ゴーン改革の最中に独立・起業 自らの知見のすべてを後進の育成に捧げる

作成日:2017年5月8日(月)
更新日:2018年6月13日(水)

「自らの知見を伝えることで後進を育てたい」―。働き方に関する価値観が大きく変わりつつある中、多くのビジネスマンの背中を押し続ける活動を続けている方にお会いしました。

「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは鈴木誠一郎さん。
ゴーン改革の最中に日産自動車から独立。現在はコンサルタントと講師業をメインに活動されています。人が持っている“強み”を見つけ、それを伸ばしていくという方法で、コンサルタントへの転身を志す多くのビジネスマンをプロデュースするアカデミーも主宰している鈴木さん。独立までの経緯や、これから独立しようと考えている方へのメッセージなど、独立・起業を目指している方にとって非常に参考になるお話を伺ってきました。

鈴木 誠一郎

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

大学卒業後、日産自動車株式会社に入社。その後28年間で、営業・マーケティング・経営企画・地域戦略・人材開発などの各部門および系列ディーラーへの経営出向を経験する。2008年、より充実感を感じられるような仕事をしたいと考え、コンサルタントとして独立。現在は輸入車のディーラー改善コンサルタント、および自身が主宰する「オンリーワンコンサルタント養成アカデミー」の講師として活動中。 オンリーワン・コンサルタント養成アカデミー代表 株式会社戦略コンサルティング研究所:https://www.strategic-consulting-institute.com/  

鈴木 誠一郎

ゴーン改革の最中に日産自動車から独立し、コンサルタント兼講師業へ転身

-2008年に日産自動車から独立され、経営コンサルタントとして活動していらっしゃる鈴木さんですが、現在はどのようなお仕事をなさっているのでしょうか?

鈴木さん(以下、敬称略):主に二つの仕事がありまして、一つは輸入車のディーラー改善コンサルタントの仕事です。、売上が低迷している店舗には、私のように自動車メーカーに長年勤めていた人材をテコ入れとして派遣して、売上アップを図っています。一つのディーラーにつき1年間の契約で、同時に複数のディーラーを掛け持ちで順番に業務改善を主としたコンサルティングをしております。もう一つの仕事は、自分で主宰している「オンリーワンコンサルタント養成アカデミー」の講師業です。受講生の方々に対して、私が過去に培ってきたコンサルタントとしてのさまざまな知見やスキル、自分で作成した各種ツールなどをすべて提供するというものです。

-なるほど。アカデミーにはどれくらいの年齢層の方々がいらっしゃるのですか?

鈴木:30代後半から60代まで、幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。メインは40代から50代前半のビジネスマンの方々で、定年後、あるいは数年後にコンサルタントとして活動するための準備をしたいという方も多くいらっしゃいます。やはりこういう時代ですから、上場企業にいても将来の保証はありません。老舗の一流企業であっても、会社側が一人一人の社員の面倒を一生見ることはできないということは、もはや社員側もわかっているわけです。

最近では「ミドルエイジ・クライシス」という言葉もありますが、みなさん40歳前後になると、やはり自分の職業人生の後半をどう過ごしていくかということを考えるらしいですね。その時に、それまで培ってきた知見を活かして自分の得意分野でコンサルタントをやりたいと考える方が、サラリーマンの方々の中には多いようです。モノを売るのと違って仕入れも必要ないですし、在庫も抱えずに済みますしね。

私のアカデミーにも、非常に優秀で想いも強い方が来られますよ。私から見ると、サラリーマンとして普通にやっていればちゃんと定年まで勤められる方ばかりなのですが、もっとポジティブに自分の職業人生を過ごしていきたいと考えていらっしゃるのだと思います。

-会社に居座るのではなく、自ら変化を起こしに来るということですね。やはり働き方に関する価値観も以前とは変わってきているのでしょうか。

鈴木:かなり変わってきていると思います。私もいろいろな異業種交流会に出ますが、数年前と今とではまったく状況が違っていて、優秀な方はサラリーマンをやりつつ将来のことも考えて人知れず準備しているという印象です。

私のアカデミーの受講生も、3年ほど前までは定年間近の方が多かったのですが、一昨年あたりからは40代の方がメインになってきました。この変化には私も驚きましたね。定年準備ではなく、自分の人生をより充実させるために自らこういう機会を探して来られる方がこんなにも増えるとは、予想していませんでした。

-アカデミーに来られる方に共通する特徴などはあるのでしょうか?

鈴木:上場企業の方が圧倒的に多いですね。そして100%管理職です。40代の方が多いので、年齢的にもそうなるのかもしれません。

事前準備なく独立した経験を踏まえ、コンサルタント養成アカデミーを開講

《左記は、鈴木さん著『普通のサラリーマンでもできる!「週末コンサル」の教科書』。こちらで弊社サービス『フリーコンサルタント.jp』をご紹介下さいました》

-独立しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木:やはり日産がルノーに買収されたことですね。当時私はちょうど系列のディーラーに出向していたのですが、1年後に本社に戻ってみると、もうすっかり外資系の会社になっていました。新卒で入社してからずっと慣れ親しんできた企業文化がなくなってしまい、意思決定プロセスを始めとするすべてが変わってしまったことで、やはり社内の雰囲気の違いは感じましたことから希望退職して独立しました。

-かなり大きく変わったのですね。

鈴木:そうですね。あとは目標達成に対する厳しさも増しました。きっちりとKPIを出して毎月それを追いかけるという管理方法に変わり、いかにも外資系という感じがしました。

-そのような中での独立だったわけですが、事前準備は何をされていたのでしょうか?

