フリーランスが扶養内で働くにはいくらまで?税金・社会保険の壁を解説
作成日:2026/02/25
扶養内でフリーランスとして働くには、税金と社会保険、2つの扶養制度を正しく理解することが欠かせません。
いわゆる「103万円の壁」は今も広く使われる通称ですが、配偶者控除の判定基準(給与収入換算)は令和7年分(2025年分)から123万円以下へと見直されています。
さらに、フリーランスは給与所得者とは異なり、「年収」ではなく合計所得金額(売上−経費など)で判定される点にも注意が必要です。
加えて、手取りに大きく影響する社会保険の「130万円の壁」も、健康保険組合ごとに判断基準が異なるなど、フリーランス特有の確認ポイントがあります。
この記事では、最新の基準を踏まえながら、フリーランスが扶養内で働くための収入目安や具体的な条件、注意点をわかりやすく整理します。
目次
■【税法上の扶養】フリーランスは「所得」で判定
(1)給与123万円の壁=フリーランスは所得58万円が目安
(2)合計所得95万円までは配偶者(特別)控除が満額
(3)青色申告の65万円控除で扶養に入りやすくなる
■【社会保険上の扶養】手取りを左右する130万円の壁
(1)一般的な目安は「130万円未満」
(1)130万円の基準は「売上」か「所得」かは組合次第
(2)健康保険組合への事前確認が必須な理由
(3)開業届を出すと社会保険の扶養から外れるケースとは
■扶養内で働くフリーランスのメリット
(1)自身の社会保険料の負担が発生しない可能性がある
(2)配偶者の税負担が軽くなる
■扶養内で働くフリーランスのデメリット
(1)収入の上限を常に意識する必要がある
(2)将来受け取れる年金額が相対的に少なくなる可能性
■扶養を外れても損しない収入は?損益分岐点の目安
(1)扶養内で働いた場合の手取りシミュレーション
(2)扶養を外れて働いた場合の手取りシミュレーション
(3)損益分岐点は「国保+年金の負担」で決まる
フリーランスの扶養|税金と社会保険の違い

扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があります。税法上の扶養は、配偶者控除・配偶者特別控除によって、扶養する側の税負担が軽くなる仕組みです。
社会保険上の扶養では、配偶者の健康保険の被扶養者として認定されると、国民健康保険ではなく配偶者の健康保険で医療を受けられます。
あわせて要件を満たす場合は、国民年金の第3号被保険者となり、国民年金保険料の本人負担が原則不要となる点も特徴です。
扶養内で働くかどうかを判断するには、税法上・社会保険上の不要を分けて考える必要があります。ここでは、違いと押さえるべき基準を整理します。
【税法上の扶養】フリーランスは「所得」で判定

税法上の扶養は、主に配偶者控除・配偶者特別控除によって、配偶者(扶養する側)の所得税・住民税負担を軽くする制度です。
判定は合計所得金額に基づいて行われます。給与所得者は要件を「給与収入換算」で示されることが多い一方、フリーランスは事業所得などの「所得金額」で確認する必要があります。
令和7年分(2025年分)以後の基準をもとに、詳しい要件を見てみましょう。
給与123万円の壁=フリーランスは所得58万円が目安
いわゆる「103万円の壁」は通称として残っていますが、令和7年分以後、配偶者控除の判定基準は、合計所得金額58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)へ見直されています。
フリーランスには給与所得控除がないため、配偶者控除の判定では、事業所得などを含めた合計所得金額が58万円以下かどうかが一つの目安です。
事業所得は原則として「売上−必要経費」で計算され、青色申告の場合は、青色申告特別控除が適用された後の金額が所得として扱われます。
たとえば売上が同じでも、必要経費が多ければ所得は下がるため、扶養判定上は有利になるケースがあります。
合計所得95万円までは配偶者(特別)控除が満額
合計所得が58万円を超えても、直ちに控除がなくなるわけではありません。
配偶者の合計所得が「58万円超〜133万円以下」であれば、配偶者特別控除の対象となります。
このうち、合計所得95万円以下であれば、原則として配偶者控除と同額の控除が適用されるのです。
ただし、控除額は段階的に減少していき、133万円を超えると適用対象外となります。
また、扶養する側(納税者本人)の所得にも上限要件があるため、最終的な適用可否は国税庁の控除額表で確認することが重要です。
参考:国税庁「配偶者特別控除」
青色申告の65万円控除で扶養に入りやすくなる
青色申告を選択し、要件を満たせば最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。
青色申告とは、「事業所得−青色申告特別控除=課税所得の計算ベース」という形で、課税対象となる所得を圧縮できる制度です。
たとえば、事業所得が100万円の所得があっても、65万円控除が満額適用されれば、所得は実質35万円となり、58万円以下の基準を満たしやすくなります。
扶養内で働くことを意識する場合、青色申告は大きなメリットになります。
※制度は改正される場合があります。最新の基準や要件は国税庁の案内をご確認ください。
☆あわせて読みたい
『【フリーランスの税金】種類と控除一覧!節税対策やいつ払うのかを解説』
【社会保険上の扶養】手取りを左右する130万円の壁

