フリーランスの業務委託契約書の注意点は?確認事項や作り方ガイド
最終更新日:2025/06/19
作成日:2019/04/18
働き方が多様化し、ITエンジニアやWebデザイナー、コンサルタントなど、多様なフリーランスが活躍する現代では、契約書の重要性がますます高まっています。
安心して仕事を続けるためには、契約書の作り方や書き方を理解し、業務内容や報酬、権利義務を明確にすることが不可欠です。
この記事では、フリーランスが契約書を作成・チェックする際のポイントや、使いやすいテンプレートの活用方法、さらにはリーガルチェックの必要性など、トラブルを未然に防ぐための契約書作成のコツをお伝えします。
目次
■フリーランスにとって契約書が必要な理由
(1)フリーランスの契約リスクとその回避方法
(2)契約書がない口頭契約ではなぜ不十分なのか?
(3)契約書が信頼関係を築くカギになる
■契約書に盛り込むべき具体的な内容をチェック
(1)業務範囲と報酬金額の明確化
(2)支払い条件と遅延対策
(3)納期・成果物に関する規定
(4)知的財産権や著作権の取り扱い
(5)損害賠償条項とリスク管理
■フリーランス保護新法と契約の変化
(1)フリーランス保護新法の影響とは?
(2)法律が求める「適正な契約書」とは?
(3)契約書を交わす際に確認すべきポイント
■フリーランス契約書の作り方とは
(1)契約書を作成する際の手順
(2)自分で作成する場合の注意点
(3)テンプレートの活用方法とカスタマイズ例
(4)弁護士などの相談窓口の活用
■フリーランスのよくある契約トラブル事例と対策
(1)報酬の未払い・遅延
(2)無償の追加作業発生
(3)成果物の品質や納期の認識違い
■フリーランスが契約書作成力を上げるメリット
(1)契約を活用して自分の価値をアピールできる
(2)安定した案件獲得につながる
フリーランスにとって契約書が必要な理由

フリーランスとして活動する上で、契約書はリスクを回避し、安心して仕事を進めるための重要なツールです。契約書を交わさない口頭契約や、不十分な内容の契約書では、トラブルに巻き込まれる可能性が高まります。
ここでは、契約書が必要な理由とその役割について詳しく見ていきます。
フリーランスの契約リスクとその回避方法
フリーランスは雇用されているわけではないため、労働基準法による保護が限定的です。そのため、支払い遅延や報酬未払い、業務範囲外の要求など、契約トラブルに巻き込まれるリスクがつきものです。
こうしたリスクを防ぐには、業務内容や報酬、支払い条件を明確に記載した契約書の作成が不可欠です。
また、契約時には自分が合意できる条件かどうかを慎重に確認するのも重要です。
契約書がない口頭契約ではなぜ不十分なのか?
口頭契約は手軽に合意を取り付けられる反面、後々トラブルが発生しやすいという欠点があります。
たとえば、報酬額や納期に関して当事者間で認識が異なった場合、口頭でのやり取りを証明するのは非常に困難です。
一方、契約書があれば、双方が合意した条件が明確に記載されており、トラブル発生時の証拠として機能します。特に法的な紛争に発展した場合、契約書があると自分の主張を裏付ける材料となります。
契約書が信頼関係を築くカギになる
契約書は単なるビジネス上の文書ではありません。クライアントとフリーランスの間に信頼関係を築くための、大切なステップです。明確な契約書があれば、双方が合意した内容が可視化され、曖昧な部分が排除されます。
これにより、仕事を進める上での安心感が生まれ、より良いパートナーシップが構築できます。
さらに、契約書をしっかりと用意することで、プロフェッショナルとしての姿勢を示すのにもつながります。
請負契約と準委任契約の違いとは?

業務委託契約には、大きく分けて「請負契約」と「準委任契約」の2種類があります。
請負契約は、特定の成果物を完成させることを目的とした契約です。成果物の納品が契約の履行条件となり、成果物に問題があれば修正や再作成が求められるのが一般的です。たとえば、ウェブサイトの制作やアプリ開発がこれに当たります。
準委任契約は、特定の業務や作業の遂行を依頼する契約で、成果物ではなく「業務の遂行そのもの」が目的となります。
たとえば、コンサルティング業務やシステム運用サポートなどが準委任契約にあたります。成果に対する保証はなく、業務を誠実に遂行する義務があります。
この違いを理解していないと、契約後に業務範囲や責任の所在でトラブルになるケースが多いため、契約書の内容をよく確認し、必要に応じて契約形態を明示してもらうことが大切です。
契約書に盛り込むべき具体的な内容をチェック

