個人事業主の住宅ローン控除の受け方は?経費と確定申告のポイント

最終更新日:2026/03/05
作成日:2016/10/19

個人事業主やフリーランスとして働いていると、「住宅ローン控除は会社員だけの制度では?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。

 

実際には、個人事業主でも要件を満たせば住宅ローン控除を利用できます。ただし、制度を正しく理解していないと、控除を受け損ねたり、経費計上との関係で誤った申告をしてしまう可能性もあります。

 

そこでこの記事では、個人事業主が住宅ローン控除を受ける条件や金額の考え方、確定申告の手続き、さらに自宅兼事務所の場合の経費との関係までをわかりやすく解説します。

 

目次

 

■自営業者・個人事業主も対象の「住宅ローン控除」とは

 

■個人事業主も要チェック|住宅ローン控除の適用要件
(1)新築住宅の適用条件
(2)中古住宅の適用条件
(3)増改築の適用条件

 

■いくら?住宅ローン控除で控除される金額

 

■個人事業主は確定申告が必須|住宅ローン控除のやり方
(1)住宅ローン控除に必要な書類
(2)確定申告で住宅ローン控除を申請する流れ

 

■個人事業主の住宅ローンで「経費できる部分」とは
(1)住宅の経費にできる部分
(2)住宅の経費にできない部分
(3)家事按分の注意点

 

■個人事業主の住宅ローン控除に関連するよくある質問
(1)過去に遡って住宅ローン控除を受けるには?
(2)個人事業主の住宅ローン控除分はいつ戻る?
(3)個人事業主の家賃の勘定科目は何費?
(4)個人事業主の家賃(2LDK)の経費の計算例は?

 

■まとめ

 

自営業者・個人事業主も対象の「住宅ローン控除」とは

家の模型のそばに、「TAX」と「控除」と書かれたブロックが置かれている様子

自営業者や個人事業主でも、要件を満たせば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できます。

 

住宅ローン控除とは、住宅ローンでマイホームを取得・新築・増改築したときに、税負担を軽くする制度です。控除額は、年末のローン残高に控除率0.7%を掛けて計算し、所得税から差し引かれます。

 

ただし、控除を受けられる年数や計算に使えるローン残高の上限は「新築か中古か」「省エネ性能があるか」などで変わります

 

目安として控除期間は10〜13年、借入限度額は2,000万〜4,500万円ですが、どの区分に当てはまるかで条件が決まります。

 

また、控除を受けるには初年度に確定申告が必要です。所得税から控除しきれなかった分は、翌年の住民税から一定額まで控除されます。

 

☆あわせて読みたい
『フリーランスでも住宅ローンは組める?審査に通るコツと事前準備を解説』

 

コンサル登録遷移バナー

 

個人事業主も要チェック|住宅ローン控除の適用要件

全ての項目にチェックが入ったチェックリストとペン

住宅ローン控除を利用するには、次のような複数の要件を満たす必要があります。

 

▼基本の要件

  • ・控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • ・登記簿上の床面積が原則50m2以上(合計所得1,000万円以下なら40m2以上)
  • ・取得または工事完了から6か月以内に入居し、年末まで住み続けていること
  • ・返済期間10年以上のローンを組んでいること

 

自営業者やフリーランスの方で自宅兼事務所にしている場合、住宅ローン控除を受けるには、居住部分が全体の半分以上である必要があります。加えて、居住割合に応じて控除額を按分しなければなりません。

 

新築・中古・増改築ではさらに個別の要件が設けられています。ここでそれぞれの要件を確認しましょう。

 

新築住宅の適用条件

新築住宅の中でも、2024年以降に建築確認を受けたものは、前述の基本の要件を満たすだけでは住宅ローン控除の対象にならない場合があります。

 

基本要件に加え、次の要件を満たさなければならない点に注意しましょう。

 

  • ・省エネ基準適合住宅やZEH水準住宅、認定長期優良住宅など、一定の環境性能を備えた住宅であること

 

