ダイバーシティマネジメントとは?導入するメリットと企業事例を解説
最終更新日:2026/01/15
作成日:2023/02/01
ダイバーシティマネジメントとは、性別、国籍、年齢、価値観といった従業員の多様性を組織の強みとして活かし、企業の成長につなげる経営手法です。
労働人口の減少やグローバル化が進む現代において、企業の競争力を高めるために不可欠な戦略とされています。
この記事では、ダイバーシティマネジメントの基本的な考え方から、導入するメリット、具体的な進め方、そして国内外の企業事例までを網羅的に解説します。
目次
■ダイバーシティマネジメントが重要視される背景
(1)少子高齢化による労働人口の減少と人材確保の課題
(2)価値観の多様化と働き方の変化
(3)グローバル化の進展と異文化対応の必要性
■ダイバーシティマネジメントの実現方法・進め方
(1)組織全体で取り組むための基本方針を定める
(2)意見を否定しないコミュニケーションを促す
(3)共通のゴール・評価基準を明確にする
(4)組織風土にダイバーシティの考え方を組み込む
(5)価値観の衝突を防ぐ・乗り越える仕組みを作る
■ダイバーシティマネジメントの課題と注意点
(1)従業員の間に戸惑いや抵抗感が生じる
(2)短期間で成果を実感しにくい
(3)経営層と現場の認識にズレが生じる
(4)制度や数値目標が目的化し、形骸化するリスクがある
(5)取り組みが一過性に終わってしまう可能性がある
■ダイバーシティマネジメントの企業事例
(1)トヨタ自動車株式会社
(2)ソニーグループ株式会社
(3)資生堂
(4)楽天グループ株式会社
(5)サントリーホールディングス株式会社
ダイバーシティとは

ダイバーシティとは、日本語で「多様性」を意味し、性別・年齢・国籍・価値観など、異なる属性や背景を持つ人々が同じ組織や集団の中で共存している状態を指します。
単に違いが存在するだけでなく、その違いを前提として認め合うことが、ダイバーシティの本質的な意味です。
ダイバーシティには、大きく分けて2つの種類があります。
ひとつは、性別・年齢・人種・国籍・障がいの有無など、外見やプロフィールから比較的判断しやすい「表層的ダイバーシティ」。
もうひとつは、価値観・宗教・性的指向・職務経験・思考やコミュニケーションのスタイルといった、外からは見えにくい「深層的ダイバーシティ」です。
ビジネスの文脈におけるダイバーシティとは、こうした多様な属性や考え方を持つ人材を組織に取り込み、違いを排除せず尊重しながら活かしていくことを意味します。
多様性を受け入れる姿勢が、組織の柔軟性や創造性を高める土台となります。
ダイバーシティの歴史

ダイバーシティの概念は、1960年代のアメリカにおける公民権運動を起点としています。
当時は、人種や性別による差別をなくし、マイノリティにも平等な雇用機会を与えることを目的とした、人権擁護や機会均等の取り組みとして発展しました。
その後、1980年代以降になると、ダイバーシティは企業経営の文脈でも注目されるようになります。
多様なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、異なる視点や発想が生まれ、新たなアイデア創出やイノベーションにつながるという考え方が広まりました。
こうした認識の変化により、ダイバーシティは単なる社会的責任(CSR)活動にとどまらず、企業の競争力を高め、持続的な成長を支える経営戦略の一つとして位置づけられるようになりました。
現在では、多様性をいかに組織の力として活かすかが、企業価値を左右する重要なテーマとなっています。
ダイバーシティマネジメントの目的とは何か

ダイバーシティマネジメントの最終的な目的は、多様な人材が持つ能力や強みを最大限に引き出し、それを組織の成果へと結びつけることです。
単に異なる属性を持つ人材を採用するだけではなく、従業員一人ひとりが自身の個性や能力を十分に発揮できる環境を整えなければなりません。
具体的には、多様な視点を取り入れることで生まれるイノベーションの創出、変化する顧客ニーズへの的確な対応、さらには優秀な人材の獲得・定着といった効果が期待されます。
多様性を組織の「違い」で終わらせず、「強み」として活かすことこそが、ダイバーシティマネジメントの本質であり、企業の持続的な成長につながります。
ダイバーシティマネジメントが重要視される背景

