「エンジェル投資家」を知って資金調達の可能性を広げよう

作成日:2019/02/27

 

多くの起業家が頭を悩ませるのは「出資してくれる人がいない」「融資してくれる金融機関がない」といった資金面の問題でしょう。もし、現在資金調達に悩んでいるのならば、エンジェル投資家からの資金調達を検討してみるのも良いかもしれません。今回はエンジェル投資家の役割だけではなく、資金調達しやすくするための秘訣も併せてご紹介します。

 

 

目次

■エンジェル投資家とは?
(1)どんな人がエンジェル投資家になるのか
(2)エンジェル投資家が出資してくれる金額はどのくらい?
(3)出資して欲しい希望金額が大きい場合
(4)ベンチャーキャピタルの存在

 

■資金調達するメリット
(1)失敗しても援助された資金を返還する必要はない
(2)成功者のノウハウを得られる可能性
(3)人や事業提携先を紹介してくれる可能性

 

■資金調達するデメリット
(1)自分の会社が自分のものではなくなってしまう?
(2)組むエンジェル投資家によっては上場の足かせになる可能性も

 

■エンジェル投資家が起業家の可能性を広げる
(1)ビジネスプランは魅力的かつ簡潔に
(2)ビジネスの優位性を明確にすることが大切

 

■まとめ

 

エンジェル投資家とは?

エンジェル投資家とは?-1

(1)どんな人がエンジェル投資家になるのか

起業家が自分のビジネスを始める際に、1つの大きな壁になってしまうのが“資金の不足”でしょう。「こういうことをやりたい!始めれば絶対に成功する自信がある」と考えていても、そのビジネスをスタートさせるための資金を持っていない起業家は多いものです。魅力的なアイディアがあるのに資金がない・・・そのような起業家を助けてくれる個人投資家がエンジェル投資家です。

 

エンジェル投資家とは、個人で出資できる富裕層がほとんど。過去に自らが起業家であった人起業そのものに大きな興味を持っている人がエンジェル投資家になるというケースが多いようです。

 

また、エンジェル投資家自身が著名人であることも少なくありません。過去に有名企業の社長であった人や、ビジネス界以外で有名になり巨額の富を得た人がエンジェル投資家になっている場合も多いようです。海外の例ですが、歌手のジャスティン・ビーバーがエンジェル投資家になっていることは有名です。

(2)エンジェル投資家が出資してくれる金額はどのくらい?

あくまで個人が提供してくれる資金なので、1人のエンジェル投資家から調達できる金額には限界があると考えておいたほうが良いでしょう。あくまで目安ですが、現実的には数百万円、多くても2,000万円程度と言われています。

 

一般的に起業家がエンジェル投資家に出資を募る際には、「プロジェクト内容」「そのプロジェクトをスタートさせるために必要な出資希望金額」を先に提示します。そして、エンジェル投資家達は、提示されたプロジェクトの内容及びに出資希望額を検討して出資するか否かを判断するという流れです。

 

希望する資金調達の金額がわずかであれば、「出資しても良い」と考えるエンジェル投資家が現れる確率は上がるでしょう。一方、当然のことながら金額が大きれば大きいほど、資金調達は困難になります。

 

一般的にエンジェル投資家からの資金援助は出資です。「出資」と「融資」の大きな違いは返済の義務の有無。融資には返済の義務がありますが、出資に関しては返済の義務がありません。この点がビジネスローンなどの金融機関からの融資とは性質が異なる部分です。

(3)出資して欲しい希望金額が大きい場合

さて、「プロジェクトの魅力」と「出資する金額」を天秤にかけて、エンジェル投資家達は資金援助をするかどうかを決めるわけですが、必要な金額があまりにも大きいと、1人のエンジェル投資家だけの投資金額では賄いきれない可能性もあります。

 

その時は、複数のエンジェル投資家から資金提供を募るか、他の方法での資金調達を検討する必要が出てきます。他の方法とは、例えばビジネスローンでの融資クラウドファンディングの利用などです。

 