控除期間は原則13年です。借入限度額は住宅の性能や世帯区分によって変わるため、具体的な金額は区分ごとに確認してください。

 

参考:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

中古住宅の適用条件

中古住宅を購入して住宅ローン控除を受けるには、前述の基本の要件に加えて、次の要件を満たさなければなりません。

 

  • ・一定の耐震基準を満たしていること(目安として昭和57年1月1日以降に建築された住宅、または耐震性を証明できる住宅)

 

また、住宅ローン控除を受けるには、耐震性を確認できる書類の提出が求められます。

 

耐震基準適合証明書や既存住宅売買瑕疵保険への加入によって安全性を証明すれば、築年数の古い住宅でも対象になる点も押さえておきましょう。

 

借入限度額は住宅の性能に応じて2,000万〜3,000万円で、控除期間は10年です。新築より控除期間が短い点に注意しましょう。

 

参考:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

増改築の適用条件

個人事業主の自宅の増改築や一定規模以上のリフォーム工事でも、要件を満たせば住宅ローン控除の対象となります。

 

対象となるには、自身が所有し居住している家屋の工事であり、工事費用が100万円を超えていることが前提です。また、工事費用の2分の1以上が、自己の居住用部分の工事費でなければなりません。

 

控除の対象となる工事には、建築基準法に規定される大規模な修繕・模様替えや、バリアフリー改修工事、省エネ改修工事などが含まれます。

 

もちろん、新築や中古と同様の基本の要件も満たす必要があります。適用される場合の控除期間は10年、借入限度額は2,000万円です。

 

参考:国税庁「No.1211-4 増改築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

 

 

いくら?住宅ローン控除で控除される金額

家の模型と電卓、円マークが書かれた複数の積み木

住宅ローン控除で所得税から差し引かれる金額は、原則「年末の住宅ローン残高×0.7%」という計算式で算出されます。

 

ただし控除額はその年の所得税額が上限で、差し引き切れなかった部分は翌年度の住民税から一定額まで控除される仕組みです。納税額以上の還付は行われません。

 

また、住宅ローン控除には控除の計算に使える年末ローン残高の上限(借入限度額)があり、住宅の性能や世帯区分によって2,000万〜5,000万円と幅があります。

 

年末残高が上限を超える場合、控除額は上限額までの残高で計算される点に注意しましょう。

 

フリーランスなど所得が年によって変動する方は、自身の所得税額を把握した上で控除額を試算することが重要です。

 

個人事業主は確定申告が必須|住宅ローン控除のやり方

 

個人事業主や自営業者が住宅ローン控除の適用を受けるには、初年度に必ず確定申告を行う必要があります。

 

これは、控除を受ける資格があることを税務署に証明するための手続きであり、会社員のように年末調整で完結させることはできません。

 

住宅に入居した年の翌年の確定申告期間(原則2月16日~3月15日)に、必要書類を揃えて申告します。

 

初年度の手続きを済ませれば、2年目以降は金融機関から送られてくる「残高証明書」などを添付するだけで済むため、1年目の申請が非常に重要です。

 

ここで、住宅ローン控除の申請に必要な書類や確定申告の流れを確認しましょう。

 

住宅ローン控除に必要な書類

初年度の確定申告で住宅ローン控除を申請するには、次のような書類を揃える必要があります。

 

  • ・「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」
  • ・金融機関が発行する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
  • ・物件の「売買契約書」や「工事請負契約書」の写し
  • ・土地・建物の「登記事項証明書」
  • ・「本人確認書類の写し」(マイナンバーカードなど)
  • ・「確定申告書」

 

また、物件の種類によって追加の書類が必要です。

 

省エネ基準適合住宅や認定長期優良住宅であれば性能を証明する書類、昭和56年以前の中古住宅であれば耐震基準適合証明書や瑕疵保険の証券などが求められます。

 

このように状況により必要書類が変わるため、事前に確認し、早めに準備を進めましょう。

 

確定申告で住宅ローン控除を申請する流れ

住宅ローン控除の申請は、次の3つのステップで進めましょう。

 

