出来るコンサルタントの強い味方 ”方眼ノート”の使い方
作成日:2016/10/31
結果を出せる戦略コンサルタントは、なぜ方眼ノートを愛用するのか?
方眼ノートの活用方法を紹介した本がベストセラーになるなど、方眼ノートのビジネスシーンへの活用が、俄かに注目されているようです。実際、活躍される戦略コンサルタントの多くが方眼ノートの愛用者であり、米国のアイビーリーグ校での使用も知られるようになってきました。また、フリーランスや個人事業主として活躍される多くの方も活用されているようです。
外資系の戦略コンサルティングファームに入社すると、業務分析や企画の段階でPCを使うな、方眼ノートを使って徹底的に考えろ、と指導されます。極端な話、PCは方眼ノートの上で検討され整理された分析情報を最後に清書するための道具に過ぎません。
そもそもPCは、膨大な情報に優劣を付けて整理したり、ロジックを組み立てたりするのには適さない道具です。紙の上で問題を提起し、情報を整理してから結論までのフローを導き出すのが、最も効率的です。戦略コンサルタントの多くが方眼ノートを愛用する理由は、方眼を用いて情報を整理すると、コンサルティングに不可欠のロジカル思考が、自ずと出来るようになるためです。
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まずは学生時代の板書のイメージを捨てる
学生時代のノート取り、板書はインプットのみしか意識していません。他方、できる戦略コンサルタントの方眼ノートの使い方には共通点があり、それはアウトプットを意識した使い方をすることなのです。
クライアントからのヒアリング内容や会議内容をメモ(インプット)するのみならず、それらの情報を自分なりに解釈し、ロジカル思考で次のアクション(アウトプット)を導き出すのです。このようなアウトプットを意識した分析・思考作業を、戦略コンサルタントは方眼ノートの上で常に行っていますし、ITコンサルタントの方も使っていらっしゃるのを見掛けたりします。
アウトプット志向の方眼ノートの活用方法については、戦略コンサルタントやフリーランスのコンサルタントも人それぞれですが、最もポピュラーなのは、「黄金の3分割」と言われるものです。これは、事実と解釈は峻別すべきことを、強く意識したものです。商談や会議に臨むに先立ち、A4サイズの方眼ノートを用意します。見開き一杯でA3サイズにして、縦に3分割してみましょう。基本作業は、たったこれだけです。人間の思考はフレームに大きく左右されますので、あらかじめ情報が記載されたフレームを作って、思考を整理しやすい状態にするわけです。
ここでのポイントは、3分割されたフレームに、左から「事実(得た情報:インプット)」「解釈」「行動(アウトプット)」を記入してゆくことです。どのような業界の、どのような仕事であれ、アウトプットを生み出すには、「事実」(得た情報)を「解釈」して、「行動」する(アウトプット)、という3段階のプロセスを必ず踏みます。ところが一般的な現実は、事実と意見(解釈)とをごちゃ混ぜにしていたり、解釈のプロセスを端折っていたりすることが多いものです。3段階のプロセスをキチンと経ないと、言わずもがな、効果的なアウトプットを生み出すことは出来ないのです。
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戦略コンサルタントの具体的な方眼ノートの使い方
戦略コンサルタントはA4サイズの方眼ノートを用いるのが主流です。フリーハンドでもフレーム分割の線を引きやすく、図やグラフなども描きやすいのがメリットです。方眼ノートは見開きで、横長のA3サイズとして使います。人間の視界は縦より横に広いので、横長で使った方が一目で全体把握がしやすく、理に適っています。1見開きで、1テーマとして使います。
まず最上部には、「タイトル」と「結論」を記入します。次に縦に3分割した「事実」「解釈」「行動」フレームの外側上部に、商談や会議の「論点」を予め書いておきます。「なぜ、○○○であるのか?」という感じでOKです。これは、論点から外れた議論を見極め、必要なことだけメモできるようにするためです。「結論」の部分には、以下で述べる「事実」から自分の「解釈」を経て、具体的な「行動」まで導き出せたら、最後に一言で纏めた結論を記載しておくようにします。後でノートを見返した際、どのような「結論」に至ったのかをすぐに確認できるようにするためです。3つ程度の結論のポイントを書いておくと、より思い出しやすくなります。
下記に、「事実」「解釈」「行動」フレーム内に記載する内容についてまとめます。
【事実】
商談や会議での発言や、ヒアリングした内容を記入します。後から振り返りやすいように、数字や固有名詞を具体的に記入するのがコツです。形容詞や副詞は、抽象的な表現になるので極力使わないようにします。発言者がわかる印を付けておくのもポイントです。発言は、語尾までシッカリそのまま書いておくのも大切です。語尾のニュアンスに、発言者の本音が出るためです。例えば、「8月末までにはカットオーバー出来ます」と「8月末までにはカットオーバー出来るようにします」は、似ているようですが、受け取る方としては、微妙に確度が違うことが分かるでしょう。
