フリーランスに年末調整は必要?確定申告との違いとやり方を解説
最終更新日:2025/11/26
作成日:2017/12/08
フリーランスとして働いていると、年末が近づくたびに「年末調整って必要なの?」「確定申告とは何が違うの?」と疑問に思う方は少なくありません。
結論から言うと、フリーランスは原則として年末調整の対象外です。会社員とは異なり、自分で所得を計算して確定申告を行う必要があります。
しかし、アルバイトやパートを掛け持ちしている場合や、従業員を雇っている場合、途中で会社員から独立した場合などは、年末調整が関係してくることもあります。
この記事では、フリーランスに年末調整が必要なケース・不要なケース、確定申告との違い、やり方までわかりやすく解説します。
目次
■年末調整とは
(1)税金の過不足を調整する仕組み
(2)会社が従業員の代わりに行う税務手続き
■年末調整と確定申告の違いとは?
(1)年末調整は「給与所得者」のための制度
(2)確定申告は「自営業・フリーランス」などが行う税金計算
■フリーランスでも年末調整が関係する3つのケース
(1)従業員を雇っている
(2)アルバイト・パート・副業で給与所得がある
(3)途中で会社員から独立した場合
■従業員を雇っている場合の年末調整のやり方と流れ
(1)従業員に必要書類を配布・回収する
(2)年税額を計算し過不足を調整する
(3)税務署・市区町村へ書類を提出する
■従業員の年末調整をしない場合のリスク
(1)法令違反になり罰則の可能性
(2)従業員が自力で確定申告をする必要が出る
(3)給与支払い事務に対する信頼低下につながる
■フリーランスがするべき確定申告に向けた準備
(1)経費の整理・仕訳を済ませる
(2)領収書・レシート・帳簿のチェック
(3)控除の確認(青色・医療費・小規模共済など)
(4)必要書類の収集(源泉徴収票など)
フリーランスに年末調整は必要?

フリーランスや個人事業主は、原則として年末調整の対象にはなりません。
年末調整は会社員などの給与所得者を対象とした制度であるため、事業所得を得ているフリーランスは、自身で確定申告を行う必要があります。
いわゆる「フリーランスの年末調整」という言い方を見かけることもありますが、実際には、フリーランスの場合は原則として翌年2月中旬〜3月中旬に行う確定申告が、会社員にとっての年末調整と同じ役割を果たします。
「いくらから確定申告が必要なのか」「いつまでに申告すべきか」「やり方はどうすればよいか」といったポイントについては、後ほど詳しく解説します。
ただし、フリーランスであっても、アルバイトなどで給与所得を得ている場合や、従業員を雇用している場合など、特定の条件下では年末調整が関係してくるケースも存在します。
年末調整とは

年末調整とは、会社が従業員に支払った1年間の給与から源泉徴収した所得税と、本来納めるべき年間の所得税との差額を精算する手続きです。
毎月の給与から天引きされる所得税は「概算」のため、年末に扶養状況や保険料の支払いなどを反映して正確な税額を再計算します。
この手続きによって過不足が調整され、多くの給与所得者は自分で確定申告を行う必要がなくなります。
ここからは、「年末調整がどのように税額を調整するのか」「会社がどんな役割を担っているのか」といった仕組みを具体的に見ていきましょう。
税金の過不足を調整する仕組み
毎月の給与から天引きされている源泉徴収税額は、年間の所得が確定する前の概算値です。
そのため、1年間の給与総額が確定する年末の時点で、扶養家族の人数や生命保険料、地震保険料の支払いといった個人の状況を反映させて、本来納めるべき正確な所得税額(年税額)を再計算します。
この年税額と、すでに徴収された源泉徴収税額の合計額を比較し、差額を調整するのが年末調整の仕組みです。
源泉徴収税額が多すぎた場合は差額が還付金として戻され、不足していた場合は追加で徴収されます。
会社が従業員の代わりに行う税務手続き
年末調整は、所得税法によって給与を支払う会社に義務付けられている税務手続きです。
従業員一人ひとりが個別に税務署で申告を行う手間を省き、国が効率的に税金を徴収することを目的としています。
会社は従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をはじめとする各種申告書を回収し、その内容に基づいて所得控除を計算します。
従業員によっては「書き方がわからない」と迷うケースもあるため、記入例や見本を用意してサポートするのが一般的です。
そして最終的な所得税額を確定させ、過不足額の精算を給与を通じて行い、国への納税手続きを従業員に代わって完結させる役割を担っています。
年末調整と確定申告の違いとは?

