コンサルティングファームのFinTech取り組み動向

作成日:2017/03/29

 

成長著しいFinTech市場

コンサルティングファームのFinTech取り組み動向

アクセンチュアがリリースしたFinTechレポートによると、2015年のFinTech投資は、欧州とアジア・パシフィック地域の牽引により、グローバルでは75%増加して223億ドルに達しました。この大幅な投資額の伸長は、2015年に29%の成長にとどまったベンチャー投資全体を上回る勢いであり、FinTechが金融サービス分野において引き続き大きな成長を見せていることを意味しています。

一方、日本では20%増の6,500万ドルに達し、グローバルと比較するとその伸びはやや緩やかではあるものの、引き続き、魅力的な成長市場であることには間違いなさそうです。

この伸び行くFinTech市場における主役はあくまでその技術やサービスを開発し、世の中に新しい価値を生み出していく新興スタートアップ企業や各金融機関でしょう。しかし、今回はそれを裏側で支え、FinTechブームの一翼を担うコンサルティングファームの取り組みに焦点を当てて見ていきます。

 

ベンチャーと金融機関の橋渡し役としてのコンサルティングファーム

ベンチャーと金融機関の橋渡し役としてのコンサルティングファーム

アクセンチュアは、2010年のニューヨークで開催された「先進金融テクノロジーラボ(FinTech Innovation Lab )」をモデルとして、2014年にアジア・パシフィック 先進金融テクノロジーラボ(FinTech Innovation Lab Asia-Pacific)をスタートさせました。これは、スタートアップ期にある革新的な金融テクノロジーを提供する企業をコンテスト形式で発掘し、研究開発を支援する12週間のアクセレータープログラムです。

 

大手金融機関の経営層に対するプレゼンテーションの機会を提供するとともに、ベンチャーと大企業の人的ネットワークを作る重要な場となっています。2016年7月に行なわれた最新のプログラムでは、野村グループ、三井住友フィナンシャルグループを含む20の金融機関が参加、そしてFinTechサービス提供企業も12社参加するなど年々拡大しており、FinTechベンチャーと大手金融機関の橋渡し役として、FinTechエコシステム構築に大きく貢献する取り組みとなっています。

 

PwCコンサルティングは、2016年8月に「FinTech&イノベーション室」の設置を発表しました。これにより、FinTech企業と金融機関との連携・提携・合併をサポートするためのアドバイザリーサービスから、戦略策定、ビジネスモデル構築、実装までのコンサルティングサービス、ならびに税務・法務面での支援をワンストップで提供する体制を整えました。

 

また、デロイトトーマツコンサルティングは、革新的技術を使った金融サービスに関する政策上の課題や対応策について各分野の有識者と検討することを目的とした、経済産業省が主催する研究会「産業・金融・IT融合に関する研究会(FinTech研究会)」に参加しています。

 

加えて2016年4月には、国際的な大手情報企業トムソン・ロイター・マーケッツと共同で「FinTechエコシステム研究会」を設立し、日本の金融経済環境とユーザーに合ったFinTechエコシステムの構築、及び今後取り組むべき施策の導出を目的に議論を進めています。そこには、株式会社SBI証券やオリックス等の大手金融機関をはじめ、“MFクラウド”や個人向け家計簿アプリを提供する株式会社マネーフォワードや、オンライン決済“SPIKE”を提供する株式会社メタップスといった、FinTechサービス提供企業も参加し、関係性を強めていっています。

 

このようにコンサルティングファーム各社は、FinTechを一過性のブームに終わらせるのではなく、独創的なテクノロジーを要するスタートアップ企業と大手金融機関双方の橋渡し役となるべく、場の創出と体制構築を進めているようです。

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FinTechサービス提供パートナーとしてのコンサルティングファーム

FinTechサービス提供パートナーとしてのコンサルティングファーム

 

とはいえ、コンサルティングファームの動きは決して橋渡し役だけにとどまりません。しっかりとFinTechのテクノロジーそのものにも注目し、自社が提供するコンサルティングやSIサービスに活かす動きも並行して行なっています。

 

アクセンチュアは、2016年9月、ビットコイン等仮想通貨に用いられているブロックチェーンテクノロジーを応用した「リダクタブル・ブロックチェーン」と呼ばれる『編集できるブロックチェーン』の開発の計画を発表しました。金融機関からの要望に応える形のこの“編集できるブロックチェーン”ですが、すでに特許も申請済みという情報もあり、同社が本気でブロックチェーン開発に乗り出していることがわかります。ブロックチェーンの概念そのものは、「編集できないからこそのブロックチェーン」であるにも関わらず、「編集可能となってしまってはブロックチェーンの意味がないのでは」といった議論が巻き起こり大きな話題となっています。

 

また、PwCコンサルティングは2016年5月に、日本最大級のビットコイン取引所を運営するレジュプレス株式会社と、ブロックチェーンを活用した企業間送金の実証実験を開始したことを発表しました。これは、仮想通貨を媒介させた送金サービスであり、企業の経理業務効率化を目的としているほか、仮想通貨を用いた送金や一定期間の債権、債務を相殺するネッティングを可能にします。これにより、安価な手数料で海外送金を行なうことができ、レジュプレスの試算では、従来の海外送金方法に比べて手数料は10分の1以下に削減できるとされています。

 

このように、コンサルティングファームは、独自にFinTechのテクノロジー開発を手掛けたり、FinTechベンチャーと組むことで、ビジネス要件をコンサルティングファームがとりまとめ、実際の開発はスタートアップベンチャーが行なう、といった形で役割を分担しながらFinTechのサービス提供者としての役割も強めていっているようです。

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このように、各コンサルティングファームは、クライアントとなりうる金融機関、そしてサービス提供者であるFinTech先進企業両方との結びつきを強め、双方の橋渡し役になるとともに、直接的なFinTechサービス提供者としての役割も担い始めているようです。各社ともそのHPの中で関連レポートを多数掲載するなど、大手金融機関を多く顧客に持つコンサルティングファームはもはやFinTech無しにコンサルティングサービスの提供はできない状態にまで“FinTech”という概念は浸透しつつあるということでしょう。

もはや金融業界の経営を語る上で外せないキーワードとなっている“FinTech”。今後の各コンサルティングファームの動きに要注目です。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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