鈴木:それが、実は何もしていなかったのです(笑)。ですので、今アカデミーをやっているのも当時の経験があるからです。これから独立しようという方々に、「ちゃんと準備しておいた方がいいですよ」ということを伝えたいわけです。私はたまたま自動車関連の仕事をいただくことができ、さらには本も出版することができ、非常に運がよかったのですが、やはり事前にきちんと準備するべきだということは本の中でも繰り返し言っています。まずは3年間準備しましょう、それが終わるまではサラリーマンでいましょうと。

-輸入車のお仕事を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木:経営者のビジネス交流会にいくつか入っているのですが、そこで知り合った中堅のコンサルティングファームの方からのご紹介です。あれは本当にタイミングがよかったのだと思います。

-なるほど。独立してよかったと思うことはありますか?

鈴木:やはり充実感がありますね。自分に合った仕事を選べるということは、好きな仕事しかやらないということですから。私の場合、自動車関連の仕事は、それまでと同じ自動車業界で、かつコンサルティングという私がやりたかった分野の案件だったので、今考えても運がよかったと思います。

オンリーワン・コンサルタント養成アカデミーに関しても、自分が引退する前に後進に「知見」をつなげていきたいという気持ちで始めた事業ですが、教えることも非常に好きですし、受講生が成長していく過程を見ているのも楽しい。一生のお付き合いにつながる深い絆もできるので、とても充実しています。

-人に何かを教えるということも、独立当初から考えていらっしゃったのですか?

鈴木:いえ、初めはまったく考えていませんでした。独立して仕事をしていく中で、年齢的なこともあり、「このままリタイアするのではなく、過去に開発したツールやメソッドを誰かに伝えたい」と思うようになったのです。ちょうどSNSなどの発信ツールが一気に世の中に出てきたタイミングで、集客もしやすくなっていたという意味では、これもまた非常に運がよかったと思います。

自分の“強み”を知ることで、行動を起こしやすくなる

-執筆された書籍の中でもおっしゃっている「独立前にサラリーマンをしながら3年間準備をしましょう」というお話について、具体的に教えていただけますか。

鈴木:どんなに自信があっても、すぐに独立するのではなく3年間は準備しましょう、と言っています。まず1年目は、貴社のようなエージェントさんとお付き合いをしながら短期案件をいただいて、コンサルの経験を積みましょうと。そして2年目以降は人脈づくりをお勧めしています。2年目はオフライン営業で、いわゆる経営者のビジネス交流会に出席して、中小企業のトップと直接お話したり名刺交換をしたりしましょうと。3年目はオンライン営業で、ネットを使った集客システムを構築しましょうと。そこまで準備してから独立を考えましょうとお伝えしています。

-自分の“強み”の見つけ方についても書かれているそうですね。

鈴木:強みを見つけるためには、それまでの職業人生で身に付けてこられた経験やスキルなどすべての棚卸しが必要です。私も相手の経歴を全部棚卸ししていただいたものを見なければ、どの部分がお金に換えられる強みなのかは判断できません。ご自身の強みを最初からわかっている方というのは非常に少ないと思います。私のアカデミーの受講生も、「これがあなたの強みですね」と指摘してもほとんどの方は「そうですか?これくらい普通ですよ」とおっしゃいます。売れる「強み」は何なのか、自分自身では全然わかっていないのです。

自分が獲得した「知見」を時系列で書き出すという行為は非常に面倒なので、一人ではできない方も多いと思います。おそらく1日では終わりませんから、何らかの機会を設けて、ある程度の強制力を与えられた状態で取り組まないと、くじけてしまう。でも、きちんと棚卸しさえすれば、人によっては三つも四つも「強み」があったりするわけです。そうやって「強み」を自覚して、自分が進みたい方向性に合わせて、今後伸ばすべき「強み」はどれなのかを決めることで、専門性を深掘りするための行動も起こしやすくなるのではないかと思います。

-なるほど、非常に面白いです。最後に、これから独立を考えている若い方々に何かアドバイスをお願いします。

鈴木:まずは行動だと思います。やはり何かしら行動しないと何も始まりませんから。よく言われることですが、まず動いてみましょうと。ダメもとでやるしかないですよね、特に若ければ若いほどそうだと思います。あとは、若い方の場合、「今すぐにでも独立したい」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、サラリーマンでいるうちに吸収できることもたくさんあります。まずは会社の中で通常業務以外に経験できることがあればどんどん手を挙げて、いろいろな経験を積んでから独立した方がいいのではないかなと思います。その方が可能性の幅は圧倒的に広がります。

 

-本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

「アカデミーの受講生が自分の強みに気づき、その分野で活躍しているのを見ることにこの上ない嬉しさとやりがいを感じる」とおっしゃる鈴木さん。ご自身の知見を後進に伝えたいという強い想い、そして折に触れて「自分は運が良かったんです」と謙虚に振り返るお話しぶりが、とても印象的でした。

鈴木さんも常々感じていらっしゃるという、働き方に関する価値観の変化。その変化が今後も良い方向に進み、「自分に合った働き方を選びたい」、「挑戦することで人生をより充実させたい」という想いでみらいワークスの門を叩いてくださる人が一人でも多く現れることを期待しています。