年末調整と確定申告は、どちらも所得税額を確定するための手続きですが、対象となる人・手続きを行う主体・目的が大きく異なります。
ここからは、年末調整と確定申告の違いをわかりやすく整理し、フリーランスがどちらを行うべきなのかを見ていきましょう。
年末調整は「給与所得者」のための制度
年末調整は、会社などの組織から給与を受け取っている給与所得者を対象とした所得税の精算手続きです。
この制度の目的は、毎月の給与から源泉徴収された所得税の年間合計額と、本来納めるべき年税額との差額を調整することにあります。
手続きは給与を支払う会社が行うため、給与所得のみで、かつ勤務先が1か所である多くの会社員は、年末調整によって納税が完了します。
一方、事業所得や不動産所得など、給与以外の所得がある場合は原則として年末調整の対象外となり、確定申告が必要になります。
確定申告は「自営業・フリーランス」などが行う税金計算
確定申告は、フリーランスや個人事業主などが、1月1日から12月31日までの1年間に得た全ての所得と、それに対する所得税額を自ら計算し、税務署に申告する手続きです。
収入から必要経費を差し引いて所得を算出し、そこから社会保険料控除・医療費控除などの各種所得控除を反映して最終的な税額を確定します。
フリーランスの場合、確定申告が必要かどうかは、所得(売上-経費)が「基礎控除額」を超えるかどうかがひとつの目安になります。
また、確定申告が必要になるかどうかは、事業所得だけでなく、そのほかの所得(副収入・不動産収入・配当など)との合計によっても変わる場合があります。
さらに、住民税や社会保険の計算にも影響するため、所得の種類と金額を含めて総合的に確認しましょう。
年末調整が会社主体の受動的な手続きであるのに対し、確定申告は納税者本人が行う能動的な税務処理です。
青色申告を使えば、特別控除などの優遇制度を受けられる点も大きな特徴です。
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『フリーランス・個人事業主の確定申告のやり方は?経費になるものの例も紹介』
フリーランスでも年末調整が関係する3つのケース

フリーランスは原則として確定申告を行いますが、特定の状況下では年末調整と無関係ではありません。
例えば、自身が事業主として従業員を雇用している場合、その従業員に対して年末調整を行う義務が生じます。
また、フリーランスとしての活動と並行して会社から給与所得を得ている場合も、年末調整の対象となります。
ここでは、フリーランスが年末調整に関わる具体的な3つのケースについて解説します。
従業員を雇っている
フリーランスが個人事業主として従業員を雇用し、給与を支払っている場合、その従業員に対して年末調整を行う義務が発生します。
このとき、事業主は「源泉徴収義務者」という立場になり、従業員の給与から天引きした所得税の年間合計額と、本来納めるべき年税額との差額を精算しなくてはなりません。
具体的には、従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や保険料控除申告書などを提出してもらい、それらの情報に基づいて所得控除を計算し、年税額を確定させます。
事業主として、年末調整の手順ややり方を正しく理解し、期限内に手続きを完了させることが求められます。
アルバイト・パート・副業で給与所得がある
フリーランスとしての事業所得とは別に、アルバイトやパート、あるいは企業に所属する副業で給与所得を得ている場合、その給与を支払っている会社で年末調整が行われます。
複数の勤務先から給与を受け取っている場合は、原則として最も収入が多い「主たる給与」の支払先一社でのみ年末調整を受けることができます。
ただし、年末調整が行われた給与所得以外の所得、つまりフリーランスとしての事業所得や、年末調整されなかった給与所得(年間20万円を超える場合)については、全て合算して自身で確定申告を行う必要があります。
途中で会社員から独立した場合
年の途中で会社を退職してフリーランスになった場合、原則として退職先では年末調整は行われません。国税庁の「年末調整の対象となる人」の定義では、原則として「年末まで勤務している人」などが対象とされています。
年の途中で退職した場合、その年の年末調整の対象とはならないのが通常ですが、給与支払いのタイミングや特例(例:12月分給与の支給後退職など)により、例外的に調整が行われるケースもあります。
そのため、退職までの給与所得と独立後の事業所得を合算し、翌年に自分で確定申告を行う必要があります。退職時にもらう「源泉徴収票」は申告に必須の書類なので、必ず保管しておきましょう。
逆に、フリーランスから会社員へ就職・転職した場合も注意が必要です。前職のフリーランス収入(事業所得)と、転職後の給与所得の扱いによって、会社の年末調整だけで完了するのか、自分で確定申告が必要かが変わります。
転職時点の収入状況を整理し、必要な手続きを早めに確認しておくと安心です。
従業員を雇っている場合の年末調整のやり方と流れ