現代の企業経営において、ダイバーシティマネジメントはなぜ重要視されるようになったのでしょうか。
その背景には、労働市場の構造変化や人々の価値観の変化、そしてグローバル化の進展といった、企業を取り巻く環境の大きな変化があります。
ここでは、ダイバーシティマネジメントの必要性と意義が高まっている理由について、代表的な3つの背景を取り上げてみてみましょう。
少子高齢化による労働人口の減少と人材確保の課題
日本では少子高齢化が急速に進行し、生産年齢人口は年々減少しています。
その結果、多くの企業が慢性的な人手不足に直面し、優秀な人材を確保できるかどうかが企業存続を左右する時代になっています。
こうした状況においては、これまで十分に活用されてこなかった女性、高齢者、外国人、障がいを持つ人々など、多様なバックグラウンドを持つ人材の活躍が不可欠です。
ダイバーシティマネジメントは、人材不足という構造的な課題に対応するための現実的かつ戦略的な解決策であり、その必要性は今後さらに高まっていきます。
価値観の多様化と働き方の変化
現代社会では、個人の価値観が大きく多様化し、仕事だけでなく私生活とのバランスを重視する考え方が広く浸透しています。
終身雇用や年功序列を前提とした画一的なキャリア観は揺らぎ、副業・兼業、専門性を高めるための転職など、働き方の選択肢も広がりました。
こうした変化に対応するため、企業にはテレワークやフレックスタイム制度、時短勤務など、柔軟な働き方を整備することが求められています。
従業員一人ひとりのライフステージや価値観を尊重することは、人材の定着やエンゲージメント向上につながる重要な意義を持ち、結果として組織全体の生産性を高めます。
グローバル化の進展と異文化対応の必要性
企業の海外展開やサプライチェーンの国際化、インバウンド需要の拡大などにより、ビジネスのグローバル化は一層進んでいます。
その中で企業は、多様な文化や価値観を持つ顧客・取引先・従業員と日常的に向き合う必要があります。
異文化を理解し、多様な視点を製品開発やサービス、マーケティングに反映できるかどうかは、グローバル市場での競争力を左右します。
多国籍人材を受け入れ、その知見を活かすダイバーシティマネジメントは、国際競争を勝ち抜くために欠かせない意義ある取り組みといえるでしょう。
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ダイバーシティマネジメントを導入するメリット

ダイバーシティマネジメントを導入することは、企業にとって人材・組織・市場の各側面で大きなメリットをもたらします。
多様な背景や価値観を持つ人材を受け入れることで、採用の間口が広がり、人材獲得競争において優位に立ちやすくなる点は代表的な効果の一つです。
また、異なる視点や経験が組み合わさることで、従来の発想にとらわれない革新的なアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。
その結果、多様な顧客ニーズを的確に捉えた製品・サービスの開発につながり、市場における競争力の強化にも寄与します。
さらに、多様性を尊重する企業文化が根付くことで、従業員一人ひとりが安心して力を発揮できる環境が整います。
これは、エンゲージメントの向上や離職率の低下につながるだけでなく、企業の社会的評価やブランドイメージを高める要因にもなります。
このように、ダイバーシティマネジメントは短期的な施策にとどまらず、企業の持続的成長を支える重要な経営基盤となります。
ダイバーシティマネジメントの実現方法・進め方

