チームプロジェクトを成功させるためPMに必要なチーム管理スキルとは?
最新更新日:2022/02/24
最新作成日:2022/02/24
チームプロジェクト管理を任されているPMは、改めてPMの役割や過去のプロジェクトが失敗した原因を見直す必要があるでしょう。また2021年8月に改定され注目を集めるPMBOK第7版にも、プロジェクトを成功に導くヒントがあるかもしれません。PMがチームの人材育成で意識すべきスキルも紹介します。
目次
■プロジェクトマネージャー(PM)の役割
(1)計画の策定とチーム編成
(2)PMはプロジェクト管理者
■プロジェクト失敗の要因はPMにある?
(1)PMとクライアントとの連携ミス
(2)プロジェクトメンバーの人間関係が悪い
(3)PMOがいない
■プロジェクトチーム管理を成功に導く指標「PMBOK」
プロジェクトチーム管理の原則「アジャイル宣言」とは
■プロジェクトチーム運営を成功させるPMの傾聴スキル
(1)「相談内容を受け入れている」態度
(2)評価より「認知」
プロジェクトマネージャー(PM)の役割
主にIT業界などで活躍するプロジェクトマネージャーは頭文字をとってPMと呼ばれるのが一般的です。PMの役割は、0ベースから企業の要望を把握し、最終的に形にすることです。このプロセスをプロジェクトとして管理進行するのがPMに課せられたミッションといえます。
ほとんどの場合、プロジェクトは発足から終了までチーム体制で行われます。PMはプロジェクトチーム全体の進行責任者で、ときには企業の経営者と同じ視点に立ち、事業計画への意見を求められることも。
社員がPMになることもありますが、外部人材、たとえばコンサルタントが参画するケースもあります。PMの役割を詳しく見ていきましょう。
(1)計画の策定とチーム編成
PMの最初の仕事は「計画の策定」になるケースが多いです。プロジェクトの目的などの要件定義やそのためにどのようなプロセスを踏むのかを予測・決定します。
規模や予算、スケジュールなどが決まれば、プロジェクトにどのくらいの人数や工数が必要なのかも明確になるものです。人材を集め、プロジェクトチームを編成するのもPMの重要な仕事の一つです。
チーム人数はプロジェクトの規模に大きく左右されるため、少なければ数人、多い時には数百人のチームになることもあります。
(2)PMはプロジェクト管理者
PMと同じような言葉の響きを持つ職種で、プロジェクトリーダー(PL)も各プロジェクトに必要な存在です。PLは、リーダーではありながらプロジェクトチームの一員としても業務を遂行します。
一方、PMはチーム内の対人関係の調節、クライアントとの打ち合わせなど、プロジェクト全体をスムーズに進めるため調整に徹する業務が多いです。PLの管理もPMの仕事の1つ。PLの心を上手に掴むことが、PMとしてチームプロジェクトを成功に導く足がかりになります。
プロジェクト失敗の要因はPMにある?
プロジェクト内容や目的、チームの人材によっては難易度が著しく高く、PMにも高い能力が求められます。しかし、どれだけ有能なコンサルタントでも、すべてのプロジェクトマネジメントがうまくいくとは限りません。
実際、2018年の調査では「国内企業のITプロジェクトの半数は失敗に終わっている」という結果もあるようです。プロジェクトが失敗するケースとはどのような原因が多いのでしょうか?
(1)PMとクライアントとの連携ミス
クライアントと主に関わるのはPMですが、プロジェクト発足前に十分なコミュニケーションが取れていないと、クライアントの要望に応えられません。
また、困ったことに「クライアントがプロジェクトに協力的とは限らない」のもまた事実。クライアント側の担当者が責任を持つのに尻込みしていたり、外部コンサルタントをどう活用すればよいか迷っていたりする話もよく耳にします。
クライアントとの意思疎通がしっかり図れないと、信頼関係ができずプロジェクトの全貌がはっきりしないままスタートを切ったり、クライアントの過剰要求をのみこんだりすることになりがちです。チームで動いているプロジェクトなのに計画の途中で大幅な変更を強いられることもあります。
PMはチームだけでなく、クライアントのマネジメントも業務の一環として取り組まなければならないでしょう。
(2)プロジェクトメンバーの人間関係が悪い
PMはプロジェクト成功のために、PMとプロジェクトチームメンバーとの関係性だけでなく、チーム内の人間関係にも目を光らせておくべきです。PMがプロジェクトメンバー同士の全人間関係に関与するのは難しいかもしれません。しかし、チームの力を最大化するためには、人間関係を含め内部環境をメンバーのために整えることは重要な任務です。
まず、プロジェクトメンバー一人ひとりとコミュニケーションが取れていれば「特定のメンバー同士がうまくいっていない」といった問題が可視化、対応しやすくなります。PMの本来の業務ではないと感じるかもしれませんが、プロジェクトチームを円滑に回すために人間関係の管理は欠かせないポイントとして真剣に取り組みましょう。
(3)PMOがいない