社会保険上の扶養は、健康保険や年金の負担に直結する制度です。
配偶者が加入している健康保険の「被扶養者」になることで、自身で国民健康保険料や国民年金保険料を負担せずに済む場合があります。
税法上の扶養とは別制度であり、判断基準も異なる点に注意が必要です。
一般的な目安は「130万円未満」
社会保険上の扶養の基準としてよく知られているのが、いわゆる「130万円の壁」です。
原則として、今後1年間の見込み収入が130万円未満(60歳以上または一定の障害がある方は180万円未満)であれば、被扶養者として認定される可能性があります。
ここで重要なのは、「過去の年収」ではなく将来の見込み収入で判断される点です。
一時的に収入が増えただけでは直ちに外れるとは限りませんが、継続的に基準を超える見込みがある場合は扶養から外れる可能性があります。
130万円の基準は「売上」か「所得」かは組合次第
フリーランスが特に注意すべきなのは、「130万円」の基準が何を意味するかです。
健康保険組合によって、
- ・売上(収入総額)で判断する
- ・売上から必要経費を差し引いた所得で判断
- ・必要経費を限定的にしか認めない
のような異なるルールがあります。
多くの組合では、単純な税務上の「事業所得」ではなく、収入の実態を総合的に判断する傾向があります。
そのため、「税法上は大丈夫だから社会保険も大丈夫」と言えません。
健康保険組合への事前確認が必須な理由
社会保険の扶養認定は、最終的に健康保険組合が個別に判断します。収入の定義や、経費として認められる範囲は組合の規約により異なります。
インターネット上の一般的な情報だけで判断するのは危険です。
収入が発生する前や、事業拡大を検討している段階で、以下の点について配偶者の勤務先を通じて確認しておくと安心です。
- ・扶養判定における「収入」の定義
- ・経費の扱い
- ・見込み収入の算定方法
これにより、後から扶養を取り消されるといったトラブルを防ぐことができます。
開業届を出すと社会保険の扶養から外れるケースとは
原則として、開業届を提出しただけで自動的に扶養から外れるわけではありません。
しかし、一部の健康保険組合では、規約上「自営業者(個人事業主)は被扶養者と認めない」としている場合があります。
その場合、収入額にかかわらず扶養認定が難しくなる可能性があります。
そのため、開業届を提出する前にも、健康保険組合の扶養認定基準を必ず確認することが重要です。
☆あわせて読みたい
『フリーランスが加入する社会保険とは?種類や年収別保険料・計算方法を解説』
扶養内で働くフリーランスのメリット

扶養内で働く最大のメリットは、世帯全体で見たときの手取りを維持しやすい点にあります。特に社会保険料や税負担の軽減は、家計への影響が大きいポイントです。
ここでは、扶養内で働くことで得られる主な経済的メリットを整理します。
自身の社会保険料の負担が発生しない可能性がある
社会保険上の扶養に認定されれば、配偶者の健康保険の被扶養者となり、国民健康保険料の自己負担は原則として発生しません。
また、一定の要件を満たせば、国民年金の第3号被保険者となり、保険料を自己負担せずに年金加入期間としてカウントされます。
国民健康保険料や国民年金保険料は、年間で数十万円にのぼることもあるため、社会保険料の負担が発生しないことは家計にとって大きなメリットです。
配偶者の税負担が軽くなる
税法上の扶養に入ることで、配偶者(扶養する側)は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の適用を受けられる可能性があります。
令和7年分以後の基準は、以下の通りです。
- ・58万円以下の場合:配偶者控除の対象
- ・58万円超〜133万円以下の場合:配偶者特別控除の対象
控除が適用されると、配偶者の課税所得が減少し、結果として所得税や住民税の負担が軽くなります。
ただし、控除額は段階的に減少し、また扶養する側(納税者本人)の所得にも上限要件があります。適用可否や控除額の詳細は、最新の国税庁の案内で確認することが重要です。
参考:国税庁「配偶者控除」
扶養内で働くフリーランスのデメリット