ダイバーシティマネジメントを成功させるためには、制度を整えるだけでは不十分です。
多様な人材が実際に力を発揮できるようにするには、理念の共有から日々のマネジメント、組織風土の醸成までを一体として進める必要があります。
ここでは、ダイバーシティマネジメントを組織に定着させるために、企業が段階的に取り組むべき進め方を具体的なステップに分けてみていきましょう。
組織全体で取り組むための基本方針を定める
ダイバーシティマネジメントの出発点は、経営層がその重要性を理解し、明確な基本方針を示すことです。
なぜ自社がダイバーシティを推進するのか、その目的や目指す組織像を言語化し、全従業員に共有します。
この基本方針は、採用・育成・評価といった人事制度全体の指針となり、取り組みに一貫性を持たせる役割を果たします。
経営トップが自らの言葉でコミットメントを表明することで、ダイバーシティマネジメントが「現場任せ」にならず、組織全体を動かす原動力となります。
意見を否定しないコミュニケーションを促す
多様な人材が集まる組織では、考え方や価値観の違いから、意見の食い違いや対立が生まれやすくなります。
こうした状況で重要なのが、意見の違いを否定せず、対話を通じて理解し合うコミュニケーション文化です。
心理的安全性の高い環境を整え、立場や属性に関係なく意見を発信できる場を設けることで、多様な視点が組織の知恵として活かされます。
上司や管理職が率先して傾聴の姿勢を示すことが、自由な意見交換を促す鍵となります。
共通のゴール・評価基準を明確にする
多様な価値観や働き方を持つ従業員が協働するためには、全員が納得できる共通の目標と公平な評価基準が不可欠です。
個人の属性や働き方の違いではなく、成果や組織への貢献度を軸とした評価制度を整えることで、不公平感を防ぎ、モチベーションを維持できます。
また、組織全体のゴールと個人の役割を明確に結び付けることで、多様なメンバーが同じ方向を向いて力を発揮できるようになります。
組織風土にダイバーシティの考え方を組み込む
ダイバーシティマネジメントを一過性の施策で終わらせないためには、日常の業務や意思決定の中にその考え方を組み込むことが重要です。
研修やワークショップを通じて理解を深めるだけでなく、人事制度や評価プロセス、会議運営などに反映させることで、ダイバーシティは組織文化として根付いていきます。
日々の小さな行動の積み重ねが、長期的には「多様性を尊重するのが当たり前」という組織風土を形成します。
価値観の衝突を防ぐ・乗り越える仕組みを作る
多様性を受け入れる組織では、価値観の衝突を完全になくすことはできません。重要なのは、衝突を避けることではなく、建設的に乗り越える仕組みを用意することです。
例えば、相談窓口の設置や第三者を交えた対話の場を設けることで、対立が深刻化する前に調整が可能になります。
意見の違いを成長の機会として捉える仕組みを整えることが、ダイバーシティマネジメントを実効性のあるものにします。
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ダイバーシティマネジメントの課題と注意点

ダイバーシティマネジメントは、組織に多様な視点や価値観をもたらし、イノベーションや競争力の向上につながる一方で、導入や運用の過程ではいくつかの課題や注意点も存在します。
これらを十分に理解しないまま進めてしまうと、期待した効果が得られないばかりか、現場の混乱を招く恐れもあります。
ここでは、ダイバーシティマネジメントを推進する際に押さえておきたい主な課題と注意点を整理します。
従業員の間に戸惑いや抵抗感が生じる
ダイバーシティマネジメントは、従来の組織文化や価値観に変化をもたらす取り組みであるため、従業員の間に戸惑いや抵抗感が生じることがあります。
特に、取り組みの背景や目的が十分に共有されていない場合、「なぜ必要なのか分からない」といった不安や反発につながりやすくなります。
短期間で成果を実感しにくい
ダイバーシティマネジメントの効果は、中長期的に現れるケースが多く、導入後すぐに目に見える成果が出にくい点も課題です。
そのため、短期的な成果のみを求めてしまうと、取り組みの意義が正しく評価されず、継続が難しくなる可能性があります。
経営層と現場の認識にズレが生じる
経営層が掲げる方針と、現場の受け止め方にズレが生じると、ダイバーシティマネジメントが形だけの施策になってしまう恐れがあります。
経営層と現場の双方が目的や意義を十分に理解し、共通認識を持てていない場合、取り組みが浸透しにくくなります。
制度や数値目標が目的化し、形骸化するリスクがある
制度の導入や数値目標の達成そのものが目的化してしまうと、実際の組織風土や従業員の意識が変わらないまま、取り組みが形骸化するリスクがあります。
本来の目的を見失わず、現場の実態に即した運用が行われているかを継続的に確認することが重要です。
取り組みが一過性に終わってしまう可能性がある
ダイバーシティマネジメントは、継続的に取り組むことで効果を発揮する施策です。
しかし、明確な方針やフォロー体制がない場合、一時的な取り組みにとどまり、定着しないまま終わってしまう可能性があります。現場との対話を重ねながら、長期的な視点で運用を続けることが求められます。
ダイバーシティマネジメントの企業事例

