日本航空が導入して話題のワーケーション 休暇中に働くメリットとは?

作成日:2018/05/16

 

日本航空が2017年7月に導入したことで話題になった「ワーケーション」。新しい働き方の一つとして、いま大きな注目を集めています。ワーケーションの定義・仕組み・メリット・デメリットなどの基礎知識とともに、日本航空の取り組みやワーケーションで地域活性につなげている和歌山県の事例など、日本のワーケーション事情をまとめました。

 

目次

■ワーケーションとは、仕事と休暇を組み合わせた新しい働き方
(1)ワーケーションの定義
(2)テレワークとワーケーションの違い
(3)背景には日本の有給休暇消化率が世界最下位という事情

 

■ワーケーションの仕組み
(1)日本航空のワーケーション制度
(2)ワーケーションで働いた時間は勤務としてみなされる
(3)リモートワークのためのツールを利用
(4)ワーケーションの2つのタイプ

 

■ワーケーションのメリット・デメリット
(1)利用者から見たワーケーションのメリット
(2)企業から見たワーケーションのメリット
(3)利用者から見たワーケーションのデメリット
(4)企業から見たワーケーションのデメリット

 

■日本のワーケーション事情
(1)自治体としてワーケーション誘致に取り組む和歌山県
(2)山でワーケーションができる施設も登場
(3)フリーコンサルタントがワーケーションを実践するには

 

■まとめ

 

 

ワーケーションとは、仕事と休暇を組み合わせた新しい働き方

ワーケーションとは、仕事と休暇を組み合わせた新しい働き方_1

(1)ワーケーションの定義

ワーケーション(Workation)とは、「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語です。休暇中に旅行先での仕事を勤務時間として認めるというテレワークの新しいスタイル。一般的には、旅行を楽しみながら特定の時間帯だけ仕事に充てます。もともとは、アメリカなど海外で広まったワーケーション。日本では2016年に日本マイクロソフトが導入した事例があります。

 

その後、日本航空が2017年に働き方改革の一環として、ワーケーションの導入を発表(このときは、2017年7 月~8月という期間限定でした)。国内だけではなく海外でのワーケーションを認めるケースは珍しく、日本航空の事例は各メディアで大きく報道されました。

(2)テレワークとワーケーションの違い

『情報通信技術を使った、場所にとらわれない働き方』というのがテレワークの定義です。つまりワーケーションもテレワークの一種といえますが、実は目的に違いがあります。

 

いわゆるテレワークというと、あくまでオフィス勤務の代わりに自宅やサテライトオフィスなどで仕事をするのが目的。企業がテレワークを導入する場合にも、「自宅のみ可」というように、場所を特定した上でテレワークを認めるケースが多いようです。日本の場合、育児や介護などの理由でオフィス勤務が難しい方がテレワークを利用するケースが一般的です。

 

一方、ワーケーションでは「勤務中ではない休暇」と組み合わせている点がポイント。リモートで仕事をすることだけではなく、ビジネスパーソンが「休暇をしっかりとる」というのもワーケーションの大きな目的です。

(3)背景には日本の有給休暇消化率が世界最下位という事情

仕事が忙しく、なかなか休みをとれないビジネスパーソンが多いのが実状。旅行サイトのエクスペディア・ジャパンが2017年に実施した調査によると、日本の有給休暇消化率は約50%と、世界30ヵ国の中で最下位という結果になりました。しかも最下位となったのは、2016年から2年連続とのことです。働き方改革の一環として、ビジネスパーソンの有給休暇取得率向上のために今後ワーケーションを活用するケースが増えていく可能性は大きいのではないでしょうか。

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ワーケーションの仕組み

ワーケーションの仕組み_2

 

日本航空が導入したワーケーション事例をもとに、ワーケーションの仕組みをご紹介します。

 

(1)日本航空のワーケーション制度

日本航空では、2017年7月~8月の間で最大5日間のワーケーションができる制度を設けました。パイロットや客室乗務員など一部の職種を除き、希望した社員に国内外の旅行先(帰省先を含む)でのワーケーションを認めるというものでした。なお、日本航空ではこの結果を踏まえ、今後もワーケーションを実施するか検討するということです。つまり、あくまでワーケーションのトライアルという位置づけだったようです。

(2)ワーケーションで働いた時間は勤務としてみなされる

日本航空のワーケーションでは、旅行先で働いた時間は勤務時間として見なされ、給与が支払われます。なお、ワーケーション実施の際には開始時と終了時に上司へ報告し、進捗確認を行なうことになっています。有給休暇と組み合わせることももちろん可能です。

(3)リモートワークのためのツールを利用

もともと日本航空では、ワーケーション導入前からテレワーク制度を設けていました。そのため、リモートワークできる準備が整っていたそうです。ワーケーションにおいても基本はテレワークと同様、会社が貸与したノートパソコンとスマートフォンを利用して仕事を行ないます。また、社内にリモートアクセスできるシステムや電話会議システムなども整備しています。

