個人事業主はインボイス制度に登録すべき?メリット・デメリットと対策

最終更新日:2026/01/05
作成日:2022 /05/13

 

インボイス制度の導入を受け、登録を行うべきかどうかの判断を迫られている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

 

インボイス制度(正式名称:適格請求書保存方式)とは、わかりやすく言うと消費税の納税額を正確に計算し、国に適切に納めるための新しいルールです。

 

取引先が課税事業者で、自分がインボイスを発行できない個人事業主の場合、取引先の納税額に悪影響を及ぼすかもしれません。

 

この記事では、個人事業主のインボイス登録に関するメリットとデメリット・対策を解説します。

 

目次

 

■インボイス制度が個人事業主にもたらすデメリット
(1)免税事業者は不利な立場となる
(2)免税事業者が値引きを求められる懸念がある
(3)免税事業者は取引がなくなる懸念がある

 

■個人事業主が適格請求書発行事業者になった場合のデメリット
(1)売上1,000万円以下でも消費税の支払い義務がある
(2)消費税に関する税務の知識が求められる
(3)税区分に注意して帳簿を付けなければならない
(4)税理士への依頼が必要となることもある

 

■個人事業主が適格請求書発行事業者になった場合のメリット
(1)取引先との関係を維持しやすい
(2)新規の取引先と関係を築きやすい
(3)個人事業主としての信頼度が上がる

 

■個人事業主はインボイス制度に登録すべき?2つの判断基準
(1)取引先が課税事業者か・免税事業者かを確認
(2)インボイス制度の経過措置が終わるまで待つ場合

 

■個人事業主ができるインボイス制度の対策
(1)取引先と価格交渉をする
(2)新規営業や販路拡大に取り組む
(3)売上を伸ばす
(4)適格請求書発行事業者になる

 

■適格請求書発行事業者になるなら知っておきたいポイント
(1)消費税の「簡易課税制度」
(2)消費税が軽減される「2割特例」
(3)政府の相談窓口

 

■インボイス制度の登録申請書を提出する方法
(1)郵送
(2)e-Tax

 

■個人事業主とインボイス制度に関連するよくある質問
(1)個人事業主がインボイス制度に登録しないとどうなるの?
(2)インボイス制度で個人事業主の廃業が増える?
(3)インボイス制度の影響を受けない個人事業主はどんな人?
(4)開業届未提出の個人事業主もインボイス制度に登録できる?
(5)インボイス制度に対応した請求書の書き方は?

 

■まとめ

 

インボイス制度が個人事業主にもたらすデメリット

日本語で記載された請求書と電卓、ペンが机の上に並んでいる様子

インボイス制度の導入は、個人事業主のうち、これまで消費税の納税が免除されていた免税事業者にとって、次のようなデメリットを及ぼす可能性があります。

 

  1. (1)免税事業者は不利な立場となる
  2. (2)免税事業者が値引きを求められる懸念がある
  3. (3)免税事業者は取引がなくなる懸念がある

 

どれも、個人事業主がインボイス制度への対応を判断するうえで、見過ごせないポイントです。ここで、それぞれの内容を詳しく解説します。

 

(1)免税事業者は不利な立場となる

インボイス制度下において、インボイスを発行できない免税事業者は取引において不利な立場になる可能性があります。

 

理由は、免税事業者からの仕入れでは、取引先である課税事業者が仕入税額控除を受けられず、結果として取引先の納税負担が増えてしまうためです。

 

例えば、課税事業者がデザイナーに11万円(うち消費税1万円)の業務を依頼した場合、相手がインボイス発行事業者であれば、取引先は支払った消費税1万円分を納税額から控除できます。

 

しかし、免税事業者からの請求書では消費税1万円分の控除が適用されません。同じサービスであれば、取引先はインボイスを発行できる事業者を選ぶ可能性が高いでしょう。

 

(2)免税事業者が値引きを求められる懸念がある

免税事業者は、取引先である課税事業者から値引きを求められる可能性がある点もデメリットの一つです。

 

仕入税額控除を受けられないことによる税負担の増加分を、取引先が報酬の引き下げによって補おうとした場合に、個人事業主は値引き交渉される可能性があります。

 

ただし、免税事業者であることを理由に一方的に取引価格を引き下げることは、下請法などの観点から問題となる場合があります

 

