定額減税をフリーランスが活用する方法とは?適用方法と注意点
作成日:2025/05/25
2024年6月から始まった定額減税は、物価高騰による国民の負担を軽減するための制度です。保険や税金の負担が気になるフリーランスの方にとっても、この減税制度を活用することで、手取り収入を増やすことが期待できます。
本記事では、フリーランスがこの制度を活用する方法について解説します。2024年の税制改正による新制度を理解し、正しい手続きで税負担を軽減しましょう。
目次
■定額減税制度の概要
(1)定額減税とは
(2)定額減税の対象者
(3)減税される金額
■フリーランスの定額減税適用方法
(1)確定申告での手続き
(2)住民税に対する適用方法
(3)予定納税における適用
(4)個人住民税所得割の減税方法
■扶養親族等がいる場合の定額減税
(1)扶養親族の定義
(2)扶養親族がいる場合の手続き
(3)青色事業専従者がいる場合の適用
■定額減税で知っておくべきこと
(1)控除しきれない場合の対応
(2)赤字の場合の適用可否
(3)年の途中でフリーランスになった場合の減税
■定額減税を最大限活用するためのポイント
(1)低所得や赤字の際の給付金活用
(2)インボイス制度との関係
(3)予定納税で得するために
■定額減税を受ける際の注意点
(1)適用条件の確認
(2)確定申告書への正確な記載
(3)不明点の解消方法
定額減税制度の概要

定額減税は、所得税と個人住民税から一定額を控除し、物価高騰で増えた国民の負担を軽減する節税対策のひとつです。
2024年分の税金に適用され、フリーランスの方も対象になります。
節税効果をしっかり得るためには、確定申告時に控除額を正しく申請することが大切です。
定額減税とは
定額減税とは、2024年分の所得税と個人住民税の合計額から、納税者本人および扶養親族等1人につき、所得税3万円、個人住民税1万円の合計4万円を控除する制度です。
これは、近年の物価上昇による国民の負担増を和らげるための一時的な措置として実施されます。
フリーランスの場合、所得税については確定申告で、住民税については自治体からの通知によって減税が適用されることになります。
所得税の源泉徴収税額や予定納税がある場合は、これらの金額からも定額減税分が控除される場合があります。
定額減税の対象者
定額減税は、納税者本人および扶養親族1人につき、所得税と住民税の合計から一定額が控除される制度です。
対象者は、日本国内に住む所得制限(約1,800万円以下の合計所得)がある納税者で、フリーランスもこの条件に該当すれば対象となります。
減税される金額
定額減税により減税される金額は、納税者本人とその同一生計配偶者および扶養親族1人につき、合計で4万円です。具体的には、所得税から3万円、個人住民税から1万円が控除されます。
例えば、納税者本人と扶養親族が2人いる場合、合計で3人となるため、所得税から3人×3万円=9万円、個人住民税から3人×1万円=3万円、合計で12万円の減税が受けられることになります。
フリーランスの定額減税適用方法

フリーランスが定額減税を受けるには、主に確定申告で手続きを行います。会社員のように給与天引きされるわけではないため、ご自身で申告書に必要事項を正確に記入する必要があります。
住民税については、お住まいの自治体からの通知を通じて自動的に減税が反映される仕組みです。予定納税をしている場合は、その予定納税額からも定額減税分が控除されるケースがあります。
確定申告での手続き
フリーランスが所得税の定額減税を受けるためには、2024年分の確定申告(2025年2月17日~3月17日)で正しい手続きを行う必要があります。
申告書の第一表に定額減税の対象人数と控除額を記入し、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合は第二表にもその情報を記載します。これを忘れると減税を受けられないため注意が必要です。
確定申告ソフトを利用すれば、対象人数や控除額の入力や源泉徴収税率、予定納税額の計算が自動化され、ミスを減らして効率的に申告が可能です。ソフトは最新の税制改正にも対応し、非課税世帯の方も正確な税額計算ができます。
住民税に対する適用方法
個人住民税の定額減税は、フリーランスも会社員と同様に特別な手続きは不要です。住んでいる市区町村から送られる納税通知書に、減税後の税額が反映されているため、その通知に基づき納付します。
2024年6月分の住民税特別徴収は通常行われず、減税分を差し引いた年税額が7月から翌年5月までの11回に分けて徴収されます。
普通徴収の場合は、第1期の納税額から控除が行われ、控除しきれなければ次期以降で順次減税が反映されます。
予定納税における適用
前年の所得や税額に基づき予定納税の対象となっているフリーランスは、所得税の定額減税が予定納税額から控除されることがあります。納税者本人の3万円分の減税は、第1期の予定納税額から控除した金額で通知されます。
控除しきれない場合は、第2期分から控除され、それでも不足する分は確定申告で調整されます。扶養親族がいる場合は、予定納税額の減額申請が必要となるケースもあります。
個人住民税所得割の減税方法
個人住民税の定額減税は所得割に適用され、2023年の合計所得金額が1,805万円以下の納税者が対象です。減税額は本人および扶養親族1人につき1万円です。
減税は自治体から送付される納税通知書に反映されており、特別な申請は不要です。通知書に記載された税額を納付すれば、減税が適用されたことになります。
扶養親族等がいる場合の定額減税