【解釈】
ここには「事実」を踏まえ、思ったことや感じたことを記入します。重要に感じたことや、疑問に思ったことも書き込みます。ポイントは、元になっている左側の「事実」から、必ず矢印を引っ張っておくことです。さらに、「事実」と「解釈」の間だけでなく、「解釈」と「行動」との間にも因果関係の矢印を引っ張っておくと、「事実」→「解釈」→「行動」のフローでロジックが構築され、「行動」がロジカルなものになります。可能であれば、結んだ矢印の上に接続詞(なぜならば/要は/実際には/もし/場合によっては・・・など)を記入しておくと、よりロジックが明確になります。「解釈」は、黄金の3分割に慣れないうちは、商談や会議が終わってから記入しても構いません。
【行動】
「事実」の「解釈」を踏まえて、ネクストステップとしての「行動」を記載します。例えば、「8月15日までに○○にロシア法人税制の変更点を確認」、「至急××社に2W納期の前倒しが可能かを打診」といった感じです。ここのポイントも、数字や固有名詞を用いて、具体的なアクションプランとして落とし込むことで、これが確実なアウトプットに繋がります。もっとも、「解釈」と「行動」への記入は、「事実」への記入よりも少なくなるのが普通です。そのため、方眼ノートの使い方を勿体なく感じるコンサルタントの方もいることでしょう。しかし、それで良いのです。アウトプットを確実に、効率良く行うのが方眼ノート使用の目的なのですから。
なお、上記のほかに「欄外」という欄を設けることもポイントです。敢えて「欄外」を設けるのは、「タイトル」の論点から外れた発言や、雑談の中にも、ビジネスの種になる情報が含まれることも多いため、気になったことをメモしておくためです。
戦略コンサルタントは実際どんな方眼ノートを選んでいるのか
まず、先にも述べたようにA4サイズが定番で、これは億劫にならずに常に持ち歩ける限界の大きさなのです。ノートブックPCとほぼ同じ大きさで、どの鞄にも入るギリギリの大きさになります。ノートは大きい方が使いやすいのは確かですが、嵩張って、持ち歩きに支障が出たら、本末転倒になってしまいます。ペンは滑りが良い物を、お好み次第で、という感じです。
メーカーは、基本的に自分が気に入ったもの、相性が良いものが一番です。ビジネスで使うなら、定番のMOLESKINE社の方眼ノートを思い浮かべるかも知れません。シックな雰囲気で紙質も良く、書き味も滑らかですが、自腹で何冊も購入するには少々お高いことと、表紙がシッカリしている分、重く嵩張ることがやや難でしょうか。
因みに、国産のLIFE社ノーブルノート5mm方眼を備品にしている外資系戦略コンサルティングファームもあります。そして、方眼ノートは、クライアントやプロジェクト毎に買い換えましょう。ページ数が足りなくなれば、同じ種類のノートを新調しますが、仮にページ数が余っても、別のクライアントやプロジェクト向けに転用しないことがミソです。勿体ない気もしますが、情報が混在してしまうと、効果的に引き出せなくなってしまいますから、割り切りも必要です。
最後に一工夫、方眼ノートに皮カバーを掛けるのもお勧めです。ヒアリング中のクライアントの視線は、必然的にあなたの持ち物にも行きます。真っ先に目に入るのは、クライアントから一番近くに位置する方眼ノートです。印象の良いノートを使っていると、あなたの印象自体が良くなります。
事業主の方なら心当たりがあるでしょう。訪問してきたビジネスマンが綺麗にまとめられたノートを使用していたら、気にいるものです。ましてや、クライアントからのヒアリング内容を「事実」として記入してゆく訳ですから、良いノートを使うことは、相手に対する敬意を表すことにもなります。
方眼ノートを業務に効果的に活用するのは、完全に慣れの問題です。「黄金の3分割」を基本に、自分なりの工夫を加えても構いません。例えば、ノート上の「事実」「解釈」「行動」のフレーム幅を、自分の業務に使いやすく2:1:1と変えても良いのです。ただし、ロジック思考を妨げないように、「事実」→「解釈」→「行動」までの矢印を見やすく引っ張るのが肝です。使い続けると、自分の思考が、徐々にロジカルに、クリアになってくるのが実感できるでしょう。
戦略コンサルタントの方のみならず方眼ノートを使い始めると、今まで業務での抜け・漏れが多かった方が、ミスが減ったと言われることも多いものです。もっと早く、方眼ノートの使い方を知っておけば良かった、と思われることでしょう。コンサルタントの方のみならず早速、帰りに文具コーナーに寄ってみてください。人生が変わるキッカケになるかもしれません。
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)