エンジェル投資家から資金調達する起業家が増えている理由とは?

作成日:2020/04/24

今エンジェル投資家からの資金調達に注目が集まっています。エンジェル投資家の基礎知識とともに、日本のエンジェル投資家を取り巻く最新事情をまとめました。これから起業を目指すなら、エンジェル投資家の動向は要チェックです。

 

目次

 

■エンジェル投資家ってどんな人?なぜ資金を提供してくれるの?

 

■エンジェル投資家による投資の特徴
(1)起業準備段階であるシードステージでも資金調達しやすい
(2)融資と異なり、返済不要
(3)厳しい審査があるVCと違い、エンジェル投資家自身が投資先を決める
(4)補助金よりも自由度が高い

 

■エンジェル投資家の目的は2つ
(1)元起業家として、新たなスタートアップ企業の成長を支援する
(2)成長の見込めるベンチャー企業へ出資して、大きなリターンを狙う

 

■エンジェル投資家向けの税制優遇措置「エンジェル税制」とは?

 

■エンジェル投資家と起業家をつなぐマッチングサイトなどのサービスも増えている
(1)国内最大の起業家・投資家検索サービス「Startup list」
(2)エンジェル投資家に関する情報が充実したコミュニティサイト「Angel Port」
(3)エンジェル投資家として少額投資ができる新たな仕組み「ファンディーノ」
(4)エンジェル投資家のトークを直接聞けるイベントも!

 

■国内でも著名なエンジェル投資家の投資事例が増えている

 

 

エンジェル投資家ってどんな人?なぜ資金を提供してくれるの?

 

エンジェル投資家とは、ベンチャー企業などへ投資をする個人投資家のこと。起業経験のある元起業家が多く、ビジネスに成功して多額の資産を持つ富裕層の人たちです。投資家に天使を意味する英語「エンジェル」を使うというのは、日本人にしてみれば少し違和感を感じるかもしれません。

 

実はエンジェル投資家は、もともとイギリスで演劇に出資する個人資産家をエンジェルと表現していたことに由来する説があります。なおエンジェル投資家を英語にするとAngel Investor、もしくはBusiness Angelという英語で表す場合もあります。

 

ではエンジェル投資家による投資は、他の資金調達方法とどんな違いがあるのでしょうか?主な特徴を4つご紹介しましょう。

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エンジェル投資家による投資の特徴

(1)起業準備段階であるシードステージでも資金調達しやすい

あるアンケート調査によれば、起業に関心がある人になぜ起業しないかを聞いたところ、約6割の人が「自己資金が不足している」と回答したそうです(※1)。つまり個人事業主やスタートアップ企業にとって、お金の準備は最重要課題。資金調達がうまくできないと、ビジネスをスタートさせることすら難しいというわけです。特にまだ起業準備段階である「シードステージ」では、資金調達方法はどうしても限られます。融資を受けるための実績がないので、審査に通らない可能性が高いでしょう。

 

エンジェル投資家の多くは、投資のプロというわけではありません。「起業家を目指す人を応援したい」というのが大きなモチベーションです。そのため投資先を決める際に、事業計画書を見て、事業内容や起業家自身に共感したことが投資のきっかけになることも。つまりシードステージであっても、エンジェル投資家なら他の資金調達手段より投資を受けられる可能性が高いと言えるかもしれません。

(2)融資と異なり、返済不要

日本政策金融公庫などから融資を受けたり、民間金融機関のビジネスローンを利用したりすると、利息も含め借りた資金を返済する義務が当然あります。一方エンジェル投資家からの資金調達は、「融資」ではなく「投資」。そのため返済義務はありません。スタートアップ企業にとってここは大きな利点ではないでしょうか。

(3)厳しい審査があるVCと違い、エンジェル投資家自身が投資先を決める

ベンチャーキャピタル(VC)など投資会社から資金を受けるという方法もありますが、この場合、事業計画書はもちろん、さまざまな審査があります。一方で、エンジェル投資家の場合「事業計画書を見て気に入れば投資する」なんてこともあります。つまりベンチャーキャピタルの審査が通らなかった場合でも、投資を受けられるチャンスがあるというわけです。

 

またベンチャーキャピタルの扱う案件は投資額が高額なものが中心。一方エンジェル投資家は個人投資家なので、ベンチャーキャピタルなどの投資会社と比べると、資金調達できる金額は少なめです。

(4)補助金よりも自由度が高い

最近では自治体などで地元の起業・創業を増やすため、補助金・助成金を設けている場合もあります。補助金・助成金も返済不要ですが、募集期間が決まっていたり、提供を受けたお金の用途が限られていたりと、多くの制約事項がありますよね。もちろん補助金も利用できるか検討すべきですが、補助金が使えない場合でもエンジェル投資家からの資金調達なら可能性アリ、ということもあります。

出典:https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_171221_1.pdf

 

エンジェル投資家の目的は2つ

 

エンジェル投資家は、まったくの他人にもかかわらずなぜ資金を提供してくれるのでしょうか?