定額減税は、納税者本人だけでなく、同一生計配偶者や扶養親族も対象です。扶養親族等の人数に応じて減税額が増えるため、正確な申告が必要です。
また、青色申告を行う場合は、青色申告特別控除(最大65万円)との併用でさらに節税効果を高められます。
扶養親族の定義
定額減税の対象となる扶養親族とは、納税者と生計を同じにする親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)のうち、合計所得金額が48万円以下である居住者を指します。
また、納税者の同一生計配偶者で合計所得金額が48万円以下の方も対象となります。通常の扶養控除の対象となる16歳未満の扶養親族も、定額減税の対象に含まれます。
ただし、青色事業専従者として給与の支払いを受けている者や白色事業専従者は、定額減税の対象となる扶養親族等には含まれません。
扶養親族がいる場合の手続き
扶養親族がいるフリーランスが定額減税の適用を受けるためには、確定申告書に扶養親族に関する情報を記載する必要があります。
確定申告書第一表の定額減税の項目に、本人と扶養親族等を合計した人数を記載し、その人数に基づいた減税額を記入します。
さらに、確定申告書第二表の配偶者や親族に関する事項の欄に、対象となる同一生計配偶者や扶養親族の氏名やマイナンバーなどの情報を記載します。
予定納税を行っている場合で、扶養親族分の定額減税を予定納税額に反映させたい場合は、別途、予定納税額の減額申請手続きが必要となります。
青色事業専従者がいる場合の適用
青色事業専従者に給与を支払っている場合、その専従者が定額減税を受けるかは、専従者自身の所得状況に依存します。
月8万8千円以上の専従者給与を受け取っている場合、専従者は給与所得者として自分で減税の適用を受けることができます。一方、給与未払いなどで専従者として認められない場合は、事業主の扶養親族等として定額減税の対象となる場合があります。
さらに、青色申告を行っている場合には、最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。専従者給与やその他の経費を正確に申告すると、定額減税と特別控除の併用が可能となり、節税効果を最大限に引き出せます。
定額減税で知っておくべきこと

定額減税は、所得税や住民税から直接控除される制度ですが、納税額が減税額よりも少ない場合や、そもそも所得がなく税金が発生しない場合など、いくつかのケースで対応が異なります。
また、年の途中でフリーランスになった場合なども、定額減税の適用について確認が必要です。これらのケースについて事前に把握しておけば、適切な手続きを行うことができます。
控除しきれない場合の対応
定額減税額が、算出された所得税額や住民税所得割額よりも大きい場合、控除しきれない金額が発生します。この控除しきれない金額については、「調整給付金」として市区町村から支給される仕組みとなっています。
具体的な給付の時期や手続きについては、お住まいの自治体からの通知を確認する必要があります。
確定申告の結果、控除しきれない定額減税額がある場合、確定申告書の特定の欄にその旨を記載することで、給付金の支給対象となります。
赤字の場合の適用可否
事業が赤字で所得税や住民税が発生しない場合、定額減税による直接的な税額控除を受けられません。定額減税は、あくまで納税額から差し引かれるものであり、税金が発生しない場合は差し引く税金がないためです。
しかし、所得が少なく住民税が非課税となる世帯や、住民税均等割のみが課税される世帯に対しては、別途給付金が支給される場合があります。
これらの給付金は、定額減税の対象とならない低所得者への支援措置となります。
年の途中でフリーランスになった場合の減税
年の途中で会社を退職してフリーランスになった場合も、定額減税の対象となります。この場合、会社員としての期間に受けた月次減税と、フリーランスとしての期間に対応する定額減税分を合わせて、確定申告で精算することになります。
退職所得は源泉徴収の段階では定額減税の対象外となるため、退職金を受け取った場合は、確定申告を行うことで定額減税を適用させられます。
また、年末調整を受けられない場合は、確定申告を行うと、定額減税の残りの金額の適用を受けられます。
定額減税を最大限活用するためのポイント

