個人事業主が法人化(法人成り)すべきタイミングは?メリット・手順も解説
最終更新日:2025/07/16
作成日:2016/12/26
- ・「法人化のタイミングがわからない」
- ・「今の売上で法人化しても大丈夫?」
そんな悩みを抱える個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
実際、法人化は節税や信用力の向上など多くのメリットがある一方で、手続きやコストの負担も伴うため、判断が難しいテーマです。
この記事では、法人化すべきタイミングの目安やメリット・デメリット、手続きの流れまで、迷いやすいポイントをわかりやすく解説します。
「そろそろ法人化すべき?」と感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
■個人事業主から法人化を検討するタイミングの目安は?
(1)事業拡大や資金調達を検討してる場合
(2)所得が800万円を超えた場合
(3)売上が1,000万円を超えた場合
■個人事業主が法人化(法人成り)するメリット
(1)節税対策がしやすくなる
(2)赤字を10年間繰り越せるようになる
(3)決算月を自由に設定できる
(4)責任が有限責任になる
(5)社会的な信用度が高まる
■個人事業主が法人化(法人成り)するデメリット
(1)設立時に費用がかかる
(2)社会保険への加入義務が発生する
(3)赤字でも税金の支払いが必要になる
(4)経理・事務処理の負担が増える
(5)役員報酬は原則として毎月固定になる
■個人事業主と法人、どちらが得?シミュレーションで比較
(1)個人事業主の場合の税金シミュレーション
(2)法人化した場合の税金シミュレーション
■個人事業主から法人化する際の費用と期間
(1)法人設立費用の目安
(2)法人設立までにかかる期間
■個人事業主が法人化する際の流れ
(1)会社形態と基本事項を決める
(2)定款を作成・認証する
(3)資本金を払い込む
(4)設立登記を行う
(5)法人設立後の届出・手続きを行う
■個人事業主が法人化した後に必要な手続きと注意点
(1)廃業届と確定申告を忘れずに行う
(2)名義変更や届出の漏れに注意する
■個人事業主が法人化するか迷ったら
(1)法人化が事業計画に必要かを見直す
(2)専門家へ相談してみる
■個人事業主が法人化する際によくある質問
(1)法人化したあとに個人事業主に戻すことはできますか?
(2)法人化で後悔するケースはありますか?
(3)法人化は個人事業主より節税になりますか?
法人化(法人成り)とは?

法人化、または法人成りとは、個人事業主として営んできた事業を、新たに設立した法人へ引き継ぐ手続きです。
事業の主体が「個人」から「法人」へ移ることで、法的な立場や扱いが変わり、組織としての特徴も大きく異なります。
たとえば、税金や社会保険の取り扱い、社会的な信用力、さらには代表者が変わっても事業を続けられる継続性など、さまざまな面で違いが生まれます。
法人化には、個人事業主と比べて多くのメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。
後悔しない選択をするためには、それぞれの特徴を正しく理解しておくことが大切です。
個人事業主と法人の違いは?

個人事業主とは、法人を設立せず、個人の名前で事業を行う形態です。
開業届を税務署に提出するだけでスタートでき、設立費用もかかりません。小規模に事業を始めたい場合や、スピード感を重視するケースに向いています。
一方、法人は法的に「会社」という独立した存在を設立し、法人名義で取引を行います。
会社法に基づく手続きや登記が必要で、設立時には登録免許税や定款認証費用、資本金の用意など一定のコストと手間がかかります。
法人は社会的な信用が高く、融資や取引先の開拓、採用活動など、ビジネスの成長を目指すうえで有利に働く場面が多くなります。
事業のステージや将来の展望、求める信用力やコスト感を踏まえて、最適な形態を選びましょう。
個人事業主から法人化を検討するタイミングの目安は?

