オープンイノベーションとは?メリット・デメリットと組織に活かすコツ
最終更新日:2026/03/19
作成日:2017/04/24
「オープンイノベーション」という言葉は知っていても、いざ説明しようとすると言葉に詰まる方も多いのではないでしょうか。
自社への導入を検討する上では、メリットだけでなく、リスクや失敗要因まで把握しておくことが重要です。
本記事では、オープンイノベーションの定義から導入メリット・デメリット、成功事例まで、わかりやすく解説します。
目次
■オープンイノベーションとは何?目的は?
(1)オープンイノベーションの定義と歴史
(2)オープンイノベーションの目的
(3)クローズドイノベーションとの違い
(4)オープンイノベーション3.0とは
■オープンイノベーションが注目される3つの理由
(1)開発スピードの加速と製品寿命の短期化
(2)自前主義の限界
(3)消費者ニーズの多様化
■オープンイノベーションを導入するメリット
(1)開発や事業のスピードアップにつながる
(2)開発コストの削減とリスク分散ができる
(3)イノベーションを創出できる
(4)外部リソースで弱点を補完できる
(5)技術・知識を獲得できる
■オープンイノベーションによるデメリット
(1)アイデアや技術・知的財産の流出リスクがある
(2)判断力・開発力の衰退リスクがある
(3)収益分配や成果に関するトラブルの懸念がある
(4)自社内での反発・協力不足の可能性がある
■オープンイノベーションを取り入れる3つの型
(1)インバウンド型
(2)アウトバウンド型
(3)カップルド型(連携型)
■オープンイノベーションする4つの対象
(1)アイデア・マインド
(2)人材
(3)特許技術などの知的財産
(4)研究開発
■オープンイノベーションの進め方|基本の4ステップ
(1)ステップ1. 目的やターゲットを明確にする
(2)ステップ2. パートナーを見つける
(3)ステップ3. パートナーへ交渉する
(4)ステップ4. オープンイノベーション開始
■オープンイノベーションに成功する組織づくりのコツ
(1)適切な人材を選定する
(2)情報管理を徹底する
(3)社内文化を醸成していく
■オープンイノベーションに取り組む日本国内の事例
(1)ドラレコ・ロードマネージャー
(2)医療LLMの研究開発・実用化
(3)月面ロボット「SORA-Q」
オープンイノベーションとは何?目的は?

そもそもオープンイノベーションとは何か、なぜ今注目されているのかを知りたい方も多いでしょう。
ここで定義と歴史を押さえ、従来のクローズドイノベーションとの違い、そして概念の最新形である「3.0」までを確認しましょう。
(1)オープンイノベーションの定義と歴史
オープンイノベーションとは、組織の内部と外部の知識や技術を意図的に活用し、新たな価値を創造する考え方です。
この概念は2003年、ハーバード・ビジネス・スクールのヘンリー・チェスブロウ氏が提唱しました。具体的には次のように定義されています。
オープンイノベーションとは、 組織内部のイノベーションを促進するために、 意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、 その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすことである。(引用:オープンイノベーション白書第二版)
この背景にあったのは、急速な技術革新とグローバル化により、一社単独でイノベーションを生み出し続けることへの限界でした。
提唱当初は製造業の技術開発が主な文脈でしたが、現在はビジネスモデルの創出や社会課題の解決など、より広い領域へと概念が進化しています。
(2)オープンイノベーションの目的
オープンイノベーションの目的は、自社単独では対応しきれない課題を外部との連携で突破することにあります。
例えば、「開発スピードが追いつかない」「研究開発コストを抑えたい」「社内リソースが不足している」といった課題の解決手段として、他社や大学、スタートアップとの提携を選択する企業が増えています。
単なる効率化にとどまらず、自社だけでは生まれなかったビジネスモデルの創出や、社会課題の解決を目指すケースも少なくありません。オープンイノベーションの目的はより広義に進化しています。
(3)クローズドイノベーションとの違い
クローズドイノベーションとオープンイノベーションの最大の違いは、リソースを社内に限定するか、社外にも求めるかという点にあります。
高度経済成長期の日本企業が得意としてきたクローズドイノベーションは、研究から製品化まで全工程を自社内で完結させるモデルです。