フリーランスが事業主として従業員を雇っている場合、その従業員に対する年末調整は法律で定められた必須の手続きです。
年末調整には「いつまでに何をするか」という期限があり、書類の配布から税額計算、提出までの一連のステップを正確に進める必要があります。
ここでは、従業員を雇用しているフリーランスが押さえておきたい年末調整の具体的な流れを順番に解説します。
従業員に必要書類を配布・回収する
年末調整の最初の作業は、従業員へ必要書類を配布し、記入してもらうことです。
主に、「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除申告書(兼 配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書)」の3種類を回収します。
生命保険料・地震保険料・iDeCoなどの控除証明書も必要になるため、早めに案内し、期限までに回収することが大切です。
また、書き方に迷う従業員も多いため、記入例や説明資料を用意しておくとスムーズに進みます。
年税額を計算し過不足を調整する
従業員から回収した申告書類に基づき、各従業員の年間の所得税額(年税額)を計算します。
まず、1年間の給与・賞与の総額から給与所得控除額を差し引いて給与所得を算出。
次に、その金額から社会保険料控除や扶養控除、配偶者控除、生命保険料控除などの各種所得控除の合計額を差し引き、課税所得金額を確定させます。課税所得金額に対応する所得税率を適用して、年税額を割り出します。
年税額と、1年間で給与から天引きした源泉徴収税額の合計を比較し、差額を12月か翌年1月の給与で還付または追加徴収することにより、過不足を精算します。
税務署・市区町村へ書類を提出する
従業員の税額計算と過不足調整が完了したら、法定調書などの関連書類を作成し、管轄の税務署と従業員の居住市区町村へ提出します。
税務署へは、翌年の1月31日までに「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出。
これには、全従業員分の「源泉徴収票」や、特定の報酬を支払った場合の「支払調書」などを添付します。
同時に、従業員が居住する各市区町村へも、住民税の計算基礎となる「給与支払報告書(源泉徴収票と内容は同じ)」と、その合計を記した「総括表」を同じく翌年1月31日までに提出する義務があります。
提出期限がいつまでかを把握し、余裕をもって準備を進めることが大切です。
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従業員の年末調整をしない場合のリスク

従業員を雇用しているフリーランス・個人事業主にとって、年末調整は法律で定められた「義務」です。
これを怠ると、事業主自身だけでなく、従業員にも負担や不利益が発生してしまいます。
ここでは、年末調整を行わなかった場合に起こり得る具体的なリスクを確認していきましょう。
法令違反になり罰則の可能性
年末調整は源泉徴収義務者である給与支払者に課せられた法律上の義務です。
正当な理由なくこの義務を怠ったり、期限内に源泉徴収した所得税を納付しなかったりすると、所得税法違反とみなされる可能性があります。
法律では、違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されると定められています。
また、納付が遅れた場合には、本来の税額に加えて延滞税や不納付加算税といった追徴課税が発生します。
意図的でなくても、手続き上のミスや遅延がペナルティにつながるため、期限を守り正確に実施することが不可欠です。
従業員が自力で確定申告をする必要が出る
事業主が従業員の年末調整を行わなかった場合、その従業員は所得税の精算手続きを自分自身で行わなければならなくなります。
つまり、本来であれば会社が代行してくれるはずの税金計算と申告を、従業員自らが確定申告という形で行う必要が生じます。
これは従業員にとって大きな時間的・精神的負担となり、会社に対する不満や不信感を抱かせる直接的な原因となります。
特に税務に関する知識が少ない従業員にとって、確定申告は複雑で難解な作業であり、事業主が果たすべき義務を放棄したと受け取られても仕方がありません。
給与支払い事務に対する信頼低下につながる
年末調整という法律で定められた義務を履行しないのは、事業主としての管理体制やコンプライアンス意識の欠如を露呈することになります。
給与計算や税務処理といった基本的な労務管理がずさんであると従業員に認識されれば、事業主に対する信頼は大きく損なわれます。
このような状況は、従業員の労働意欲の低下を招くだけでなく、優秀な人材の流出、つまり離職につながる可能性も高まります。
安定した事業基盤を築く上で、従業員との信頼関係は不可欠であり、年末調整を正確に実施するのは、その信頼を維持するための基本的な責務と言えます。
フリーランスがするべき確定申告に向けた準備