個人事業主はどのようなタイミングで法人化を検討すべきなのか、具体的な目安について解説します。
(1)事業拡大や資金調達を検討してる場合
事業を拡大したい、資金調達をしたいと考えている場合は、法人化を検討するタイミングです。
たとえば、法人でなければ契約できない案件や、法人格を条件とする大手企業との取引など、ビジネスの幅を広げる上で、法人化が前提となる場面は少なくありません。
また、法人のみを対象とした補助金・助成金の制度も多く、活用できる制度の幅が大きく広がります。
個人事業のままでは、事業規模や成長スピードに限界が出てくることも。将来のビジョンに合わせて、早めに法人化を検討しておくとよいでしょう。
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(2)所得が800万円を超えた場合
所得が800万円を超えた場合は、法人化による節税効果が期待できるタイミングです。
個人事業主は累進課税のため、課税所得が695万円を超えると23%、900万円を超えると33%と、税率が大幅に上がります。
一方、法人税は中小企業であれば800万円以下は15%(※2027年3月31日までの軽減措置。本則:19%)、800万を超える部分は23.2%と税率が一定です。
このため、所得が800〜900万円を超えると、法人の方が税負担を抑えられるケースが増えます。
ただし、社会保険料の増加や設立・維持コストなども考慮する必要があるため、最終的な判断は専門家とシミュレーションすることが推奨されます。
(3)売上が1,000万円を超えた場合
年間売上が1,000万円を超えた場合、消費税の課税事業者ラインと重なるため、法人化を検討すべきタイミングです。
消費税は2期前の売上に基づいて課税されるため、新たに法人を設立すれば、原則として設立から2年間は消費税の納税が免除されます。
ただし、以下の場合は免除が適用されないため注意が必要です。
- ・資本金が1,000万円以上の場合
- ・インボイス制度に登録した場合(課税事業者を選択した場合)
売上1,000万円を超えている事業は、拡大や人材採用を視野に入れる段階にあることが多く、法人化によって信用力が向上するメリットも期待できます。
個人事業主が法人化(法人成り)するメリット

ここからは、個人事業主が法人化するメリットを6つ紹介します。
(1)節税対策がしやすくなる
法人化するメリットのひとつが、節税対策の幅が広がることです。
個人事業主は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」が適用されますが、法人の場合は一定の税率で抑えられるうえ、法人ならではの経費計上が可能になります。
たとえば、法人では次のような支出を経費として計上できる場合があります。
- ・役員報酬:会社の経費として処理でき、個人側では給与所得控除を活用可能
- ・役員退職金:退職時にまとまった額を損金にでき、長期的な節税に有効
- ・生命保険料の一部:一定の条件を満たせば、保険料の一部を法人経費として処理できる
このように、個人よりも柔軟に利益圧縮ができる仕組みが整っているため、売上や利益が一定以上ある場合には、法人化による節税効果が期待できます。
(2)赤字を10年間繰り越せるようになる
法人化すると、赤字を最大10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる点がメリットです。
個人事業主の場合、赤字の繰越期間は最長3年に限られています。一方で法人は、青色申告をしていれば10年にわたり繰越控除が可能です。
たとえば開業初期に設備投資などで赤字が出ても、数年後に黒字化すれば、過去の赤字と相殺して、法人税の負担を軽減できます。
この制度は、将来的な利益を見込んでいる事業にとって、大きな安心材料になるでしょう。
(3)決算月を自由に設定できる
法人化すると、決算月を自由に決められる点が大きなメリットです。
個人事業主は決算月が12月末と法律で固定されていますが、法人は1年以内であれば、事業年度を自由に設定できます。
これにより、繁忙期を避けて経理に集中しやすい時期を選んだり、資金繰りに応じて納税時期をコントロールしたりと、経営判断の自由度が高まります。
また、設立から最初の決算月までの期間を長くとることで、消費税の免税期間(原則2年)を最大限に活用する戦略も可能です。
(4)責任が有限責任になる
法人化のメリットのひとつは、賠償範囲が限定される「有限責任」になる点です。
個人事業主は、事業の借金や未払いに対してすべての責任を負う「無限責任」となり、私有財産を返済に充てる必要が出てきます。
一方で、法人を設立すれば、原則として賠償範囲は出資額に限られ、会社と個人の責任が明確に分かれます。
なお、金融機関から融資を受ける際には、経営者が連帯保証を求められるケースもあり、その場合は個人資産に影響する可能性があります。
とはいえ、万が一のリスクから私生活を守れるという点で、有限責任は法人化を検討する大きな理由のひとつです。
(5)社会的な信用度が高まる
法人化は、社会的な信用を得やすくなるというメリットがあります。
法人として登記されることで、事業の存在が公的に証明され、個人事業主に比べて外部からの評価が安定しやすくなります。
その結果、金融機関からの融資や、企業との契約もスムーズに進みやすくなるのが特徴です。
実際に、大手企業の中には「法人としか取引しない」と定めているケースもあり、会社組織として認められることで、新たなビジネスチャンスを掴めるようになります。
採用面でも、組織としての信頼性が高まり、優秀な人材の確保においても有利に働く可能性があります。
個人事業主が法人化(法人成り)するデメリット

