【副業の確定申告】いくらから?やり方は?しないとどうなる?

最終更新日:2023/10/23
作成日:2022/02/17

 

副業人材の中で、副業での所得申告が不十分だったとして追徴課税を受けたというニュースが話題です。副業初心者の中には「今年の確定申告が人生初めての確定申告」という人もいるでしょう。これから副業を始める人の中にも確定申告が不安という人もいるはずです。確定申告には、届け出や準備が必要です。本業のフリーランスと副業人材では、確定申告に微妙な違いもあります。今回はしっかりとした知識が求められる「副業人材の確定申告」について詳しく解説します。

 

目次

 

副業でも確定申告は必要?
(1)「個人事業主」として稼いだ副業での収入は、原則所得税の確定申告が必要
(2)副業の収入はいくらから確定申告すべき?
(3)副業年収20万円以下でも確定申告した方がよい?
(4)確定申告不要な所得でも副業収入の申告義務はある

 

そもそも所得税の確定申告とは?
(1)確定申告のタイミング
(2)副業の収入を確定申告しないとどうなる?

 

副業でも必要な青色申告と白色申告の知識
(1)開業届提出時に申告方法を選ぶ

 

青色申告の特徴とは
(1)青色申告のメリット
(2)青色申告のデメリット

 

白色申告の特徴とは
(1)白色申告のメリット
(2)白色申告のデメリット

 

確定申告がきっかけで、副業していることが本業先に伝わるのはどんな時?
(1)報酬が手渡しでも確定申告は必須
(2)特別控除はまとめて本業先で申請する
(3)住民税の普通徴収は、認めてもらえない自治体もある
(4)副業年収20万円以下でも役所への申告は必要
(5)副業OKの企業への転職やフリーランスとして独立も選択肢

 

副業での確定申告はデメリットだけでなくメリットも!

 

副業でも確定申告は必要?

確定申告

 

普段は企業や組織の従業員として働き、副業も始めたばかりという人のなかには、確定申告というと、医療費控除のための確定申告しか経験がない人もいるでしょう。今回、トピックとしているのは、本業の給与以外の「副業で得た収入」に対する「所得税」の確定申告です。


結論から申し上げると、副業でも個人事業主として活動したり何らかの事業を営んだりして年間で一定額を稼いだ人は確定申告が必要です。副業の確定申告とはどのようなものなのか。細かく見ていきましょう

(1)「個人事業主」として稼いだ副業での収入は、原則所得税の確定申告が必要

会社員や団体の職員として勤めていると、勤め先がまとめて年末調整をしてくれます。しかし、税務署に開業届を出し「個人事業主」という税務区分で稼いだ副業による収入は、原則として所得税の確定申告が必要です。

 

どのような副業が開業届を出した方がよいのか、というと、発注元とアルバイトやパートなどの有期雇用契約ではなく、業務委託契約などを結ぶ副業の場合です。自分でネットショップなど事業をする場合も、原則として開業前に開業届の提出が必須とされています。


一方、副業でも「アルバイト・パート」として副業先と雇用契約を結んでいる場合は、開業届の提出や確定申告は必要ありません。ほとんどのケースでは本業先で副業のアルバイト・パートでの所得も含めて年末調整を行います。

(2)副業の収入はいくらから確定申告すべき?

副業の場合、確定申告が必要になるのは原則として年間20万円以上の所得があった場合です。月額にすると約1万7000円以上、副業で稼いでいる場合は確定申告が必要です。


よく聞かれる年収20万円以上というのは「年商」ではなく「所得」です。たとえば、年間を通して24万円、月額にして2万円を稼いでいても、年間にかかる経費が5万円の場合は、年間所得19万円になります。こうした場合は確定申告が不要です。

(3)副業年収20万円以下でも確定申告した方がよい?

