クライアント評価を決める期待値コントロールとは?
作成日:2016/11/28
評価を上げたいならば、相手の期待値をコントロールすること
コンサルティング業界に身を置くと、「高額なコンサルティングフィーを払っているのだから、どんな難問でも解決してくれるだろう」「著名なコンサルティングファームに依頼したのだから、ウチのお荷物事業を一発で立て直せるような改善提案をしてくれるはずだ」などの過大な期待をクライアントが抱いているケースに、しばしば直面するものです。
もちろん、担当するコンサルティングチームは、持てる全ての知見・ノウハウやネットワークを活用し、スコープに沿って課題解決に当たります。それでも、出てくるアウトプットが必ずしもクライアントの期待を100%満たすとは限りません。コンサルティング業界のみならず、ITシステム業界などにも見られますが、契約範疇や成果物に関してクライアントとの間に認識のズレがあり、契約を締結してキックオフも行った後に、それが露見してくるような状況が時としてあります。こうなると、クライアントからの評価は一気に下がり、プロジェクトも上手く回らなくなり、リピートオーダーも期待できない、という苦しい状態になります。
マネジメントクラスや営業担当が契約締結に先立ち先方との入念な認識の摺り合わせをしておかなければならない理由が、ここにあります。事前の認識合わせには、クライアントの期待値を適切なレベルにコントロールし、期待外れと評されるリスクを予め回避する目的があるのです。言い換えるならば、同じレベルのアウトプットを出しても、相手の期待値が適切にコントロールされているプロジェクトの方が高い評価を得やすいことを意味します。これがビジネスにおける「Expectation Control」の大切さです。
この考え方は、クライアントなど社外からの評価を上げる際のみならず、自社内でマネジメント層やメンバーからの評価を上げる際にも応用できます。「上長からの評価が今一つ芳しくないな」と感じている方は、相手の期待値を下回るパフォーマンスを出してしまうことが常態化している可能性が高いと考えられます。しかしこのケースは逆に、相手の期待値を効果的にコントロールできれば、手っ取り早く評価を上げることが可能であるとも言えるのです。
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心当たりのある方は要注意・・・毎回相手の期待値を裏切っているのかも
本来、プロジェクトは成果が全てなので、努力していますという姿勢のみで高い評価を受けるはずがないのは自明の理ですが、努力を続けていても報われない状態が長く続くと、どんな人間(チーム)でもモチベーションを維持するのが困難になります。モチベーションが下がれば、自ずと高いパフォーマンスを出すことも叶わなくなり、負の連鎖が始まります。ここに、適正な評価を受けることの大切さがあります。
「低評価を受けるのは、まだまだ自分(チーム)の努力が足りないからだ」真面目な人に限ってこのように考えがちです。ところが実際には、評価を上げる効果的な方策は、より一層の努力をすることではなく、相手の期待値をうまくコントロールすることであるというケースが意外と多いものです。真面目にプロジェクトに取り組んでいると自負している人こそ、評価が低いのは、本当に自分(チーム)の努力が不足しているためなのか、今一度冷静に振り返ってみる必要があります。
また、いつどんな案件を振られても、「私がやります」「弊社で対応できます」と無条件に受けてしまうことが多い人も要注意です。独立・起業したばかりの人やフリーランサーとして働き始めたばかりの人にありがちですが、無理してコンサルタント募集の案件を受けた挙句、相手の期待値よりも低いパフォーマンスしか出せないと、相手のあなたへの印象は一気に悪化します。「無理してやったんだから、努力を買ってほしい」と考える方がいれば、それは甘えともいえます。自分としてはいつも頑張っているつもりなのに相手からの評価が今一つだと感じる場合、このパターンに陥っているケースが珍しくないのです。
さらに、相手が重視しているポイントを外した部分のクオリティを高めることに腐心しがちな人も要注意だと言えます。これは、物事へのこだわりが強い方ほど陥りやすい罠です。期待されない部分のクオリティをいくら高めても、相手は決して良い印象を抱いてはくれません。本来注力すべきポイントが疎かになってしまっては、低評価は避けようがないのです。反面、クライアントのマネジメント層のニーズと自分のこだわりとのマッチングがたまたまうまくいき、思いがけず高い評価を受けるケースもあります。その時々で相手からの評価にムラがある場合、このパターンに嵌っている可能性があります。
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相手の期待値を効果的にコントロールするためには?
