個人事業主は事業用口座が必要?分けるメリットや注意点、開設手順を解説
最終更新日:2025/06/06
作成日:2016/06/17
- ・「個人事業主は、事業用に口座を分けるべき?」
- ・「屋号付き口座って何?どんなメリットがあるの?」
こんな疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。
事業を始めたばかりのうちは、私用口座のままでも問題ないと思いがちですが、口座を分けておくことで経理作業や資金管理を効率化できます。
この記事では、個人事業主が事業用口座を開設するメリットや注意点、銀行を選ぶ際のポイント、さらに開設手順までをわかりやすく解説します。
これから開業する方や、途中から口座を分けたい個人事業主の方にも役立つ内容です。ぜひ参考にしてください。
目次
■事業用口座にはどんな種類がある?
(1)個人名義の事業用口座とは
(2)屋号付き口座とは
■個人事業主が事業用口座を開設するメリット
(1)経理・会計を効率化できる
(2)顧客や取引先からの信頼性が高まる
■個人事業主が事業用の口座を開設する際の注意点
(1)必要書類の確認を怠るとスムーズに開設できない
(2)銀行によっては開設を断られる場合もある
■店舗型銀行とネット銀行の違いは?
(1)店舗型銀行の特徴
(2)ネット銀行の特徴
■事業用口座の銀行を選ぶ際のポイント
(1)各種手数料を把握する
(2)利便性を確認する
■個人事業主が事業用口座を開設する手順
(1)銀行の選定
(2)必要書類の準備
(3)申し込み・審査・開設完了
■個人事業主が口座を途中から分ける場合のポイント
(1)過去の取引と今後の管理ルールを整理する
(2)クレジットカードや会計ソフトの連携を見直す
■個人事業主の口座に関するよくある質問
(1)事業用口座はいつ作るべき?
(2)法人口座と屋号付き口座の違いは?
個人事業主の口座は事業用と分けるべき?

個人事業主は、事業用と個人用の口座を必ずしも分ける必要はありません。
ただし、口座を分けない場合は、取引明細で生活費と事業経費が混在してしまい、経理上の負担が大きくなりがちです。
そのため、実務では多くの個人事業主が口座を分けて管理しています。開業初期から事業用の口座を用意することで、経理処理の負担を軽減しやすくなります。
なお、プライベートの口座を事業で利用すると制限がかかる場合もあるため、注意が必要です。
こうした事情から、用途を明確に分けた事業用口座を用意しておくと良いでしょう。
事業用口座にはどんな種類がある?

個人事業主が事業用に使える口座には、「個人名義の事業用口座」と「屋号付き口座」の2種類があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
(1)個人名義の事業用口座とは
個人名義の事業用口座とは、氏名のみで開設する事業専用の銀行口座です。
プライベート口座と同じ名義になるため、同一銀行で複数口座を持つ場合は、通帳やカードの管理に注意が必要です。
私用との混同を避けるために、通帳メモ欄の活用や会計ソフトとの連携といった工夫が求められます。
なお、銀行によっては個人名義での事業用の口座開設を受け付けていない場合もあります。
(2)屋号付き口座とは
屋号付き口座とは、屋号と氏名を組み合わせた名義で開設する銀行口座です。
口座名義は「屋号+氏名」や「氏名+屋号」の形式が一般的で、「屋号のみ」での開設は原則できません。
通帳などに屋号が表示されるため、プライベート口座と明確に区別ができ、事業の取引管理に役立ちます。
開設には、税務署に提出する開業届に屋号が記載されている必要があります。
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『フリーランスは開業届が必要?メリットや書き方、提出タイミングを解説』
個人事業主が事業用口座を開設するメリット

ここからは、個人事業主が事業用口座を開設するメリットをご紹介します。
(1)経理・会計を効率化できる
事業用口座を開設すると、収支管理が明確になり、経理や確定申告にかかる手間を大幅に削減できます。
一つの口座に集約されることで、事業資金の動きを把握しやすくなり、私的な支出が紛れ込むのを防ぐ効果もあります。
加えて、税務調査時の負担を軽減し、不要な疑念や調査の拡大を防ぐ有効な備えとなるでしょう。
さらに、会計ソフトと口座を連携すれば、取引データを自動で取り込めるため、仕訳の記録作業の手間や入力ミスのリスクも抑えられます。
日々の経理業務を効率化し、本業に専念できる時間を確保できる点は、個人事業主にとって大きなメリットです。
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(2)顧客や取引先からの信頼性が高まる
屋号付きの事業用口座は、顧客や取引先からの信頼性向上に繋がります。
口座名義に屋号が含まれることで、個人名義よりも事業の実態がより明確に伝わり、安心感につながるためです。
特にネットショップやオンラインサービスのように、不特定多数との取引が多い場合は、屋号付き口座が有効です。
信頼性の向上は、継続的な取引や新規顧客の獲得にも良い影響をもたらします。
個人事業主が事業用の口座を開設する際の注意点