プロジェクトの規模が大きい場合、PM一人ではチーム全体に目が行き届きにくいものです。一人のPMが、社内でいくつものチームプロジェクトを管理しているケースもあります。そのような状況では、プロジェクト内にPMをアシストするPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置すると運営がスムーズになるでしょう。
PMOの役割は、PMの意思決定を支援したり、リーダー以下のチームメンバーを管理したりすることです。PMとPMOが連携し、チームメンバーが仕事により集中できる環境整備を推進しましょう。
プロジェクトチーム管理を成功に導く指標「PMBOK」第7版
PMBOKは「Project Management Body Of Knowledge(プロジェクトマネジメントボディオブノーレッジ)」の略で、国際標準のプロジェクトマネジメント知識を体系化したものです。昨年8月に、前回より大幅な変更が加えられ第7版に改定されたことからコンサルタントやPMの間で話題になりました。
第6版の「10の知識エリア」が、第7版では「8のパフォーマンス領域」に。第6版の「5つのプロセス」が第7版では「12の原理・原則」へと変更しています。この変更は「アジャイル憲章」と「アジャイル宣言12の原則」をもとに、プロジェクトチームの組織の内部環境と外部環境、ミッション、チームメンバーおのおのの業務などについて、プロジェクトチームを成功に導くための原理をまとめています。
プロジェクトチーム管理の原則「アジャイル宣言」とは
アジャイル宣言とは、2001年、当時「軽量ソフトウェア開発手法」と呼ばれていた分野で名声のある17人が別個に提唱していた開発手法が共有する価値観を議論し、結果を「アジャイルソフトウェア開発宣言」 として文書にまとめたものです。その後、ソフトウェア開発のみならず、プロジェクトマネージメントの基礎となりました。
出典:アジャイルソフト開発宣言
プロジェクトチーム運営を成功させるPMの傾聴スキル
多くのチームプロジェクトが頓挫する理由や、PMBOK第7版、基礎となったアジャイル宣言を省みると、PMがチームプロジェクトを成功に導くためには、数字で現れるものばかりでなく「チームやクライアントとの連携・コミュニケーションが必須」といえるでしょう。
PMがプロジェクトチームを管理する上で外せないのが「傾聴スキル」。しかし、言葉の意味として理解していても傾聴した後、どのようなアクションを取るべきなのか迷う人もいるでしょう。PM職におすすめの傾聴後の姿勢をまとめました。
(1)「相談内容を受け入れている」態度
PMOとして働くメンバーやPLから相談や悩み事を持ちかけられた時、仕事のできるプロジェクトマネージャーほど、相手が望んでいると予想した「解(こたえ)」を与えてしまいがちです。これは一見正しい行動のように思われます。
しかし、組織のリーダーとしてプロジェクトメンバーの自発性を促すためには、相手が自分で答えを導き出せるように支援することが大切です。相談者本人だけでなく、チーム全体の育成につながります。
相槌を打つ、相手の言葉をオウム返しに繰り返すなどの対応で「話の内容を受け入れている」と示すのが有効です。相手が「きちんと自分の話を聴いてもらっている」と安心することで、自分の存在価値を再認識し、より責任感を持つ効果が期待できるのです。
PMの独断で解を与えてしまうと、仕事はすぐに進むかもしれませんが、メンバーの成長を促すことはできないでしょう。長期的なコンサルティングでは、あえて解を与えずに相手の成長を考えた思考も必要なのです。
(2)評価より「認知」
PMが、PMOやPLとして働くチームメンバーの話を聞く場面では、「評価する側」と「評価される側」という構図になりがちです。しかし、大切なのはあくまでプロジェクトチームメンバーの自発的な動きを促すことであり、褒める・叱るといった「評価」による動きを促すことではありません。
傾聴した情報から感じ取れる相手の行動の源泉や、大事にしている思いをただ「認知」することに努めましょう。自分が大切にしているものを認めてもらえて嬉しくない人はいません。認知によってメンバーは自分に自信を持つことができ、自発的な行動を起こしやすくなるでしょう。
チームプロジェクト管理はPMの人間力が秘訣
PMは、新規事業や業務改善など、企業が注力するプロジェクトをチームでスムーズに進めるための管理を始め、重要な役割を担います。求められるのは予算や工数など「数字」にかかわるものばかりでなく、クライアントやプロジェクトチームメンバーとのコミュニケーション能力や、人を育てる傾聴力など、幅広いスキルが求められます。改定されたPMBOK第7版にも、PMの人間力に関わる事柄が多くコンテンツ化されています。
PMは「PMの力量によってプロジェクトの成功が決まる」とも言われる重責ある職種です。だからこそ成功した時のクライアントやチームメンバーとの結びつきはかけがえのないものになるでしょう。
(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)