ただし、ビジネスローンには審査があるため、目標金額を確実に融資してもらえるとは限りません。また、融資を受けたお金に関しては必ず返済する義務があります。そのため「金融機関や自治体から融資を受けるよりも、エンジェル投資家からの資金援助を受けたい」と考える起業家も多いのです。

 

クラウドファンディングの利用も資金調達の有効な手段の1つですが、クラウドファンディングは1人あたりの出資額がきわめて少ない傾向があるため、何百人、時には何千人にビジネスアイディアを認めてもらい出資してもらう必要があります。ちなみに、一般的にはクラウドファンディングでは出資額が目標金額に届かなかった場合、プロジェクト自体が中止になります。

(4)ベンチャーキャピタルの存在

資金を援助してくれるという点では、ベンチャーキャピタルもエンジェル投資家と似たような役割を持ちます。ベンチャーキャピタルは、将来性がありそうな企業に資金を援助する集団で、融資ではなく出資です。つまり、基本的には返済の義務はありません。

 

エンジェル投資家はいち個人ですが、ベンチャーキャピタルは集団であるのが大きな違いの1つ。もう1つの大きな違いは、ベンチャーキャピタルは主に上場を目指している企業に投資を行なうという点です。

 

将来的に上場を考えている企業をターゲットとしている理由は、ベンチャーキャピタルが利益を出す主な手段が、上場のタイミングで株式を売却することだからです。「キャピタルゲインを目的として投資を行なう集団」と考えるとわかりやすいかもしれません。将来的に上場を目指している起業家ならば、ベンチャーキャピタルから出資してもらえる可能性はあるでしょう。

 

一度ベンチャーキャピタルに投資をしてもらえれば、追加融資も得やすくなるというメリットも生まれます。ベンチャーキャピタルの投資先に選ばれたことが他の投資家や金融機関へのアピールになることが多いからです。

 

ただし、ベンチャーキャピタルは「利益が見込めそうもない」と判断した時には、資金を引き上げてしまうこともあります。この点はエンジェル投資家からの出資にはない大きなリスクです。

 

さて、ベンチャーキャピタルからの資金調達方法ですが、大きく分けて2つの方法があります。1つは自分で売り込みに行くこと。「こういう形で起業をしたい」とプレゼンして、ベンチャーキャピタルの目に止まれば出資してもらえる可能性が生まれます。ただし、このやり方で資金調達するためには、よほど魅力的なビジネスアイディアでなければ難しいです。まともに話を聞いてもらうのさえ困難なほど、ハードルは高いと考えられます。

 

もう1つは、第三者を介してベンチャーキャピタルを紹介してもらう方法です。個人で飛び込んで行くよりは第三者に紹介してもらったほうが取り合ってもらいやすくなるため、ベンチャーキャピタルから資金援助を受けられる可能性はより高まると考えられるでしょう。

 

エンジェル投資家とベンチャーキャピタル、どちらがあなたにとって良きパートナーになるのかは未知数です。それを判断するためには、それぞれのメリットとデメリットを知る必要があります。次の項目から、エンジェル投資家から資金調達するメリットとデメリットをご紹介します。

☆あわせて読みたい

『フリーランス人材の悩みとは?業務委託の雇用形態とメリットデメリットを解説』

『【フリーランス入門ガイド】定義や個人事業主との違いとは?増えすぎた理由は?おすすめの仕事や獲得方法とは? 』

『フリーコンサルタントは副業でも稼げる?単価・種類・注意点を解説!』

 

資金調達するメリット

資金調達するメリット-2

(1)失敗しても援助された資金を返還する必要はない

 

前述したように、エンジェル投資家からの資金援助は「出資」ですから、原則としては返還の義務がないと考えられています。融資とは違うため、毎月の返済を心配しないためご自身の事業に専念しやすいでしょう。一般的なビジネスローンから融資を受けた場合は、借金の返済が重くのしかかることもしばしば。「返済のための事業」ではなく「利益を生むための事業」として事業に集中できるのは、起業家にとって大きなメリットです。

