<プロ監修>フリーランスが案件を安定して受注する方法とは

最終更新日:2021/04/09
作成日:2016/11/24

独立・起業し、フリーランスや個人事業主のコンサルタントとして働いたことのある方にとって、案件やプロジェクトをいただけるありがたみは説明するまでもありません。特に独立・起業して間もない頃は、クライアントから案件やプロジェクトをいただけたらまずは積極的に受けたいと思うのではないでしょうか。フリーランスや個人事業主の方が業務委託を受ける際、キャパオーバーにならないための案件やプロジェクトの受注方法について、ポイントをお伝えします。

 

目次

■成功しているフリーランスの受注方法を分析
(1)成功しているフリーランスの特長は
(2)自己分析で自分のパターンを見つける
(3)成功しているフリーランスに共通するもの

 

■二つ返事で仕事を受けない
(1)高単価、高収入案件には厳しい条件も?
(2)紹介案件がスキルマッチしているのか
(3)契約書を取り交わし、不利のない契約締結を

 

■許容水準を設定して案件やプロジェクトの受注を判断する
(1)複数の案件を円滑に回していくには
(2)短期と中長期の視野を持つことの重要性
(3)情報不足を補い、正確性を高めてクライアントにもアピール

 

■目の前にある仕事を大切にする
(1)紹介案件を通じて信用構築する
(2)一つの信用が選択肢を増やす

 

 

※本コラムは、2021年4月09日に「信用第一!フリーランスや個人事業主のコンサル案件やプロジェクトの受け方」を再構成したものです。
※本コラムは、営業力・マーケティング力支援、経営企画業務支援などを行なうコンサルタントが監修しています。

 

 

成功しているフリーランスの受注方法を分析

(1)成功しているフリーランスの特長は

成功しているフリーランスは、成功を納得させる理由を必ず持っているものです。

その理由は人それぞれですが、人並み外れた専門分野がある、ユニークな営業活動を展開している、対人コミュニケーションが群を抜いて上手、何をやるにしても徹底的にやるなど、必ず成功する理由(=特長)を持っています。

反面なかなか成果の出ないフリーランスは、首尾一貫した動きができていない、何をやるにも中途半端である、周囲の成功事例に翻弄されている、自分自身のアピールが出来ていないなど、こちらにも上手く行かない理由があるようです。

 

では、成功しているフリーランスに共通する特長とは何でしょう。

それは、自分自身の特長を最大限活かしている、あるいはその特長に特化したパフォーマンスを実践している点です。

成功しているフリーランスは、受注方法についても必ずと言って良いほど「得意のパターン」を持っています。

会社員時代の人脈を活用している、マッチングサービスやエージェントを活用している、SNSのネットワークを構築しているなど。

共通している特性として興味深いのは、複数の手法をいくつも持ち合わせている人はごく少数だということ。ほとんどの人が徹底して自分自身の得意な手法に特化して、さらに磨きを掛けているのです。

 

一方で、なかなか成果の上がらないフリーランスは、色々な手法に手を出し過ぎているケースが多いようです。フリーランス仲間の成功事例を鵜吞みにして、得意でもない手法にあえて取り組んだりといったケースをよく目にします。

自分には何ができて何ができないかをしっかり理解した上で、自分に最適なパターン、言い換えれば自分自身の「最短距離」を歩めるか否かを見極めること。これが成功する人となかなか上手く行かない人の差といえるでしょう。

(2)自己分析で自分のパターンを見つける

成功しているフリーランスの受注手法に典型的なパターンや手法はありません。何かを模倣するのではなく、まず自分自身の得意なやり方や集中して取り組めるやり方を見つける必要があります。

自分に最適な手法を見つける方法として、自分自身をテーマに「SWOT分析」を行なってみることをおすすめします。戦略立案プロセスの環境分析の手段として良く知られる手法です。