情報漏洩リスクが低く品質管理もしやすい反面、技術革新やグローバル化が加速した現代では、一社単独で全領域をカバーし続けることが難しくなっていきました。
一方、オープンイノベーションは外部の技術・アイデア・人材を積極的に取り込むモデルです。開発の効率化だけにとどまらず、自社単独では発想しえない新しいビジネスモデルの構築を目指すことが可能です。
(4)オープンイノベーション3.0とは
オープンイノベーションの概念は、社会の変化とともに段階的に進化してきました。
オープンイノベーション1.0は、自社で使い切れない特許や技術を外部に開放し、ライセンス料を得る「知財活用」が主体でした。
2.0では、自社にない技術を外部から取り込み、1対1の共同研究などで製品開発を効率化する「技術調達(インバウンド)」へと発展しました。
現在の3.0では、特定の企業がプラットフォーマーとなり、産官学を巻き込む「1対多」のエコシステム型へと深化しています。
これは単体の製品開発を超え、データ共有や社会システム全体の最適化を目的とする段階です。
オープンイノベーションが注目される3つの理由

なぜ今、多くの企業がオープンイノベーションに注目しているのでしょうか。
背景には、現代のビジネス環境が抱える3つの構造的な変化があります。順を追って見ていきましょう。
(1)開発スピードの加速と製品寿命の短期化
オープンイノベーションが注目される理由のひとつは、製品やサービスの開発スピードが求められる時代になったことです。
技術革新とグローバル競争の加速により、製品やサービスのライフサイクルは年々短くなっています。
市場に投入してもすぐ陳腐化し、次の開発をより速く進めなければならないサイクルが常態化しているのです。
こうした環境では、自社リソースだけで研究開発から製品化まで完結させる従来のプロセスでは対応が追いつきません。
オープンイノベーションにより、外部パートナーの既存技術や専門知識を活用してこそ、このスピードに追随できます。
(2)自前主義の限界
自社の技術や知識だけで全ての課題を解決しようとする自前主義の限界も、オープンイノベーションが注目される理由のひとつです。
ひとつの企業が保有できる経営資源には限りがあり、全ての領域で最先端の技術を維持・開発し続けることは現実的ではありません。
特に、DXのように複数の専門分野にまたがるイノベーションが求められる場面では、自社だけでの対応はスピードでもコストでも非効率といえます。
自社の強みに集中しながら、不足する専門性は外部から補う、という合理的な選択肢がオープンイノベーションです。
(3)消費者ニーズの多様化
消費者のニーズが多様化し企業単独では市場の要求に応えきれなくなったことも、オープンイノベーションが注目される理由になっています。
価値観や好みが細分化した現代では、画一的な製品やサービスで幅広い顧客の満足を得ることが難しくなっているのが現状です。
ニッチな市場や潜在ニーズを発掘するには、自社内だけでは生まれにくい異なる視点やアイデアが欠かせません。
異業種企業や特定コミュニティに強みを持つスタートアップ、大学の研究機関などと連携すれば、自社だけでは気づけなかった新たなニーズを発見できます。
そのニーズに応える革新的な製品・サービスの開発へとつなげることが、オープンイノベーションの大きな強みです。
オープンイノベーションを導入するメリット

オープンイノベーションを導入することで、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
開発スピードの向上やコスト削減といった直接的な効果にとどまらない、オープンイノベーションのメリットを順に見ていきましょう。
(1)開発や事業のスピードアップにつながる
オープンイノベーションの大きなメリットは、事業開発のスピードを飛躍的に向上させられる点です。
新規事業をゼロから立ち上げる場合、市場調査・技術開発・人材育成などに多くの時間を要します。しかし、外部にすでに存在する技術やノウハウを活用すれば、このプロセスを大幅に短縮可能です。
例えば、特定の技術を持つスタートアップと提携すれば、自社での研究開発を省き、迅速にプロトタイプ開発へ着手できるでしょう。
結果として、市場の変化に素早く対応し、競合他社に先んじて新たな価値を届けられるようになります。
(2)開発コストの削減とリスク分散ができる
オープンイノベーションによる外部リソースの活用は、開発コストの削減と新規事業のリスク分散に直結します。
自社単独で大規模な研究開発を行う場合、多額の初期投資や設備投資が必要となり、失敗した際のリスクも全て自社で負わなければなりません。
一方、オープンイノベーションでは、パートナー企業が持つ既存の技術や設備を活用できるため、自社での投資を最小限に抑えられます。