事業用口座の開設には、いくつかの注意点があります。開設をスムーズに進めるためには、以下の内容も事前に理解しておきましょう。
(1)必要書類の確認を怠るとスムーズに開設できない
事業用口座の開設には、本人確認書類に加え、開業届の控えや事業内容がわかる資料など、事業実態を証明する書類の準備が必要です。
申込から開設までには、通常1〜2週間程度かかるのが一般的ですが、書類の不備や記載漏れがあると、審査に時間がかかり、手続きが遅れる場合もあります。金融機関によっては、審査の過程で追加の書類提出を求められる場合があるでしょう。
特に店舗型の銀行では確認事項が多くなる傾向があるため、事前に各銀行の公式サイトや窓口で、必要書類や所要日数をしっかり確認しておくと安心です。
(2)銀行によっては開設を断られる場合もある
事業用口座は、すべての銀行で必ず開設できるわけではありません。審査基準は銀行ごとに異なり、申込内容や事業実態によっては、開設を断られる場合もあります。
メガバンクなどの店舗型の銀行では、開設できる支店が事業所の近隣に限定されている場合があるため、所在地の条件についても事前に確認しておきましょう。
また、近年は、マネーロンダリングや不正利用防止への対応として、金融機関全体で審査基準が以前よりも厳しく見直されている状況です。
複数の銀行を比較・検討しながら進めると、よりスムーズに事業用口座を開設できるでしょう。
店舗型銀行とネット銀行の違いは?

事業用口座を開設できる銀行は、大きく分けて「店舗型銀行」と「ネット銀行」の2種類に分類できます。
(1)店舗型銀行の特徴
店舗型銀行は、知名度が高く、社会的な信頼性も高いため、取引先からの信用を得やすいことが強みです。口座開設や各種手続きを対面で相談でき、安心感があるのも特徴です。
さらに、店舗型銀行では、ビジネスローンや融資相談など、資金調達面でのサポートも充実しています。
一方で、ネット銀行と比較すると、各種手数料は高めで、口座開設まで時間がかかる傾向があります。
(2)ネット銀行の特徴
ネット銀行はオンラインで手続きが完結するため、忙しい個人事業主でも手軽に利用できます。また、店舗型銀行より、振込手数料やATM利用料が安い傾向にあり、コストを抑えやすい点がメリットです。
さらに、会計ソフトとの連携にも対応している場合が多く、日常的な資金管理がしやすいという利便性もあります。
ただし、実店舗を持たないため、対面での相談ができない点はデメリットといえるでしょう。直接説明を受けたい人や、手続きを一人で進めることに不安がある人には不向きな場合もあります。
事業用口座の銀行を選ぶ際のポイント

事業用口座を開設する際は、コストと利便性のバランスを見て銀行を選ぶことが重要です。
ここでは、銀行選びの際に押さえておきたいポイントを解説します。
(1)各種手数料を把握する
銀行口座では、振込やATM利用のたびに各種手数料が発生するため、基本的なコストをしっかり理解しておくことが重要です。
特に確認しておきたいのは、以下のような手数料です。
- ・振込手数料(他行・同行)
- ・ATM利用料(入金・出金)
- ・口座維持手数料
- ・両替手数料
取引回数が多い業種では、年間で数千円から数万円の差が出ることもあります。各銀行の手数料を比較し、取引回数に合ったコストバランスを見極めましょう。
(2)利便性を確認する
銀行を選ぶ際は、使い勝手や他サービスとの連携いった利便性も重要です。
特に以下のポイントを確認しておくと、日々の資金管理がスムーズになります。
- ・ネットバンキング(オンラインでの口座管理)の使いやすさ
- ・会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)との連携可否
- ・自宅や事業所の近くにATMや支店があるか
- ・利用可能時間が自分の事業スタイルに合っているか
こうした利便性を踏まえて、自分の事業スタイルや業務フローに合った銀行を選ぶことが、資金管理の効率化や経費の最適化につながります。
個人事業主が事業用口座を開設する手順