必ずしも違法になるわけではありませんが、納得できないときは、中小企業庁や公正取引委員会などの公的窓口への相談も検討しましょう。

 

(3)免税事業者は取引がなくなる懸念がある

免税事業者のままでいることで、最悪の場合、取引先から契約を打ち切られるリスクも考えられます。

 

取引先である課税事業者が自社の税負担増加を回避するため、インボイスを発行できる事業者との取引へ切り替える可能性があるからです。

 

これまで継続的に取引があったとしても「インボイス制度への対応方針として、今後は適格請求書発行事業者とのみ取引を行う」と一方的に通告されるケースも起こり得ます。

 

ただし、インボイス制度への未対応を理由に十分な協議もなく取引を打ち切る行為は、問題となる可能性があります

 

不当だと感じた場合は泣き寝入りせず、中小企業庁や公正取引委員会などの公的窓口を活用することも選択肢の一つです。

 

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個人事業主が適格請求書発行事業者になった場合のデメリット

デスクに座り、ノートパソコンのキーボードを操作している女性と書類

インボイス制度に登録するということは、国税庁のシステムに「適格請求書発行事業者」として登録されることです。

 

適格請求書発行事業者になると、課税事業者である取引先との関係を維持しやすくなる一方、個人事業主自身には新たな負担が生じます。

 

特にこれまで免税事業者だった場合は、納税や事務作業の面で影響が出やすいため、登録後のデメリットも把握しておきましょう。

 

ここでは、適格請求書発行事業者になった場合に想定される主なデメリットについて解説します。

 

(1)売上1,000万円以下でも消費税の支払い義務がある

適格請求書発行事業者になると、年間の課税売上が1,000万円以下であっても消費税の納税義務が発生します。

 

これは、適格請求書(インボイス)を発行できるのが課税事業者のみと定められており、登録申請を行うと自動的に課税事業者になるためです。

 

これまで免税事業者だった方も、登録後は免除されていた消費税を国に納める必要があります。

 

例えば、年間売上が660万円(うち消費税60万円)の場合、これまで収入となっていた消費税分を納税資金として確保しなければなりません。

 

これにより手取り額が減少するため、場合によっては事業の運転資金計画に影響を及ぼす懸念もあります。

 

(2)消費税に関する税務の知識が求められる

適格請求書発行事業者になると、従来の所得税の確定申告に加え、消費税の申告・納税に関する新たな税務知識が必要です。

 

消費税の確定申告という手続きが新たに発生するため、これまで以上に経理事務が複雑化します。

 

例えば、消費税の納税額を計算する方法(原則課税や簡易課税制度など)を理解し、自身の事業形態に最も適したものを選択しなければなりません。

 

また、事務負担を軽減できる簡易課税制度を利用するには、原則、適用を受けたい課税期間が始まる前に、所定の届出書を提出する必要があります。

 

こうした制度を正しく理解しないまま登録すると、本来より納税額が多くなってしまったり、届出の期限を逃して希望する制度を選べなかったりする可能性があります。

 

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(3)税区分に注意して帳簿を付けなければならない

消費税の申告義務が生じると、経費の領収書を始めとした日々の帳簿付けでも取引内容に応じた「税区分」を意識しなければなりません。

 

標準税率(10%)や軽減税率(8%)のほか、非課税や不課税など、取引の性質ごとに正しく区分し、消費税を考慮した仕訳を行う必要があります。

 

同じ飲食店を利用しても店内利用は10%、持ち帰りは8%になるなど、条件によって税率が変わるケースに注意が必要です。

 

適格請求書(インボイス)を発行するには、適用税率や税率ごとの消費税額等の記載が求められるため、税率の判断ミスは請求書の不備にもつながりかねません。

 

税区分を誤らないための確認作業が増え、経理にかかる時間と負担が大きくなる点はデメリットといえるでしょう。

 

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(4)税理士への依頼が必要となることもある

消費税申告が必要になると、これまでの所得税申告に比べて確認事項が増え、事務作業の負担が大きくなることがあります。

 

実際、消費税申告書の作成は「一般課税か簡易課税か」などによって手順が分かれるため、慣れていないと時間がかかりやすい点に注意が必要です。

 

もちろん、申告は自分で行うことも可能です。ただし、取引数が多い場合や税区分の判断に迷う場合・制度がよくわからない場合などでは、税理士への依頼を検討する必要もあるでしょう。