法人化には多くのメリットがある一方で、コストや手間などのデメリットも存在します。
ここからは、法人化で注意すべきポイントを整理して解説します。
(1)設立時に費用がかかる
法人化のデメリットのひとつは、まとまった初期コストが発生する点です。
株式会社や合同会社など、会社形態によって金額は異なりますが、登録免許税や定款費用に加え、法人印の作成や専門家への依頼費用を含めると、10〜25万円以上かかるケースもあります。
具体的な金額や内訳については、後述の「法人化にかかる費用と期間」で詳しく解説します。
(2)社会保険への加入義務が発生する
法人化のデメリットとして、社会保険への加入が義務化される点が挙げられます。
たとえ代表者1人の法人であっても、健康保険と厚生年金への加入が原則必要となり、個人事業主時代の国民健康保険・国民年金からの切り替えが求められます。
保険料は役員報酬や従業員の給与額に応じて計算され、会社と本人が折半で支払う仕組みです。
そのため、報酬を高く設定すると、社会保険料の負担も大きくなる点に注意が必要です。
将来的には、年金受給額の増加や傷病手当金といった保障が得られるという利点もありますが、短期的には会社の固定費増加につながる要因となります。
(3)赤字でも税金の支払いが必要になる
法人化のデメリットのひとつは、赤字でも税金の支払いが必要になる点です。
個人事業主の場合、決算が赤字であれば、所得税や住民税は基本的にかかりません。一方、法人になると、利益の有無にかかわらず課される税金があります。
代表的なものが法人住民税の「均等割」です。これは「法人税割」と「均等割」に分かれており、赤字でも均等割の支払いは必須となります。
法人住民税の金額は資本金や従業員数をもとに自治体が定めており、最低で年間7万円前後が目安です。
利益が出ていないタイミングでも税金が発生する点は、法人化に伴う注意点といえるでしょう。
(4)経理・事務処理の負担が増える
法人化では、経理や会計処理、税務申告などの負担が増加します。
個人事業主に比べて作成すべき書類が多く、内容も複雑になるため、専門知識が不可欠です。
たとえば、決算書では損益計算書や貸借対照表に加え、法人税の申告には勘定科目内訳明細書などの詳細な書類も必要です。
さらに、社会保険の手続きや年末調整など、事務負担も増える傾向があります。
これらを正確に処理するためには、会計ソフトの導入や税理士への依頼が現実的ですが、運営コストが増える点に注意が必要です。
(5)役員報酬は原則として毎月固定になる
法人化によって、役員報酬の柔軟な変更が難しくなる点はデメリットのひとつです。
役員報酬は、原則として毎月同額を支給する「定期同額給与」に設定しなければ、全額を経費として認められません。
事業年度開始から3ヶ月以内であれば変更が可能ですが、以降に増額すると、増加分は経費にできず、法人税の負担が増える恐れがあります。
業績の悪化など「やむを得ない事情」がある場合は減額が認められる可能性もありますが、税務署の判断に委ねられるため確実ではありません。
金額の設定に慎重さが求められ、状況に応じた柔軟な対応が難しい点は、法人化にともなう明確な不利な側面といえます。
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個人事業主と法人、どちらが得?シミュレーションで比較

