コンサルタントには仮説思考が必要|鍛え方やビジネスでの実践方法

作成日:2022/01/11

コンサルタントは、日々さまざまな思考法を活用しクライアントの課題解決に取り組んでいます。その中でも「仮説思考」は外すことができない思考法の一つ。今回は、仮説思考のメリット・プロセス・必要な観点、鍛え方と実践方法をご紹介します。

 

目次

■仮説思考とは

■仮説思考で得られる3つのメリット
(1)迅速な意思決定ができる
(2)作業の質があがる
(3)問題点を素早く改善できる

■仮説思考の5つのプロセス
(1)状況の観察と分析
(2)具体的な仮説の設定
(3)仮説の実行
(4)仮説の検証
(5)仮説の修正

■仮説思考に必要な3つの観点
(1)ゼロベースで考える
(2)両極端な思考をもつ
(3)自分とは真逆の視点で物事を見る

■仮説思考を鍛える5つの方法
(1)ロジカルシンキングを心掛ける
(2)疑問をもつ姿勢を身につける
(3)成果につながる仮説を立てる
(4)因果関係を正確に捉える
(5)物事を見る引き出しを増やす

■コンサルにおける仮説思考の実践方法

仮説思考を身につけてコンサルに活かそう!

 

仮説思考とは

プロジェクトの仮説立て

 

仮説思考とは、少ない情報の元で問題解決に向けた仮説を立て、その仮説に基づいて行動・検証・修正を行なっていく思考方法です。「仮説を立て、行動し、素早く検証して間違いに気づいたらすぐに軌道修正、仮説を修正する」という順序でPDCAサイクルを回します。

 

綿密に計画を立て網羅的に情報を集めて分析する「完璧思考」ではなく、仮説実証のための情報のみを集めて検証する「論点思考」を基盤にPDCAサイクルを回すため、不必要な情報を収集する必要がなくなり問題解決のスピードも上がります。

 

仮説思考で得られる3つのメリット

仮説を基に話し合うチーム

 

仮説思考で行動することには、さまざまなメリットがあります。

 

ここでは仮説思考で得られるメリットを、「迅速な意思決定」「作業の質」「問題点の素早い改善」という3つの点からご紹介します。

(1)迅速な意思決定ができる

メリットの1つ目は、迅速な意思決定ができることです。

 

参照する情報が多すぎると、雑多なデータに左右されてしまい正確な意思決定の妨げになります。仮説を立てて、その仮説の正しさを証明する情報だけを集めることで、短時間での意思決定ができます。

 

たとえば「日本の高齢化の原因」というテーマではどのようなデータを集めればよいのでしょうか?議題に上がった時点では漠然としていますが、「日本の高齢化の原因は少子化が進んでいるからだ」と仮説を立てることで、青少年の割合や人数の推移など、収集するデータを限定でき、素早く結論がでます。

(2)作業の質があがる

仮説思考の2つ目のメリットは、作業の質が向上することです。

 

無駄な情報について検証する時間が削減でき結論に早くたどり着きます。余計な作業をする時間も減るので作業の質の底上げにつながります。

 

また、少ない情報から仮説を設定し検証を繰り返すことで、仮説の精度も上がり意思決定の質も向上します。

(3)問題点を素早く改善できる

3つ目のメリットは、問題点を素早く改善できる点です。

 

仮説思考では「仮説の設定→実行→検証→仮説→修正→」とサイクルを回すことで仮設の精度を高めていきます。仮説に問題があれば、検証の段階でデータが合わなくなるため、すぐにズレに気づけます。そのため、素早く仮説の問題点の改善につながるのです。

 

 

仮説思考の5つのプロセス

プロセスを踏むビジネスマン

 

仮説思考は、「状況の観察と分析」「仮説の設定」「仮説の実行」「仮説の検証」「仮説の修正」のプロセスを踏みます。

 

