紙に近づく!? 次世代電子ペーパーはここが違う
作成日:2018/03/14
電子書籍リーダーで活用
電子ペーパーとは、電気的に表示を行なうディスプレイでありながら、紙のように薄くて軽く、持ち歩きやすく見やすいデバイスのこと。スタイラスペンなどを使って書き込めるものもあります。
電子ペーパーが開発されたのは1970年代。電子ペーパーは少ない電力でも表示することができ、反射光を利用する仕組みでバックライトがなくても表示可能。屋外でも反射して見づらいということもなく、長時間読んでいても目にやさしいといった普通の液晶ディスプレイにはない長所があり、これまで数々の製品が開発されてきました。しかしながら一方で、スクロールやカラー表示を苦手とするなど、弱点もあり、これまで大々的な普及には至ってきませんでした。
それでも着々と技術確信はなされ、近年では電車の駅で情報掲示に使われるデジタルサイネージや、Amazonの電子書籍リーダー・Amazon Kindleなどに活用されてきました。さらに、ここへきて、“次世代機”ともいえる製品が続々と登場しているのです。
“紙っぽい”新モデル
ソニーが昨年6月に発売した電子ペーパー端末は「DPT-RP1」です。ソニーは、電子ペーパーを応用した電子書籍リーダー「Reader」シリーズを発売したり、2013年にも電子ペーパー端末「DPT-S1」を発売するなど、電子ペーパー端末の開発に積極的な企業。今回の最新モデルにもさまざまな工夫が詰め込まれています。
サイズはA4サイズ相当で13.3型、解像度は1650×2200ピクセルです。フレキシブル電子ペーパーを採用しており、A4の書類を原寸で表示可能。そのように大きなサイズでありながら、重量はおよそ350g。前モデルのDPT-S1に比べておよそ10gの軽量化を実現しています。
機能は実にシンプルで、電子文書のPDF形式での保存と閲覧。もちろん、PDFファイルへの書き込みも可能です。他のタブレット端末でも可能な操作ではありますが、文字の読みやすさや書き込みのしやすさは電子ペーパーならでは。ディスプレイの発熱を抑えることができたり、最長で約3週間バッテリ駆動が可能(無線機能がOFFの場合)というのも、電子ペーパーの利点です。
タブレット端末のように「何でもできる」デバイスではないものの税別でおよそ8万円という価格は、判断が分かれるところでしょうか。「書きやすさ」と「軽さ」にメリットを見出すことができる方には活用の幅が広がるでしょう。単機能製品ならではの利点をフルに生かした、“紙っぽさ”が期待できるデバイスです。
こだわりで“紙感覚”を実現
もう1つ、多くの関心を集めている電子ペーパー端末が、「reMarkable」。ノルウェーのスタートアップ企業・reMarkableが開発したデバイスです。関心を集めている理由は、その書き心地。本物の紙に書いているような書き心地を実現したといわれているところにあります。
もともとたくさんのノートなどを持ち歩いていた“紙派”であるreMarkableのCEOが実現したのは、普段使っている鉛筆やボールペンを使って紙に書くような使い心地。専用のスタイラスペンの反応がとても速く、タブレット端末のようにペン先がツルッと滑るような感覚がないといいます。
スタイラスペンはその濃さや太さを自由に変えることができ、文字だけでなく細かい絵まで自由自在。電子ペーパー端末の利点としてバックライトもありませんので、目も疲れにくいです。充電も長時間もちますので、メモからスケッチまでさまざまな活用方法が可能になります。いまのところ日本での発売予定は未定です。
“世界初”楽譜専用端末
電子ペーパー端末のなかでもひときわユニークなのは、楽譜の表示に特化した電子ペーパー端末でしょう。テラダ・ミュージック・スコアの「GVIDO」は、昨年9月に発売開始となりました。世界初の2画面電子ペーパー端末で、「電子楽譜専用端末」をうたっています。
GVIDOは、見開き2画面の13.3型フレキシブル電子ペーパー。テラダ・ミュージック・スコアが開発した端末に、ワコムのデジタルペン技術を搭載した共同開発の端末です。PDF形式の電子楽譜の表示と、専用のスタイラスペンを使った書き込み・消去が可能。楽譜データは、内蔵メモリに加えてmicroSDカードにも保存できます。サイズは、幅約482×奥行き約310×高さ約6.05mm、重量は約660gで、Wi-FiやBluetoothでの接続が可能です。
同時に、電子楽譜を管理できる「GVIDOクラウドサービス」も興味深いところ。クラウドサービスの「マイライブラリー」では電子楽譜などのデータを保存・管理することができ、そのライブラリを登録メンバーで共有することも可能。同じくクラウドサービスの「GVIDOストア」では、GVIDOに最適化された電子楽譜や、GVIDOの純正アクセサリーなどを購入できます。
紙を好む方にとって、電子媒体はどうしても“別物”として扱われることが多いものです。デバイスに書こうとすればなおのこと、従来のタブレット端末でも便利なメモアプリも増え、スタイラスペンの種類も豊富ですが、それでもなかなか紙のようには使い難かったものです。
電子書籍リーダーなどに代表されるこれまでの電子ペーパーは、読むという目的に対しては着々と進歩を遂げてきました。そして、今回ご紹介した数々の端末は、読む機能はもちろん、書く機能についても十分に期待のもてる内容になっています。電子ペーパーを本当に紙のように使うことができれば、「資料を印刷して紙で読みたい」という気持ちが減る日もやってくるかもしれません。出先で書き留めておきたいと思うスケッチも、鉛筆と紙がなくてもデジタルデバイスだけで済むようになることも考えられます。こだわりから生まれた端末が今後どのような進化をとげるか、注目が集まる分野です。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)