 

税理士に依頼すれば、記帳や申告にかかる手間を減らせる一方で、当然ながら報酬などの費用が発生します。事務にかける時間とコストのバランスを見ながら、自分に合う方法を選びましょう。

 

 

個人事業主が適格請求書発行事業者になった場合のメリット

スーツ姿の人物が握手をしている様子

適格請求書発行事業者としてインボイス制度に登録すると、個人事業主は次のようなメリットを得られます。

 

  1. (1)取引先との関係を維持しやすい
  2. (2)新規の取引先と関係を築きやすい
  3. (3)個人事業主としての信頼度が上がる

 

ここで、それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

 

(1)取引先との関係を維持しやすい

適格請求書発行事業者として登録することで、取引先側に追加の税負担や事務的な配慮を求める必要がなくなり、従来どおりの取引関係を続けやすくなります

 

インボイスを発行できるため、取引先は仕入税額控除を継続して受けられ、制度対応を理由とした条件変更や取引見直しのリスクを抑えられるためです。

 

特に、法人や課税事業者とのBtoB取引が中心の場合、インボイスへの対応可否は取引継続の前提条件となるケースも少なくありません。

 

(2)新規の取引先と関係を築きやすい

適格請求書発行事業者として登録していることで、課税事業者との新規取引を始めやすくなる点もメリットです。

 

新たに取引を検討する段階で、インボイスを発行できるかどうかが条件として確認されるケースは少なくありません。特に、法人や課税事業者とのBtoB取引では、仕入税額控除の可否が取引判断に影響することがあります。

 

そこで、あらかじめインボイス制度に登録していれば、制度対応を理由に取引を断られるリスクを抑えられます。追加の税負担や事務対応の必要もなく、取引開始時の説明や調整がスムーズに進みやすくなるでしょう。

 

(3)個人事業主としての信頼度が上がる

適格請求書発行事業者の登録は、取引先から見て、事業者としての信頼性を高める一因になります。

 

インボイス制度に対応していることで、税務や制度への理解があり継続的な取引を前提に事業を行っているという印象を持たれやすくなるためです。

 

新規取引や契約前の確認段階では、登録番号の有無がチェックされることもあり、制度対応ができていること自体が一定の安心材料となります。

 

もちろん、登録しているだけで信頼が保証されるわけではありませんが、制度面での不安要素を減らせる点は、取引を円滑に進めるうえでのメリットといえるでしょう。

 

個人事業主はインボイス制度に登録すべき?2つの判断基準

適格請求書発行事業者の登録用紙を拡大している様子

インボイス制度に登録するか、それとも免税事業者のままでいるかという問いに、すべての個人事業主にとっての唯一の正解はありません

 

重要なのは、自身の事業の実態に即して、メリットとデメリットを比較検討することです。

 

特に、取引先の状況や制度の経過措置を理解することが、適切な判断を下す鍵となります。ここでは、登録の要否を判断するための2つの具体的な基準について解説します。

 

(1)取引先が課税事業者か・免税事業者かを確認

インボイス制度への登録を判断するうえで、まず確認したいのが、主な取引先が課税事業者かどうかです。

 

課税事業者は仕入税額控除を受けるためにインボイスを必要としています。

 

取引先の多くが課税事業者である場合、インボイス制度に登録しないと、取引条件の見直しや取引縮小につながるかもしれません

 

一方、取引先が一般消費者や免税事業者であれば、インボイスを求められないケースも多く、登録しなくても事業への影響は限定的です。

 

また、現在の取引先だけでなく、今後どのような顧客層を広げていきたいかという事業展開の方向性も判断材料になります。

 

将来的に課税事業者との取引を増やしたい場合には、早めにインボイス制度の登録を検討しても良いでしょう。

 

(2)インボイス制度の経過措置が終わるまで待つ場合

インボイス制度への登録に迷う場合は、経過措置の期間を活用して、すぐに結論を出さず様子を見るという判断も一つの選択肢です。

 

免税事業者からの仕入れでも一定割合の仕入税額控除が認められるため、取引先(課税事業者)の負担は段階的に増える仕組みとなっています。

 

具体的には、2026年9月30日までは仕入税額相当額の80%、2029年9月30日までは50%の控除が可能です。

 