「仮説の設定」から「仮説の修正」を1サイクルとして繰り返し、1サイクル目で得た学びを2サイクル目で活かしながら仮説の精度を高めていきます。

(1)状況の観察と分析

仮説思考の1つ目のプロセスは、状況の観察と分析です。まずは状況を観察し、問題の背景に何があるのかを分析します。

 

次のフェーズで問題解決に向けた仮説を立てるためには、まず問題を取り巻く状況の全体像を把握することが重要です。全体像の把握には、MECEなどフレームワークの使用も効果的です。

◆MECEについてはこちら:「<プロ監修>“ロジカルシンキング”はビジネスに必須の思考法」


もし、情報が少なすぎて問題解決のための仮説を立てられない場合は、問題自体の仮説を立てて、その仮説を実証するデータを集め何が問題なのかを見極めます。

(2)具体的な仮説の設定

次に、問題解決のために具体的な仮説を設定します。

 

できるだけ数字を用いて具体的に行動内容まで言及して仮説を立てると、次の「仮説の実行・検証」のフェーズで仮説の良し悪しを明確に評価できます。

 

たとえば「コスト削減のため、在庫を削減したい」という課題に対する仮説は、「不要に仕入れない」より「1,000個仕入れていたものを100個にすると、90,000円削減できる」と数字を用いて設定した方が、次の実行・検証のフェーズでより具体的に評価できるでしょう。

 

また、仮説を考えるにあたって、「アブダクション」という思考法があります。

 

アブダクションは帰納法や演繹法など(帰納法、演繹法については後述します)の推論法の1つで、日本語では「仮説形成」と訳されます。仮説思考法では、観察された現象に対して、理由を考えるための理論や法則を当てはめ仮説を導きます。さまざまな法則を当てはめることにより、多様な仮説を導き出せるのです。

 

例えば「冷たいお茶が売れない」という事実に対して、法則として「寒ければ、冷たい飲み物は売れない」を当てはめ、仮説として「冷たいお茶が売れないのは寒いからだ」と導きます。

 

仮説は複数立て、効果的なものを選ぶのがコツです。こちらも、MECEやロジックツリーを利用し優先順位をつけると<style="color: #000000;">効率的です。

 

◆ロジックツリーについてはこちら:「ロジックツリーの作り方4STEP!6つのメリットもご紹介」

(3)仮説の実行

仮説思考のプロセスの3つ目は、仮説の実行です。

 

先ほど立てた仮説をもとに、仮説を実証する調査や行動を起こします。次の検証のフェーズで、調査・行動をした結果を分析して仮説が正しいことを実証します。

(4)仮説の検証

仮説思考のプロセスの4つ目は、仮説の検証です。

 

仮説の実行結果を分析し、仮説が正しいことを実証できるか検証します。また、仮説が分析した結果と相違があれば、次のフェーズで仮説を修正します。

(5)仮説の修正

仮説思考のプロセスの5つ目は、仮説の修正です。仮説の検証で予想していた結果と違った場合や、仮説が間違っていることに気づいた場合は、早急に仮説を修正します。

 

このように、仮説思考は仮説の設定・仮説の実行・仮説の検証・仮説の修正のPDCAサイクルを繰り返し運用することで、結論を導きます。

 

 

仮説思考に必要な3つの観点

仮説思考で前向きな答えを導く女性コンサルタント

 

それでは、より良い仮説を立てるためにはどうすれば良いのでしょうか。

 

ありきたりな仮説は問題解決につながる可能性はありますが、新しいことに取り組む際の仮説としては新規性がありません。論理的に導いたとしても競合との差をつけることができません。

 

ここでは仮説思考に必要な観点として、「ゼロベース」「両極端な思考」「真逆の視点」の3つをご紹介します。

 

「仮説は8割ほど実証できれば良い」とされています。あまり時間をかけずに大雑把な仮説を立て、検証から修正のサイクルを早めて精度を高めることが仮説思考の考え方です。

(1)ゼロベースで考える

仮説を立てる際の1つ目の観点は、ゼロベースで考えるということです。

 