フリーランスにとって、年末は翌年の「確定申告」に備えて準備を始める大切な時期です。
申告期限(翌年3月15日まで)を意識しながら、必要書類の確認や経費整理を年末のうちに進めておくと、申告期間に慌てることなくスムーズに手続きが行えます。
ここでは、確定申告の準備としてフリーランスが取り組むべき具体的なポイントを順番に確認していきましょう。
経費の整理・仕訳を済ませる
確定申告における所得計算の基礎は、年間の総収入から事業活動にかかった必要経費を正確に差し引くことです。
そのため、日々の取引を「旅費交通費」「通信費」「消耗品費」といった勘定科目ごとに分類する「仕訳」という作業を、こまめに行う習慣が重要となります。
会計ソフトを導入すれば、銀行口座やクレジットカードの取引明細と連携して仕訳を自動化でき、作業負担を大幅に軽減可能です。
申告期限が近づいてから一年分の取引をまとめて処理しようとすると、計上漏れや入力ミスが発生しやすく、正確な申告が困難になります。
領収書・レシート・帳簿のチェック
経費として計上した全ての支出には、その事実を証明するための領収書やレシートといった証憑書類が必要です。
確定申告の準備段階では、作成した帳簿の記録と、保管している領収書類との間に矛盾がないかを照合する作業が不可欠です。
取引の日付、金額、支払先、内容などを一つひとつ確認し、帳簿への入力ミスや記載漏れがないかをチェックします。
また、税法上、これらの帳簿類は原則7年、一部の書類は5年保存が義務付けられているため、年度ごとにファイリングするなど、整理して保管する体制を整えておくことも大切です。
控除の確認(青色・医療費・小規模共済など)
所得税額を算出する際、所得から差し引ける「所得控除」を漏れなく適用することが、適切な節税につながります。
フリーランスの場合、事前に届出をすると最大65万円の控除が受けられる「青色申告特別控除」が代表的です。
その他、年間の医療費が10万円を超えた場合に適用できる「医療費控除」、国民年金や国民健康保険料の支払額が全額控除される「社会保険料控除」、iDeCoや小規模企業共済の掛金が全額控除の対象となる「小規模企業共済等掛金控除」などがあります。
自身がどの控除の対象となるかを確認し、必要な証明書類を予め準備しておきます。
必要書類の収集(源泉徴収票など)
確定申告書を作成するためには、収入金額や各種控除の金額を証明するための書類を事前に収集しておく必要があります。
取引先から報酬を受け取る際に所得税が源泉徴収されている場合は、その証明となる「支払調書」が送られてくることがあります。
また、年の途中で会社を辞めて独立した場合や、副業として給与所得がある場合には、勤務先から交付される「源泉徴収票」が必須です。
その他、国民年金保険料や国民健康保険料の「控除証明書」、生命保険や地震保険の「保険料控除証明書」、iDeCoの「掛金払込証明書」など、適用する控除に関連する証明書類を漏れなく揃えておきましょう。
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フリーランスは年末調整より確定申告が重要

フリーランスの税務手続きは、会社員のような年末調整ではなく、自分で行う確定申告が中心です。
実際に行うべきは、
- ・確定申告をいつまでに行うか
- ・どのようなやり方で進めるか
- ・いくらから申告が必要か
といったポイントの把握です。
確定申告の期限は、原則として翌年3月15日まで。遅れると延滞税の可能性があるため、年末のうちに経費整理や書類準備を進めておくと安心です。
また、青色申告の特別控除や各種控除、経費計上など、確定申告を通じて節税につながる制度も多くあります。
会社員向けの年末調整とは異なり、フリーランスは自分で計画的に税務処理を行う必要がある点を押さえておきましょう。
まとめ

フリーランスは原則として年末調整の対象外であり、税務手続きの中心は確定申告です。しかし、
- ・従業員を雇用している場合
- ・副業で給与所得がある場合
- ・途中で会社員から独立した場合
- ・フリーランスから会社員へ就職・転職した場合
など、状況によっては年末調整が関係するケースもあります。
自分がどのパターンに当てはまるかを確認しながら、「いくらから確定申告が必要か」「還付金はいつ振り込まれるか」「提出期限はいつまでか」といったポイントを把握し、計画的に準備を進めることが大切です。
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