テレワークで長時間労働が増加?企業の課題と今すぐできる解決策
作成日:2020/07/17
新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が推奨され、日本でもテレワークを導入する企業が急増しています。みらいワークスが2020年4月に行なった調査でも、フリーのプロフェッショナル人材において約8割が常駐型からテレワークの案件にシフトしたという結果が出ています(※1)。さまざまな企業に導入が進むテレワークですが、急遽導入したために数か月経過した今になって課題が見えてきたケースも多いようです。
一般的にはテレワークや在宅勤務は「通勤時間が減る」「仕事と家庭の両立がしやすくなり離職者が減る」など、従業員・経営者双方にメリットがあります。しかし実際には、フリーランスのプロフェッショナル人材の方の中には「テレワークの結果、残業時間がかえって増えるデメリットもある」という声も聞かれます。
今後も大企業だけではなく、中小企業の経営者、フリーランスや個人事業主など幅広くテレワークが浸透すると予想されます。そこでテレワーク導入事例が増えている今こそ、知っておきたい課題やデメリット、解決策について解説します。
目次
■企業が急遽テレワークを導入した結果、見えてきた意外な課題
(1)テレワークによって、コミュニケーションに関連する業務量が増えた
(2)テレワークで集中力が上がる人、下がる人
■テレワークによるコミュニケーションの課題を解決する方法
(1)3つの解決策
▶解決策その1:先読み力を鍛えれば、無茶振りは減らせる
▶解決策その2:ナレッジマネジメントを導入して、あらゆる情報をチーム内でシェアしよう
▶解決策その3:ファシリテーションスキルを磨いてWeb会議をスムーズに進めよう
■テレワーク中のメンバーをサポートするコツとは?
(1)ほどよく集中できる環境づくりをサポートしよう
(2)導入事例に見る、メンバーのテレワーク疲れや孤独感をケアする方法
▶導入事例1:IT企業ではオンラインの親睦会でコミュニケーションを活性化に成功
▶導入事例2:産業医が運動不足や孤独感を軽減する取り組みを実施
企業が急遽テレワークを導入した結果、見えてきた意外な課題
ある企業が新型コロナウイルスによる企業の影響を調査したところ、「労働時間が長くなりがち」という回答が2割近くもあったそうです(※2)。
意外に多いと感じませんか?会社に通勤しない在宅勤務なのに、なぜ労働時間が増えてしまうのでしょうか。ここでは、考えられる理由を2つにまとめました。
(1)テレワークによって、コミュニケーションに関連する業務量が増えた
テレワークでは会社にメンバーが集まらないため、チーム間でのコミュニケーションは基本的にビジネスチャットツールやテレビ会議ツールを使うことになります。
SlackやChatworkなどのビジネスチャットツールを使って、情報を共有している企業も増えてきました。こうしたツールはメールと比べると、手軽で生産性が高いメリットがあります。
とはいえ社内で会話するのと比べれば、どうしても時間がかかります。文字のやりとりでは細かいことが伝わりきらないため、やり取りの回数が増えて相互理解に手間取った経験を持つ方も多いのではないでしょうか。社内コミュニケーションの業務量が増えたことで、残業につながる可能性もあるでしょう。
またテレワークでは、メンバーの状況や気持ちが見えづらいという課題があります。
実際にある調査でテレワーク実施者に不安なことを聞いたところ、最も多かったのが「相手の気持ちがわかりにくい」という回答でした(※2)。Web会議など非対面で仕事をするテレワークならではの課題でしょう。会社にいれば雑談したり相手の表情を観察したりして状況や気持ちを察することができます。でもテレワークではなかなかそうもいきません。
こうなると他のメンバーの置かれている環境が見えずに、配慮が足りないまま新たな仕事を振ってしまうことも起こりがちです。一部のメンバーに負荷が増えてしまい、残業につながるということもあるのではないでしょうか。
またテレワークやリモートワーク導入により、もはや当たり前になってきているのがWeb会議。移動時間がないのは生産性が高いと言えますが、実は課題が見えてきています。
特に急遽テレワークを導入した場合、チームのメンバーがWeb会議に慣れていないため、かえって会議の生産性が低くなるデメリットもあります。またメンバーが在宅だとWeb会議はどうしても時間が長くなる傾向もあり、こうした要因で残業につながるケースもあるようです。
(2)テレワークで集中力が上がる人、下がる人