ここで重要なのは、自分自身の弱み・脅威に気を取られることなく、強み・機会を徹底して伸ばすことに力点を置くことです。

その上で強み・機会を活かせるターゲットを設定。そのターゲットに最適なアプローチ手段を明らかにし、それを実直に実行することに尽きます。

 

成功しているフリーランスは、自分自身の強み・機会を最大限活かしているので、周囲から見るとそのパフォーマンスに一切のブレも感じません。それが「なるほど」と思わせる裏付けになっているのです。

上手く活躍できていないフリーランスは、自分自身の弱み・脅威に翻弄されてしまい、それを克服すること自体に躍起になってしまっていることが多いようです。

◆「SWOT分析」詳細はこちら:<プロ監修>マーケティング戦略の代表的フレームワークとは

(3)成功しているフリーランスに共通するもの

成功しているフリーランスの受注方法が千差万別であることはお伝えしましたが、共通する特長として「固定客が多い」ことが挙げられます。

フリーランスとして独立経験があれば、良く知られている「1:5の法則」が示す通り、新規客の獲得コストは既存客の5倍程度を要することは実感できると思います。

フリーランスとして成功している人はそのことを十分理解しているので、顧客への継続的なアプローチやフォローに多くの力を注いでいます。

固定客から安定した受注を獲得するために、常に顧客視点で行動し、顧客の満足度を最大限に高める努力を惜しまないことは、フリーランスとして成功する秘訣の一つであることは間違いないでしょう。

 

 

二つ返事で仕事を受けない

(1)高単価、高収入案件には厳しい条件も?

1つめのポイントは、仕事を二つ返事で受けないということです。

条件のいいコンサル案件やプロジェクトの話をもらった際、二つ返事で受けてしまった経験はないでしょうか?高収入のコンサル案件やプロジェクトは確かに魅力的に映るかもしれませんが、そのようなコンサル案件やプロジェクトこそ受注するかどうかは慎重に吟味するべきです。

高単価の案件には、要求品質・期待値が過度に高い、納期がひっ迫している、極めて特殊な能力・ネットワークを要するなど、いずれも高いハードルが設定されてるケースがほとんどです。

案件の打診を受けたら、まずは高単価である理由を冷静に探りましょう。

(2)紹介案件がスキルマッチしているのか

独立して活動しているフリーランスや個人事業主の場合、エージェントなどから委託業務を受注するのとは別に、人脈をたどっての紹介などで案件やプロジェクトを獲得することも多いでしょう。そんな時、紹介者への配慮もあり二つ返事で「やります!」と回答したくなるかもしれません。

 

しかし、契約したのはいいけれど、蓋をあけてみたら聞いていた話と違ってびっくり。でもすでに契約してしまっているので今さら断ることもできない…ということも起きないとは言えません。

そのような事態に陥り結果的に信用を損なうことにならないためにも、しっかりと案件やプロジェクトの内容を吟味し、「自分がクライアントに対して価値を提供できるか」という原点に立ち返り、受注を判断することがベターでしょう。

 

また、「仕事の効率」を最優先に考えると自身の得意分野に特化することが最も望ましくはあるものの、ある程度周辺分野の案件にも取り組むことで、得意分野の幅が広がります。

スタートアップ期や稼働率に余裕のあるタイミングでは、周辺分野の案件でも積極的に引き受けスキルアップを図ることもおすすめします。

(3)契約書を取り交わし、不利のない契約締結を

フリーランスとして活動していると、中には契約書の作成がなく口頭のみで契約を交わしてしまい、のちのちトラブルに見舞われるというケースも少なくありません。

書面が残っていないと契約内容を立証することはとても難しいため、業務委託契約書などのエビデンスを残し、どのような内容の契約を交わしているかをしっかりと明記、相互で把握できるようにしておきましょう。

 

なお、契約書を必ず交わすために、ご自身で契約書のひな形を準備しておくことをおすすめします。案件の範囲、期間、報酬、情報秘匿、契約解除などの基本条項を用紙1枚にまとめる程度で構いません。

