ファシリテーターの導入で会議を有意義に!
作成日:2016/12/09
社会人の3割が会議に意味がないと感じている現実
某ニュースサイトの調査によると、20代~60代男女のおよそ3割が「会社の会議に意味は無い」と考えています。そのように考える理由はいくつも推測できますが、主には下記のようなものが挙げられるのではないかと思います。
(1)目的がはっきりしていない
(2)進行・手順が場当たり的
(3)議論がなく議長の考えを共有するだけ
(4)自分の主張を強要する特定の参加者がいる
(5)発言者の論点がブレまくっている
(6)ダラダラと長い議論だけが続いている
(7)終了時刻になっても何も決まらない
しかし、それがわかっていても、無駄な会議をなくすのは革命レベルの難しさであり、そこまでリスクと労力をかけて改革をしようと思う人は少ないのが現状はないでしょうか。
そこで、会議を有益なものとするために活躍するのが「ファシリテーター(Facilitator)」と呼ばれる存在です。ファシリテーターとはその名の通り、会議の司会・進行役のことで、コンサルタントの入っているプロジェクトでは、コンサルタントに期待される業務のひとつに数えられます。
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ファシリテーター最大の役割は安心して発言できる会議の場づくり
ファシリテーターが会議の中で行うことは、あくまで公平な立場での進行の円滑化と参加者に対する発言の促進です。会議そのものをマネジメントしたり、議長を兼務したりすることは認められません。外部のコンサルタントが担当するケースが多いのも、そうした理由からです。
ファシリテーターの主な役割は次のとおりです。
(1)会議の全体像を構築する
ファシリテーターは、事前に「会議の目的」、「所要時間」、「各人の役割分担」を決めておく役割を担います。このとき重要なのは、議論のポイントをホワイトボードや模造紙に板書する係を、書記とは別に設けることです。これをおろそかにすると、多くの参加者が手元の資料を見たり、それに書き込んだりして、議論をするよりもそちらに気を取られてしまいます。全員が他者の意見を見ながら議論できる、「下を向かせない」会議を推進することが大切なのです。
(2)発言者に安全な「場」を提供する
参加者の積極的な発言を促すためには、他人の意見を無視したり否定したりすることがない会議の場づくりが不可欠です。誰かの発言に対して参加者の反応がない場合などは、ファシリテーター自身がフォローする必要もあります。
(3)参加者の合意を形成する
会議の展開に合理的な道筋を立て、誰もが納得する結論を導き出すようにアシストするのもファシリテーターの役割です。特定の意見だけを重用した結論になっては、参加者の不満が募るだけです。そうなると、業務生産性が低下するどころか、会議での決定事項すら守られない可能性もあります。会議参加者全員が决定に納得してこそ、やる気が引き出されるというものです。
いうなればファシリテーターは、議論に参加するのではなく、会議の状況を見ながら適切なサポートを行うこと、そして安心して話し合える場づくりや参加者全員の合意形成ができる環境づくりを担っているのです。
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ファシリテーターに求められる5つの資質
では、ファシリテーターにはどのような必要な資質が求められるのでしょうか?端的に言えば、ファシリテーターに不可欠な能力は次の5つといえます。
(1)会議参加者と「共にある」という意識が持てること
コンサルタントとしての指導的な立場ではなく、会議参加者の気持ちを汲み、同じ立場にいる者としての考え方を持つことが重要です。
(2)会議の場を仕切らないという考え方を持てること
会議の主役は一人ひとりの参加者です。リーダーシップを発揮したつもりでファシリテーターが会議を仕切ると、かえって発言がしにくい雰囲気になり、議論が停滞します。
(3)他者の意見を聴く受容の精神を持っていること
ファシリテーターの役割のひとつは、多くの人に活発な議論をしてもらうことです。自分の考えにそぐわない意見であっても否定してはいけません。意見の否定は、議論を閉ざす原因となります。
(4)会議の状況に敏感なこと
会議に参加していない人、発言を迷っている人、異論がありそうな人がいないかどうか、常に注意を払うことが必要です。また、会議の方向性がずれていないかを判断し、状況に応じて発言を促したり、本来の目的にごく自然に導いたりすることができる力も求められます。
(5)会議を冷静に見ることができること
議長の鶴の一声的な発言に翻弄されたり、一部の参加者の強硬な意見に引きずられたりしないような、冷静沈着な態度と意識を持ち続けられることも大事な資質です。
つまり、ファシリテーターは目的達成のためのガイドであり、リーダーではないため、会議そのものをマネジメントしてはいけないのです。逆に言えば、リーダーシップが求められる会社のマネジメント層が調整役としてのファシリテーターを務めるのはかなりの困難であると言えるでしょう。
会議以外にも広がるファシリテーターの活躍の場
今日、ファシリテーターが活躍する場所は会議だけにはとどまりません。教育、地域活動、医療など、多様な分野でファシリテーターが必要とされています。
たとえば教育においては、教師が生徒に知識を与えるという一方通行的なものだけでなく、対話によって生徒の創造性を開発することを目的とした参加型・体験型ワークショップが取り入れられつつあります。このような場で大事なのは、生徒の積極的な発言や行動であり、教師はその自主性を引き出すファシリテーターでなければならないのです。
また、環境美化、防犯・防災などの地域活動では、参加者がともに課題を考え、アイデアを出し合い、コンセンサスを得ながら運営を行う必要があります。そこでは個々の利害から来る対立ではなく、地域全体をよりよくするにはどうしたらよいかという対話を促すファシリテーターが求められているわけです。
そして医療においては、医師・看護師・患者とその家族という3者が、治療に関する合意形成やコミュニケーションの円滑化をはかる上でファシリテーターは重要な存在となります。また、カンファレンスの現場では、ややもすれば経験の浅い看護師は、専門職である医師や経験豊富な看護師長などの意見に従いがちです。こういった場面でファシリテーターが適切なサポートをすれば、経験の浅い看護師からも、患者のためになると思う意見が引き出せるわけです。
ファシリテーターがこうしたさまざまなシーンで活躍できるのは、ファシリテーションという仕組みが、あらゆる場面での人間関係に適用できる技術であり、ファシリテーターは話し合いの活性化を進める上で中立の立場にいるからにほかなりません。その意味で、今後、ファシリテーターはコンサルティングの一環としてだけではなく、広い社会で必要不可欠な存在となっていくと考えられるのです。
日本におけるファシリテーターの登場は、1963年に設立された立教大学キリスト教教育研究所(JICE)で、所長の柳原光氏がラボラトリー方式による「人間関係訓練」を行ったことがきっかけとされています。その足跡を受け継いだのがコンサルティング会社の株式会社プレスタイムで、ファシリテーター認定制度を設け、同時に認定講座も開講しています。また、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会や、心理カウンセリング団体の日本プロカウンセリング協会でも、それぞれ独自のファシリテーター資格制度を設けています。
ファシリテーターは、国家資格や公的資格が必要なものではありません。コンサルタントに必要なスキルのひとつではありますが、適切な訓練さえ受ければ誰でも身に付けることのできる力といえます。既にコンサルタントとして活動している人も、これからコンサルタントを目指す人も、今後ますます必要不可欠となる手法のひとつとして、ぜひファシリテーションを学んでみることをおすすめします。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)