ダイバーシティマネジメントの考え方や進め方を理解したうえで、実際に企業がどのように取り組み、どんな成果につなげているのかを知ることは、自社での実践を考える上で大きなヒントになります。
先進的な企業では、それぞれの経営課題や事業特性に応じて、ダイバーシティを経営戦略の中に組み込み、具体的な施策として展開しています。
ここでは、日本を代表する企業の中から、ダイバーシティマネジメントに積極的に取り組み、組織の成長や競争力向上につなげている事例を見ていきましょう。
トヨタ自動車株式会社
グローバルに事業を展開するトヨタ自動車は、「多様な人材の活躍こそが持続的成長の原動力である」という考えのもと、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを経営の根幹に据えています。
女性のキャリア形成支援では、キャリアデザイン研修や社内ネットワークづくりを通じて、女性管理職の育成を計画的に推進しています。
また、障害者雇用においては、個々の能力や特性に応じた業務設計や職場配置を行い、働きやすい環境を整備しています。
さらに、外国人従業員に向けた多言語対応のサポートや宗教的配慮なども進めており、多様な人材が安心して力を発揮できる基盤づくりを実現しています。
参考:トヨタ「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)」
ソニーグループ株式会社
ソニーグループは、創業以来の「人のやらないことをやる」という価値観の源泉として、多様性を重視してきました。
同社では、ジェンダー、障がい、LGBTQ+、世代、育児・介護、人種・民族、宗教・信条などをダイバーシティの重点領域として明確に定めています。
特に特徴的なのが、障がいのある当事者が製品開発に参加する「インクルーシブデザイン」の取り組みです。
加えて、LGBTQ+への理解促進活動や、育児・介護と仕事を両立できる柔軟な勤務制度の導入など、包括的な施策を通じて、多様性をイノベーションにつなげています。
資生堂
資生堂は、女性活躍推進の分野で日本を代表する企業の一つです。1990年代から育児休業制度や事業所内保育所の整備に取り組み、女性がキャリアを中断せずに働き続けられる環境づくりを進めてきました。
その結果、女性管理職比率は国内でも高い水準を維持しています。
近年では、性別に限らず、国籍・年齢・障がいの有無にかかわらず、多様な人材がリーダーシップを発揮できる組織を目指し、次世代リーダー育成プログラムなどを通じて人材の成長を支援しています。
参考:資生堂「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」
楽天グループ株式会社
楽天グループは、グローバルに通用する組織づくりを目的に、ダイバーシティを重要な経営戦略と位置づけています。
象徴的な施策が、2012年に導入された社内公用語の英語化です。これにより、国籍を問わない円滑なコミュニケーションが可能となり、多様なバックグラウンドを持つ従業員同士の連携が強化されました。
また、礼拝室の設置やハラール食対応など、文化・宗教への配慮も徹底しており、100以上の国と地域から集まる人材が活躍できる環境を整えています。
参考:楽天グループ株式会社「ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン」
サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングスは、創業精神である「やってみなはれ」を軸に、多様な個性が挑戦できる企業風土づくりを進めています。
女性リーダー育成のための研修や、男性従業員の育児休業取得を積極的に推進するなど、性別にとらわれないキャリア形成を支援しています。
また、同性パートナーを配偶者として認めるパートナーシップ制度を導入し、福利厚生面でも平等な扱いを実現しています。
こうした取り組みを通じて、すべての従業員が自分らしく働き、能力を発揮できる環境づくりを進めています。
参考:サントリーグループ「Diversity, Equity & Inclusion」
まとめ

ダイバーシティマネジメントは、単に多様な人材を集めるだけではなく、違いを組織の力として活かし、成果につなげるための経営手法です。
少子高齢化による人材不足、価値観や働き方の変化、グローバル化の進展といった環境の変化に対応するうえで、その必要性は今後さらに高まっていくでしょう。
一方で、制度を整えるだけでは形骸化しやすく、経営層のコミットメントや共通のゴール設計、日々のコミュニケーション、組織風土づくりまで含めた運用が欠かせません。
先進企業の事例も参考にしながら、自社の課題に合った進め方を選び、長期的な視点で定着させていくことが成功の鍵となります。
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