【監修】中小企業診断士について!資格取得方法とメリットとは?
最終更新日:2019/10/30
作成日:2017/02/06
資格には「就職転職の際に武器となるもの使えるもの」と「就職転職には使いにくいもの」とがあります。ご自身が目指す方向性を見据え、その中で、必要となってくる資格を選び、取得するのがスマートでしょう。中小企業診断士の資格は、独立やビジネスパーソンとしてのステップアップに有効であるとされている資格です。今回のコラムでは、中小企業診断士による監修のもと、資格取得によるメリットなどをご紹介します。
目次
■中小企業診断士とは?
(1)資格申込者は年2万人を超える
(2)中小企業診断士はフリーランスのコンサルタント向きの資格?
■どんな人が中小企業診断士の資格を取得しているのか
(1)フリーランスが資格取得する割合は意外と少ない
(2)スキルアップや昇進のために資格取得する人は多い
(3)中小企業診断士の資格のための勉強方法
■資格を取得するメリット・デメリット
(1)中小企業診断士の資格における弱い部分
(2)資格取得の難易度
(3)管理職としての必要な知識が学べる
(4)フリーランスの「看板」のひとつになる
■中小企業診断士の試験概要
(1)一次試験
(2)二次試験
(3)科目合格制度
(4)他資格等保有による科目免除制度
■まとめ
※本コラムは、2019年8月19日に「意外と知らない?中小企業診断士資格とは」を再構成したものです。
※本コラムは、中小企業診断士による監修を行なっています。
中小企業診断士とは?
(1)資格申込者は年2万人を超える
2016年に日本経済新聞社と就職転職情報サービスの日経HRが行なった調査によると、「ビジネスパーソンが新たに取得したい資格」の第一位は、中小企業診断士とのことでした。ビジネスパーソンによる中小企業診断士への注目はその後も続き、中小企業診断士への資格取得のための申込み人数は、2017年2018年と2年連続で2万人を超えました。
このように、一定のビジネスパーソンからは注目を集めており、中小企業診断士事務所のようなものも設立されているのですが、弁護士事務所や税理士事務所の数と比較すると中小企業診断士事務所の数は圧倒的に少ないのが現状です。
(2)中小企業診断士はフリーランスのコンサルタント向きの資格?
中小企業診断士とは、経産省のホームページによると「中小企業の経営に関する診断・助言について一定の能力を有すると認められる者」と表現されており、経営コンサルタントの役割にとても近しい部分があります。
コンサルタントを必要としているのは、大企業から中小企業、スタートアップ企業までさまざまあります。中小企業やスタートアップ企業の場合、最初から大きな予算を組みコンサルタントチームを設置することは難しいので、一人からでも要請できるフリーランスのコンサルタント人材に白羽の矢が立つのです。
中小企業診断士は、その名の通り、中小企業の発展を目的としたもの。中小企業診断士の資格を保持しているという点は、どんな案件に参画する場合でも、中小企業の目を引くはず。
そのような背景から、フリーランスのコンサルタントにとって、「中小企業診断士の資格は持っていて損はない」と言えるでしょう。
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どんな人が中小企業診断士の資格を取得しているのか
(1)フリーランスが資格取得する割合は意外と少ない
では、実際に、フリーランスでコンサルタントとして活躍する人のどのくらいが、中小企業診断士の資格を取得しているのでしょうか。中小企業診断士の登録や更新を行なう団体である「中小企業診断士協会」の登録状況を基準に考えると、フリーコンサルはそう多くはないようです(※中小企業診断士協会への登録は任意のためあくまで参考値)。
社団法人中小企業診断協会が行なったアンケート調査によると、当協会の会員である中小企業診断士の職業のうち、最も多いのが一般民間企業勤務者です。実に過半数の54%を占めていて、コンサルタントとして働いている人は体系的なコンサルティングファーム勤務者を含めても38%にとどまっていて、コンサル業務未経験という人が多いようです。
さらに資格取得の動機に関しても、「経営全般の勉強等自己啓発・スキルアップを図ることができるから」を選んだ人が約64%と最も多いという結果が出ています。また、民間企業勤務者の職制については「管理職」が最も多く、過半数の52%を占め、企業規模については「大企業」が最も多く、これもまた過半数となる63%を占めています。このように、フリーランスよりも、体系的には企業に属して仕事をしながら、中小企業診断士の資格を取得する人の方が圧倒的に多いと言えそうです。
なお、中小企業診断士として認められるのは、登録後5年間。それ以降は更新が必要で、これを怠ると、公に認定された中小企業診断士ではなくなってしまいますので、更新はお忘れなく。
(2)スキルアップや昇進のために資格取得する人は多い
会社員からの注目も集めている中小企業診断士ですが、その目的は、経営に関する知識を付けて昇進や年収アップ、社内評価のアップのためという場合が多いようです。
また、50歳を超えた合格者の声では、定年退職後のセカンドキャリアに役立てたいという人も多いと耳にします。
コンサルタントとして独立するために取得する人は、意外と少ない様子の中小企業診断士資格。取得のために学ぶ内容は、「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・政策」の7分野で、中小企業に対するコンサルティングを行なうために必要な、広範囲でより実践的なものになっています。
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(3)中小企業診断士の資格のための勉強方法
では、中小企業診断士の資格のためにはどのような勉強をすれば良いのでしょうか?