クライアント側で契約の意思がみられない場合は、契約書のひな形を提示して契約を促すことも重要な行為です。

 

またフリーランスは労働基準法が適用されず不利になりやすいと思われがちですが、フリーランスにも適用される下請法はフリーランスの利益保護を目的としています。事前に十分理解した上で契約にのぞむようにしましょう。

 

契約に関する知識としては、委任契約請負契約の違いについても理解が必要です。簡単に言うと、委任契約は業務の行為に対する契約で、請負契約は業務の完成に対する契約になります。

従って、業務の完成を求められるか否かという点で、請負契約は負荷が高くなるため出来る限り委任契約で契約することが望まれます。

ちなみに、業務委託契約書の「委託」とは、法律で定められた用語ではありませんので、必ず契約書の書面に委任か請負かを明記しておくことをおすすめします。

◆「下請法」「委任契約/請負契約」詳細はこちら:フリーランス必見!業務委託など契約形態の違いや独立時の注意点

 

許容水準を設定して案件やプロジェクトの受注を判断する

(1)複数の案件を円滑に回していくには

あらかじめ自分の中で明確な受注基準を設けておきましょう。

フリーランスや個人事業主が案件やプロジェクトを受ける際、判断ポイントは得られる収入がどのくらいになるかという観点だけではありません。下記のような観点から総合的に判断しましょう。

 

・内容そのものに対して応えることができるかという内容的な観点
・その案件やプロジェクトに対して費やすと予想される時間やコストの観点
・納期に対するプレッシャーなどから受けるストレスの観点

 

最後にある精神面も忘れてはならないポイントです。

 

それぞれの観点について自分にとっての許容水準を設定し、それを満たしているかどうかによって案件やプロジェクトの受注を決める習慣をつけましょう。するとストレスなく仕事を推進していくことができるのではないでしょうか。

 

どれか1つでも基準を満たさないものがあった場合には、たとえ後ろ髪をひかれたとしても、シビアに案件やプロジェクトを受けないという判断をすることも求められます。

本当はその案件を受託してしまうと時間的な許容水準を超えてしまうとわかっているのにもかかわらず、収入面で魅力を感じ「まあ、なんとかなるだろう」とタカをくくって受注するようなことはできる限り避けましょう。キャパオーバーにつながるリスクが高まります。

 

またフリーランスで活動する限り、案件に関わる業務以外に事業を継続するために必要な業務も発生します。例えば、確定申告決算申告などの税務業務、社会保険に関する手続き、日々の雑務など。これらの業務の時間も必ず確保しなければなりません。

仕事を効率的に行なうためにはタイムマネジメントも重要になりますので、アイゼンハワーマトリクス(時間管理マトリクス)などを活用して、常に緊急性と重要性を尺度として、業務のプライオリティ付けを行なう必要があります。

タイムマネジメントがしっかりできていれば、常に自分自身の許容水準を把握することが可能となります。そうなれば、案件の打診があった際にも瞬時に的確な判断ができるようになるでしょう。

◆「アイゼンハワーマトリクス」詳細はこちら:<プロ監修>プロジェクトのタイムマネジメント!マネージャーが知るべき基本

(2)短期と中長期の視野を持つことの重要性

働き方のスタンス次第ではあるものの、常に多少の余裕を持って働けるくらいの方が、体力的にも精神的にも自分のパフォーマンスを最大化できます。

結果的にいい仕事ができて、次の案件やプロジェクトの話にもつながりやすいため、短期的な収入だけに目を向けず長期的な展望を意識することも大切です。

特にフリーランスとして数年が経過し複数案件をこなすようになると、「まだまだやれる」という自信とゆとりが生まれます。そういった時こそ足元を見て正確な判断ができるよう心掛けましょう。