多くのエンジェル投資家には、2つの目的があります。

(1)元起業家として新たなスタートアップ企業の成長を支援する

エンジェル投資家の多くは、成功して資産を潤沢に持っている元起業家や元経営者の人たち。エンジェル投資家たちは「未来の起業家・経営者を育てたい」「スタートアップ企業を応援したい」という目的で事業資金や起業資金を出資します。そのため資金の提供だけではなく、投資先にビジネスのノウハウを提供してくれることもあります。

 

また、成功した起業家としての大きな資産のひとつが「人脈」。他業界のプロを紹介してくれるなど、さまざまな方向から起業家を支援してくれます。また著名なエンジェル投資家から事業資金・起業資金を受けられれば、経営者として社会的信用もアップする可能性があります。

 

しかし、エンジェル投資家は起業経験のある経営のプロでもあるため、助言にとどまらず、投資先事業に介入し過ぎてしますケースもあるようです。介入を受けすぎて、会社として支障が出てしまうリスクも。エンジェル投資家は単なる投資家より、もっと近い存在。そのため、投資を受けるベンチャー企業側も慎重にエンジェル投資家を選ぶ必要があります。

(2)成長の見込めるベンチャー企業へ出資で大きなリターンを狙う

エンジェル投資家はベンチャー企業を応援することが目的ではあるものの、やはり投資ですのでリターンも狙っています。

エンジェル投資家の場合、事業資金・起業資金を提供するかわりに株式をもらうという方法が一般的です。つまりエンジェル投資家が投資したベンチャー企業が、いずれIPOやM&AなどによってEXIT(投資の回収)ができれば、大きなリターンが期待できます。実際に日本のスタートアップ企業のEXITは、増加傾向にあります。2018年のIPO件数は過去10年の中で2番目に多いそうです。またM&Aも増えていて、過去最大といわれた2017年を2018年は上回る件数といいます。

 

エンジェル投資家向けの税制優遇措置「エンジェル税制」とは?

 

国としても、エンジェル投資家による投資を増やす取り組みを始めています。代表的なものが、税金を優遇するいわゆる「エンジェル税制」

 

エンジェル税制とは、エンジェル投資家がベンチャー企業へ投資したときの税制優遇措置のこと。2008年に変更された現状のエンジェル税制では、投資額に対する所得控除、キャピタルゲインの減免、キャピタルロス(損失)が出た場合のキャピタルゲインとの相殺などの措置があります。

 

とはいえエンジェル税制は、まだ利用実績があまりないようです。その理由のひとつが、認知度の低さ。エンジェル税制について投資をする側も、投資を受けるベンチャー企業側も、エンジェル税制について知らないケースが多いというのが実状。税理士においてもエンジェル税制を扱ったことがない人も多いようです。また海外にあるエンジェル税制と同様の制度と比べて、適用条件が厳しい、使い勝手がよくないといった面もあると言われています。

 

こうしたエンジェル税制も今後さらに改善が図られる可能性もあります。政府としても、なんとか国内の起業家を増やしたいと考えているところです。2019年6月には、スタートアップ企業を育成するための総合戦略を打ち出しました。2018年時点で日本にスタートアップ企業は約1800社あるといわれていますが、2024年までに倍の約2800社まで増やす目標を掲げています。

 

スタートアップ企業の急増が見込まれる中、スタートアップ企業の資金調達先のひとつであるエンジェル投資家への支援策も広がると考えられます。

 

 

エンジェル投資家と起業家をつなぐマッチングサイトなどのサービスも増えている

 

起業家がエンジェル投資家から資金調達をしたい!と思っても、まだ日本ではエンジェル投資家の数も少なく探すのは大変です。

 