さらに、費用やリスクをパートナーと分担できるため、自社単独では躊躇していた挑戦的なプロジェクトにも取り組みやすくなるでしょう。
(3)イノベーションを創出できる
組織の垣根を越えた連携は、自社内だけでは生まれにくい革新的なアイデアやビジネスモデル、すなわちイノベーションの創出を促進します。
これは、企業文化や専門分野が異なる組織のメンバーが協業すると多様な視点や価値観がぶつかり合い、新たな化学反応が生まれるからです。
長年同じ組織にいると、思考の枠が固定化されがちになります。そこで、効果を発揮するのがオープンイノベーションです。
例えば製造業の企業がIT系のスタートアップと組むことで、従来の製品にIoT技術を組み合わせた新しいサービスが生まれるなど、既存の枠組みを越えた発想が生まれやすくなります。
(4)外部リソースで弱点を補完できる
オープンイノベーションは、自社が持たない技術やノウハウ、販路といった弱点を外部リソースで効果的に補完する手段となります。
そもそも、全ての事業領域でトップクラスの競争力を維持することは、いかなる大企業にとっても困難です。
自社の強みに経営資源を集中させつつ、不足する部分は外部の専門性を活用するほうが合理的でしょう。オープンイノベーションにはこのような効果にも期待できます。
例えば、優れた製品開発力を持ちながらも販路やマーケティング力に課題を抱える企業が、販売チャネルに強みを持つ企業と提携したとしましょう。
この場合、自社製品をより多くの顧客へ届けられるだけでなく、事業全体の成長を一気に加速させられます。
(5)技術・知識を獲得できる
パートナーとの協業を通じて、自社にはない専門的な技術や最先端の知識を獲得できることも、オープンイノベーションの大きなメリットです。
共同研究や開発プロジェクトを進める過程で、パートナーが持つノウハウや知見が自社の社員に移転され、組織全体の技術力向上が期待できます。
大学との産学連携であれば、基礎研究段階の最新技術に触れる機会が生まれるでしょう。特定分野に特化したスタートアップとの協業では、実践的なスキルをそのまま吸収することも可能です。
こうして獲得した技術や知識は、将来の自社の競争力を形成する、目に見えない資産となります。
オープンイノベーションによるデメリット

一方で、オープンイノベーションにはデメリットやリスクも存在します。メリットだけに目を向けて導入を進めると、思わぬトラブルや組織の弱体化を招きかねません。
ここでは押さえておきたいデメリットについて、詳しく解説します。
(1)アイデアや技術・知的財産の流出リスクがある
オープンイノベーションの大きなデメリットは、自社が保有する独自のアイデアや基幹技術・知的財産などが外部に流出するリスクです。
協業を進める上では、パートナー企業への一定レベルの情報開示が避けられません。その過程で、意図せず重要なノウハウや開発中の情報が漏れてしまう可能性があります。
秘密保持契約の締結は基本ですが、それだけでは万全とはいえません。どの情報をどこまで開示するか・自社のコア技術をどう守るかなどの線引きを事前に明確にする、厳格な情報管理体制の構築が不可欠です。
特に複数の企業が関わるプロジェクトでは、管理の複雑さが増すため、より一層の注意が求められます。
(2)判断力・開発力の衰退リスクがある
オープンイノベーションにおいて外部リソースへ過度に依存すると、長期的に自社の技術開発力や事業判断力を衰退させるリスクが生まれます。
「困ったら外部に頼めばよい」という意識が社内に蔓延すると、研究開発部門のモチベーションが低下し、優秀な人材の流出にもつながりかねません。
外部との連携はあくまで手段であり、自社内での人材育成や研究開発への投資を並行して継続する必要があります。
オープンイノベーションで得た外部の力に頼りきることなく、自社のイノベーション創出能力を磨き続けるバランス感覚こそが、長期的な競争力を守る鍵です。
(3)収益分配や成果に関するトラブルの懸念がある
共同事業から得られた収益の分配を巡って、パートナー企業との間でトラブルが生じる懸念もあります。
特に、金銭的な貢献と技術的な貢献など、貢献の種類が異なる場合は問題が複雑化しやすい傾向があります。
事業が成功するほど「自社の貢献の方が大きかった」という主張が生まれるケースも珍しくありません。
売上・利益の分配比率や算出方法は、プロジェクト開始前に契約で具体的に定めておくことが、後のトラブルを防ぐ手段といえるでしょう。
共同開発の過程で生まれた発明やアイデアの権利が「誰に帰属するのか」などの明確な取り決めが事前になく、後々トラブルに発展するケースも少なくありません。