法人化すると節税になると言われますが、実際には事業規模や所得によって異なります。
ここでは具体的な数値をもとに、個人事業主と法人どちらが得かをシミュレーションで比較します。
(1)個人事業主の場合の税金シミュレーション
青色申告をしている個人事業主のAさん(独身)の事業において、年間収入1,000万円、経費が400万円だったケースを想定します。
青色申告特別控除(650,000円)や基礎控除(580,000円)などの所得控除を適用した上で、課税所得や各種税金を計算しています。
この場合、以下のような税負担が発生します。
- ・所得税:526,500円
- ・復興特別所得税:11,056円
- ・住民税:497,000円
- ・個人事業税:155,000円
- ・合計:1,189,556円
なお、事業税は年間所得が290万円を超える場合に課税される税金で、ほとんどの業種において適用されます(農業・文筆業など一部は非課税)。また、住民税には一律の均等割と所得に応じた所得割が含まれます。
(2)法人化した場合の税金シミュレーション
次は、法人の売上と事業経費は個人事業主と同じ1,000万円・400万円と仮定し、Aさんに年間500万円の役員報酬を支払うケースを見てみます。
この前提のもとで、法人と個人それぞれの税負担を分けて試算しています。
法人部分の税金
- 法人税・地方法人税・住民税合計:245,950円
- 事業税・地方法人特別税合計:50,120円
- 法人分の合計:296,070円
個人部分(給与所得)の税金
- ・所得税:200,500円
- ・復興特別所得税:4,210円
- ・住民税:318,000円
- ・個人分の合計:522,710円
法人化した場合の税負担は、合計818,780円になり、個人事業主の場合(1,189,556円)と比較すると、約37,000円以上の節税効果が見込めます。
ただし、法人の場合は別途「社会保険加入義務」や「法人運営コスト」なども発生ずづので、節税額だけで判断することはできません。
※住民税・事業税・地方法人税は地域や自治体で差異があるため概算です。
※社会保険料や配当・その他控除は考慮していません。
※税制改正等により数値は変動するため、必ず最新法令をご確認ください。
個人事業主から法人化する際の費用と期間

この章では、個人事業主が法人化する際に必要な費用と期間の目安について解説します。
(1)法人設立費用の目安
法人設立にかかる費用は、会社形態によって大きく異なります。
以下は、よく選ばれる会社形態(株式会社・合同会社)の設立費用の目安です。
- ・株式会社:約20〜25万円程度
- ・合同会社:約6〜10万円程度
加えて、以下のような諸費用が発生する場合もあります。
- ・法人印の作成費:数千円〜1万円程度
- ・専門家(司法書士など)への依頼報酬:5万〜15万円程度
このように、会社形態や依頼方法によって10万〜40万円前後の初期費用がかかる点を、押さえておきましょう。
実際に法人化を進める前に、具体的な費用をシミュレーションしておくとスムーズです。
(2)法人設立までにかかる期間
法人設立にかかる期間は、会社形態によって異なります。
株式会社の場合、定款の認証や必要書類の準備を含めて、約2〜3週間程度が目安です。
一方、合同会社は定款認証が不要なため、準備から登記完了まで1〜2週間ほどで済むケースが一般的です。
ただし、書類に不備がある場合や法務局の混雑状況によっては、さらに時間がかかる場合もあるため、余裕をもったスケジュールで手続きを進めることが大切です。
個人事業主が法人化する際の流れ

