「プラットフォームビジネスで業界に変革を」 難しいからこそ挑戦する意義

作成日:2016年7月22日(金)
更新日:2018年6月13日(水)

「仕事」のことを考えるのは「子供」のことを考えるのと同じ感覚-。

「コンサルタントのワークスタイル」第13回目のインタビューは小河泰史さん。
アクセンチュアとリクルートを経て起業し、リフォーム業界向けのマッチングサイト「リフォームガイド」を運営する株式会社グローバを経営していらっしゃいます。一見、それまでのキャリアと繋がりのない業界で起業したように見える小河さんに、独立に至るまでの経緯や現在の仕事に対する熱い思いなど、たくさんのお話を伺ってきました。

小河 泰史

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

上智大学理工学部卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社。その後、リクルートに転職し、求人サイトや結婚情報誌の営業・営業責任者に従事。同社退職後、慶応ビジネススクール(MBA)に入学し、在学中の2014年10月に株式会社グローバを創業。リフォーム業界向けのマッチングサイト「リフォームガイド」を運営中。 リフォームガイド:http://www.reform-guide.jp/

小河 泰史

仕事のことを考えるのは、子供のことを考えるような感覚

ーまずはこれまでのキャリアについて簡単に教えてください。

小河さん(以下、敬称略):2000年に新卒で当時のアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に入社して、2005年にリクルートに転職しました。アクセンチュアに入社して2~3年目の頃から同期の中で独立・起業する人が増え始めて、それに刺激を受けて自分も1回転職したらその次は起業しようと思っていたので、新規事業を多く立ち上げていて営業も学べそうだという理由からリクルートを転職先に選びました。入社後の仕事は主に営業で、最初はリクナビなどの求人系の部門、その後ゼクシィの部門で営業の責任者になりました。最後の1年は起業に向けての勉強を兼ねて転職エージェント部門の子会社に出向させてもらって、足掛け8年リクルートに在籍しました。退職後は慶応のビジネススクールに2年間通ってMBAを取得したんですが、その在学中に現在の会社を設立して起業しました。

ー実際に起業してみて想像と違う部分はありましたか?

小河:想像と違う部分はあまりなくて、おおむね事前にいろんな人から聞いていた話のとおりでしたね。ただ、起業前に抱いていた「起業するなんてすごいな!」という気持ちは薄れました。起業はやれば誰にでもできると今は思います。最初、フリーランスや個人事業主として独立・起業すると忙しくて土日もないというような話もよく言われますが、確かに土日も会社のことを考えているんですが、決してネガティブな意味ではないんですよね。楽しみにしているデートとか、かわいい子供のことを考えているような感覚なので、全く苦ではないですね。考えないといけないからというより、自然と考えているという感じです。あとは、サラリーマンの場合は会社の方針が変わっただとか上司がこう言っているだとか言い訳がいくらでもできると思うんですが、起業すると、いいことについても悪いことについてもとにかく他に責任を転嫁するという考え自体がなくなるという点が違うなと思います。

ーほかに独立して変わったことはありますか?

小河:失敗に対する考え方が変わりました。今やっているビジネスも、自分ではうまくいくと思ってやっているものの、客観的に見たら「絶対にうまくいくビジネス」なんてものはないわけで、失敗する可能性もあるわけですが、仮に失敗しても、そこで得たものや培ったものは長い目で見れば結局プラスになるのでは、という開き直りが今はありますね。お金についても、昔は高額の借金を背負うのは怖いと思っていたんですが、今は「そうなったらなったで仕方ない」というふうに実感として思えるようになりました。まあ今は組織も小さいのでそう思うだけで、もっと規模が大きくなったら別の悩みは出てくるのかもしれないですけどね。

リクルート時代の経験から抱いた「業界に変革を起こしたい」という思い

ー起業してから今までのお仕事について教えてください。

小河:起業したのはビジネススクール2年目の秋だったので、半分は学校で半分は仕事という状態でした。初めは法人登記や事務所探しをしながら、ビジネスプランを考えるためにいろんな人に会って話を聞いたりしていましたね。リフォームをしたい人とリフォーム会社のマッチングサイトを運営することにしたので、まずはそのサイトに掲載してくれるリフォーム会社を見つけるため、事務所を借りてからはリフォーム会社に営業を始めました。

ー経験のあるコンサルティングや人材系ビジネスではなく、それまでのキャリアと無関係なリフォームという業界を選んだのはなぜですか?