個人事業主が事業用口座を開設するには、銀行の選定から審査完了まで、いくつかのステップがあります。
以下では、スムーズに口座を開設するための具体的な流れを解説します。
(1)銀行の選定
まずは、自分の事業に合った銀行を選定することが重要です。
銀行ごとに手数料やサービス内容、必要となる書類が異なるため、「銀行選びのポイント」や「各銀行の特徴」を参考に比較・検討を行いましょう。
開設したい銀行が決まったら、公式サイトや窓口で必要書類や申込方法を確認し、次の準備に進みます。
(2)必要書類の準備
次は、銀行の条件に合わせて、必要な書類を揃えましょう。不備があると審査が遅れる原因になるため、提出前に漏れがないか再確認することが大切です。
主に必要となる書類は以下の通りです。
- ・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- ・個人事業主であることを示す書類(税務署の受領印がある開業届の控え、確定申告書の控えなど)
その他にも、屋号付き口座を開設する場合は、開業届に屋号が記載されている必要があります。
(3)申し込み・審査・開設完了
必要書類を揃えて、申し込みが完了すると、銀行による審査が行われます。
審査では、事業の実態や提出書類の内容に加え、信用面や取引の目的なども含めて、総合的に判断されます。
審査期間は各銀行の混雑状況によっても変動しますが、おおよそ数日~2週間程が目安です。
無事に審査を通過すると、通帳やキャッシュカードが発行され、手元に届き次第、事業用口座の利用を開始できます。
個人事業主が口座を途中から分ける場合のポイント

個人事業を始めた当初はプライベートの口座を使っていたものの、後から事業用口座に分けたいと考える方も多いでしょう。
ここからは、開業した後に、途中から口座を分ける際のポイントを解説します。
(1)過去の取引と今後の管理ルールを整理する
個人事業主が口座を途中から分ける場合は、まず過去の取引を見直し、事業に関係する項目を洗い出す作業が必要です。
私用口座の取引明細をさかのぼり、一つひとつの内容が事業用か個人用かを分類し直しましょう。
この工程を行うと、どの取引を新しい事業用口座に移行すべきかが明確になります。
さらに、今後の資金管理が乱れないよう、「一時的に立て替えた経費は月内に精算する」など、日々の運用ルールを事前に決めておくことも大切です。
(2)クレジットカードや会計ソフトの連携を見直す
口座を分けた後は、クレジットカードや会計ソフトの設定も必ず見直しましょう。
たとえば、会計ソフトに旧口座の情報がそのまま残っていると、入出金が正しく仕訳されず、経費や売上が実情とズレてしまう恐れがあります。
事業用口座を開設したら、会計ソフトに新口座を登録し、不要なデータを整理することが大切です。
また、事業用に利用するクレジットカードも、新しい口座に紐づけておくと資金管理がスムーズになります。
会計ソフトとの連携後も、明細や仕訳内容は定期的に確認し、誤分類や記録漏れがないように注意しましょう。こうした小さな積み重ねが、正確な経理体制づくりにつながります。
個人事業主の口座に関するよくある質問

個人事業主として口座を管理する中で、よくある疑問についても回答します。
(1)事業用口座はいつ作るべき?
個人事業主が事業用口座を開設するのに最適なタイミングは、開業後すぐです。
これは、開業初期から事業資金を明確に管理でき、確定申告などの経理作業も効率的に行えるためです。
また、税務調査の際にも、経費や売上の根拠を示せるため、指摘を受けるリスクを減らせます。
最初から口座を分けておくことでトラブルや混乱を防げるため、できるだけ早い段階での開設をおすすめします。
(2)法人口座と屋号付き口座の違いは?
法人口座とは、法人登記済みの会社が開設できる銀行口座です。
名義は法人名となり、対外的な信頼性は高いですが、開設には登記簿謄本や印鑑証明書などが必要で、審査も厳格に行われます。
一方、屋号付き口座は個人事業主向けの口座で、個人名に屋号を加えて開設します。あくまで個人口座の一種であり、法人格はありません。
これらの違いを理解しておくと、将来的に法人化を検討する上で役立つでしょう。
まとめ

個人事業主にとって、事業用口座の開設は、経理の効率化や収支管理の明確化、税務リスクの軽減にもつながる重要なステップです。
銀行選びや必要書類の準備、開設後の運用まで丁寧に対応することで、安心して事業を進めるための基盤が整います。
これから開業する方も、すでに始めている方も、 口座の使い分けをきっかけに、よりスムーズな事業経営を目指してみてはいかがでしょうか。
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