(4)ワーケーションの2つのタイプ

仕事と休暇のメリハリをつけるため、日本航空のワーケーションでは以下の2つのパターンで導入を進めました。

 

●長期休暇タイプ(長期休暇の予定にあわせて、あらかじめワーケーションを組み込む)
積極的にワーケーションを旅行に組み込むパターン。あらかじめ長期休暇を取得する際に、例えば「この日は仕事をする日」というように働く日時を設定しておきます。

 

●緊急対応タイプ(緊急の仕事が入ったとき、旅行先でテレワークを行なう)

休暇を取り旅行に行く予定があったにもかかわらず、急きょどうしても仕事が入ってしまった!という時にワーケーションの制度が活躍します。今までは急な対応が入ってしまうと、やむを得ず旅行をあきらめる…という結果になってしまうこともありましたが、ワーケーションであれば、予定通り旅行に行くことができ、旅先での対応が可能になります。ただし、通常の勤務中に仕事が終わらないから旅行先に仕事を持ち込むというのはNG。あくまで休暇をしっかりとるために、ワーケーションをうまく活用して仕事に支障がないようにすることが前提です。

 

ワーケーションのメリット・デメリット

ワーケーションのメリット・デメリット_3

 

「休暇中に働く」というワーケーション。新しい働き方のため、どうしても「休んだ気にならないのでは?」というようにネガティブに考える方も多いかもしれません。確かにメリットもたくさんありますが、やはりデメリットもあります。そこで利用する人、企業それぞれの視点でワーケーションのメリットとデメリットについてまとめました。

(1)利用者から見たワーケーションのメリット

●長期休暇が取りやすくなる
日本のビジネスパーソンの場合、仕事の都合でまとまった休みを取りづらいという方も多いかもしれません。でもワーケーションを実施すれば、旅行中にある程度仕事を進めておけますし、進捗状況も把握できます。長期休暇から戻ってもすぐに通常業務に戻れるため、長期休暇が取りやすくなるというメリットがあります。

 

また、家族や友人とどうしても旅行の予定が合わないという場合にも、ワーケーションがあれば旅行できる可能性が高まります。つまり旅行をする機会損失を減らせるというのが、ワーケーションの大きなメリット。ワークライフバランスの実現にも役立つと言えます。

 

●新しいアイデアが生まれやすい
旅行の機会が増えることで、新しい体験につながり仕事にもプラスになるというメリットもあります。もちろん、休暇は“休息”であり仕事の延長ではありませんが、地域の活動に参加して新しい人々と関わることで、新しいアイデアが生まれることも期待できます。

 

●仕事への集中力が増し、効率が上がる
JALのワーケーション導入事例でも「仕事と休暇のメリハリをつける」という目標がありました。休暇中にしっかりリフレッシュできれば、仕事の効率も上がることが期待できます。また、ワーケーションでは休暇中の限られた時間に仕事をするため、集中力が増して生産性が上がるメリットがあるとも言われています。

(2)企業から見たワーケーションのメリット

●働き方改革の対策になる
長時間労働の問題をはじめ、企業として働き方改革への取り組みが求められています。ワーケーションの導入によって社員の休暇が確保できれば、企業にとって社員の離職防止、優秀な社員採用につながるなどのメリットがあります。

 

●BCP(事業継続性)の確保につながる
災害など有事に備えて、テレワークを導入する企業も増えています。例えば交通網の断絶によりオフィスに出勤できないときでも、テレワークの仕組みがあればある程度の事業継続ができる可能性が高まります。テレワークというとどうしても一部の社員に利用が限られてしまいますが、ワーケーションをきっかけにすれば、より多くの社員がリモートワーク経験をしやすいと考えられます。

 

(3)利用者から見たワーケーションのデメリット

●オンとオフのメリハリがないと休めない
やはり休暇と仕事を組み合わせるため、メリハリのある働き方をする必要があります。ワーケーションに慣れていないと、「仕事のことが気になりしっかり休めない・・・」という事態も招きやすくなります。それを防ぎ有意義なワーケーション期間を過ごすためには、あらかじめ「この時間だけ働く」という時間のマネジメント能力が求められます。例えば管理職の方がワーケーションしたところ、部下からの確認事項や依頼事項が増えてしまい休暇の時間がつぶれてしまった、ということもありえます。

 

●周囲の理解が必要
ワーケーションを実践するときは、取引先をはじめ関係者と事前に調整する必要があります。「外出していますが、この日時はリモートワークできます」「休暇中ですが、この業務については対応を終わらせておきます」というように、仕事をする日程・業務範囲を明確にしておきたいところ。いつでも連絡がつくと思われてしまうと、せっかくの休暇が仕事ばかりになってしまうかもしれません。特に日本ではワーケーションという概念がまだ浸透していないこともあり、周囲の理解を得るというのは意外とハードルが高いようです。

 