ただ最近では日本でも起業家とエンジェル投資家をつなぐ場として、マッチングサイトが増えてきました。マッチングサイトに登録できれば、起業家にとって個人投資家の目に触れる機会が増え資金調達がしやすくなります。

 

また多くのマッチングサイトでは、ベンチャー企業が登録するとき独自に審査を行なっているケースがほとんど。つまり「個人投資家にとっては、マッチングサイトに登録されているベンチャー企業なら信頼できる」というわけです。

 

マッチングサイトだけではなく、新たなサービスも登場しています。たとえば、資産がそれほど多くないサラリーマンでも、ファンドを通じてエンジェル投資家になれる仕組みや、起業家と投資家をつなぐイベントなども増えています。これからエンジェル投資家を目指す人が登録できるネットワークなど、新しいサービスが登場しています。

(1)国内最大の起業家・投資家検索サービス「Startup list」

 

2018年スタートながら、国内最大の起業家・投資家の情報検索サービスに急成長したStartUpList。このサイトに登録すれば、起業家・投資家がお互いに検索することができ、オファーを出せるというマッチングサイトです。2018年8月には利用者が1000人に迫る勢いとして日経新聞にも掲載されました。

(2)エンジェル投資家に関する情報が充実したコミュニティサイト「Angel Port」

エンジェル投資家自身が立ち上げた、起業家とエンジェル投資家をマッチングするコミュニティサービス。マッチングサイトといえば登録されたベンチャー企業の紹介がメインですが、「Angel Port」はエンジェル投資家側の紹介も充実している点が大きな特徴。多くのエンジェル投資家が登録されており、プロフィールや投資実績、インタビューなどが詳しく掲載されています。

(3)エンジェル投資家として少額投資ができる新たな仕組み「ファンディーノ」

ファンディーノは「株式投資型クラウドファンディング」と呼ばれるサービスで、ベンチャー企業の非上場株式を購入することでエンジェル投資家として出資できます。会員登録すれば少額から投資ができるのが特徴です。そのためそれほど資産を持たない一般のビジネスマンや個人投資家でも、エンジェル投資家のようにベンチャー企業へ投資が可能です。

(4)エンジェル投資家のトークを直接聞けるイベントも!

人事業主を含む若手起業家がメインのコミュニティFREAKS.id」では、起業家向けにエンジェル投資家のトークイベントを開催しています。Web上のマッチングサイトだけではなく、リアルなイベントを通じて起業家とエンジェル投資家をつなぐ取り組みも最近では広がってきています。

 

国内でも著名なエンジェル投資家の投資事例が増えている

 

まだ知名度が高くないエンジェル投資家ですが、日本でも少しずつ著名なエンジェル投資家が登場し、メディアなどで注目され始めてきました。その1人であるメルカリCOOの小泉文明氏は、2017年にも元ソニーの出井伸之氏と他のベンチャー企業へ出資して注目されました。

 

小泉氏をはじめ、メルカリやグノシー、DeNAというような数年前に台頭したIT系ベンチャー企業の経営者たちが、現在エンジェル投資家として活動しています。今後もこうしたネットベンチャーで成功を収めた若手起業家たちが、エンジェル投資家として次の世代の起業家を応援するケースが増えるのではないでしょうか。

 

日本では個人投資家が実名で表に出ることは少なかったかもしれませんが、今ではメディアやトークイベントに登場したり、SNSで積極的に情報発信したりするエンジェル投資家も増えてきています。

 

まとめ

 

従来の融資や補助金、VCなどの資金調達との違いがあるエンジェル投資家。個人がベンチャー企業に投資するスタイルはまだ日本ではなじみが薄いかもしれませんが、そのトレンドは広まりつつあります。本記事で紹介したように、その理由としては以下の3つが考えられます。

・ベンチャー企業自体の数が増えていて、投資する機会が増えている

・エンジェル税制などエンジェル投資家にとってのメリットがある

・マッチングサイトなどプラットフォームが増えていて投資先が探しやすくなっている

知名度は低いものの著名なエンジェル投資家による事例も増え、メディアでも少しずつ取り上げられてきています。シードステージのスタートアップ企業にとっては、お金の面だけではなくビジネスのプロとしてサポートしてくれるエンジェル投資家の存在は大きいでしょう。これから起業を目指す方は、ビジネスローンやクラウドファンディングなどとあわせて、資金調達方法のひとつとしてエンジェル投資家から出資を受けるというのも選択肢にいれておきましょう!

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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