(3)情報不足を補い、正確性を高めてクライアントにもアピール

案件受注の可否を判断する際に事前情報だけでは不十分な場合、必ずクライアントに確認して不足情報を補っておきましょう。受注の可否に関する自らの判断の正確性を高めることはもちろん、それだけ真剣に受注を検討してもらえている、という印象を相手に与えることにもつながるので、決してマイナスにはならないはずです。

 

また、独立後間もない時期は、落ち着いて交渉に臨むことも至難の業です。そんな時には基本に立ち返り、「5W1H」をひとつひとつ確認しましょう。

面談の場では、記憶に頼らず、必ず要点をメモに残すことも忘れないようにしましょう。

◆「5W1H」詳細はこちら:<プロ監修>マーケティング戦略の代表的フレームワークとは

 

目の前にある仕事を大切にする

(1)紹介案件を通じて信用構築する

フリーランスや個人事業主にとって「紹介」案件は重要です。実際、最初の受注は知人からの紹介だったという声も多く聞きます。看板や実績がない状態で仕事を始める際、紹介がひとつのよりどころになるのです。

フリーランスや個人事業主がビジネスを拡大していくためには、無理に新規の営業を仕掛けていくよりも、既存のクライアントから最大限の信頼を勝ち取ることが何よりも大切です。

 

自分の実力や性格、人となりを知ってもらえている既存のクライアントとは、やはり仕事がスムーズに進みます。それを踏まえた上で次の案件やプロジェクトを紹介してもらえますし、他のクライアントへつないでもらえるかもしれません。

良好な関係値にあるクライアントからの紹介案件は、自分の適性に合った案件である場合が多いことから、クライアントにも満足してもらえる成果を上げられる可能性を持っています。

満足してもらえたらさらにそこから紹介の輪が広がるかもしれません。そのような観点から見ても、紹介案件の「案件の質」は高いと言えます。

(2)一つの信用が可能性を増やす

フリーランスにとっての最大の営業活動は、とにかく目の前にある案件やプロジェクトに打ち込んでコミットを果たすこと、これに尽きます。

携わっている案件やプロジェクトで評価されれば、次の契約につながったり、別のお客様を紹介してもらえたり、良質な案件やプロジェクトに囲まれながらビジネスを発展させやすくなります。また自身が望んでいた高度なスキルを取得するための条件や土壌も構築されやすくなることでしょう。

 

とにかく目の前の案件やプロジェクトに一生懸命打ち込んで、結果として評価してもらうこと。そして良質な案件やプロジェクトの獲得を積み重ねていくことが、あなた自身のスキルアップにもつながります。このサイクルを手に入れることがとても重要です。

 

 

独立、起業し、フリーランスや個人事業主として働いていることは、仕事とプライベートのバランスを調整できる立場にあることも意味しています。ワークライフバランスの比率がベストな構成になるように心掛けて、人生の満足度を高めていけるといいですね。そのためにも、しっかりと自分なりの受注の基準を設け、仕事をやみくもに受けてしまうのではなく、時には断る勇気も必要です。

 

ビジネスを発展させていくためには、まずは目の前にある案件やプロジェクトできっちり成果を出す。そして既存のクライアント経由で良質な案件が飛び込み、望むスキルの向上とキャリアアップにつながる、そんなサイクルが作っていきたいですね。

 

< 監修者プロフィール >
大野 晴司(おおの せいじ)

東京都立大学(現首都大学東京)卒業後、日産自動車で国内のマーケティング部門や系列ディーラーでの営業マンや本社販促部署長などを経験。中小企業診断士資格取得のために退職、2003年3月資格取得。その後、マーケティングリサーチ会社、自動車関連メーカーを経て、2008年にビズ・エキスパート株式会社を設立。神奈川・東京の中小・中堅企業の営業力・マーケティング力支援のほか、経営企画業務、新規事業支援を主な事業として活動中。また、企業向けセミナー講師なども務める。

ビズ・エキスパート株式会社:http://b-ex.biz/index.html
プロフェッショナリズムインタビュー:https://freeconsultant.jp/workstyle/w020

 

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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