テレワークをする人にとって大きな課題と言われるのが、ONとOFFの切り替えが難しいという点。周囲に人がいない環境なのでかえって集中でき、昼夜問わず仕事をしてしまうという方もいるようです。こういった「集中力が上がりすぎて気付かないうちに長時間労働になってしまう」というケースもあります。
また集中力が上がる人がいる一方で、家族も在宅のため仕事に集中できず生産性が下がる人もいます。
例えば普段は集中力が高いプロフェッショナル人材でも、自宅に小さな子どもがいるとなったら仕事に集中しづらい環境になりますよね。新型コロナウイルスの影響でテレワークを始めたとき、家族がいるため集中するのが難しい環境だったとある大手企業の社長は、日中は環境を変えて近隣のビジネスホテルでテレワークを行なったと言います。
他にも自宅に十分なワークスペースがないというように、室内環境の問題もあります。新型コロナウイルスによってある日突然在宅勤務になり、会社にあるような仕事用の机や椅子が用意できなかった方も多いのではないでしょうか。
こうした自宅の環境が原因で仕事への集中力が下がり、仕事を終わらせるのに時間がかかる可能性もあります。
つまり集中力の低下で生産性が下がり、長時間労働を招くというわけです。
テレワークによるコミュニケーションの課題を解決する方法
完全テレワークではなく、必要な時には出社するというスタイルを採用したとしても、社員や社外のメンバーと直接対面する機会は当然ぐっと減ります。やはりコミュニケーションにまつわる課題は大きいでしょう。
PMOなどプロジェクト管理を任されているプロフェッショナル人材の方や中間管理職の方は、チームメンバーとのコミュニケーションを円滑にできるかどうかで仕事の成果も変わってくるはずです。
そこでテレワークにおけるコミュニケーションをスムーズにするための解決策を、3つご紹介しましょう。
(1)3つの解決策
▶解決策その1:先読み力を鍛えれば、“無茶振り”は減らせる
メンバーの状況が見えづらい中で、急ぎの仕事を割り振ってしまうのはできるだけ避けたいところ。こうした事態を防ぎながらプロジェクトを進めるには「先読み力」が重要です。先を読むことができれば、メンバーの業務量を想定して仕事を依頼することもできます。また問題が起こりそうなところを予測できるので、トラブルを回避することにもつながり全体の業務量を抑える効果も期待できます。
コンサルティングファームでの経験があるフリーランスや個人事業主の方は、もともと論理的思考力が鍛えられているため、先読み力もすでに備わっていることが多いでしょう。ただしチームでのテレワークになると、自分自身の先読みだけでなくメンバーそれぞれの先を読む、というスキルも求められます。経験が必要ですが、常にメンバーの今の状況と合わせて少し先の状況を掴むことを意識してみましょう。
▶解決策その2:ナレッジマネジメントを導入して、あらゆる情報をチーム内でシェアしよう
会社にいればメンバーを集めやすいので、情報をシェアするのも簡単。しかし、テレワークではこのような“ちょっとしたこと”が難しいのも事実です。
そのため、メンバーで情報をシェアすることを常に意識して対策する必要があります。
属人的な情報を減らし、できる限り会社内で情報をシェアする取り組みを「ナレッジマネジメント」と呼びます。
例えば営業チームで言えば、今までひとりの営業パーソンだけが持っていたノウハウや情報を、他の営業パーソンとシェアして組織全体のスキルアップを目指すというもの。「Kintone」などクラウド型のナレッジマネジメントツールを導入すれば、テレワークしていても会社にいるような感覚で社内に情報をシェアすることが可能。中間管理職が率先してこうした取り組みを進める必要があります。
▶解決策その3:ファシリテーションスキルを磨いてWeb会議をスムーズに進めよう
Web会議をスムーズに進めるためには、Web会議にあう進行役が必要になってきます。プロジェクト内のWeb会議なら、やはりプロジェクト管理を担う人や中間管理職の方が進行することが多いでしょう。テレワーク時代、会議のファシリテーションスキルはますます重要になっていきます。
特に最近では会議の内容を「可視化する」という手法に注目が集まっています。
通常の会議なら、会議で上がった課題や決定事項をホワイトボードに書き込んでいきますが、Web会議ツールでもたいていホワイトボードのような機能があるので、同じような方法で進行することができます。
特にテレワークでは「今、会議がどう進んでいるのか?」ということ自体が見づらいのも問題です。会議から“迷子”になる人を出さないためにも、可視化することは大きな意味があります。
※会議のファシリテーションスキルについては、詳しくはこちら。
https://freeconsultant.jp/column/c202
テレワーク中のメンバーをサポートするコツとは?