(2)成功者のノウハウを得られる可能性

エンジェル投資家の中には、過去に自分で事業を起こして成功をした人も多く含まれています。そのため、エンジェル投資家の援助が得られれば、資金だけではなく同時にノウハウやアドバイスが得られる可能性も高いす。

 

エンジェル投資家も資金を出す以上、事業の成功を願っているのは起業家であるあなたと同様。あなたのビジネスがうまくいくために力を貸してくれるでしょう。起業家として成功した人の意見はやはり含蓄があるもの。大いに参考にすべきです。

 

駆け出しの起業家には、素晴らしいアイディアはあっても、そのアイディアをビジネスにするまでのノウハウが欠けていることも少なくありません。また、「これで大丈夫」と考えているプロジェクトに大きな落とし穴があることも十分に考えられます。仮にプロジェクトに落とし穴があったとしても、赤の他人が指摘してくれる機会はなかなか得られないもの。しかし、エンジェル投資家から支援を受けられれば、プロジェクトの落とし穴を指摘してもらうことができ、改善策の提案も期待できるかもしれません。

(3)人や事業提携先を紹介してくれる可能性

事業は軌道に乗せるのも難しいのですが、広げるのもまた別の難しさがあるでしょう。事業を広げる時には、より多くの人間や企業と関わる必要が出てきます。しかし、関わる範囲が広がると心配の種が増えることも否定できません。また交流の幅が広がっても、有能な人との出会いや自社にとってメリットのある事業提携先はなかなか見つからないものです。エンジェル投資家は豊富なコネクションを持っていることが多いため、このような悩みの解決にもつながるかもしれません。。

 

また、税理士などが必要な時には、エンジェル投資家が有能な税理士をあなたに紹介してくれることもあるでしょう。このようにエンジェル投資家と組めば事業を全面的にバックアップしてくれることも期待できます。

 

 

資金調達するデメリット

資金調達するデメリット-3

(1)自分の会社が自分のものではなくなってしまう?

一見、エンジェル投資家からの資金援助はメリットだらけに思えるかもしれませんが、もちろんデメリットも存在します。もっとも大きなデメリットと考えられるのは、エンジェル投資家があなたのビジネスに対し、過干渉になってしまうこと。先程のエンジェル投資家から資金調達するメリットでは、「有益なノウハウやアドバイスが得られる」と述べましたが、有益なアドバイスと「過干渉」はまさに紙一重です。

 

起業を志す人の多くは、明確なビジネスへのビジョンを持っているものでしょう。しかし、エンジェル投資家と組むことによって、そのビジョンが捻じ曲げられてしまう危険性は常にあると考えるべきです。エンジェル投資家は、前述の通り自身も起業した経験のある人が多く、ビジネスに対して興味が深いのです。深いからこそ、エンジェル投資家として活動しているわけですから、自分のお金を提供しているビジネスであれば、なおさら“支援”と言う名の“干渉”をしたくなってしまうのも頷けます。

 

例えば、このようなケースを想定してみてください。、有益なサービスを無料で提供して広告料で利益を得るプランを持っているAさんがいます。エンジェル投資家はAさんが提供しようとしているサービスに惚れ込み、資金を援助してくれました。しかし、エンジェル投資家が「無料提供ではなく、有料提供にするべきだ」と言い出したらどうでしょうか。Aさんが「無料提供だからこそ意味がある」と考えていた場合、Aさんとエンジェル投資家は同じビジネスに関わっているのに、2人が目指す方向は異なってしまいます。

 

資金を援助してもらっている手前、エンジェル投資家の意見を完全に無視するのは困難でしょう。どうしても、相手の意見を尊重しがちになってしまいます。最悪のケースでは「自分の会社なのに、自分がやりたいことをできない」という事態に陥ってしまう可能性すらあります。

 

ちなみに、このデメリットはベンチャーキャピタルから資金援助を得た時にも同じように存在します。資金を援助してもらう前に、資金を提供してくれる相手がどこまで経営に関わってくるのかは、よく確認するべきです。

(2)組むエンジェル投資家によっては上場の足かせになる可能性も

稀なケースかもしれませんが、エンジェル投資家から資金を援助してもらったことが理由で、上場できなくなってしまう可能性も。極端な話かもしれませんが、仮にエンジェル投資家が社会的に何らかのウィークポイントを持っている場合などがそれにあたります。