相手の期待値を適切にコントロールすることの重要性が理解できたところで、具体的にその方法を押さえておきましょう。ポイントは次の3つです。
(1)プロジェクトを引き受ける前に、現実的なゴールを設定して相手と合意しておくこと
これは、現時点でそれなりの評価を受けていると自負している人にも押さえておいて欲しいポイントです。常に相手の期待値を上回るパフォーマンスを出すようになると、否が応でも周囲の期待値が高まりすぎ、結果的に期待に添えないケースが散見されるようになります。せっかく高い評価を受けたのに、その結果今度は評価が一気に崩れるリスクが高まるというのは皮肉な話です。
そこで、プロジェクトに着手するに先立ち、どのレベルのアウトプットを出すのか、予め相手、特にクライアントのマネジメント層といったキーマンレベルの人と認識の摺り合わせをしておきます。相手が一方的に期待値を上げすぎたために適正なレベルのアウトプットを出しても評価が低くなる、という状況に陥るのを回避するのです。クライアントであれ社内のマネジメント層であれ、過度な要求をされた場合は、理由を述べた上で、そこまでの要求を受けると却って相手に迷惑を掛けることになりかねない旨を伝えることも必要です。
(2)できない可能性があることは、決してできるとはコミットしないこと
チャレンジングなプロジェクトをしたいと考え、「できます」、「やります」と宣言して受けた挙句、後になって「やっぱりできませんでした」と報告するのは、相手の期待値を裏切る最悪の行動になります。能力面・スケジュール面で自分のパフォーマンスに不安があるならば、予め期待値を下げておくため案件を引き受ける前に必ず相手にリスクを伝える必要があります。日頃から自分の生産性を把握しておき、スケジュール管理ができていることも大切です。
そもそも、できることや得意なことに注力してアウトプットのクオリティを高める方が、相手からの評価は確実に高まります。例えば、ERPに精通している人ならば、ここを軸足にして業務効率化や業務改善のコンサルティングに携われば、高い評価を受けられる可能性は高まります。得意分野・できる分野に軸足を確保した上でチャレンジングなプロジェクトをするのがお勧めです。
(3)不得意な案件を極力回避すること
極めてシンプルな話ですが、苦手な募集案件を引き受けるほど、相手の期待値を下回るアウトプットに終わるリスクが高まり、高い評価を得られる可能性は低くなります。したがって、不得意な案件は極力引き受けないようにするべきですし、基本的に高いパフォーマンスを発揮できる案件を既に持っている方は、不得意な案件を引き受けねばならない可能性は低いものです。
それでも、立場上どうしても不得意なプロジェクトを引き受けざるを得ないケースもあるでしょう。その際は、必ず相手には自分がそのプロジェクトを受けるリスクを伝え、期待値を下げておくようにします。
資格試験などを除けば、他人からの評価はそもそも相対評価であることが一般的です。端的に言えば、評価する側が抱いた印象次第だと言えます。コンサルティングファームの場合は、フィーやネームバリューと比べてパフォーマンスが満足できるものだったか、以前依頼した他のファームやフリーランスのパフォーマンスと比べて気が利いているか、クライアントはそのような観点(相対評価)でコンサルタントを眺めています。
常にベストのパフォーマンスを出す、あるいは価格を低く抑える、これらに比べ、相手の期待値を適正にコントロールする方が、クライアントからの評価を上げる手法としては遥かに効果的であり、リスクも低くなります。社内外からの評価に満足できておらず、その原因が何かわからないと悩んでいる方は、ぜひ一度このExpectation Controlの考え方を採り入れてみてはいかがでしょうか。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)