プロジェクト管理者や中間管理職の立場としては、「メンバーがしっかり仕事をしているか」「仕事の進捗が遅れていないか」という部分の管理が課題ではないでしょうか。
会社と違い、社内で気軽にヒアリングできないのもテレワークならではの課題と言えます。集中力がありすぎて残業してしまう人もいれば、家族や環境に影響を受けて集中しにくい人もいます。メンバーの環境もさまざまであることを踏まえ、それぞれに合わせたサポートをしていく必要があります。そこで、テレワーク中にメンバーを管理するコツをまとめました。
(1)ほどよく集中できる環境づくりをサポートしよう
集中しすぎてしまうタイプの人には、時間管理ツールをすすめたり、勤務時間を自分自身で区切ったりする方法をすすめてみましょう。一方で集中するのが難しいという方には、近隣のシェアオフィスの活用や、仕事用の机や椅子など環境を整えてる対応も考えたいところ。最近ではこうしたテレワーク事情にあわせて、仕事用の机や椅子をレンタルするサービスも登場しています。
こうした取り組みと合わせて、テレワークでは従来通り勤務時間の管理もやはり必要です。
特に、長時間労働になりすぎないようプロジェクト管理者は注意を払いたいところ。厚生労働省では、テレワークにおける労務管理のガイドラインをまとめた資料を公開しています(※3)。テレワークの労務管理については、プロジェクト管理者もこうしたガイドラインを使って基本的なことはおさえておきましょう。
(2)導入事例に見る、メンバーのテレワーク疲れや孤独感をケアする方法
テレワーク疲れによってメンバーのパフォーマンスが落ちると、プロジェクト全体に影響を及ぼします。オフィスに集まっていれば、プロジェクト管理者がメンバーの体調やメンタルの変化に気づくこともできますが、テレワークではなかなか難しいのが実情です。ここでは、テレワーク疲れや孤独感のケアの導入事例企業を2つご紹介します。
▶導入事例1:【 IT企業 】オンラインの親睦会でコミュニケーション活性化に成功
クラウドストレージサービスを展開する企業「Dropbox」では、Web会議とは別にチームメンバーを集め、新入社員を含めたオンラインの親睦会を開催したそう。
この事例では、「業務時間内に開催する」「予算を確保する」「少人数で会話できる場も設ける」などの工夫を施した結果、大盛り上がりとなりました。その結果、社員のコミュニケーション不足の解消につながったと言います(※4)。こうした改革案なら、他の企業でも導入しやすいのではないでしょうか。
▶導入事例2:産業医が運動不足や孤独感を軽減する取り組みを実施
産業医が積極的にアプローチして、テレワーク疲れの解消につなげたという事例もあります。
ある企業の産業医は、新型コロナウイルスによってテレワークを導入した後、スタッフにストレスや健康状態のアンケートを実施。その結果「何気ない雑談が減った」「運動不足になった」という回答が多かったことがわかりました。
そこで、テレワーク中でもチーム単位でチャレンジできる歩数計イベントを実施したところ、室内で体を動かす機会になっただけでなく、チームワークや一体感を味わえる機会の創出につながったそうです(※5)。
アフターコロナは時間管理から「ジョブ型」管理にシフトする
新型コロナウイルスの影響で、急速に日本でも広まったテレワークやリモートワーク。
多くのメリットがある一方、急激に導入が進んだこともありコミュニケーションの取り方の難しさや、仕事への過集中、反対に集中力が散漫になるデメリットも抱えています。
こうしたデメリットは生産性の低下や長時間労働につながるため、早めに対策する必要があるでしょう。プロジェクト管理者としては、チームの生産性アップを目指すとともに、対面できないメンバーの管理も必要になってきます。
またテレワーク導入事例を見ると、時間単位で人を管理するにはデメリットがあることも見えてきました。働いた時間の長さよりも、あらかじめメンバーごとに目標を設定して「目標をどのくらい達成したか?」という視点で管理する考えも広まってきています。
こうした発想は雇用形態でいうと「ジョブ型」雇用に近いと言えるでしょう。
一般的な日本の企業では、従業員の雇用形態はいわゆる「総合職型」。「総合職型」では社員は職種に限定せず入社して、ジョブローテーションを経て総合的なスキルアップを目指します。
一方「ジョブ型」は、従業員というより特定の職種にあわせて専門スキルを持つプロフェッショナル人材を採用する手法。「ジョブ型」では仕事の範囲や目標が明確であるため、経営者は勤務時間より実績で評価することになります。働く場所や時間に関わらず実績で評価するスタイルは、テレワーク時代にフィットする働き方と言えます。
独立したコンサルタントなどのフリーランスや個人事業主だと、すでに「ジョブ型」に慣れている方も多いかもしれません。この先、新型コロナウイルスが落ち着いたいわゆるアフターコロナ時代には、今よりもっと「ジョブ型」の働き方に注目が集まる可能性も高いでしょう。
企業側としても、プロジェクトごとに必要なスキルに合わせてフリーランスや個人事業主をアサインする方が経営的にも効率がいいですし、こうした働き方を目指して社員から独立する人も増えるかもしれません。
働き方が大きく変わろうとしている今、トレンドに合わせて、現在の管理方法について改革案を検討してみる良い機会かもしれません。
※1出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000016557.html
※2出典:https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/data/telework.html
※3出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf
※4出典:https://navi.dropbox.jp/held-virtual-employee-social-gatherings-during-the-teleworking-period
※5出典:https://sangyoui-navi.jp/blog/304
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
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