共同開発した技術の特許をどちらの名義で出願するか、ライセンスの許諾範囲をどう定めるかなど、細部まで契約書に落とし込んでおく必要もあります。
(4)自社内での反発・協力不足の可能性がある
オープンイノベーションの推進に関して、既存の事業部や研究開発部門からの反発を招き、社内での協力が得られにくくなる懸念もゼロではありません。
長年自前主義で成果を上げてきた組織ほど、外部の力を借りることへの抵抗感は強くなりがちです。
反発の背景に「自分たちの役割が奪われるのではないか」という危機感や、「外部に頼らずとも自社でできる」というプライドがある場合もあります。
こうした壁を乗り越えるには、なぜオープンイノベーションが必要なのかを社内に丁寧に説明しなければなりません。
既存部門の役割や貢献を尊重する姿勢を示しながら、組織全体を巻き込んでいくことが成功への鍵となるでしょう。
オープンイノベーションを取り入れる3つの型

オープンイノベーションには、大きく3つの型があります。外部からリソースを取り入れる「インバウンド型」、自社のリソースを外部に提供する「アウトバウンド型」、そして両者を組み合わせた「カップルド型」です。
自社の課題や目的に合った型を選ぶことが、成果を最大化する上で重要になります。ここで、それぞれの型の特徴を詳しく見ていきましょう。
(1)インバウンド型
インバウンド型とは、社外の技術・アイデア・人材などのリソースを自社内に取り込み、イノベーションを創出する手法です。自前主義の限界を補うための一般的なアプローチといえるでしょう。
具体的には、他社が保有する特許技術のライセンスイン、大学や公的研究機関との共同研究、特定の技術を持つスタートアップの買収などが挙げられます。
ゼロから開発する時間とコストを削減し、スピーディーに事業を展開できる点が強みです。
(2)アウトバウンド型
アウトバウンド型とは、自社が保有しながらも活用しきれていない技術・特許・アイデアを外部に提供し、新たな価値創出を目指すアプローチです。
代表的な手法は、自社の特許技術を他社にライセンスアウトしてライセンス収入を得たり、新たな市場への参入を促したりするケースです。
また、社内で生まれた事業アイデアをスピンオフさせ、外部資本を受け入れながら独立した事業として成長させるカーブアウトも、アウトバウンド型の一種といえます。
眠っている自社の知的財産を活用できる点が、このアプローチの大きな魅力です。
(3)カップルド型(連携型)
カップルド型は、インバウンド型とアウトバウンド型の両方の要素を組み合わせた形態です。
複数の組織が対等な立場で互いの強みを持ち寄り、単独では実現不可能な目標の達成を目指す、相互補完的なアプローチといえます。
異業種の企業同士が共同で新製品を開発する事業提携(アライアンス)や、大企業がスタートアップに資金提供しながら共同で事業開発を行うコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)などが典型的な例です。
互いのリソースを掛け合わせて「1+1=2」以上の成果を生み出せる点が、このアプローチの魅力です。
オープンイノベーションする4つの対象

オープンイノベーションで連携する対象は、技術や研究開発といった有形のリソースだけではありません。アイデア・人材・知的財産など、無形の資産も重要な対象となります。
自社の課題や目的に応じて、どの対象と連携するかを見極めることが、成果を左右します。ここでは4つの対象を順に見ていきましょう。
(1)アイデア・マインド
アイデアやマインドは、オープンイノベーションにおける重要な連携の対象です。
長年同じ環境だと思考が固定化しやすく、革新的な発想が生まれにくくなりますが、外部の多様な価値観や視点からは組織に新たな刺激がもたらされます。これがイノベーションの土壌となるのです。
アイデア・マインドをオープンイノベーションの対象にすると、自社内だけでは気づけなかった課題への新しい切り口を、外部との接点から生み出せるでしょう。
(2)人材
人材も、オープンイノベーションにおける重要な連携対象です。外部から専門人材を取り込むだけでなく、社内人材が外部との協業を通じて成長するという双方向の視点が重要です。
新規事業やDX推進など、社内に専門家がいない分野に取り組む際は、外部から即戦力を登用することが確実な方法といえます。
さらに、共同研究やプロジェクトベースの協業を通じて、外部人材が持つ知識やスキルを社内に移転させることで、組織全体の人材育成にもつなげられます。
(3)特許技術などの知的財産
他社が保有する特許技術や商標、ノウハウといった知的財産も、オープンイノベーションにおける重要な連携対象のひとつです。