  1. 1.年末残高証明書や登記事項証明書などの必要書類を準備する
  2. 2.確定申告書と計算明細書を作成し、控除額を転記する
  3. 3.完成した申告書と添付書類をe-Taxで送信するか、印刷して税務署へ郵送・持参して提出する

 

まず、前述の登記事項証明書や年末残高等証明書などを漏れなく集めるところから始めましょう。次に、確定申告書と(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書を作成します。

 

普段から会計ソフトを使っている方はソフトの案内に沿って作成できますし、国税庁の確定申告書等作成コーナーで画面の案内に従って作成することも可能です。

 

最後に、申告書と添付書類を提出します。e-Taxなら書類をインターネット経由で提出しましょう。紙の場合は、必要書類を同封して郵送するか税務署へ持参してください。

 

個人事業主の住宅ローンで「経費できる部分」とは

確定申告の書類にペンで記入しながら、電卓を操作する手元

住宅ローン控除と事業の必要経費は、同じ支出に対して重複して適用できません。住宅ローン控除は、あくまで居住用部分にかかる借入金をもとに、所得税から直接差し引く税額控除です。

 

一方、自宅兼事務所として使っている場合は、事業に使っている部分に対応する費用を家事按分し、必要経費として計上できます。例えば、賃貸なら家賃、持ち家なら住宅ローン利息や減価償却費などが対象になります。

 

この区別を明確にすることが、正しい申告の第一歩です。ここから、経費にできる部分とできない部分を確認しましょう。

 

住宅の経費にできる部分

自宅兼事務所として利用している個人事業主は、事業遂行に直接必要となる部分を家事按分することで、住宅関連費用の一部を経費として計上できます。

 

経費にできる主な項目は、次のようなものがあります。

 

  • ・住宅ローン利息
  • ・建物の減価償却費
  • ・火災保険料や地震保険料
  • ・固定資産税
  • ・水道光熱費 など

 

いずれも、経費計上できるのは事業用部分に相当する部分のみです。

 

家事按分には「合理的な基準」が必要な点に注意しましょう。例えば、総床面積の30%を事業用としていれば、ローン利息や保険料の30%を経費にする、といった計算を行います。

 

使用時間で按分する場合は業務日誌を残すなど、家事按分の根拠となる資料を残しておきましょう。

 

住宅の経費にできない部分

住宅関連費用で特に間違えやすいのが、住宅ローン返済の扱いです。返済額のうち元本部分は借入金の返済にあたり、必要経費になりません

 

また、頭金を含む住宅の購入代金はその年の経費として一括計上できず、建物分は原則として減価償却で年ごとに配分します。

 

なお、土地は減価償却の対象になりません。さらに、リフォーム費用も内容によっては修繕費ではなく資本的支出となり、処理が変わる点に注意しましょう。

 

家事按分の注意点

自宅兼事務所の費用を経費計上する際の家事按分は、客観的かつ合理的な基準で行うことが重要です。

 

一般的で説明しやすい基準は「床面積の割合」です。例えば、総床面積が100m2で、事業専用の部屋が25m2であれば、事業使用割合は25%と設定します。

 

面積で按分する以外に「使用時間の割合」で按分する方法もあります。その場合は業務日誌などで事業に使用した時間を記録し、根拠資料として保管しておくようにしましょう。

 

按分割合を高く設定しすぎると、根拠を説明できない場合に経費として認められない可能性があります。実態に即した按分を心がけましょう。

 

☆あわせて読みたい
『【フリーランスの税金】種類と控除一覧!節税対策やいつ払うのかを解説』

 

個人事業主の住宅ローン控除に関連するよくある質問

電卓の上に「Q&A」と書かれた積み木が乗っている様子

個人事業主が住宅ローン控除を検討する際には、実務的な疑問が生じやすいものです。

 

会社員と異なり、確定申告の手続きをすべて自分で行う必要があるため、申請期限を過ぎてしまった場合の対処法や、還付金がいつ振り込まれるのかといった具体的な質問が多く寄せられます。

 

ここで疑問を事前に解消し、安心して住宅ローン控除の手続きに臨みましょう。

 

過去に遡って住宅ローン控除を受けるには?

