個人事業主はふるさと納税のメリットがある?上限額の計算方法や注意点とは
作成日:2026/04/06
大きなメリットがある制度だからこそ、個人事業主はふるさと納税をぜひ活用したいところです。
しかし一方で、年間の事業の利益(所得)の変動から、「いくらまでなら損をしないのか」「限度額の計算方法がわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。
また、いざというときの確定申告書の書き方や必要書類について、不安を感じている方もいるかもしれません。
そこで本記事では、個人事業主の場合ふるさと納税のメリットや注意点・控除限度額の具体的な計算方法を解説します。
普段の仕訳方法や確定申告の正しい手続きまで紹介しているので、ふるさと納税制度を利用したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
目次
■個人事業主がふるさと納税で得られるメリット
(1)寄付する自治体や使い道を決められる
(2)返礼品をもらえる
(3)実質的な経済的メリットがある
■個人事業主のふるさと納税のデメリット
(1)上限額を超えた分は自己負担になる
(2)お金が戻るわけではない
(3)ワンストップ特例制度を利用できない
■ふるさと納税で控除される税金の種類
(1)所得税
(2)住民税
■ふるさと納税の控除上限額の計算方法・具体例
(1)上限額の計算式
(2)上限額の簡単な目安
(3)個人事業主の控除額の例
(4)シミュレーションサイトの活用もおすすめ
■個人事業主がふるさと納税を申し込む手順
(1)自治体を選定する
(2)ふるさと納税を申し込む
(3)寄付金を支払う
(4)寄附金受領証明書を受け取る
(5)返礼品を受け取る
■個人事業主のふるさと納税の仕訳・確定申告
(1)ふるさと納税は経費にならない
(2)確定申告のやり方
■個人事業主のふるさと納税に関するよくある質問
(1)青色申告特別控除は上限額に影響する?
(2)ふるさと納税をしないほうがいい年収は?
ふるさと納税とはどんな制度?

ふるさと納税は、応援したい自治体へ寄付ができる制度です。名目に納税とありますが、実態は寄付金控除の対象となる「寄付」に該当します。
仕組みは、寄付した金額のうち自己負担額の2,000円を除いた全額が、所得税や住民税から控除されるというものです。寄付はいくらからでも可能です。
自身の所得に応じた上限額の範囲内であれば、実質2,000円の負担で地域に貢献しながら、税制上の恩返しと返礼品の両方を受けられます。
生まれ育った故郷やゆかりのある地域など、支援したい場所を自由に選んで手続きを行える点も、この制度の特徴です。
個人事業主がふるさと納税で得られるメリット

個人事業主がふるさと納税をすると、次のようなメリットを得られます。
- (1)寄付する自治体や使い道を決められる
- (2)返礼品をもらえる
- (3)実質的な経済的メリットがある
(1)寄付する自治体や使い道を決められる
ふるさと納税では、寄付先の自治体を全国から自由に選定できます。
魅力的な返礼品を提供している自治体や、純粋に応援したい地域を自身の意思で選択できる点はメリットのひとつです。複数の自治体へ寄付することもできます。
また、ふるさと納税による寄付金の使い道は、例えば「災害復興支援」「子育て支援」といった自治体ごとのプロジェクトから指定できるようになっています。
自分自身の社会貢献の思いを、ふるさと納税で直接反映させられる点も大きな魅力です。
(2)返礼品をもらえる
寄付額に応じた返礼品を受け取れる点は、ふるさと納税の大きなメリットです。
控除上限額の範囲内で寄付を行えば、自己負担額2,000円のみで、地域の特産品や日用品・工芸品などの多彩な返礼品を受け取れます。
生活必需品を選んで個人事業主としての生活費を賢く抑えたり、普段は味わえない高級食材を楽しんだりするのも選択肢のひとつです。
(3)実質的な経済的メリットがある
ふるさと納税は、厳密に言えば節税そのものというより「税金の前払い」に近い制度です。
ただし、本来支払うべき税金が翌年の住民税減額などで相殺されたり、一部が還付金として戻ってきたりします。手元に残る返礼品の価値を考慮すると、実質的な経済的メリットは非常に大きいといえます。
個人事業主は普段の確定申告の枠組みの中で手続きが完結するため、新たな申告の手間がほとんど増えない点もメリットです。
個人事業主のふるさと納税のデメリット