自社でゼロから技術開発を行う時間とコストを大幅に削減できるため、迅速な製品化・事業化が可能となります。
知的財産は、活用次第で自社の弱点を補う盾にも、収益を生む資産にもなり得る対象といえます。
(4)研究開発
オープンイノベーションにおける代表的な連携の対象が研究開発です。
基礎研究から応用開発まで、自社だけでは対応が難しい大規模・長期的なプロジェクトを、複数の組織がリソースを出し合うことで実現可能にします。
産学連携による次世代技術の共同研究や、異業種企業コンソーシアムによる社会課題解決型の技術開発などがその例です。
連携する組織の強みを掛け合わせることで、単独では到達できない高みを目指せるでしょう。
オープンイノベーションの進め方|基本の4ステップ

オープンイノベーションは、場当たり的に進めても成果は得られません。自社の経営戦略に基づいた明確な目的設定から、パートナー選定、交渉、実行まで、戦略的なステップを踏むことこそ、成功へとつながります。
ここで、オープンイノベーションの進め方、基本の4ステップを順に確認しましょう。
ステップ1. 目的やターゲットを明確にする
オープンイノベーションに着手する最初のステップは、自社の経営戦略や事業課題に基づき、「何のために」「何を解決したいのか」という目的を明確に定義することです。
目的が曖昧なままでは、どのようなパートナーと組むべきか、どのようなリソースを求めるべきかの判断軸が定まりません。結果として、方向性の定まらない非効率な活動に終始してしまうリスクがあります。
例えば、「3年後に新興市場でシェア拡大を目指す」という事業目標に対し、「そのために必要なAI解析技術が自社にない」という課題を特定したとしましょう。
これにより、「AI技術を持つスタートアップや大学」という具体的なパートナー像が明確になり、その後の探索活動を効率的に進められます。
ステップ2. パートナーを見つける
目的とターゲットが明確になったら、条件に合致する最適なパートナーを探します。
パートナーの選定はオープンイノベーションの成否を大きく左右するため、自社のネットワークだけに頼らず、多角的なチャネルを活用することが重要です。
代表的な方法には、既存の取引先や業界団体からの紹介、大学の研究シーズの探索、スタートアップが集まるピッチイベントへの参加などがあります。
近年は、企業間のマッチングを支援するオンラインプラットフォームも増えており、ITを活用して自社のニーズを公募する方法も効果的です。
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『ピッチイベントとは?意味・目的・参加するメリットを解説』
ステップ3. パートナーへ交渉する
パートナー候補が見つかったら具体的な連携条件の交渉に入ります。このステップの鍵は、双方にとってメリットのある協力関係を築けるかどうかです。
一方的な要求や自社の利益ばかりを優先する姿勢では、相手の信頼を得られません。互いの目的や期待する成果、提供できるリソースを率直に共有し、共通のゴールを設定するようにしましょう。
交渉では、技術的な協力範囲やスケジュール、役割分担にとどまらず、知的財産の取り扱いや収益分配といった条件面まで詳細に協議します。ここで曖昧な点を残すと、後のトラブルの原因となりかねません。
ステップ4. オープンイノベーション開始
契約を締結したら、いよいよプロジェクトの開始です。ただし、契約締結はゴールではなくスタートラインに過ぎません。
プロジェクトを円滑に推進するためには、定例会議による進捗共有や、課題発生時に迅速に対応できるコミュニケーション体制の構築が欠かせません。
また、計画通りに進まない場合も想定し、柔軟に軌道修正できる体制を整えておくことが重要です。
契約後も継続的に信頼関係を育み、長期的なパートナーシップを維持していく姿勢を大切にして、成果の最大化を目指しましょう。
オープンイノベーションに成功する組織づくりのコツ

オープンイノベーションを単発のプロジェクトで終わらせないようにするには、組織体制と文化の構築が不可欠です。外部との連携には情報管理やリスク対応など、特有のマネジメント課題が伴います。
ここで、成功する組織づくりのための3つのコツを見ていきましょう。
(1)適切な人材を選定する
オープンイノベーションの成否は、推進役となる人材の選定に大きく左右されます。この役割には、社内外の利害関係者を調整しながらプロジェクトを牽引する力が求められます。
専門知識はもちろん、異なる組織文化を持つ人々と円滑にコミュニケーションを取る能力や、前例のない課題にも粘り強く取り組む実行力も欠かせません。
理想的なのは、社内の幅広い部署に人脈を持ち、各所の協力を引き出せる調整能力の高い人物です。
