のERPとどう違う?

S/4HANAは、基本的な業務機能は踏襲しつつ、一部のモジュールが統合・拡張されている点が、従来のERPとの大きな違いです。

 

S/4HANAの高速データベース性能を活かすため、例えば財務会計(FI)と管理会計(CO)のデータ構造が統合され、リアルタイムな分析機能が強化されました。

 

また、拡張倉庫管理(EWM)や輸送管理(TM)が標準機能に組み込まれています。

 

(3)S/4HANA移行でモジュール構成はどう考える?

現行の業務プロセスとシステムの課題を洗い出し、S/4HANAの新機能を活用してどのように業務改革を実現したいか、という視点で見直すことが重要です。

 

単に既存のモジュール構成をそのまま移行するのではなく、将来のビジネス戦略に基づいた構成を検討しましょう。

 

例えば、これを機に、これまで別システムで管理していた業務をEWMなどの標準モジュールに統合するなどが考えられます。

 

(4)モジュール選定はどのように進めるといい?

まず自社の業務プロセスを詳細に分析し、SAPの標準機能でどこまで対応できるかを見極める「フィット&ギャップ分析」から始めるのが一般的です。

 

極力、SAPの標準機能に業務プロセスを合わせることで、開発コスト(アドオン)を抑制し、将来のシステムメンテナンスを容易にすることができます。その上で、不足する機能を追加開発するか検討しましょう。

 

まとめ

木製ブロックで作られた「SAP」の文字を指で並べている様子

SAPのモジュールは、財務・販売・購買・生産などの業務領域ごとに機能を整理した単位で、同じデータを参照しながら処理を連携させる仕組みです。

 

中核となるFI/CO(会計)とSD/MM(ロジスティクス)を押さえると、取引の発生から会計への反映までが一連の流れとして理解でき、SAP全体の見取り図がつかめます。

 

これからSAPを学ぶ、あるいは導入や移行を検討する場合は、S/4HANAを前提に情報を整理しましょう。まずは自分の業務に近いモジュールから入り、プロセスのつながりまで追うのが近道です。

 

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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)

 

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