法人化には複数の手続きが必要ですが、ポイントを押さえればスムーズに進められます。
ここでは、個人事業主が法人化する際の一般的な流れを解説します。
(1)会社形態と基本事項を決める
法人化の最初のステップは、会社の形態と設立に必要な基本情報を決めることです。
法人の主な形態には「株式会社」と「合同会社」があり、それぞれ特徴が異なります。
たとえば、資金調達や信用力を重視する場合は株式会社が、設立コストや柔軟な運営を重視するなら合同会社が向いています。
会社形態を選んだら、会社名(商号)、事業内容、所在地、資本金の額、設立日、役員構成など、定款や登記に必要な情報を具体的に検討していきます。
これらの内容は後の手続きにも関わるため、将来の事業展開も見据えて慎重に決定することが大切です。
(2)定款を作成・認証する
法人を設立するには、「定款」と呼ばれる会社の基本ルールを文書で定める必要があります。
主な記載事項は以下の通りです。
- ・商号(会社名)
- ・事業目的
- ・本店所在地
- ・資本金の額
- ・設立時の発起人の氏名・住所
- ・発行可能株式総数(株式会社の場合)
これらは定款としての有効性を保つために必須の項目であり、漏れなく記載しなければなりません。
株式会社を設立する場合、作成した定款は公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。資本金によって認証手数料が変わるため、事前に確認しておきましょう。
一方、合同会社の場合は定款の認証は不要で、作成だけで資本金の払い込みや設立登記といった次の手続きに進めます。
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(3)資本金を払い込む
定款を作成したら、次は資本金の払い込みです。
資本金を出資するのが「発起人」と呼ばれる人たちで、会社の設立を計画し、実際に出資や設立手続きを行う立場にあります。
原則として、発起人それぞれが、自分の名義の銀行口座に振り込みで資本金を払い込む必要があります。これは、誰がいくら出資したかを通帳で明確に証明するためです。
発起人が複数いる場合は、定款で定めた額をそれぞれが振り込みます。
ただし、発起人が1人の場合に限り、「預け入れ」でも認められます。その場合でも一度資金を引き出してから再度入金するなど、出資したことが確認できる形を取る必要があります。
払い込みが済んだら、設立登記に備えて通帳のコピーと払込証明書を作成しておきましょう。
(4)設立登記を行う
資本金の払い込み後は、会社の本店所在地を管轄する法務局で設立登記を行います。これにより、法人として正式に会社が成立します。
提出書類には、設立登記申請書・定款の謄本・払込証明書・印鑑証明書などが必要です。
申請は窓口や郵送・オンラインのいずれでも対応可能で、書類に不備がなければ、登記は7~10日ほどで完了します。
登記が完了すれば、登記簿に法人情報が記載され、金融機関との取引や各種契約もスムーズに行えるようになります。
(5)法人設立後の届出・手続きを行う
登記が完了したら、法人として事業を開始するために、各種の届出や手続きを行う必要があります。
主に以下の書類を、それぞれの提出先に期限内に提出します。
- ・法人設立届出書
- ・青色申告の承認申請書
- ・給与支払事務所等の開設届出書
提出期限は書類ごとに異なるため、事前確認が必要です。さらに、健康保険・厚生年金への加入手続きも忘れずに行いましょう。
届出に漏れがないよう、あらかじめチェックリストを作成しておくと安心です。
個人事業主が法人化した後に必要な手続きと注意点

ここからは、法人化した後に必要な手続きと注意点を解説します。
法人化を検討している方は、以下の項目についても把握しておきましょう。
(1)廃業届と確定申告を忘れずに行う
個人事業主が法人成りした場合でも、個人事業を廃止したことを税務署に届け出る必要があります。
廃業の手続きは、「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出すれば完了です。提出期限は、原則として廃業日から1か月以内となっています。
また、青色申告をしていた場合は、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を廃業した年の翌年3月15日までに提出する必要があります。
さらに、法人成りした年は、個人事業主としての確定申告と法人としての確定申告の両方が必要です。
個人事業の確定申告はその年の1月1日から廃業日まで、法人の確定申告は法人設立日から事業年度末までの所得が対象となります。
これらの手続きを適切に行うことで、税務上のトラブルを防ぎ、スムーズな法人運営につながるでしょう。
(2)名義変更や届出の漏れに注意する
法人化後は、個人事業主として使用していた様々な名義を、法人名義へ変更する必要があります。
たとえば、銀行口座やクレジットカード、各種契約などが挙げられます。これらの名義変更を怠ると、経費計上がスムーズに行えないなどの問題が生じる恐れがあります。
手続きには期限が定められているものも多く、提出漏れがあると節税メリットが受けられなくなる場合もあります。
手続きを円滑に進めるためにも、事前に必要な名義変更や届出をリストアップし、計画的に進めることが重要です。
個人事業主が法人化するか迷ったら