また、兼務ではなく専任の担当者やチームを置くことで当事者意識と責任感が生まれます。経営層がこうした人材に十分な権限と裁量を与えることが、プロジェクトを前進させる上での大前提といえるでしょう。
(2)情報管理を徹底する
情報管理の徹底は、オープンイノベーションを推進する上で欠かせないマネジメント課題のひとつです。外部パートナーと協業する以上、一定レベルの機密情報の共有は避けられません。
そこで管理の不備があると、自社の競争力の源泉を失うという致命的な事態につながりかねないのです。
秘密保持契約(NDA)の締結はもちろんのこと、共有する情報の範囲を明確に定義し、アクセス権限を厳密に管理するルールを整備することが基本となります。
何が自社のコア技術で、何が協業のために開示できる情報なのかを、あらかじめ社内で仕分けておくことも非常に重要です。
(3)社内文化を醸成していく
オープンイノベーションを組織に根付かせるには、外部との連携を前向きに捉え、失敗を恐れずに挑戦を奨励する社内文化の醸成が不可欠です。
伝統的な自前主義が根強い組織ほど、外部連携に対して抵抗感が生まれやすく、全社的な協力体制を築くことが難しくなります。
この壁を乗り越えるには、経営トップがオープンイノベーションの重要性を繰り返し発信し、小さな成功事例を積極的に社内で共有することが効果的です。
さらに、外部連携の成果を人事評価に反映させるなど、社員の意識や行動を変えるための制度設計も文化醸成を後押しします。
オープンイノベーションに取り組む日本国内の事例

オープンイノベーションは、大企業からスタートアップまで業種を問わず多くの企業が実践しています。
ここでは、日本国内の具体的な事例を3つ取り上げます。自社への導入イメージを掴む参考にしてみてください。
(1)ドラレコ・ロードマネージャー
「ドラレコ・ロードマネージャー」は道路損傷の自動検出サービスです。
三井住友海上火災保険が提供する全国約5万台の通信機能付きドライブレコーダーに、東京大学発スタートアップであるアーバンエックステクノロジーズのAI画像分析技術を組み合わせました。
従来は自治体による定期的な目視点検が必要だった道路の損傷箇所を、市民が運転するだけで自動的に検出・データ化できる仕組みを実現しています。
2021年12月のサービス開始以降、20自治体への有償提供を達成し、国土交通大臣賞を受賞。民間企業と行政が連携し、社会課題を解決したオープンイノベーションの好事例です。
参考:内閣府「「第6回 日本オープンイノベーション大賞」受賞取組・プロジェクトの概要について」
(2)医療LLMの研究開発・実用化
NECと東北大学病院は、医療分野に特化した大規模言語モデル(LLM)の共同研究開発に取り組みました。
開発されたLLMは、電子カルテのテキストを推論・構造化し、紹介状や退院サマリなどの医療文書を自動生成するものです。これにより、医師の文書作成時間を平均47%削減することが確認されました。
医師の働き方改革という社会課題に対し、企業のAI技術と大学病院の医療現場知識を掛け合わせて解決した、産学連携の先進的な事例です。
参考:東北大学医療系メディア〈LIFE〉「NECと東北大学病院 第7回日本オープンイノベーション大賞日本学術会議会長賞を受賞 ~医療現場の革新へ!医師の働き方改革を目指す医療大規模言語モデルの研究開発と実用化~」
(3)月面ロボット「SORA-Q」
JAXA・タカラトミー・ソニーグループ・同志社大学が産学官連携で取り組んだ月面ロボット「SORA-Q」の開発は、異業種連携の可能性を象徴する事例です。
JAXAの宇宙関連技術に、タカラトミーと同志社大学が持つ玩具の変形・駆動技術、ソニーグループのIoTデバイス・画像処理技術を掛け合わせることで、世界最小・最軽量の月面ロボットを実現しました。
「宇宙開発と玩具メーカーの組み合わせ」という意外性こそが、オープンイノベーションならではの発想であり、そこから成果が生まれています。
参考:内閣府「「第7回 日本オープンイノベーション大賞」受賞取組・プロジェクトの概要について」
まとめ

オープンイノベーションは、自社の限界を外部との連携で突破するための重要な戦略です。
メリットとリスクを正しく理解し、目的に合った型とパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。
まず自社の課題をひとつ挙げることが、オープンイノベーションへの確かな第一歩です。まずは一歩を踏み出し、イノベーションへの扉を開きましょう。
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