副業での年収が20万円以下でも、副業先で売上から10.21%の源泉徴収がされた報酬を受け取っている場合などは、確定申告をすることで還付を受けられる場合があります


他にも、本業先でさまざまな控除を申請し忘れた場合や、1年目の住宅ローン控除や医療費控除など、年末調整の対象外となる控除を受けたいときは、副業収入の確定申告に合わせて控除申請しましょう。

(4)確定申告不要な所得でも副業収入の申告義務はある

副業で年間20万円以下の所得しかなく、特に控除申請するものがない人もいるでしょう。その場合は所得税の確定申告をする義務はありませんが、副業で増えた分の年収を、住所がある自治体の役所に申告する義務があります。

 

なぜなら住民税は、前年の総収入を目安にして算定されるからです。副業をもつ人は、副業の所得と本業の勤務先の給与・賞与を合算した額をもとにして住民税額が決定します。住民税は一律で収入の10%です。

 

本業で年間500万円の給与を得ている人の年間住民税額は50万円ですが、さらに副業の年間所得が19万円の場合、翌年の年間住民税額は51万9000円となります。この場合、副業での所得を確定申告する必要はありませんが、住民税のための役所への申告をしていないと申告漏れとして、延滞税が課せられる場合があります。延滞税は、延滞日数によって増額し、最大で年間14.6%にもなります。


また、本業先の年収と総収入に差があると、正確な収入を申告するよう本業の勤務先に調査が入る可能性もあります。副業での年間所得が20万円以内の場合でも、役所への収入の申告は忘れずに行いましょう。

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そもそも所得税の確定申告とは?

確定申告 

 

所得税の確定申告自体がよくわからない人もいるかもしれません。確定申告とは、前年の1月1日~12月31日までの1年間の所得を申告し、所得額に応じた納税額を決定する一連の手続きのことです。


副業をしていない会社員やアルバイト・パート、組織の団体職員などは、勤め先で年末調整をしてくれるので確定申告の必要はありません。副業の所得が年間20万円以上あった場合は、個人で確定申告をする義務があります。

(1)確定申告のタイミング

確定申告は、原則として例年、対象年翌年の2月16日~3月15日に税務署で行います。自分が住んでいる地域の税務署や出張所に持ち込むのもいいですし、e-Taxでも受け付けています。

 

e-Taxで確定申告した場合、青色申告だと青色申告特別控除が65万円まで受けられます。手渡しで申告する場合は55万円なので、10万円も控除額が増えるということです。e-Taxでも、確定申告の期間は変わりませんが、期間中は自宅のPCやスマホなどで一日中申告できることから、e-Taxで確定申告を済ませる人が増えています。

出典:国税庁 e-Tax国税電子申告・納税システム

(2)副業の収入を確定申告しないとどうなる?

副業であっても、年間20万円以上の所得があるのに確定申告をしない場合は何らかのペナルティが生じます。本来の所得税に、無申告加算税や延滞税が加えられるのが一般的です。冒頭でお伝えしたニュースでは、副業の事業で1億400万円もの売上があったにも関わらず、所得を申告していなかったとして重加算税を含め2100万円の追徴課税が課せられたそうです。

 

また、悪質な無申告と判断されると、脱税容疑がかかることもあります。これを「ほ税」といい、ほ税に値する所得隠しとみなされた場合「5年以下の懲役、もしくは最大500万円以下の罰金、またはその両方」が科せられる可能性があります。

出典:国税庁 NO2024確定申告を忘れたとき
出典:国税庁 コンプライアンス基盤整備のための租税ほ脱行為のペナルティ体系の考え方―租税ほ脱犯の特質からの考察―

 

 

副業でも必要な青色申告と白色申告の知識

開業届


確定申告の方法には2種類あります。両者の違いについては、あとで詳しく説明しますが、まずは両者の届け出の違いについて理解を深めましょう。

(1)開業届提出時に申告方法を選ぶ

副業であっても、一般的に業務委託契約を結ぶ場合、フリーランスとして業務にあたります。この場合「個人事業主」という税務区分になるため、税務署への開業届提出が必要です。開業届の用紙は、各地域の税務署で手に入ります。

 