小河:起業前には人材系のビジネスをしようと思っていた時期もあったんですが、人材紹介業は実際にやる前から「頑張ればそれなりにやっていけそう」と思えてしまったんですよね。それで、もう少し社会にインパクトが与えられて自分にとってもチャレンジングなことがしたいなと思って、WEBサービスをやってみることにしました。リクルートはいろんなマッチングサービスを提供していますが、そのサービスができる前と後でその業界がどう変わったか、そのサービスがあることによっていかに情報が透明化され業界の発展が促進されたか、といったことを知るうちに、自分もプラットフォームビジネスで1つの業界を活性化させるようなことをやりたいなと思い始めたんです。大きい話ですし難しいことなんですが、難しいからこそ一度チャレンジしてみたいなと。

中でもリフォームという業界を選んだ理由は2つあって、この業界を支えている地元の小さな工務店のような中小企業を支援できたらいいなというのがまず1つ目です。リクルート時代にたくさんのお客様に会う中で、中小企業にもいい会社はいっぱいあるというのを実感していたので。あとは、この業界ではまだネットを使った集客が始まったばかりで、リフォームをする時に使うメジャーなポータルサイトも存在していなかったというのがもう1つの理由です。業界の規模は比較的大きいのに、まだまだ情報が不透明だったりいわゆる悪徳業者がたくさん存在していたりして、でも逆にいい職人さんもたくさんいるので、変革の起こし甲斐がある業界だと思ったんです。リクルートでさえある業界を変えるには10年、20年という年月がかかっているので、自分の会社でも数十年単位の時間がかかることを覚悟のうえで、それでもやりきると決めて取り組んでいます。

ー実際にサービスインしてみて手応えはいかがですか?

小河:当然のことながら、最初は誰も知らないサービスなので、誰にも検索されませんでした。ですが、ユーザーの役に立つような記事を載せることによってサイトに訪問する人が増え始めて、半年前は1日に1人も見ないサイトだったのが、今では月間で10万人以上が見てくれるサイトになりました。ここからどれだけ会員登録に繋げるか、どれだけ上手な紹介に繋げるかなど、まだまだやることはいっぱいあるなと思っています。

”会社を大きくすること”は難しくても、”起業すること”は難しいことではない

ーサービスを立ち上げて半年ほど経ったこのタイミングでフリーランスの独立コンサルタントとしての活動も始めようと思った理由と、二足の草鞋を履く働き方についてのお考えを教えてください。

小河:理由は単純に、フリーランスとしてコンサルタント業をしないとそろそろお金が足りなくなるなと思いまして(笑)。資本金と自分の貯金で1年ぐらい続けてきたんですが、さすがに底をつき始めたので。最初から投資家がついてすぐにお金が入ってくるような会社なら、自社の提供するサービスだけに専念できると思うんですけど、今の自分たちはそうではないので、多少は別のことをしてでも食いつなぎながら続ける必要があると思っています。逆に投資家がつかなかった場合を考えると、他に食い扶持を稼ぐ手段がなかったら潰れるのを待つしかないので、そういう手段があるというのは精神衛生上もいいかなと思いますね(笑)。ただ、食い扶持にパワーをかけすぎて本業がおろそかにならないように、1週間に3日などのフルタイムではない案件を選んでいます。時期は未定ですが、いずれ外部の投資家からの資金調達を得られたら本業に集中したいですね。

ー小河さんのようなお立場から見たみらいワークスの印象を教えてください。

小河:今後、終身雇用は難しくなってくるでしょうし、働く側も自分が持っているスキルをいろんな場所で活かせるのはいいことだと思うので、そういった流れを担う重要な存在の1つではないでしょうか。日本の企業が規制によって人を簡単に解雇できない状態である以上、フリーランスや個人事業主で働く人を調整弁として使いながら人材の需給バランスを取っていくという構造は続くと思いますし、コンサルティングファームやリクルートのように外の力も借りるのが当たり前という職場で働いている人は「辞めたら自分もああいう働き方をしよう」と考えられると思うので、そういう層を中心に、フリーランスで働こうと思う人も今後増えるのではないかと思います。

ー最後に、これから独立しようと思っている人にメッセージをお願いします。

小河:起業というと「自分にできるかな」とか「失敗したらどうしよう」というふうに多かれ少なかれ皆さん悩むと思うんですが、今の日本で起業に失敗したからといって生活できなくなるという状態も考えにくいですし、会社によっては起業して失敗した経験のある人を好んで採用する場合もあると思うので、やはりやりたかったら1回挑戦してみるといいと思います。会社を作って大きくするのは難しいかもしれませんが、起業すること自体にはそんなに大きなハードルはないので。起業前にシリコンバレーに1ヶ月ほど行ってましたが、向こうにはチャレンジすることも失敗することもいいことだという文化があって、投資家を回る時も「自分はもう2回失敗したので今度は大丈夫です」みたいな感じなんですね(笑)。日本だと1回失敗したらもう終わりという雰囲気ですが、よく考えれば、2回失敗している人の方が初めて挑戦する人より上手くできる可能性は高いんですよね。たくさんの人がチャレンジして新しいものが出てきた方が日本にとってもいいと思いますし、いいものを生み出すには一定数以上の母数が必要だと思うので、そういう意味でもどんどんチャレンジするといいんじゃないかなと思いますね。

ー本日はお忙しい中、貴重なお話ありがとうございました!

「頑張ればそれなりにやっていけそう」なことではなく、よりチャレンジングなビジネスを敢えて選んで起業したという小河さんのお話の端々から、「どんなに時間がかかっても必ずリフォーム業界に変革を起こすのだ」という強い思いが感じられました。フリーランスのコンサルタントとしても働きながら、しかし決して本業から軸足をずらさない小河さんの姿勢は、同じように働きながら起業を目指している方々に勇気を与えたのではないでしょうか。