大きく分けると勉強方法は2つ。資格の専門学校に通って講義を受講して学ぶか、通信教育で講義を受け自宅で勉強するかです。中小企業診断士の資格取得は仕事と並行して進める方も多いため、通信教育は強い味方です。
ただし、通信教育の領域ではカバーしきれないこともあるため、可能ならば通学し、目の前で講義を受けたほうが効率的と言えそうです。仕事の忙しさや、学校までの距離との兼ね合いで検討しましょう。
何れにしても、合格までに1,000時間以上を要すると言われる中小企業診断士試験。日々の仕事をきっちりこなしつつ、合格までの間は、試験勉強中心の生活を覚悟する必要がありそうです。
資格を取得するメリット・デメリット
(1)中小企業診断士の資格における弱い部分
中小企業診断士は独占業務資格ではありません。「業務独占資格」とは、「特定の業務を扱うためには、絶対にこの資格が必要」と法律に定められているものであり、業務独占の領域である資格はそれだけで資格を取得する意味が出てきます。中小企業診断士に独占業務はないため、「中小企業診断士だからこの仕事ができる」という明確なものはありません。
コンサルタントとして独立を目指すのであれば、資格取得そのものを目標にすることなく、中小企業診断士の試験勉強を通じて得た知識・ノウハウを確実に身に付けることを目標にすることが肝心です。
(2)資格取得の難易度
中小企業診断士の試験は、一次試験と二次試験の2段階に分けて行なわれます。実施時期は例年、一次試験は8月上旬、二次試験は10月中旬および12月中旬となっています。合格率は、一次試験と二次試験を同年に受けなくてもいい仕組みになっているため正確には算出できないものの、およそ3~4%程度と言われています。
※2019年の受験申し込みは既に終了しています。
※東京オリンピック開催につき、2020年の一次試験は開催が前倒しされる予定です。詳細はこちら
取得難易度が高いことで有名な資格に弁理士試験がありますが、その弁理士試験と合格率は似たようなもの。暗記型の勉強では合格は難しく、決して低くないハードルです。
ただし、中小企業診断士として正式に登録するには、筆記試験と口述試験からなる二次試験通過後に15日以上の実務従事、または実務補習の受講が必要。その点でもやはり簡単に取得できる資格ではないと言えそうです。
(3)管理職としての必要な知識が学べる
勉強面でも受験面でも楽とは言えないこの資格に多くのビジネスパーソン達の注目が集まるのは、講義などの資格を取得するまでの流れの中で管理職としての必要な知識を学べるからです。
たとえば、事業計画書、資金収支計画、資金調達、人事制度作成、リスクマネジメントなど。これまでの仕事で、自分が関わってこなかった未経験の領域を学べる機会になるのです。
資格取得を目指して勉強することが、そのままビジネスパーソンとしての成長の一助にもなるため、転職や独立を検討していない人にとっても、勉強する価値のある資格なのです。
試験概要に関しては、のちに詳しく述べますが、資格取得のための勉強は、そのままビジネスパーソンとしての勉強にあたるとまで考えられます。つまり、中小企業診断士の資格のための勉強を行なうことで、就職転職に有利になるだけではなく、ビジネスパーソンとして大きく成長することが期待できるのです。
(4)フリーランスの「看板」のひとつになる
フリーランスのコンサルタントにとって資格を取得するのは、仕事の受注にそのまま影響があるという一面もあります。資格を取得して協会に登録をすれば、クライアントに対してわかりやすく自分の実力をアピールできるでしょう。きちんとアピールできれば、未経験分野の仕事も受注できるかもしれませんし、年収アップも期待できるかもしれません。
また、現在は企業に属しているビジネスパーソンが、将来的な独立や起業のために中小企業診断士の資格を取得することも多いようです。自身のキャリアに中小企業診断士の資格が加われば、鬼に金棒です。
自分自身のブランディングには、中小企業診断士はぜひ取得しておきたい資格と言えるでしょう。
中小企業診断士の試験概要
(1)一次試験
中小企業診断士の試験は一次試験と二次試験に別れていて、それぞれの試験日程は異なっています。まずは、一次試験について説明しましょう。
一次試験では、資格取得に足る知識を持っているかを判定するため、企業経営に関する下記の7科目について、筆記試験(選択式)が行なわれます。
1.経済学・経済政策
