業務改革に効果大! 制約条件の理論とは?

作成日:2017/01/27

 

企業の目的は『金を儲け続けること』である

企業の目的は『金を儲け続けること』である

企業の目的とはいったいどんなことでしょうか?
その定義は、人によって、企業によって大きく異なるのではないかと思います。

たとえば、現代経営学の巨人ピーター・F・ドラッカーは、その著書『マネジメント』の中で、「企業の目的は、顧客を創造することである」と述べています。

また、ドラッカーの影響を受けているといわれる経営コンサルタントの國貞克則氏は、東洋経済ONLINEのコラムで、企業の第一の目的は「お客様に選んでいただける商品やサービスを提供すること」と記しています。

そして、早稲田大学商学学術院の経営学者である遠藤功教授は、その著書『企業経営入門』の中で、「企業経営の目的は、持続的な優位性のある付加価値を創造する」ことであるとしています。

いずれも企業の目的を鋭く捉えた指摘ではありますが、これら経営哲学的な観点とはまったく異なる、金銭的な見方から企業の目的を捉えた人がいます。それが、経営学の分野で“制約条件の理論”を確立したイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラットです。彼は、ビジネス小説『ザ・ゴール』で、企業の究極の目的は「現在から将来にかけて金を儲け続けること」であるとし、その目的(ゴール)達成のための業務改善に関わる諸問題は、 “制約条件の理論”の応用によって解決できることを明らかにしました。

出典:https://promo.diamond.jp/books/the-goal/

☆あわせて読みたい

『【PMOコンサルタントとは】つまらない?意味ない?キャリアに使えない?向いている人と今後の将来性・年収を解説!』

『【ITコンサルタントとは】激務?学歴や資格は必要?未経験からなるには?仕事内容や年収、SIerとの違いを解説!』

 

経営プロセスの全体最適化を図る“制約条件の理論”

経営プロセスの全体最適化を図る“制約条件の理論”

“制約条件の理論”とは、物事は一番低い部分の能力以上には早く進まないという「ボトルネック」の概念を経営活動に当てはめたものです。平たくいえば、ボトルに入った飲み物をどんなに速くグラスに注ぎたいと思っても、注ぐ速度はボトルの首(ネック)の大きさで決まるということです。言われてみれば当たり前のことが、なぜ重要な概念になるのかというと、ビジネスにおけるボトルネックの存在が、生産性向上に大きな影響を及ぼすことがわかってきたからです。

たとえば、前述の『ザ・ゴール』では、「工場経営において、生産ラインにボトルネックがある場合、他の生産プロセスを改善しても全体のアウトプットは増加しない」、つまり、あらゆる部門でいくら改善を図っても、たった一箇所非能率な部門があるだけで、経営改善は実現しないという状況が描かれています。制約条件の理論では、このような状況の解決策として、ボトルネックが発生する仕事にあわせて他の仕事を調整する(他のプロセスはボトルネックに奉仕する)という方法を示しました。

なお、将来的には状況に応じてボトルネックそのものの能力向上を図ることも必要とされており、ボトルネックをそのまま放置していいと述べられているわけではありません。

☆あわせて読みたい

『【PMOとは】PMとの違い(仕事内容・意味・職種)と向いている人、業務に必要な資格・スキルセットを解説!』

『【フリーコンサル PMO】年収は?必要なスキルや資格は?つまらない?メリット・デメリットも解説』

 

制約条件の理論を利用した経営改善の手順とは

冒頭で述べたように、制約条件の理論の根底にある企業の目的は「金を儲け続けること」なので、求められる業務改善も、生産性の向上によるコスト削減・利益向上によるものがメインとなります。

では、具体的にどのようにしてコスト削減を図り、利益向上と業務改善に活かしていくのでしょうか。まず、制約条件の理論の根底をなすものに“スループット会計”があります。これが従来からある原価低減手法の“標準原価計算”と大きく異なるのが、同じ額の利益をどのくらいの時間で生み出せるのかという「時間単位あたりの利益」の考え方を取り入れたことです。つまり、“スループット会計”は同じ額の利益を上げるための時間をできるだけ短縮することが企業利益の増大につながる、という考え方に基づいているのです。ちなみに、”スループット“とはもともとコンピュータ用語で、単位時間あたりの処理能力のことを指します。

そして制約条件の理論では、「金を儲け続ける」ために必要なことを、次の3つと定義しています。

(1)スループットを増大させる(同じ利益をより短い時間で上げる)
(2)在庫(原材料、仕掛、製品など)や投資を低減する
(3)業務費用(資材費以外の総経費、直接人件費も含む)を低減する

そして、これを実現するための業務改善行動が次の5つとされています。

(1)ビジネスでの制約条件を明らかにする
(2)制約をどう徹底的に利用するのかを決める
(3)制約のある業務以外のすべてのものを、制約ある業務に従属させる
(制約のある業務を中心にビジネスを考える)
(4)制約のある業務の能力を高める
(5)業務改善が行われたらステップ①に戻る(ただし「物ぐさ」により新しい制約を発生させてはならない)

ある意味PDCAサイクルの一種といえますが、ビジネスの制約(ボトルネック)の発見とその最大限の活用を重視したことが、目標を定めてあらゆる業務改善を図る従来の手法と大きく異なるところであると言われています。

 

国内での制約条件の理論の応用例

国内での制約条件の理論の応用例

制約条件の理論は、その原典である小説『ザ・ゴール』が生産現場での抜本的な業務改革をテーマにしているため、メーカーの工場向けの業務改善手法と捉えられがちですが、他の業種にも十分応用可能な理論であると言われています。

たとえばスーパーマーケットの某A社では、制約条件の理論を導入する前は、バイヤーが抱える仕入対象商品が膨大になりすぎて、新しい商品がなかなか並ばないという事態に陥っていました。つまりはバイヤーが“情報過多状態”になっていたため“売れる商品”の見極めが難しくなっていたのです。バイヤーが画一的な商品ラインナップとなっていったことで、どの店舗も品揃えは同じになっていき、他店との差別化ができなくなっていきました。

経営はこの事態を受けて、ボトルネックを“バイヤーの情報負荷状態”と見極め、それを解消するため、店長による月次の合同商談会を開始し、独自の仕入れ方式に切り替えたといいます。バイヤーが探し出した商品の中から、店側が気に入ったものだけを仕入れ、販売できるようにしたのです。これにより、各店舗は独自に品揃えを決めることができ、その結果、売ることに対する責任と意欲も備わったといいます。

 

実は、『ザ・ゴール』の原書発売は1984年。その後、世界で250万部売れたにもかかわらず、日本語版の発売はなんと2001年にまでずれ込みました。

この理由としては、著者エリヤフ・ゴールドラットが解説の中で「日本人は、部分最適の改善にかけては世界で超一級だ。その日本人に『ザ・ゴール』に書いたような全体最適化の手法を教えてしまったら、貿易摩擦が再燃して世界経済が大混乱に陥る」と書いたことの影響が大きかったのではないかという話もあります。もちろん、実際のところは謎のままですが・・・。

しかし、1990年代のアメリカ製造業の業務改革による復権の理由が、本書に書かれた制約条件の理論の導入にあると言われることや、同時期に日本で起きたバブル崩壊の後に日本語版が出版されたことを考え合わせると、あながちでたらめとも言えないのかもしれません。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

 ◇こちらの記事もオススメです◇

「コンサルタントの業務効率化 ”資料作成代行サービス”とは?」