フリーランスとして安心して業務を進めるためには、契約書に具体的な内容をしっかり盛り込むことが欠かせません。
曖昧な契約はトラブルの元となるため、以下のポイントを必ずチェックし、明文化しておくのが重要です。
業務範囲と報酬金額の明確化
契約書で最も重要なのが、「業務範囲」と「報酬金額」の明確化です。
業務範囲は「何を、どこまで行うのか」を具体的に記載し、依頼内容の範囲を明確にします。曖昧な記載は後から追加作業をめぐるトラブルを招くため注意が必要です。
報酬金額は作業量や成果に見合った金額を設定し、支払い方法やタイミングも契約書に明示します。これにより、報酬の未払いリスクを減らせます。
支払い条件と遅延対策
報酬の支払い条件は、支払期限や支払い方法を細かく決めることが大切です。また、支払いが遅れた場合の対応策も契約書に盛り込んでおくと安心です。
たとえば、遅延損害金の発生や業務停止の権利などを規定しておけば、万が一の遅延に対する備えができます。
納期・成果物に関する規定
納期は業務の進行管理に欠かせない要素です。契約書には明確な納期を設定し、納品物の品質や仕様、検収基準も定めましょう。
成果物に不備があった場合の修正対応や、再納品のルールも記載すると、双方の認識のズレを防げます。
知的財産権や著作権の取り扱い
成果物に関わる知的財産権や著作権の取り扱いについても、必ず契約書で明示します。
フリーランスが制作した作品の権利がクライアントに譲渡されるのか、それともフリーランスに留まるのかを明確にし、将来的なトラブルを回避しましょう。
損害賠償条項とリスク管理
万が一トラブルが起きた際の損害賠償に関する規定も重要です。損害賠償の範囲や上限額を定めれば、過剰な責任負担を防げます。
また、不可抗力や予見できない事情に対する免責条項を盛り込むなど、リスク管理を徹底するのも忘れてはいけません。
フリーランス保護新法と契約の変化

近年、フリーランスを取り巻く環境は大きく変わりつつあり、これを受けて「フリーランス保護新法」が制定されました。
フリーランス保護新法は、フリーランスが安心して働ける環境を整備することを目的としており、契約の透明性や公正性を高めるためのルールを義務化しています。
また、フリーランス保護新法の施行にあたり、厚生労働省が具体的なガイドラインを発表し、適正な契約書の作成方法を指導しています。
フリーランス保護新法の影響とは?
フリーランス保護新法の最大の特徴は、フリーランスとクライアントとの契約において、契約内容の明確化と双方の権利保護を強化した点にあります。
これまで曖昧だった契約条件の説明責任が発注者側に課され、報酬の支払い遅延や契約解除の条件などについても、厳格な基準が設けられました。
この取り組みにより、フリーランスは契約内容の不透明さから生じるトラブルを減らし、より安定した仕事環境を得られるようになります。
法律が求める「適正な契約書」とは?
新法に基づく適正な契約書は、契約当事者双方が内容を理解しやすく、かつ必要な項目が網羅されていることが求められます。
具体的には、双方の名称、業務内容、報酬金額と支払い条件、業務委託日、業務場所、検収完了予定日などの明示が必須です。
これらの項目は基本契約書としての役割も果たし、新法が求める適正な契約内容を満たすための重要な基準となります。
さらに、契約解除の条件やトラブルが発生した場合の対応策も盛り込むと、双方のリスクを軽減し、紛争の未然防止につながります。
契約書を交わす際に確認すべきポイント
契約書を交わす際には、フリーランス新法の内容を踏まえた上で、以下のポイントを必ず確認しましょう。
- ・契約書に必要な条項が漏れなく盛り込まれているか
- ・著作権や知的財産権の扱いが法令に則っているか
- ・契約解除の条件や手続きが公正かつ合理的に設定されているか
- ・トラブル発生時の相談窓口や解決方法の案内が含まれているか
必要に応じて厚生労働省のガイドラインを参考にしながら、基本契約書をベースにカスタマイズすることで、フリーランス新法に適合した安全な契約環境を構築できます。
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『フリーランス保護新法の施行でどう変わる?下請法との違いもわかりやすく解説』
フリーランスの契約書の作り方とは