個人事業主がふるさと納税を行う際は、次の注意点があります。
- (1)上限額を超えた分は自己負担になる
- (2)お金が戻るわけではない
- (3)ワンストップ特例制度を利用できない
理解せずに手続きを進めると、控除を最大限に受けられなかったり、申請で手間取ったりする可能性があるため、事前にデメリットを押さえておきましょう。
(1)上限額を超えた分は自己負担になる
ふるさと納税の控除には、個人の所得に応じた上限額が設定されています。
この「いくらまでなら大丈夫か」という限度額を超えて寄付した金額は、全額自己負担となり損をしてしまう点に注意しましょう。
2,000円の自己負担で済むのは、あくまで控除上限額の範囲内での寄付に限られます。
個人事業主は会社員と違い、年間の所得が確定するまで収入が変動しやすいため、年内に正確な上限額を把握しにくい方も多いでしょう。
年末の売上や経費の見込みをもとに上限額を予測し、ギリギリを攻めずに余裕を持った寄付額に留める、といった工夫が求められます。
(2)お金が戻るわけではない
ふるさと納税は、寄付をした後にお金が現金で戻ってくる、あるいは手元の資金が増える制度ではありません。
本来支払うべき税金が「所得税の還付」や「翌年の住民税の減額」という形で相殺される仕組みです。
つまり、寄付を行う時点では一時的に手元の現金が減少します。
個人事業主として、事業の運転資金や納税資金を圧迫しないよう、計画的に寄付するようにしましょう。
(3)ワンストップ特例制度を利用できない
個人事業主は、原則として「ワンストップ特例制度」を利用できません。ワンストップ特例制度とは、もともと確定申告の必要がない給与所得者(会社員など)を対象とした特例措置です。
この制度を利用すると、1年間の寄付先が5自治体以下の場合に限り、確定申告なしで寄付金控除を受けられます。事業所得などを申告する目的で確定申告が必須の個人事業主は、この特例の対象外です。
ちなみに、会社員の副業として事業を行っている方でも、副業分の確定申告を行うのであれば、ワンストップ特例制度は利用できません。
個人事業主がふるさと納税の控除を受けるには、確定申告書に寄付の内容を記載し受領証明書を添えて郵送、もしくは電子データで申告する必要があります。
ふるさと納税で控除される税金の種類

ふるさと納税による寄付金は、「所得税」と「住民税」の2種類の税金から控除されます。
控除される仕組みやタイミングは異なるため、ここでそれぞれの特徴を理解しておきましょう。
(1)所得税
所得税からの控除は、所得控除として扱われます。寄付金額(自己負担2,000円を除く)が課税対象となる所得から差し引かれ、その分だけ結果的に納めるべき所得税が安くなる仕組みです。
なお、源泉徴収や予定納税などですでに納付した税額が多すぎた場合に限り、差額が還付(返金)されます。
所得税控除額の基本の計算式は、次の通りです。
(ふるさと納税の寄付金額−2,000円)×所得税率
所得税率は、課税される所得金額に応じて5%から45%の間で変動します。
(2)住民税
住民税への反映は、寄付を行った翌年度に支払う住民税額が直接減額される、税額控除で行われます。毎年5〜6月頃に届く「住民税課税決定通知書」の税額控除欄で、実際に引かれた金額を確認しましょう。
住民税からの控除額は「基本分」と「特例分」の合計で決まります。
それぞれの計算方法は、以下の通りです。
- ・基本分:(ふるさと納税額−2,000円)×10%
-
・特例分:(ふるさと納税額−2,000円)×(100%−10%(基本分)−所得税率)
※特例分の控除額は、個人住民税所得割額の2割が上限
この合計金額が、翌年度に支払うべき住民税から差し引かれます。
参考:総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
☆あわせて読みたい
『【フリーランスの税金】種類と控除一覧!節税対策やいつ払うのかを解説』
ふるさと納税の控除上限額の計算方法・具体例