もっとも、負担がゼロになるわけではなく、経過措置は期限付きです。

 

期限が近づくほど取引条件の見直しが起きやすくなるため、期間中に取引先の反応や自社の顧客構成や資金繰りを確認し、必要なら無理なく準備を進めたうえで登録を早めに検討しましょう。

 

個人事業主ができるインボイス制度の対策

机に向かって並び、ノートパソコンと書類を見て仕事をしている様子の二人

インボイス制度による影響は、免税事業者・課税事業者いずれの場合でも、事前の対応次第で軽減できる可能性があります

 

制度のデメリットを正しく理解したうえで、取引先との関係や事業の方向性に応じた対策を講じることが重要です。

 

ここでは、個人事業主が実務面・取引面で取り組める具体的な対策を紹介します。

 

(1)取引先と価格交渉をする

インボイス制度に対応しない場合、取引先から取引価格について協議を求められることがあります。そのような際は、取引を継続するための一つの対策として、価格や条件について話し合いましょう

 

取引価格の見直し要請があった場合、その過程や内容によっては独占禁止法や下請法に抵触する可能性があるため、まずは感情的に判断せず、冷静に取引先の意向や背景を確認することが重要です。

 

公正取引委員会は、インボイス制度を契機とした取引価格の交渉自体は直ちに違法ではないとしています。

 

その一方で、免税事業者を理由に消費税相当額を支払わない行為は、下請法で禁止される「下請代金の減額」に該当し違法となる可能性があるとの見解を示しています。

 

状況によっては、取引条件を整理したうえで継続可否の判断も視野に入れましょう。

 

参考:公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

 

(2)新規営業や販路拡大に取り組む

インボイス制度による影響を抑えるには、新規営業や販路拡大に取り組み、特定の取引先への依存度を下げることも有効な対策です。

 

課税事業者との取引が中心の場合、インボイス未対応が事業に与える影響は大きくなりやすいため、取引先の分散はリスク軽減につながります

 

例えば、一般消費者向けのサービスや免税事業者との取引・インボイスを求められにくいプラットフォームを活用すると、制度の影響を受けにくい販路を確保できる可能性があります。

 

ただし、新規営業は成果が出るまでに時間がかかることもあるため、短期的な対策というより中長期的な視点で取り組みましょう。

 

(3)売上を伸ばす

根本的なインボイス制度の対応策として、事業全体の売上や収益性を高める取り組みを行いましょう

 

もし消費税の納税負担や一部の取引条件の見直しが生じても売上が増えれば事業全体で対応しやすくなるためです。

 

具体的には、サービスの付加価値を高めて単価を見直す、得意分野に注力して効率的に売上を伸ばすなど、事業内容そのものを強化する方法が考えられます。

 

ただし、課税売上高が1,000万円を超えると、インボイス登録の有無にかかわらず課税事業者となる点に注意しましょう。

 

制度への対応だけに目を向けるのではなく、長期的な事業の安定につながる成長戦略として捉えることが重要です。

 

(4)適格請求書発行事業者になる

様々な対策を検討した結果、最終的に適格請求書発行事業者になることも、有力な選択肢の一つです。

 

特に、売上の大部分を課税事業者に依存している場合、インボイスの登録をしないことによる取引喪失のリスクが非常に大きいと考えられます。そのため、制度に対応し登録する意義は大きいといえるでしょう。

 

確かに、納税負担の増加や事務作業の複雑化といったデメリットはあります。ただし、事業の継続性や取引関係の維持を重視するのであれば、負担を受け入れたうえでの登録の選択も十分に検討の余地があります。

 

制度に一時的に対応するのではなく、自身の事業環境や今後の展開を踏まえて冷静に判断することが重要です。

 

適格請求書発行事業者になるなら知っておきたいポイント

「POINT」と書かれた木製ブロックが木目のテーブルの上に置かれている様子

免税事業者の個人事業主が、適格請求書発行事業者になることを決断した場合、スムーズに移行するには知っておくべき制度があります。

 

登録申請の方法はもちろんですが、納税に伴う負担を軽減する特例措置なども存在します。結果的に消費税負担を抑える節税的な効果が期待できる場合もあるため、ここで確認しましょう。

 

(1)消費税の「簡易課税制度」

基準期間(前々年)の課税売上高が5,000万円以下の事業者は「簡易課税制度」を選択できます。簡易課税制度は消費税の申告にかかる事務負担を軽減するための仕組みです。