ここでは、法人化を判断するうえで見直したいポイントや、迷ったときに取るべき行動について解説します。
(1)法人化が事業計画に必要かを見直す
法人化を判断する際は、所得による節税効果や信用力の向上といったメリットだけでなく、費用や手続きの負担なども含めて慎重に検討しましょう。
特に重要なのが、自身の事業が今後どのように成長し、どんな目標を達成したいのかという中長期的な視点です。
節税だけを目的に法人化してしまうと、かえってコストが重くなったり、運営上の手間が増えて後悔につながる恐れもあります。
事業の成長戦略の中で、法人化が果たす役割や効果をしっかり位置づけることが、最終的な判断の質を高めるポイントです。
(2)専門家へ相談してみる
法人化するかどうか迷っているなら、税理士や司法書士などの専門家に相談することも有効です。
節税効果の有無や、今の事業規模で本当に法人化が有利なのかといった判断材料を、専門的な視点から具体的に教えてもらえます。
たとえば、税理士であれば税金・社会保険などのコストを数値でシミュレーションしてもらえるため、自分では気づけなかったリスクや費用感を知るきっかけにもなります。
判断に迷ったときは、一人で悩まず、信頼できる専門家に相談して現状を整理することが、納得のいく決断につながります。
個人事業主が法人化する際によくある質問

ここでは、個人事業主が法人化を考えるときによくある質問とその回答をまとめました。
(1)法人化したあとに個人事業主に戻すことはできますか?
一度法人化しても、個人事業主へ戻ることは可能です。この手続きは「個人成り」と呼ばれています。
まずは法人の解散または休業手続きを行う必要があり、解散する場合は株主総会での決議や法務局への登記などが必要です。一定の手間や費用がかかる点には注意が必要でしょう。
その後、税務署へ「個人事業の開業届出書」を提出すれば、個人としての事業を再開できます。
また、社会保険の加入区分も変わるため、国民健康保険や国民年金への切り替え手続きも忘れずに行いましょう。
(2)法人化で後悔するケースはありますか?
法人化にはメリットが多くありますが、後悔するケースも存在します。
たとえば、思ったほど節税効果が得られなかったという例があります。事業の利益額によっては、法人化しても個人事業主の方が税負担が軽くなることもあるためです。
また、法人設立費用や、赤字でも発生する法人住民税の均等割といった維持コストが想定以上に重くのしかかることもあります。
さらに、経理や事務処理の手間が増えたり、会社の資金を自由に使いづらくなる点に不便を感じる人も少なくありません。
リスクを把握したうえで、自分の事業に法人化が本当に適しているかを見極めることが重要です。
(3)法人化は個人事業主より節税になりますか?
一定の所得を超えると、法人化によって節税できる可能性は十分にあります。
法人の税率は一定で、所得が高くなるほど税率が上がる個人事業主の累進課税に比べて有利になるケースが多いためです。
一般的には、課税所得が800万円を超えるあたりが法人化の目安とされています。
ただし、法人には社会保険への加入義務や赤字でもかかる法人住民税などの固定費が発生するため、節税効果が得られるかどうかは、利益規模や経費構造に応じて慎重に見極める必要があります。
まとめ

個人事業主が法人化するかどうかは、節税や信用力の向上といったメリットだけでなく、費用や手続きの負担なども含めて慎重に判断する必要があります。
事業の成長段階や将来の展望を踏まえ、法人化が本当に自分の事業に適しているかを考えてみましょう。
迷うときは、一度専門家に相談し、冷静に状況を整理してみることが後悔のない選択につながります。
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