2.財務・会計
3.企業経営理論
4.運営管理(オペレーション・マネジメント)
5.経営法務
6.経営情報システム
7.中小企業経営・中小企業政策
上記の分野に未経験の領域がある場合、やはり独学では厳しいでしょう。学校に通うなどして、未経験分野の知識を深める必要があります。
(2)二次試験
二次試験では、一次試験で問われた知識の応用能力を判定するため、「組織(人事含む)」「マーケティング・流通」「生産・技術」「財務・会計」の4事例が出題され、それを診断・助言する筆記試験と、中小企業の診断および助言に関する能力を問う口述試験が行なわれます。
(3)科目合格制度
一次試験に「科目合格制度」および「他資格等保有による科目免除制度」が設けられています。まずは、科目合格制度について説明しましょう。
中小企業診断士の一次試験は、受験科目の総合得点の平均点が60点以上、かつ40点未満の科目がひとつもない場合に合格。ただし、「平均点は60点を超えたが40点を切ってしまった科目があった」、あるいは「平均点は60点に届かなかったが60点を超えた科目もあった」という場合は、受験した科目のうち60点を超えた科目のみが「科目合格」となります。翌年と翌々年の2年間にわたり、その科目の受験について免除申請ができます。これが「科目合格制度」です。
まとめて7科目受験するほどの勉強時間が取れない人でも、計画的に2~3科目ずつ取得していくことができる、というのが科目合格制度の大きなメリットですが、デメリットもあります。
それは、合格した科目の受験が順次免除になると、翌年、翌々年は苦手な科目が残っていく可能性が高いため、平均60点というハードルが高くなってしまうという点。ただし、合格科目の受験を免除してもらうかどうかはあくまで受験者本人が決めることであり、免除申請をせずに再受験することもできます。よって、実際に受験する際には、単に「免除してもらえるものは免除してもらおう」ということではなく、例えば既に合格していて免除申請もできる科目を敢えて再受験することで平均点を上げる、といった戦略が必要になってくると考えられます。
(4)他資格等保有による科目免除制度
続いて、「他資格等保有による科目免除制度」についてです。
他資格等保有による科目免除制度とは、特定の職に就いている、もしくは特定の資格を保有している場合に限り、証明書類を提出することで、7科目中の一定の科目の受験が免除されるというもの。科目別の免除対象職種・資格保持者例は、下記の通りです。
1)経済学・経済政策 :公認会計士試験「経済学」科目合格者、不動産鑑定士などは免除可
2)財務・会計: 公認会計士、税理士、公認会計士・税理士試験合格者などは免除可
3)経営法務 :弁護士、司法試験合格者などは免除可
4)経営情報システム :技術士、特定の情報処理技術者試験合格者などは免除可
こちらも、免除申請をするかどうかは受験者に委ねられているため、敢えて受験するという選択もできます。
※上記内容は2019年7月4日時点のものです。受験する際は必ず、一般社団法人 中小企業診断協会のホームページにて詳細をお確かめください。
中小企業診断士の勉強では、事業計画書、資金収支計画、資金調達、人事制度作成、リスクマネジメントなどを学びます。今までの経験から「身につけている」と思っていることでも、中小企業診断士のための勉強として改めて知識をチェックすると、意外と自分の知識に穴があることに気づかされることもあるでしょう。
就職や転職に関してはもちろん、昇進や年収アップ、就職や転職、経営コンサルタントとしての独立にも一役買ってくれる中小企業診断士の資格。自分の能力や領域を見つめなおすきっかけにもなることでしょう。
あなたも中小企業診断士になって、周りから一目置かれる存在になってみませんか。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)
< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)
東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。
ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020
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