 

原則的な計算方法では、売上にかかった消費税額から、仕入れや経費で支払った消費税額を差し引いて納税額を算出します。

 

簡易課税制度では、売上にかかる消費税額に、事業の種類ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて仕入税額を計算するため、経費ごとの消費税額を個別に集計する必要がありません

 

ただし、簡易課税制度は一度選択すると原則として2年間は変更できず、必ずしも納税額が少なくなるとは限りません。

 

適用を受けるには、原則として適用したい課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。

 

参考:国税庁「No.6505 簡易課税制度

 

(2)消費税が軽減される「2割特例」

インボイス制度の開始を機に、免税事業者から適格請求書発行事業者になった個人事業主を対象として、消費税の納税負担を軽減する措置「2割特例」が設けられています。

 

2割特例とは、消費税の納税額を売上にかかる消費税額の2割に抑えられる特例措置です。例えば、売上にかかる消費税額が年間50万円の場合、2割特例による納税額は10万円となります。

 

この特例は2026年9月30日を含む課税期間まで適用可能で、事前の届出は不要です。確定申告書に2割特例を適用する旨を記載することで手続きが完了します。

 

参考:国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

 

(3)政府の相談窓口

インボイス制度について、手続きの進め方や個別のケースで判断に迷う場合は、政府が設置している相談窓口を活用しましょう。制度の解釈や対応方法を一人で抱え込まず、公式な情報を基に判断すれば、誤った対応を防げます。

 

中小企業庁では「中小企業・小規模事業者インボイス相談受付窓口」を設置しており、税理士などの専門家による無料相談を受けられる場合があります。

 

また、制度全般に関する一般的な質問については、国税庁の「インボイスコールセンター」が対応しています。さらに、申告内容や具体的な取引に関する相談は、所轄の税務署で確認することも可能です。

 

これらの公的な窓口を目的に応じて使い分けることで、不安や疑問を解消しやすくなるでしょう。

 

参考:中小企業庁「中小企業・小規模事業者インボイス相談受付窓口
参考:国税庁「インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)

 

インボイス制度の登録申請書を提出する方法

適格請求書発行事業者の登録申請書と領収証とペン

適格請求書発行事業者に登録するには、納税地を管轄する税務署長に対して「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。

 

登録をすれば適格請求書発行事業者の登録番号が取得可能です。

 

申請方法は、紙の申請書を郵送する方法と、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用してオンラインで申請する方法の2種類です。

 

それぞれ手続きの流れや準備するものが異なるため、自身の環境や使いやすさに応じて選択するとよいでしょう。ここでは、申請方法ごとの特徴と手続きの進め方を解説します。

 

(1)郵送

適格請求書発行事業者の登録申請は、紙の申請書の郵送で手続きできます。インターネット環境が整っていない場合や、書面での手続きを希望する場合は、郵送で手続きしましょう。

 

郵送での手続きの手順は次の通りです。

 

  1. 1.国税庁のウェブサイトから「適格請求書発行事業者の登録申請書」の様式をダウンロードし、印刷する
  2. 2.申請書に事業者情報などの必要事項を記入する
  3. 3.作成した申請書を、自身の納税地を管轄するインボイス登録センターに郵送する

 

管轄のインボイス登録センターの所在地は、同じく国税庁のウェブサイトで確認できます。

 

参考:国税庁「D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)

 

(2)e-Tax

e-Taxを利用すれば、パソコンやスマートフォンからインターネット経由で登録申請を完結させることができ、非常に便利です。

 

郵送に比べて処理が早く、自宅や事務所から24時間いつでも手続きが可能なため、時間や手間を削減できます。

 

e-Taxでの手続きの手順は次の通りです。

 

  1. 1.マイナンバーカードまたは利用者識別番号を準備する
  2. 2.e-Taxソフト(WEB版)にログインする
  3. 3.画面の案内に沿って申請内容を入力し、送信する

 

インターネット環境があれば24時間申請でき、郵送に比べて手間を省ける点が特徴です。手続きの簡便さを重視する場合は、e-Taxを選ぶとよいでしょう。

 

参考:国税庁「申請手続

 

個人事業主とインボイス制度に関連するよくある質問

「Q」「A」「&」の文字が書かれた木製ブロックが電卓の上に並んでいる様子

インボイス制度は仕組みが複雑で、制度の概要を理解していても、実際の事業や取引に当てはめると判断に迷う場面が少なくありません

 

「登録しないとどうなるのか」「自分のケースではどう考えるべきか」といった疑問を抱いている個人事業主の方も多いでしょう。

 

ここでは、インボイス制度について特に多い疑問を取り上げ、個人事業主の立場で押さえておきたいポイントを解説します。

 

(1)個人事業主がインボイス制度に登録しないとどうなるの?

