正しい理解で賢く節税!知っておくべき役員報酬の3つの税務ルール

作成日:2016/09/16

 

役員報酬は経営者が好きなように決められる?

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独立・起業して会社を設立し、資金繰りの見通しも立ちはじめ、いざ自分自身に対して「役員報酬」をもらおう!と思いはじめたフリーランスや個人事業主として独立・起業したてのあなた。とりあえず当面は資金繰りも不安だし、上半期は慎重を期す意味でも少なめにもらっておいて、下半期の分はまたその時に考えよう、なんて思っていませんか?

実はこの役員報酬、自分の給料なのに、自由には決められません。正確には、一定のルールに即して決めなければ税金の計算上で経費として認められなくなり、納める税金が多くなってしまうのです。

せっかく独立・起業して自分の会社を作ったのだから、自分の給料ぐらい好きに決めさせてほしい・・・と思うかもしれませんが、かといって余計な税金を課されるのも納得がいきませんよね。

そこで今回は、ルールを理解し戦略的に役員報酬を設定するために知っておくべきポイントをご紹介します。

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役員報酬がルールに縛られているワケ

金銭管理

そもそも、なぜ役員報酬の設定にはルールがあるのでしょうか。役員報酬の金額は、当然ですが、経営者本人が決定します。このため、他の経費や従業員への給与と違って相手方となる企業や利害関係者が存在せず、たとえば「今期は利益が出そうだから、途中から役員報酬を増やして経費を多くしておこう」といったように、課される税金を少なく抑えるために利益を操作する際の調整弁として、役員報酬を使うことができてしまうのです。

こういった利益操作を防止することが、役員報酬に関して各種ルールが設けられている一番の目的です。同様の趣旨で、役員報酬の前提となる「役員」の定義も、税法上では細かく定められています。目的は「利益操作の防止」なので、経営者が自社の経費の金額を調整するために給与を上下させてしまいそうな従業員、たとえば経営者の親族や配偶者については、たとえ登記上は役員ではなかったとしても、税務上は役員とみなされ、その人への給与に対しては役員報酬と同じルールが課されることになっているのです。

独立・起業した場合、まずはフリーランスや個人事業主として自分一人で、もしくは家族と一緒に会社をスタートさせるというケースもあると思いますが、いずれの場合にも、自分たちの給与に関してどのようなルールがあるのかをきちんと理解しておくことが必要です。

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役員報酬を決める際に守るべき3つのこと

では、具体的にどのようなルールがあり、何に気を付けなければならないのでしょうか。

主なポイントは下記の3つです。

①    毎月同額であること
②    事業年度開始日から3ヶ月以内に決定すること
③    株主総会の決議によって決定すること

「毎月同額」の役員報酬を「期初から3ヶ月以内に」「株主総会の決議により決定」する。これだけです。
猶予期間は3ヶ月もあるし、独立・起業してフリーランスや個人事業主として自分一人で始めた会社の場合は株主総会といっても参加者は自分だけだし、全然難しくないじゃないか!と思うかもしれませんね。確かに、このルールを守ること自体は決して難しくはありません。

しかし実際には、期初から2ヶ月間は前期の決算と税務申告で忙しくなりますし、それが終わってからの残り1ヶ月で、その期の売上や資金繰りの予測を精緻に立て、適切な役員報酬の金額を検討するというのは、なかなか大変なことです。会社の利益や納税額だけを考慮して「これだ!」という金額が割り出せたとしても、個人の所得税が高くなったり社会保険料の負担が大きくなったりという新たな問題が生じる場合もあります。しかも、そのような問題が起きたとしても、一度設定した役員報酬の金額は期初から3ヶ月を経過すると変更することはできず、調整のために役員賞与を出すということもできないのです。

 

ルールを破ったらどうなる?

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ルールがあるということは、破ればそれなりのペナルティーがあるということですが、この場合のペナルティーである「税金の計算上で経費として認められなくなり、納める税金が多くなる」とは具体的にどういうことなのでしょうか。簡単に言えば、「3ヶ月目以降に変更した分の金額が不当な利益調整とされ、法人税を算出する際に経費として認められなくなる」ということです。

たとえば、期初から6ヶ月目まで毎月30万円ずつ支給していた役員報酬を、7ヶ月目から50万円に増額した場合、変更後から期末までの増額分の合計である120万円(20万円×6ヶ月分)については利益調整とみなされ、損益計算書上は経費として記載されていても、税金の計算上は経費として認められません。つまり、「損益計算書上よりも120万円分利益が多い状態」として税金が課されてしまうのです。この場合、仮に法人税率が35%であったとすると、42万円(120万円×35%)の税金が加算されることになります。

「役員報酬を年額480万円もらう」という点では同じであるにもかかわらず、期を通して月額40万円ずつもらう場合と期の途中で月額30万円から50万円に増額する場合とで税額に42万円もの差が生じてしまうのですから、税法って理不尽だな・・・と思わずにはいられませんが、無視しても課税されるだけ損なので、ルールを正しく理解したうえで早めに資金繰りの予測を立て、無駄のない役員報酬を設定することをお勧めします。

 

独立・起業して会社を設立した事業年度であっても3ヶ月以内に決めなければならない役員報酬。ただでさえ多忙な設立直後の時期に、こんなにもわかりづらいルールを提示されると、「自分の給料をいくらにするかを考えるために起業したわけじゃないのに・・・」と気分も重くなってしまうかもしれませんが、設立直後こそ無駄な出費は抑えたいですよね。

会社の業績や個人の資産形成への影響、法人税・所得税・社会保険料の負担額への影響など、考慮に入れるべき要素が多すぎてとっつきにくい役員報酬ですが、まさに今独立・起業直後で悩んでいるフリーランスや個人事業主の方も、将来の独立・起業に向けて事業計画を練りはじめている方も、まずは今日ご紹介した3つのポイントを正しく理解し、損をしない役員報酬のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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