●滞在先で働ける環境を手配する必要がある
あらかじめ、滞在先でWi-Fiが利用できるかなどをチェックしておく必要があります。現在ほとんどのホテルではWi-Fiなどの通信環境は整っていますが、登山などアウトドアを楽しむ時は特に気をつけたいポイントです。海外でワーケーションを実践するときは、どのくらい通信費がかかるかについても事前に確認しておきましょう。「出張でいろいろなところにいつも行っているから大丈夫!」という方は要注意。ワーケーションで滞在するところは基本的にリゾートエリアなので、出張先とは勝手が違います。

 

(4)企業から見たワーケーションのデメリット

●在宅勤務と比べて情報セキュリティのリスクが高まる
在宅勤務と違って、ワーケーションではあらゆるところで仕事をする可能性があります。企業にとってワーケーションで最も危惧すべきなのが、情報セキュリティ。パソコンやスマートフォンの盗難・紛失、安全性の低いWi-Fi利用によるトラブルなど・・・ワーケーションの場合、在宅勤務と比べて多くのリスクがあるというデメリットがあります。セキュリティソフトの導入はもちろんですが、端末のロック設定やデータを端末内に保存しないという「ワーケーション利用者向けガイドライン」を設ける必要があります。

 

●労務管理が複雑になる
ワーケーションでは、「この人は本当に仕事をしたのか」という点も企業側にとって気になるところではないでしょうか。日本航空の事例のように開始時・終了時に報告を行なうのが一般的ですが、どうしても実際に働いた時間の把握がしづらいという課題があります。

 

 

日本のワーケーション事情

日本のワーケーション事情_4

(1)自治体としてワーケーション誘致に取り組む和歌山県

日本のワーケーションにおいて、今注目を集めているのが和歌山県です。実は和歌山県では、自治体として企業のワーケーションを積極的に誘致。ワーケーションを地域活性化につなげようという取り組みを進めています。

和歌山県は国内有数のリゾート地である南紀白浜をはじめ、世界遺産の熊野古道などの観光資源が豊富です。自治体としては工場を誘致するよりも、この観光資源をうまく活用できるワーケーションに注目して、さまざまな取り組みを行なっています(2018年2月現在)。

 

●和歌山県のワーケーションへの取り組み(1)サテライトオフィスを開設
和歌山県白浜町にITサテライトオフィスを開設し、現在セールスフォースドットコム社などのIT企業が入居。すでに10社近くがワーケーションを実践しています。今後コワーキングスペースを備えた第2棟の建設も予定されています。特にセールスフォース社では社員が熊野古道の修復に取り組むなど、CSR活動と組み合わせたワーケーションを実践しています。

 

●和歌山県のワーケーションへの取り組み(2)ワーケーションのプロモーション活動
和歌山県では、主に東京の企業に向けてワーケーション誘致活動を行なっています。

<取り組み内容>
・ワーケーションに関する情報をまとめた専用サイトを開設
・2017年には東京でワーケーションに関するイベント「ワーケーション・フォーラム」を開催
・一部の企業の方にワーケーション体験プログラムを提供

(2)山でワーケーションができる施設も登場

まだ知名度が低いワーケーションですが、和歌山県以外でもじわじわとワーケーションに注目しているところが出てきています。例えば、長野県の蓼科高原にある宿泊施設「YAMA WORK」その名の通り、「山で仕事をする」というのがコンセプトのロッジです。Wi-Fiなどビジネスに必要な設備を整えているだけではなく、屋外で仕事をするための「アウトドア・ワークスペース」を設けています。

屋内のレストランをミーティングスペースとして使うことも可能。打ち合わせに必要な備品も一通りそろえています。「YAMA WORK」では、プロジェクトメンバーが集合し、山の中でリフレッシュをしながら仕事に取り組むというワーケーションスタイルを想定しています。

(3)フリーコンサルタントがワーケーションを実践するには

普段から時間管理を行なっているフリーランスの方にとって、ワーケーションは多くのメリットがあるのではないでしょうか。会社員に比べ、より手軽にワーケーションを実践できるはず。とはいえ、ワーケーションに必要なツールの準備などは自分自身で行なう必要があり、周囲に理解してもらうことも重要。またフリーランスの方の場合、ワーケーションとはいえどうしても仕事ばかりしてしまう…という事態になりがちです。あくまで「休暇をとる」という本来の目的を意識しておく必要がありそうです。

 

 

まとめ

 

「忙しすぎて全然旅行に行けない・・・」という方にとって、ワーケーションは旅行の機会を増やすのに適した働き方。リフレッシュできたり、仕事のアイデアが生まれたりという効果も期待できますよね。政府では働き方改革を進めているほか、やや宙に浮いている感触もありますが「プレミアムフライデー」といった、ビジネスパーソンのワークライフバランスの向上に力を入れています。

今後は、政府も働き方改革の一環としてワーケーションを推進する可能性もあると考えられます。ワーケーションの仕組みが今後日本でも浸透してくれば、フリーランスにとってもよりワーケーションしやすい環境になってくるはずです。旅好きな方、家族との時間を大切にしたい方にとっては朗報。まずは、近場でワーケーションを試してみるというのはいかがでしょうか?みらいワークスでは、今後も新しい働き方をご紹介してまいります。

 

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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