 

ご存知のことと思いますが、企業が上場する際にはそのような点も審査されます。起業した本人に問題がなくとも、関わっている周辺の人に課題がある場合上場が困難になる可能性もあるため、エンジェル投資家の人となりは事前にしっかり知っておくべきです。

 

 

エンジェル投資家が起業家の可能性を広げる

エンジェル投資家が起業家の可能性を広げる-4

(1)ビジネスプランは魅力的かつ簡潔に

すでに説明したように留意すべき点もありますが、総合的に考えればエンジェル投資家は起業家の力になってくれる存在です。メリットやデメリット以上に考えるべきことは、まずエンジェル投資家から資金調達する可能性を上げることでしょう。そのために必要な秘訣とはどんなものなのでしょうか。

 

エンジェル投資家は、何を基準に出資を決めるのか。判断基準は、やはりビジネスプランやビジネスアイディアであることが多いようです。優秀なビジネスプランや魅力的なアイディアが目の前にあり、あと足りないのは資金だけ。そのような状況ならば、エンジェル投資家は興味を持ち出資を検討する可能性が高まります。

 

ただし、世の中にある全てのビジネスプランに目を通すはずはありません。「ビジネスプランやアイディアを読んでもらえるのは一行だけ」と考えましょう。長々とした計画書すべてを読んで理解してもらうのは、まず難しいことです。一行で事業の魅力や目的を表現し、まずそこで相手を引き付けなければなりません。そうして、出資してもらえる可能性を高めるのです。

 

一行のビジネスプランやアイディアで相手に興味を持ってもらう。興味を持ってもらってから詳しい話を聞いてもらう。これがエンジェル投資家から出資をしてもらえる可能性を高める秘訣です。これを意識できるようになると、ビジネスへの関わり方が根本的に変わってくるでしょう。

 

起業家の多くは出資してもらうために自分のビジネスプランがどれだけ優秀なのかを長々とアピールしたいと思いますが、そこはぐっと我慢。アピールするのは、まず相手を引き付けてからです。

(2)ビジネスの優位性を明確にすることが大切

立ち上げたいビジネスがまったく新しいビジネスであり、そのビジネスが魅力的であるのなら、高確率でエンジェル投資家の目に止まり資金援助を得られる可能性を秘めているでしょう。しかし、ほとんどのビジネスは「まったく新しいもの」ではないでしょう。先駆者は既に存在していて、「先駆者よりも優れている点があるからこそ、ビジネスチャンスになり得る」のです。

 

では、その優れている点は何なのでしょうか?

 

この点を明確にすれば、そのビジネスプランに魅力があるかどうか輪郭がはっきりします。エンジェル投資家を募る時に意識するべき点は、詰まるところこの一点に集約されているということではないでしょうか。

 

当然といえば当然ですが、エンジェル投資家から資金調達できるケースはあまり多くはありません。よほど魅力的なビジネスプランでないかぎり、腰を上げて出資してくれることはないからです。しかし、エンジェル投資家の存在が多くの起業家の可能性を広げてくれることは間違いありません。可能性にかけて、エンジェル投資家からの資金調達もあきらめずに検討したいところです。

 

優れたビジネスプランがあり、足りないのは資金だけであるのならば、思いきってエンジェル投資家達にプレゼンしてみるのも良いのではないでしょうか。行動しなければ可能性すらゼロになってしまいます。

 

資金の援助はもとより、エンジェル投資家達へのプレゼンはあなたのビジネスプランを客観的に判断もらう良い機会にもなります。その行動は、前に進むための大きな一歩になるでしょう。

 

(株式会社みらいワークス FreeConsultant.jp編集部)

 

コンサル登録遷移バナー

 

 

◇こちらの記事もおすすめです◇

エンジェル投資家は、本当に起業家のエンジェルなのか?

インターネットで起業資金を調達できる、クラウドファンディング」

エンジェル投資家とのマッチング場所は?探し方のコツや留意点を知る