先進企業の事例に学ぶ「働き方改革」
作成日:2016/10/17
普段、皆さんはどのような働き方をしていらっしゃいますか?フリーランスのコンサルタントの方々もクライアント先に常駐している場合と、自社内でのプロジェクトメンバーでは、出勤時間に対する考え方も少し違うかもしれません。最近では、ノマドワークやリモートワークなどのオフィスに出社しない働き方も増えています。今回は、以前お伝えした「リモートワーク」を皮切りに、働き方について考え直してみましょう。
非効率な長時間労働
世界的に、「日本人と言えば勤勉」とも言われるほど、我々日本人は労働に対して生真面目です。むしろ、サボるということに対して、過敏に反応している部分もあります。この考え方の反動として、「長時間労働」は今でも少なからずビジネスパーソンの自慢のタネになっています。日本社会においては、プロジェクトでの長時間労働は努力の証とされていますが、かけた時間に見合う成果がなければ単に非効率なだけです。業務改革して、短時間で付加価値を創出できることが求められます。
ワークライフバランスとは、高い生産性によって得られる状態であり、仕事を減らして得るものではありません。仕事とプライベートを両立させるために仕事を減らしては本末転倒です。
ここで、株式会社ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)の事例を見てみましょう。
ベネッセでは、「ワークライフバランス」ではなく「ワークライフマネジメント」と銘打っています。バランスというと、仕事を軽くする意識が働くため、意図的にワークライフマネジメントという言葉を採用しているようです。
ベネッセでは、
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○ メリハリのある勤務
○ いざという時の支援
○ 健康管理
の三本柱でワークライフマネジメントを実践しています。
ただし、ベネッセは「社員による努力」が前提であり、会社がそれをサポートするというスタンスを取っています。ワークライフバランスを整える努力は社員がしなければなりません。会社制度がいくら整備されていても、社員が長時間労働で非生産的な労働姿勢を取っている場合は、ベネッセに限らず、どの企業においてもワークライフバランスは実現しないでしょう。
最終的に組織が目指していることは、効率的な働き方でワークライフバランスを実現した従業員が、業務改革したことによってさらにいい仕事をしようとするという好循環ができることです。企業全体で働き方を見直して、効率的な働き方を考えてみましょう。
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早く帰る=サボり ではない!
旧態依然としている企業の中には、「後輩社員は先輩社員が帰るまで帰れない」などという悪しき風習が残っている職場もあることでしょう。この風習のもとでは、いつまでもワークライフバランスは実現せず、ひいては企業の生産性も低減するばかりです。日本社会には、「和をもって尊し」の精神が強力に刷り込まれています。自分の仕事が早く終わったからといってさっさと自分だけ帰るというのは難しいとおっしゃる方も多いでしょう。しかし、本来は長時間労働ではなく、仕事における生産性の高さを褒められるべきです。この意識改革は、ワークライフバランスを実現する上で、必ず通る段階です。
新日本石油株式会社(以下、新日石)のケースを見てましょう。新日石では「さよなら残業〜Action8〜」という意識改革も含めたワークライフバランスの実現への制度を整備しています。「Action8」の施策は意識改革を含めた施策です。総労働時間を削減すべく、「ノー残業デー運動」や「時間外労働命令フロー徹底運動」など8つの運動を展開しています。
特に「管理職は率先して休む」運動は興味深いルールです。これにより、部下は確かに休暇を取りやすくなることでしょう。ただし、ベネッセと同様、新日石でも、20時までに帰ることが決められているため、勤務中は効率的に業務を遂行しなければなりません。
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リクルートによるリモートワーク本格導入
2016年1月からリモートワークを本格導入したリクルートですが、導入試験には9ヶ月の歳月を費やしています。
リクルートでは、「働き方変革プロジェクト」を取り組んでいます。本格導入までに、リモートワークのフィジビリティテストを合計3回行っています。全社でいきなり導入するのではなく、モデルケースをまず検討し、全社で適用できるようなルールを作成してから全社展開しているのです。
リクルートはご存知の通り、人材業界の雄です。このリモートワーク導入にもそれなりに予算を割いていることでしょう。たとえば、社内ITインフラの整備、セキュリティルールの策定などの業務改革には大きく予算・リソースを費やしていると考えられます。しかし、リクルートのように多額の予算を割けなくてもできることはあります。Skypeの導入はどうか、社外秘情報は漏洩しないか、どのツールなら実現できるか、なども検討できますし、意識改革は毎朝の朝礼から行うこともできます。
とはいえ、リモートワークにもデメリットはあります。次のセクションではリモートワークを禁止しているYahooの事例を見てみましょう。
Yahooがリモートワークを禁止する理由
米Yahooでは、リモートワークを2013年に全面禁止しています。
「一人だと生産性は上がるが、イノベーションは集団によって生まれる」という考えのもと、あえてオフィスで働くことを選択しています。その代わりYahooは、オフィスを最高の仕事環境にすることを目指しています。
ここで、Activity-based work(ABW)の考え方について触れておきます。ABWは活動拠点をベースとした働き方ということですが、場所や時間に縛られずに働くという意味では、リモートワークに似ています。ABWとは、あくまで普段生活する環境で仕事をするということです。日本ではサイボウズがABWの考え方を取り入れた、オフィス環境を構築しています。オフィス環境なのに、普段の生活環境のようにしている、と考えるとわかりやすいでしょうか。フリーランスのコンサルタントの方はイメージがつきやすいかもしれませんね。
普通のオフィススペースもありながら、コミュニケーションをとるためのカフェスペースや、フリーアドレス制の座席も整備されています。ABWの考え方をオフィス構築に取り入れ、オフィスの中で「生活」できるようになっています。ABWの目的は、シナジー効果を生むことです。リモートワークと同様ですが、これをオフィスに取り入れることで「オフィスで仕事をすると仕事がはかどる」状態を従業員に提供できます。
ROWE—完全結果主義の導入も効果的
ROWEとは「Result Only Work Environment」の略です。つまり、結果だけが求められる労働環境という意味です。結果さえ出せば、どこで働いても、勤務時間がたとえ1時間でも許されます。このROWEを実践しているのは、世界最大の家電量販店ベストバイです。ノルマ達成にかかった時間は関係なく、目標が達成すればそれで良いという経営戦略です。
リモートワークにもこれと近いところがありますが、それでも、ある程度の時間的制約は受けることでしょう。少なくとも、今日はやる仕事がないから休んでいい、ということにはならないはずです。ROWEは完全結果主義ですので、1か月で果たすべき目標を1日で達成したならば、残りの日数はどう過ごしても良いのです。
ROWEは肯定的な側面では、ワークライフバランスを実現し、労働者自身もモチベーションを上げやすいされています。反面、管理しにくいということは、リモートワークと似ていますが、結果だけを純粋に評価すれば良いという観点では、リモートワークよりも評価はしやすいはずです。
いかがでしたか?
様々な働き方の事例を見てきました。一般的にコンサルタントはハードワークだと言われてはいます、特にフリーランスや個人事業主としてご活躍している方は尚更だと思います。ただ、必ずしもハードワーク=成果ではないということも事実でしょう。リモートワーク・ノマドワークを実践する企業は近年少しずつ増えてきてはおりますが、実際の導入に際しては慎重な検討が必要です。特に意識改革を行わずに導入すると、「ワークライフバランス」を勘違いする従業員も出てくることでしょう。
まずは、皆様が本コラムを読んでいただいた際、自分に合った働き方とはなんなのかを考える一つにきっかけになれば幸いです。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)