フリーランスとして業務を行う際には、信頼できる契約書を作成することが非常に重要です。契約書がしっかり整っていれば、トラブルの予防や万が一の際の対応がスムーズになり、安心して仕事に集中できます。
ここでは、契約書作成の基本的な手順や注意点、そしてテンプレート活用のコツについて解説します。
契約書を作成する際の手順
まずは契約書を作る前に、業務の内容や報酬、期間、権利義務など、契約に必要な要素を整理しましょう。クライアントとすり合わせながら、双方が納得できる条件を明確にすることがスタートです。
次に、これらの条件をもとに契約書のドラフトを作成します。基本的な項目を網羅し、不明確な部分や曖昧な表現は避けるように注意します。この際、契約書の内容によっては、収入印紙を貼る義務があるかどうかも確認しておきましょう。
作成後は、内容を再度チェックし、必要であれば専門家にレビューを依頼するのもおすすめです。最終的に、双方の署名や印鑑をもって契約が成立します。
自分で作成する場合の注意点
フリーランスの場合、コストを抑えるために契約書を自分で作成するケースも多いですが、法的に不十分な内容にならないよう注意が必要です。
特に、契約内容が不明確であったり、報酬の支払い条件や納期、契約解除のルールが曖昧だと、トラブルが発生しやすくなります。
また、著作権の帰属や秘密保持義務など、専門的な知識が求められる部分もあります。
さらに、契約書の形式面で、収入印紙を貼り忘れると罰則が科される場合もあるため、注意が必要です。印鑑についても、署名との組み合わせが求められる場合があります。
テンプレートの活用方法とカスタマイズ例
インターネット上で公開されている契約書のテンプレートを活用すれば、効率的に契約書を作成できます。
ただし、テンプレートはあくまで一般的な雛型であるため、自分の業務内容や取引先の状況に合わせて必ずカスタマイズしましょう。
たとえば、報酬の支払い方法や納期、成果物の範囲などは、具体的な案件ごとに調整しなければなりません。特有のリスクに対応した条項を追加するのも重要です。
テンプレートをそのまま使うのではなく、自分のビジネスに合わせて見直し、必要な条項を加えたり修正を加えたりすることで、より実務に即した契約書になります。
弁護士などの相談窓口の活用
自身での契約書作成に不安がある場合は、専門家である弁護士などの相談窓口を積極的に活用することをおすすめします。
契約書の内容についてリーガルチェックを受ければ、誤解やリスクを未然に防げます。
法律の専門知識が必要な契約内容のチェックや、トラブル発生時の適切な対応方法のアドバイスを受けられるため、自分ひとりで抱え込まずに早めに相談することで、被害を最小限に抑えられます。
フリーランス向けの無料相談窓口や公的な法律支援サービスも充実しているため、まずは身近な相談先を探してみるのが良いでしょう。
フリーランスのよくある契約トラブル事例と対策

フリーランスとして安心して仕事を続けるためには、取引先の会社との契約書を通じてトラブルを未然に防ぐことが大切です。
ここでは、実際に起きやすい契約とトラブルとその具体的な対策について解説します。契約解除時のトラブルを避けるために、解除条件や違約金についてしっかり規定し、双方が納得のうえで契約するようにしましょう。
報酬の未払い・遅延
フリーランスの契約でよくあるトラブルには、報酬の未払い・遅延があります。これを防ぐには、契約書に具体的な支払い期日と遅延時のペナルティを記載しておくことが効果的です。
無償の追加作業発生
また、業務範囲の曖昧さから「追加作業の無償対応」問題が発生するケースも多いです。最初から追加作業の扱いについて取り決めておくと、無理な要求を断りやすくなります。
成果物の品質や納期の認識違い
成果物の品質や納期に関してもトラブルになりがちですが、具体的な仕様や修正回数、納期遅延時の対応を明確にしておくことで回避可能です。
フリーランスが契約書作成力を上げるメリット

フリーランスは契約書をただの「書類」として扱うのではなく、自分のビジネスを強化し、キャリアアップのための重要なツールとして活用することが求められます。
契約書作成のスキルや管理力が、あなたのプロとしての信頼や安定した案件獲得につながります。
契約を活用して自分の価値をアピールできる
契約書は自身の価値をクライアントに示すツールとしても活用できます。仕事の範囲や成果物のクオリティを明確にすレバ、自分が提供するサービスのプロフェッショナル性を伝えやすくなります。
また、契約の中で独自の条件や専門スキルを盛り込むと、差別化を図り、より高い報酬や条件交渉の余地を生み出せるようになるでしょう。
安定した案件獲得につながる
安定して案件を獲得し続けるためには、契約書の管理が不可欠です。締結した契約内容を正確に把握し、納期や支払い条件を守ることで、トラブルを未然に防げます。
さらに、定期的な契約内容の見直しや更新を怠らないようにすれば、変化する法律や業界のルールに対応し、常に最適な条件で仕事を続けられます。
契約書をきちんと管理し活用するのが、フリーランスとしての安定成長を支える基盤となるのです。
まとめ

フリーランスとして安定して仕事を続けるためには、契約書を正しく作成し、内容を十分に理解しなければなりません。
エンジニアやWebデザイナー、デザイナー、イラストレーターなど、クリエイティブやIT分野で活躍するフリーランスにとって、業務内容や権利関係を明確にした契約書を用意することが、トラブルを未然に防ぐポイントとなります。
契約書の書き方や作り方に迷った場合は、既存のテンプレートを活用するのも良い方法です。これにより効率的かつ適正な契約書の作成が可能になります。
フリーランスとして契約に関するスキルを磨き、自身の仕事環境を整えることで、より良いキャリア形成につながるでしょう。
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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)
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