ゼロベースとは思考法の1つで、「偏見や先入観を捨ててゼロから物事を考える思考法」です。

 

仮説を立てる際には、ゼロベースで考えると誰も思いつかないアイデアを引き出せることがあります。原因からすぐに推測されるような仮説しか思いつかず、新規性がないと感じている場合は、一度ゼロベースで考えてみると良いしょう。

 

◆ゼロベース思考についてはこちら:「プロのコンサルが使う4つの思考法を知れば、劇的に仕事力が上がる」
「コンサルにはゼロベース思考が必要?身につけ方や実践方法」

(2)両極端な思考をもつ

2つ目の観点は、両極端な思考をもつということです。あえて反対の解決策を考えることによって、現在の解決策が妥当であることの再認識や、新たな視野での発見があります。

 

たとえば、コスト削減の施策を検討しているときに、あえて人員の増員を検討するなどです。増員しても結果に変わりがないのであれば、人員は問題に対する主な原因ではないことが分かります。

(3)自分とは真逆の視点で物事を見る

3つ目は、自分とは真逆の視点で物事を見るという観点です。自分とは真逆の立場の視点で物事を見ると、良い仮説が生まれます。

 

たとえば、サービスを売る企業の立場であれば消費者の立場、管理職であれば現場の立場、新規サービスの参入を考えるのであれば競合の立場から考えます。そうすることで、現状の課題点や改善点に気づくことができます。

 

 

仮説思考を鍛える5つの方法

仮説思考に取り組むビジネスマンをフィギュアで表現したイメージ画像

 

次に、仮説思考を鍛える方法についてご紹介します。

 

仮説思考を身につけるには、日頃からのトレーニングが欠かせません。ここでは、仮説思考を鍛える方法について、「ロジカルシンキング」「疑問を持つ姿勢」「成果につながる仮説を立てる」「因果関係を捉える」「引き出しを増やす」という5つの点からご説明します。

(1)ロジカルシンキングを心掛ける

ロジカルシンキングとは、複雑な物事を体系的に整理し、分かりやすくする思考法です。ロジカルシンキングを鍛えることで、論理的に妥当な仮説を立てることができます。

 

ロジカルシンキングを鍛えるためには、問題を押さえること、問題に対する答え(主張と根拠)を押さえることで鍛錬できます。

 

問題を押さえるためには、問題を分解し背景を考えます。その際には、ロジックツリーを用いると良いでしょう。問題を誤ってしまうと、その後の仮説の論点が外れてしまいます。

 

次に、問題に対する答えを、主張(〜と考えます。)と根拠(〜だからです。)をセットにして押さえます。そのためには、演繹法と帰納法の推論の考え方が効果的です。

 

演繹法とは、起こった事実に対して既存の法則やルールを当てはめて答えを導く思考法です。たとえば、「人間には五感があります」という法則を、「私は人間です」という事実に当てはめると、「私は人間なので五感があります」という結論が導かれます。

 

帰納法とは、ある複数の事象の共通点を探し、そこから全てに当てはまるルールや法則を導く思考法です。たとえば「りんごは高価だ」「みかんは高価だ」「メロンは高価だ」から、「果物は高価だ」とルールを導く考え方です。

 

演繹法では、既知の法則に沿った妥当な答えを主張することができ、帰納法では、自由にルールを考えることができるため、独創的な答えを主張することが可能です。

 

◆ロジカルシンキング、演繹法、帰納法についてはこちら:「<プロ監修>“ロジカルシンキング”はビジネスに必須の思考法」

(2)疑問をもつ姿勢を身につける

仮説思考を鍛える方法の2つ目は、疑問をもつ姿勢を身につけることです。

 

自分の好きな分野で良いので、「なぜこうなっているのだろう」と疑問をもち、それに対する仮説を考える癖をつけることが大切です。

 