定額減税は、フリーランスにとって税負担を軽減する良い機会です。制度を正しく理解し、ご自身の状況に合わせて適切に手続きを行えば、最大限の恩恵を受けることができます。
特に所得が少ない場合や予定納税がある場合、またインボイス制度との関連性についても考慮しなければなりません。
低所得や赤字の際の給付金活用
赤字や低所得で定額減税額を控除しきれない場合は、「調整給付金」や低所得者向けの特別給付金を活用できます。
これらの給付金は、納税者の所得状況や世帯状況を考慮した救済措置として設けられています。
確定申告で控除しきれない金額を記載すると、給付金の支給対象となることがあるため、申告手続きで漏れがないように注意しましょう。
自治体からの通知内容を正確に確認し、支給手続きを適切に進めると、赤字や低所得の状況でも制度の恩恵を最大限に受けられます。
インボイス制度との関係
定額減税とインボイス制度は直接的な関連はありませんが、フリーランスの税務において両制度への理解は重要です。
インボイス制度は消費税に関する制度であり、適格請求書発行事業者となるかどうかの判断や、消費税の申告・納税に影響を与えます。
定額減税は所得税と住民税に関する制度ですが、インボイス制度導入に伴う経理処理の変更や、消費税の納税が発生することによる資金繰りの変化なども考慮しながら、自身の税金全体を把握しましょう。
予定納税で得するために
予定納税の対象となっているフリーランスは、予定納税額からの控除により、比較的早期に定額減税の恩恵を受けられます。
予定納税額通知書で本人分の定額減税額が控除されていることを確認し、扶養親族等がいる場合は、忘れずに予定納税額の減額申請を検討しましょう。
これにより、7月と11月の予定納税額から扶養親族等分の定額減税額の控除が可能となり、資金繰りの負担を軽減できます。
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定額減税を受ける際の注意点

定額減税の適用を受けるためには、いくつかの注意点があります。特にフリーランスの場合、確定申告で自身で手続きを行う必要があるため、申告書の記載内容や提出期限などに十分注意が必要です。
また、制度について不明な点がある場合は、専門家や税務署に相談することも重要です。
適用条件の確認
定額減税の適用を受けるためには、日本国内の居住者であり、合計所得金額が1,805万円以下であるという条件を満たす必要があります。ご自身の2024年分の所得が見込みも含めてこの条件に該当するかどうかを事前に確認してください。
また、扶養親族等の人数や合計所得金額の計算についても、定額減税における定義に基づいて正確に行うようにしましょう。
確定申告書への正確な記載
フリーランスが所得税の定額減税を受けるためには、確定申告書への正確な記載が不可欠です。
確定申告書第一表の定額減税に関する欄に、対象人数と減税額を正しく記入し、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合は、第二表の該当箇所に漏れなく情報を記載しましょう。
手書きで申告書を作成する場合は特に記入ミスが発生しやすいため、国税庁の手引きなどを参考にしながら慎重に記載することが大切です。
不明点の解消方法
定額減税の制度内容やご自身のケースでの具体的な適用方法について不明な点がある場合は、一人で悩まずに情報収集や相談を行いましょう。
国税庁のウェブサイトには定額減税に関する特設ページが設けられており、詳細な情報やFAQが掲載されています。
また、税務署の窓口や電話相談、税理士などの専門家に相談するのも有効な方法です。正確な情報を得て、適切に手続きを進めることが重要です。
まとめ

定額減税は、フリーランスの方にとって重要な税負担軽減策です。所得税・住民税の控除に加え、扶養親族分も加算されるため、収入の安定や生活費の確保に直結します。
これにより、経済的なゆとりが生まれ、新しいスキル習得や事業拡大、転職活動など将来のキャリア形成に集中しやすくなります。正しい申告を行い、制度を最大限活用して、変化する働き方の中で自分らしい未来を切り拓きましょう。
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(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)
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