扶養内で働くことには家計面でのメリットがありますが、その一方で、収入の伸びや将来設計に関わる制約もあります。
特に、「収入の上限管理」と「老後の年金水準」は、あらかじめ理解しておきたいポイントです。
ここでは、扶養内で働く際に注意すべき主なデメリットを整理します。
収入の上限を常に意識する必要がある
扶養内を維持するためには、税法上および社会保険上の基準を超えないよう、収入をコントロールする必要があります。
税法上は「合計所得金額」、社会保険上は「今後1年間の見込み収入」が判断基準となります。
特に社会保険のいわゆる「130万円の壁」は、基準を超えると国民健康保険料や国民年金保険料の負担が発生する可能性があるため、手取りに大きく影響するものです。
そのため、
- ・受注量を抑える
- ・単価アップを見送る
- ・繁忙期の仕事を断る
といった調整を行うケースもあります。
本来であれば挑戦できた案件や事業拡大の機会を見送ることになり、成長スピードが鈍化する可能性がある点はデメリットといえるでしょう。
将来受け取れる年金額が相対的に少なくなる可能性
社会保険の扶養に入っている期間は、国民年金の第3号被保険者となります。
第3号被保険者は、保険料を自己負担せずに年金加入期間としてカウントされる仕組みであり、基礎年金(老齢基礎年金)の受給資格は維持されます。
しかし、厚生年金(報酬比例部分)は積み上がりません。 そのため、会社員として厚生年金に加入している第2号被保険者と比較すると、将来受け取れる年金総額は少なくなる傾向があります。
また、第3号被保険者の期間中は原則として国民年金の付加年金に加入できないため、自主的な上乗せによる積み増しもしにくい点があります。
将来の収入拡大や老後資金を重視する場合は、この点も踏まえて働き方を検討することが大切です。
扶養を外れても損しない収入は?損益分岐点の目安

扶養を外れると、国民健康保険料や国民年金保険料の負担が発生します。そのため、収入が少し増えただけでは手取りが増えにくい、いわゆる「働き損」に近い状態になることがあります。
ただし、必ずしも「130万円を超えたら損」というわけではありません。社会保険料の負担額や税金、経費の割合によって結果は変わります。
特にフリーランスは、国民健康保険料が自治体や世帯状況で大きく異なるため、一般論だけで判断するのは危険です。
ここでは、前提を「フリーランス(事業所得)」にそろえ、考え方の目安を整理します。
扶養内で働いた場合の手取りシミュレーション
例として、
- ・年間売上:129万円
- ・必要経費:40万円
の場合、事業所得は89万円(129−40)です。
税法上は配偶者特別控除の範囲に入る可能性があり、本人の所得税・住民税は各種控除の状況によっては大きく発生しないケースもあります。
社会保険上の扶養に認定されていれば、国民健康保険料や国民年金保険料の自己負担は発生しません。
そのため、手取りはおおむね「所得−税額」という比較的シンプルな構造になります。
※本シミュレーションはフリーランス(事業所得)前提の概算です。実際の税額・控除額・扶養判定は個別条件によって異なります。
扶養を外れて働いた場合の手取りシミュレーション
次に、
- ・年間売上:180万円
- ・必要経費:50万円
の場合、事業所得は130万円(180−50)です。
ここから、
- ・国民健康保険料(自治体により差あり)
- ・国民年金保険料
- ・所得税・住民税
が差し引かれます。
国民健康保険料は所得や世帯状況によって変動するため、同じ130万円の所得でも、負担額が大きく異なることがあるのです。
そのため、「130万円を少し超えたからすぐ得になる」というわけではなく、社会保険料分を上回る収入増があるかどうかが重要になります。
損益分岐点は「国保+年金の負担」で決まる
よく「売上180万〜200万円が目安」と言われますが、これは平均的なケースの一例にすぎません。
損益分岐点は、
- ・国民健康保険料
- ・国民年金保険料
- ・配偶者特別控除の減少による世帯税負担の増加
これらの合計額を、収入増で上回れるかどうかで決まります。
特に、
- ・経費割合が高いか
- ・国保料率が高い自治体か
- ・扶養する側の所得水準
によって結果は大きく変わります。
正確に判断するには、必ずご自身の条件で試算することが重要です。
まとめ

フリーランスが扶養内で働くかどうかを判断するには、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」を分けて考えることが重要です。
税法上は、令和7年分(2025年分)以後、配偶者控除の判定基準が合計所得金額58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)へと見直されています。
従来の「48万円/103万円」という基準で説明すると誤解につながるため、最新の基準で確認することが大切です。
一方、社会保険上の扶養は、原則として今後1年間の見込み収入130万円未満が一つの目安となります。
ただし、収入の定義や経費の扱いは健康保険組合ごとに異なるため、事前に確認することが欠かせません。
扶養を外れる場合は、国民健康保険料や国民年金保険料の負担に加え、配偶者特別控除の減少などによる世帯全体の税負担も踏まえたうえで、手取りがどの水準で増えるのかを試算して判断することが重要です。
なお、扶養制度や控除額は今後改正される可能性があります。最新の情報は国税庁や加入している健康保険組合の案内を確認するようにしましょう。
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