住宅ローン控除の申請を忘れていた場合でも、過去5年以内であれば遡って適用を受けることが可能です。これは「更正の請求」という手続きによるもので、国税通則法で定められた納税者の権利です。

 

法定申告期限から5年間は、納めすぎた税金の還付を請求できます。

 

例えば、2023年分の控除を申請し忘れた場合、その申告期限である2024年3月15日から5年後の2029年3月15日までが請求の期限です。

 

手続きには、対象となる年分の確定申告で必要だった書類一式を改めて揃え、「更正の請求書」とともに所轄の税務署へ提出する必要があります。

 

個人事業主の住宅ローン控除分はいつ戻る?

住宅ローン控除によって還付される税金は、確定申告の提出方法によって時期が異なります。

 

目安は申告手続き完了から数週間〜1ヶ月半程度です。税務署が申告内容を確認し、還付処理を行うため一定の期間が必要になります。

 

一般的に、e-Taxで提出した還付申告は通常3週間程度で処理されます。ただし、書類不備などがある場合は時間がかかることを覚えておきましょう。

 

申告書を印刷して窓口に持参・郵送した場合は、e-Taxより時間がかかります。還付までの期間は1ヶ月〜1ヶ月半程度が目安です。

 

還付手続きの進捗は、e-Tax(WEB版)のマイページから確認できます。

 

個人事業主の家賃の勘定科目は何費?

個人事業主が支払う家賃の勘定科目は、一般的に「地代家賃」です。事務所として借りている物件の家賃は、事業に必要な費用として地代家賃に計上できます。

 

自宅を仕事場として使っている場合は、家賃の全額を経費にはできません。事業で使用している割合に応じて家事按分を行い、事業で使った部分のみを地代家賃として計上します。

 

例えば、家賃10万円の自宅で30%を仕事に使っている場合、10万円 × 30% = 3万円を地代家賃として経費にできます。

 

なお、敷金や保証金は原則として経費ではなく、返還される可能性があるため「資産」として扱いましょう。

 

個人事業主の家賃(2LDK)の経費の計算例は?

自宅を仕事場として使っている場合、家賃は家事按分によって事業用部分のみを経費にします。

 

例えば、家賃12万円の2LDK(60m2)の自宅で、1部屋(15m2)を仕事専用に使っているケースを考えてみましょう。

 

この場合の事業使用割合は次のようになります。

 

15m2÷60m2=25%

 

したがって、経費にできる家賃は12万円×25%=3万円です。

 

ただし、実際の按分割合は生活スペースとの兼ね合いを踏まえ、合理的な基準で設定する必要があります。税務調査で説明できるよう、面積や使用状況の根拠を残しておくと安心です。

 

まとめ

家の模型を前に、電卓を使いながら相談している二人の人物

個人事業主も住宅ローン控除による減税メリットを十分に活用できます。そのためには適用要件を正しく理解し、初年度の確定申告を期限内に確実に行うようにしましょう。

 

個人事業主は会社員と異なり年末調整がないため、自身での申告が必須です。

 

自宅兼事務所の場合は、住宅ローン控除の対象となる「居住用部分」と、経費計上できる「事業用部分」を家事按分によって明確に区別しましょう。二重に優遇措置を受けないよう注意が必要です。

 

計算明細書や年末残高証明書、登記事項証明書などを早めに揃えておけば、申告時の記入ミスや添付漏れを防ぎやすくなります。

 

本記事で解説したポイントを押さえ、手続きをスムーズに進めましょう。

→→転職を検討中の方はコンサルネクストで無料登録
→→フリーランスの方はこちらからコンサル登録

(株式会社みらいワークス フリーコンサルタント.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

◇おすすめ記事◇
フリーランス・個人事業主の確定申告のやり方は?経費になるものの例も紹介