住所がわかるもの、身分証明書、印鑑、そして屋号も考えておきましょう。マイナンバーカードがあると便利です。開業届の提出は、事業開始日から1ヶ月以内が原則ですが、もし忘れてしまったり諸事情により提出が遅れたりしても特に罰則はありません。

 

開業届の提出とともに、青色申告・白色申告のどちらで確定申告をするのかも決めておきましょう。青色申告を選択するには、開業届を出す時に「青色申告承認申請書」を出します。白色申告なら、開業届のみでOKです。どちらの申告方法でも副業にかかる経費を控除申請できます。また、青色申告承認申請書の提出は、新規開業の場合は、事業開始日から2ヶ月以内に提出する必要があります。

 

このように青色申告と白色申告では、手続きに違いがあるのですが、他にもいくつか違いがあります。青色申告と白色申告の特徴について、それぞれ説明します。

出典:国税庁[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

 

 

青色申告の特徴とは

青色申告

 

青色申告は、事業所得をはじめ、不動産所得・山林所得などの所得がある個人事業主が対象です。フリーランスとして働く人の多くは、事業所得を得ているとして青色申告の対象となります。

 

なぜ、多くのフリーランスが青色申告を選択しているのか、青色申告のメリット・デメリットから読み解きましょう。

出典:国税庁 No.2070 青色申告制度

(1)青色申告のメリット

青色申告で貸借対照表と損益計算書を添付したうえで、期間内に確定申告を済ませると、最大で65万円もの控除が受けられます。65万円の控除を受けるには、e-Taxでの申告が条件です。

 

e-Taxではなく、税務署や出張所に複式簿記の確定申告書を届け出る場合の控除額は最大で55万円です。単式簿記で、損益計算書を添付して確定申告する場合には、10万円の青色申告特別控除が受けられます。

 

青色申告では、家族への給与は経費扱いにできます。これを、青色事業専従者給与といいます。副業でも家族経営でお店やビジネスを営んでいる場合では、これも大きなメリットとなります。また、事業で損失がある、つまり赤字の場合は前年の確定申告から損失分を差し引き、所得税の還付を受けられます。現行では3年間繰り越せます。


青色申告では、仕事で使うパソコンやカメラなど30万円未満の道具の場合は、減価償却の特例を受けることも可能です。青色申告の減価償却の特例とは、30万円未満の事業にかかる道具にかかった経費は、一括で全額経費にできるというものです。

(2)青色申告のデメリット

青色申告のデメリットは帳簿付けが難しい面と、原則として事業のお金に関する書類は、5~7年の間、保存する義務があることです。確定申告未経験者は手間取る人が多いため、オンラインの経理ソフトなどを利用する人がほとんどです。

 

また、以前は年収300万円までの白色申告事業者は、日々の記帳や帳簿の保存が義務付けられていませんでした。しかし2014年度以降、収入の金額に関わらず、白色申告者にも記帳や帳簿の保存が義務付けられるようになりました。これにより、青色申告のデメリット感は若干軽減したといえます。

 

 

白色申告の特徴とは

フリーランス 検討中


白色申告は青色申告に比べると利用する人が少ない印象ですが、雑所得で所得を申告する人や株などによる配当金の収入を申告する人が使用する申告方法です。白色申告のメリット・デメリットについても詳しく見ていきましょう。

(1)白色申告のメリット


白色申告のメリットは、提出書類が少なく帳簿付けも簡単なことです。簿記知識のない人や収入がさほどない人は白色申告という人が多いです。収入のすべてを雑所得で申告できます。

(2)白色申告デメリット

白色申告のデメリットは、青色申告に比べると税制上の特典が少ないことです。税制上の特典というと青色申告控除ばかりが注目されがちですが、青色申告では家族への給与を経費にできる「青色事業専従者給与」が、白色申告では「事業専従者給与」として一定金額しか控除を受けられません。

 

また、 純損失の繰越しと繰戻し、貸倒引当金の計上ができないのもデメリットといってもいいでしょう。少額減価償却資産の特例もないため、青色申告に比べると優遇されていない印象があります。

 

先述しましたが、以前は年収300万円までの白色申告事業者は、日々の記帳や帳簿の保存が不要でした。2014年度以降、収入の金額に関わらず、白色申告者にも記帳や帳簿の保存が義務付けられたことで、白色申告のメリット感が薄れ、デメリットを感じやすい側面もあるでしょう。

出典:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度

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『フリーランスになるには?未経験から開業で必要とされるスキル・手続き方法・経験とは』

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確定申告がきっかけで、副業していることが本業先に伝わるのはどんな時?