インボイス制度に登録しないとどうなるのか、不安に感じている個人事業主も多いかもしれません。しかし、インボイス制度への登録は義務ではなく、登録しなくても免税事業者のまま事業を継続することは可能です。

 

ただし、取引先が課税事業者の場合、あなたからの仕入れについて仕入税額控除ができなくなるため、取引先の税負担が増えることになります。

 

その影響で、取引価格の引き下げを求められたり、取引条件の見直しを提案されたりする可能性はあります。

 

一方、取引先が一般消費者や他の免税事業者のみであれば、インボイスを求められることはなく、事業への影響はほとんどありません。

 

(2)インボイス制度で個人事業主の廃業が増える?

インボイス制度の導入により、個人事業主の廃業が増える可能性は否定できません

 

特に、取引先との関係を維持するために適格請求書発行事業者となった場合、これまで免除されていた消費税の納税義務が生じ、実質的な手取り収入が減少するケースがあります。

 

売上規模が小さい事業者にとっては、この新たな納税負担が資金繰りに影響し、経営を圧迫する一因となることも考えられます。

 

ただし、影響の大きさは事業内容や取引先の構成によって異なり、2割特例や簡易課税制度などの負担軽減策を活用できる場合もあります。

 

(3)インボイス制度の影響を受けない個人事業主はどんな人?

インボイス制度の影響を受けにくいのは、主に取引相手が一般消費者や他の免税事業者である個人事業主です。こうした取引では、仕入税額控除を前提としないため、インボイスの発行を求められる場面がほとんどありません。

 

例えば美容室や学習塾・マッサージ店・一般消費者向けに作品を販売する作家などが該当します。

 

また、取引先が簡易課税制度を選択している課税事業者である場合も、仕入税額控除の計算方法が異なるため、インボイスの必要性は相対的に低くなります。

 

さらに、代替が難しい高度な専門性や独自性を持つサービスを提供している個人事業主は、取引条件の見直しを求められにくく、制度の影響が限定的になる傾向があります。

 

(4)開業届未提出の個人事業主もインボイス制度に登録できる?

はい、登録できますインボイス制度への登録と、税務署への開業届の提出は制度上は別の手続きであり、開業届を提出していない場合でも登録申請を行うことは可能です。

 

登録する場合は、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出しましょう。

 

なお、登録すると消費税の申告・納税が必要になります。事業の状況に合わせて検討しましょう。

 

(5)インボイス制度に対応した請求書の書き方は?

インボイス制度に対応した請求書、適格請求書の書き方も確認しましょう。適格請求書(インボイス)の必須記載事項の一覧は次の通りです。

 

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  • ・取引年月日
  • ・取引内容 ※軽減税率(8%)の対象となる取引がある場合は、その旨を明記
  • ・税率ごとに区分した税込金額または税抜金額および適用税率
  • ・税率ごとに区分した消費税額等
  • ・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

 

これらの要件を満たしていれば、請求書の形式自体は自由で、必ずしも専用のフォーマットを新たに作成する必要はありません。

 

既存の請求書様式や、インボイス制度に対応した会計ソフト・請求書作成ツールを利用することで、記載漏れを防ぎやすくなります。

 

参考:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項

 

まとめ

パソコンの前で書類を確認している女性

インボイス制度への対応は、取引先の属性や事業の方向性によって判断が分かれます。

 

課税事業者との取引が中心であれば登録を検討し、一般消費者向けが中心であれば、免税事業者のまま様子を見るという選択もよいでしょう。

 

いずれの場合も、取引先の方針確認や登録後の納税額の試算、2割特例・簡易課税制度の適用可否を整理しておくことで、制度変更による影響を抑えやすくなります。

 

自身の事業状況を踏まえ、無理のない対応を選びましょう。

 

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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)

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