個人事業主がふるさと納税のメリットを最大限に享受するには、控除上限額を事前に把握しましょう。上限額は、年間の所得や扶養家族の有無・その他の控除の適用状況によって決まります。
所得が変動しやすい個人事業主にとって、正確な計算は簡単ではありません。しかし、計算式の基本や目安の確認方法を知れば、大きな失敗を防げます。
ここで、ふるさと納税の控除限度額の計算方法や、具体的なシミュレーション例を見てみましょう。
(1)上限額の計算式
ふるさと納税の控除上限額は、住民税の「所得割額」を基準に計算されます。簡略化した計算式は、以下の通りです。
個人住民税所得割額×20%÷(100%−住民税基本分10%−所得税率×1.021)+2,000円
毎年5〜6月頃に自治体から送付される「住民税課税決定通知書」を用意し、前年の所得に基づく住民税所得割額を確認することが、目安を立てる第一歩となります。
(2)上限額の簡単な目安
ふるさと納税の上限額はご自身の所得や家族構成によって異なりますが、住民税所得割額からおおよその目安を把握できます。
前年の所得に基づいて発行された住民税課税決定通知書を用意し、記載されている「所得割額」を確認しましょう。
控除上限額は個人の状況によって異なりますが、住民税所得割額の20%〜45%程度の範囲となることが一般的です。
ただし、この方法はあくまで前年の所得を基準にしたものです。今年の所得が前年と大きく異なる見込みの場合は、増減を考慮して寄付額を調整しましょう。
(3)個人事業主の控除額の例
具体的な例を基に控除額をシミュレーションしてみましょう。
ここでは、課税所得300万円(基本の所得税率10%)、独身の個人事業主が30,000円のふるさと納税を行ったと仮定します。
- ・所得税からの控除額:(30,000円-2,000円)×10%=2,800円
- ・住民税(基本分):(30,000円-2,000円)×10%=2,800円
- ・住民税(特例分):(30,000円-2,000円)×(100%-10%-10%)=22,400円
この結果、控除される税金の合計額は「2,800円+2,800円+22,400円=28,000円」となります。寄付額30,000円との差額である2,000円が自己負担額です。
(4)シミュレーションサイトの活用もおすすめ
より手軽に上限額の目安を知りたい場合は、各ふるさと納税ポータルサイトが提供しているシミュレーション機能を活用しましょう。
シミュレーションサイトには個人事業主専用のものもあり、年間の売上や経費・各種控除の金額を入力すれば控除上限額を計算できます。
まずは前年の確定申告書の控えをもとに、大まかな金額を把握しましょう。年末に近づいてきたら今年の所得を見積もって、再度シミュレーションを行うと、上限額を超えるリスクを減らせます。
個人事業主がふるさと納税を申し込む手順

個人事業主がふるさと納税を申し込む際の大まかな流れは、会社員とほとんど共通です。ここでは、ふるさと納税の手順を順を追って解説します。
(1)自治体を選定する
控除上限額をシミュレーションで確認したら、寄付をしたい自治体と希望する返礼品を選びましょう。ふるさと納税のポータルサイトなどを活用すれば、全国の自治体や返礼品を簡単に検索・比較できます。
返礼品は、肉や魚・果物といった食料品から、日用品・家電・旅行券まで多岐にわたります。
応援したい地域や思い出の地で選ぶ方法もあれば、返礼品の魅力で選ぶ方法もあります。自身のライフスタイルや好みに合わせて、寄付先をじっくり検討しましょう。
(2)ふるさと納税を申し込む
寄付する自治体と返礼品が決まったら、申し込み手続きを行いましょう。現在では、ほとんどの申し込みがふるさと納税ポータルサイトを通じて、オンラインで完結します。
サイトの指示に従って、氏名・住所などの必要事項を入力し、申し込みしましょう。一部の自治体では、ウェブサイトからの直接申し込みや電話・郵送といった方法で対応している場合もあります。
なお、いつから始めればよいという決まりはありません。その年の控除の対象とする期限は、12月31日の受領完了分までです。
(3)寄付金を支払う
申し込み手続きと合わせて、寄付金の支払いを行いましょう。支払い方法は多様化しており、近年、一般的になっている方法はクレジットカード決済です。
2025年10月以降、ポータルサイト独自のポイント還元は廃止されました。しかし、クレジットカード会社の通常決済に対する付与ポイントは引き続き対象です。
クレジットカードだけでなく、コンビニ払いや銀行振込・PayPay・楽天ペイなどの各種キャッシュレス決済に対応している自治体やポータルサイトも増えています。
(4)寄附金受領証明書を受け取る
寄付金の支払いが完了してからしばらくすると、寄付先の自治体から「寄附金受領証明書」という書類が郵送で届きます。
この証明書は、確定申告をして寄付金控除を受けるために必要です。返礼品とは別に送られてくることが多いため、見落とさないように注意しましょう。
複数の自治体に寄付した場合は、確定申告の時期まで、すべての証明書をまとめて大切に保管しておきましょう。
(5)返礼品を受け取る
寄付手続き完了後、申し込み時に選択した返礼品が指定の住所に配送されます。返礼品が届くまでの期間は、品物や自治体・申し込みの時期によって大きく異なります。
一般的には申し込みから1〜2ヶ月程度で届くケースが多いです。ただし、人気の特産品や収穫時期が限定される果物、また寄付が集中する年末などは、到着までさらに時間がかかることもあります。
個人事業主のふるさと納税の仕訳・確定申告