バレない確定申告


「本業先にバレないように副業がしたい…」そう思う方もいるかもしれません。本業先に副業をしていることが伝わるきっかけの一つに「確定申告でのミス」があげられるようです。就業規則違反を軽く考えると、痛い目に合うかもしれません。

(1)報酬が手渡しでも確定申告は必須

「副業の報酬が手渡しでの支払いなら確定申告しなくていい」といった噂を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、これは事実と異なります。手渡しや銀行振り込みなど、報酬の支払い方法に関わらず、すべての収入は、確定申告や住民税算定のための申告で明らかにするのが国民の義務


未申告から本業先に副業をしていたことが明らかになるケースもあるようです。悪質な所得隠しと判断されると追徴課税されたり、最悪のケースでは刑事罰が下ったりすることもあるでしょう。

(2)特別控除はまとめて本業先で申請する

医療費控除や1年目の住宅ローン控除、ワンストップ特例以外のふるさと納税控除を受けるには「副業をする・しない」に関わらず、確定申告が必要です。

 

しかし、生命保険料控除や配偶者控除、確定拠出年金などは、副業人材は本業先の企業の年末調整で行うのが原則です。また、青色申告で確定申告を行う場合、控除額が所得を上回ってしまうと本業先に問い合わせされる可能性もあるようです。

(3)住民税の普通徴収は、認めてもらえない自治体もある

普通徴収とは、自分で納付書を利用して住民税を支払う方法です。一方、特別徴収は、企業の従業員として勤務先に住民税納付の手続きを委任する方法、つまり給与から天引きで住民税を支払う方法です。

副業で収入があることを本業先にバレないようにしたいから」と、住民税の徴収を普通徴収にする方もいるようですが、平成29年度から、原則として住民税は特別徴収を徹底するように義務付けられています。それに伴い、自治体によっては、普通徴収による手続きを認めてもらえないこともあるようです。

(4)副業年収20万円以下でも役所への申告は必要

何度も触れていますが、副業による所得が年20万円以下でも、役所への申告は忘れず行いましょう。住民税額決定のために、副業で得た分の収入を役所に申告することは国民の義務なので「副業がバレる・バレない」といった理由のために申告しないという選択肢はありません。


この申告をしない場合に、会社での給与額と総収入額にずれがあるとして、役所や税務署から、正しい総収入額を申告し追加の住民税を払うよう会社が指摘を受ける可能性があります。副業で収入が増えたことによる住民税の増額や副業での収入の申告漏れのせいで不自然な印象を与え、会社に副業が伝わるケースがあるようです。

(5)副業OKの企業への転職やフリーランスとして独立も選択肢

どんなに確定申告で気を付けても、副業をしていることが本業先に伝わる可能性はあります。企業や組織によって考え方は異なりますが、処分対象にあたるケースもあるでしょう。

 

もし、どうしても副業をしたいなら、副業OKの企業に転職したり、独立するのもおすすめです。信頼できる転職サイトや転職のマッチングエージェントなどに、現状を素直に話し転職や独立など自由度が高い方法を模索するのも、現代らしい生き方の一つといえるでしょう。

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副業での確定申告はデメリットだけでなくメリットも!

確定申告にはメリットも

 

副業を始めたばかりの人、副業を考えている人の中には、確定申告が「怖い」「面倒くさい」「よくわからなくてまずい」と感じている人も少なくないでしょう。しかし、普段から帳簿をしっかり付け、正直に申告するなら、決して難しい作業ではありません。確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性も高まります

 

何より、納税は国民の義務です。確定申告はその手順の一つとして前向きに行いましょう。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

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