たとえば、「高価な外国車が人気なのはなぜだろう」という疑問に対し、「快適さを求めるから」「ブランド力があるから」と仮説を立てます。仮説を立てたら、それを実証する情報を収集します。

 

このように、疑問をもち、仮説とセットにして考えることで仮説思考の訓練になります。

(3)成果につながる仮説を立てる

成果につながる仮説とは、解決策につながる仮説のことです。そのためにも、良い仮説を立てることを心がけましょう。

 

良い仮説を立てるためには、「So Why?So What?」の思考法を用います。

 

So What?とは、事実(ファクト)を掘り下げる考え方で、事実に対して「だから何をすればいい?」と問いかけることです。問いかけることで、仮説を具体的な行動に落とすことができます。

 

たとえば、「調査の結果、会社の制度に満足していない従業員は70%でした」という事実があったとすれば、So What?で問いかけます。

 

そうすることで、「年間休日が少ないため、会社の休暇制度に不満足なのかもしれない」「年間休日を増やすために、休暇の制度を増やせばいいのではないか。具体的には…」と、仮説から具体的な行動に落とすことができます。

 

ここで大切なことは、仮説の裏側の背景を理解することです。今回の例だと、満足していない従業員の性別や、年齢層、組織制度の変更日や他の会社の動向などが該当します。背景を理解し、正しい問題設定をしていれば、仮説を間違えていたとしても的を外した結果になることはありません。

(4)因果関係を正確に捉える

仮説思考を鍛える方法の4つ目は、因果関係を正確に捉えることです。

 

因果関係とは原因と結果の関係です。因果関係を捉えることで、論理の飛躍がなく筋道の通った仮説と解決策を提示できます

 

考えるべき因果関係は、事実から仮説を立てる際と、仮説から解決策を考える際の2つあります。

 

仮説を立てる際には、事実から「どのような原因でこの事実になったのか」と因果関係を考え、解決策を考える際には「この解決策だと今後どうなるか」と仮説を立て、ロジックを成立させます。

(5)物事を見る引き出しを増やす

仮説思考を鍛える方法の5つ目は、物事を見る引き出しを増やすことです。頭の中に豊富な知識があれば、より筋の良い仮説を立てることができるはず。

 

知識には、「経験から得られる」ものと「学習から得られる」ものがあります。経験から得られる知識は、業務などで日々体験して得られる知識。実際に体験して得られるため深く頭に残りますが限定的です。

 

学習から得られる知識は、書籍やインターネットから得られる知識。大量に得ることができますが、学んだ気になってしまうだけで頭に何も残らない場合もあります。両方のバランスを取ることが大切です。

 

 

コンサルにおける仮説思考の実践方法

パソコンで仕事をするコンサルタント

 

では、現在実際に成果を上げているコンサルタントは仮説思考をどのように実践しているのでしょうか。

 

コンサルタントは、上記で説明したように仮説を立てて、PDCAを回し、仮説の精度を高めて問題の解決に取り組んでいます。しかし、理論は分かっていても実践となると難しいところもあるかもしれません。

 

そこで、仮説思考を身につけるために、自分の考えを明確に発言する根拠と共に意見を言う仮説が間違っていた原因を把握するなどの行動を意識し、日常から実践・鍛錬しているのです。

 

このように、日々小さな仮説検証を繰り返すことで仮説検証のスピードが上がり、精度が高い仮説を立てることができるようになります。

 

 

仮説思考を身につけてコンサルに活かそう!

クライアントと握手をするコンサルタント

コンサルタントが使用する思考法の1つである仮説思考について、メリットやプロセス、必要な観点、鍛え方、実践方法をご紹介しました。仮説を考え行動に移すことを繰り返して仮説検証のサイクルを回し、仮説の精度を高めてコンサル力アップに活かしましょう。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

 

◇こちらの記事もオススメです◇

「<プロ監修>“ロジカルシンキング”はビジネスに必須の思考法