個人事業主がふるさと納税を行った場合、会計上の処理と税務上の申告をどのように進めたらよいのでしょうか。
ここでは、ふるさと納税に関する具体的な仕訳方法と確定申告の流れについて解説します。
(1)ふるさと納税は経費にならない
ふるさと納税は、事業の運営に直接関係する支出ではないため、経費として計上することはできません。これは「ふるさと納税=事業主個人としての寄付」という位置づけになるためです。
ふるさと納税の寄付金を支払った場合は、会計帳簿上で「事業主貸」という勘定科目を使って仕訳します。
例えば、事業用口座から10万円を寄付した場合の仕訳は、次の通りです。
借方:事業主貸100,000円/貸方:普通預金100,000円
このように、事業主がプライベートな支出のために事業資金を使った、という処理をします。
(2)確定申告のやり方
ふるさと納税の控除を受けるには、確定申告書に必要事項を記入して申告します。
個人事業主が使用する確定申告書の第二表では、まず「寄附金控除に関する事項」の欄に寄付先の名称や寄付金額を記載します。
次に「住民税・事業税に関する事項」内にある「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」の欄にも寄付金額を記入してください。
それから、その合計金額を基に算出した控除額を、第一表の「寄附金控除」欄に記入します。
申告の際は、「寄附金受領証明書」の添付、またはe-Taxでの提出が必要です。
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『フリーランス・個人事業主の確定申告のやり方は?経費になるものの例も紹介』
個人事業主のふるさと納税に関するよくある質問

ここでは、個人事業主がふるさと納税を検討する際に抱きやすい疑問点について回答します。
(1)青色申告特別控除は上限額に影響する?
はい、影響します。
ふるさと納税の上限額は課税所得を基に計算されます。所得金額を減らす効果のある青色申告特別控除(最大65万円)を適用すると、課税所得が下がり、結果としてふるさと納税の上限額も下がります。
ただし、青色申告による節税効果の方がはるかに大きいため、ふるさと納税の上限額を上げるために白色申告を選ぶメリットはありません。
(2)ふるさと納税をしないほうがいい年収は?
所得が各種控除(基礎控除など)を下回り、所得税や住民税が課税されていない場合は、ふるさと納税のメリットを受けられません。
ふるさと納税は支払うべき税金から控除される仕組みのため、そもそも納める税金がない場合は、寄付をしても控除される税額がないため、全額が自己負担になってしまいます。
まとめ

個人事業主にとって、ふるさと納税は魅力的な返礼品をお得に受け取れる有効な制度です。毎年行う確定申告の手続きに寄付金控除の項目を追記するだけで、これらのメリットを享受できます。
ただし、会社員と異なり所得が変動しやすいため、控除上限額を正確に把握することが重要です。
年末にその年の所得をおおよそ見積もり、シミュレーションサイトなどを活用して、余裕を持った金額で寄付を行いましょう。
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