独立・起業時の助成金、補助金活用術!
最終更新日:2021/04/02
作成日:2016/08/17
フリーランスのコンサルタントとして独立起業を考えたとき、大きな悩みと言えば資金調達ではないでしょうか。コンサルティングの仕事には自信があるけれど、資金調達は経験がない…という方も多いのでは。また資金をある程度用意しても、実際に創業して仕事を始めようとすると、オフィス賃借料やインフラ整備費など想定以上にコストがかさむこともよくあります。
起業前や起業して間もない時期の資金調達方法として、利用が広がっているのが補助金や助成金の制度。ここではフリーランスのコンサルタントとして独立起業するにあたって、活用したい助成金、補助金のノウハウを解説します。
目次
■独立や起業時に利用できる補助金・助成金とは?
(1)補助金・助成金は返済義務がない
(2)補助金・助成金はどこに申請すればもらえる?
■コンサルタントの独立起業に役立つ補助金・助成金とは?
(1)システム導入や設備投資に関わる助成金(経済産業省・中小企業庁)
(2)スタッフの雇用に関わる助成金
(3)地方自治体が実施する助成金
■補助金や助成金を申請するときに気を付けたいこととは?
(1)補助金、助成金は申請書類がカギ!審査に通りやすい書類とは?
(2)面接審査がある場合は、事前にしっかり面接対策をしておく
(3)手続きに手間と時間がかかることを前提に動く
■補助金・助成金だけじゃない!広がるベンチャー・起業家への支援策
(1)個人投資家によるベンチャー投資を後押しする「エンジェル税制」
(2)将来の起業を目指す人を増やすための「起業家教育」
※本コラムは、2021年4月02日に「独立や起業する人は要チェック!助成金をうまく活用しよう」を再構成したものです。
独立起業時に利用できる補助金・助成金とは?
独立や起業を支援するために、国や自治体ではさまざまな補助金や助成金の制度を設けています。まずは、補助金や助成金の仕組みや手続きの基本をおさえておきましょう。
(1)補助金・助成金は返済義務がない
会社設立のための資金調達といえば、日本政策金融公庫や銀行、地方自治体などによる融資制度を使うイメージがありませんか?ただし融資はあくまで借り入れですので返済義務が発生しますし、利息を支払う必要もあります。
一方で政府や自治体が設けている補助金や助成金は、返済の義務がありません。そこが融資と大きく異なる点です。創業したばかりでまだ資金に余裕がない、という場合には返済不要の補助金や助成金は非常に役立つはずです。
ただし補助金や助成金には申請できる事業者に一定の資格が設けられており、さまざまな手続きが必要です。申請できる資格や条件といった公募情報を事前にしっかり集めておくことが大切です。なお、制度によって「補助金」または「助成金」と表現が異なりますが、それによる違いはありません。
(2)補助金・助成金はどこに申請すればもらえる?
補助金・助成金は各省庁または自治体が主に実施しています。国では経済産業省や厚生労働省、中小企業庁などで目的の異なる補助金、助成金が用意されています。ただし年度によって実施有無や期間、内容が異なるので要注意。また、現在は新型コロナウイルスによる情勢の変化などもありますので、最新情報を各省庁のホームページなどでこまめにチェックしておくことをおすすめします。
経済産業省と中小企業庁では、中小企業向けの助成金や補助金の最新情報を「ミラサポPlus(※1)」というポータルサイトで発信しています。国だけではなく、地方自治体が独自に地域の起業を支援する補助金、助成金を設けている場合もあります。
※1:https://mirasapo-plus.go.jp/
なお、補助金、助成金の申請や審査に関わる実務を、民間の機関が請け負っている場合も。相談窓口を設けているケースもありますので、うまく活用しましょう。
コンサルタントの独立起業に役立つ補助金・助成金とは?
フリーランスなど個人事業主向けの補助金、助成金と言えば、「小規模事業者持続化補助金」(※2)がよく知られていますが、他にもさまざまな補助金・助成金の制度があります!そこでフリーランスのコンサルタントとして起業する場合、役立つと思われる補助金・助成金の一部をご紹介します。
※2:https://r1.jizokukahojokin.info/
※ここに掲載している情報は2021年3月時点のものです。ご利用の際は必ず各オフィシャルサイトなどでご確認ください。
(1)システム導入や設備投資に関わる助成金(経済産業省・中小企業庁)
・IT導入補助金
小規模事業者や中小企業がITツールの導入をする場合、その費用の一部を補助金としてもらえるという制度。例えばフリーランスのコンサルタントとして独立する場合、会計システムやグループウェアを導入しますよね。IT導入補助金では、業務改善につながるIT技術などを導入した際の費用を、支援してもらえる可能性があります(※3)。
※3:https://www.it-hojo.jp/
・ものづくり補助金
中小企業が新技術や生産プロセス改善する際にかかる、設備投資費用の一部を支援する補助金制度。ただフリーランスのコンサルタントで起業する場合、個人で新しい技術を開発するケースは少ないかもしれませんね。
なお、ものづくり補助金には、複数の事業者で取り組むプロジェクトが対象になっている「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」という制度もあります。フリーランスのコンサルタントとしては、こちらのほうが利用する機会があるかもしれません。
この「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」は、複数の中小企業や小規模事業者が連携したプロジェクトに対して費用の一部を支援するというもの。事業者間でデータを共有・活用して生産性を高めるプロジェクトのほか、地域経済をけん引するような事業のプロジェクトも対象となっています(※4※5)。
※4:https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2021/k210210001.html
※5:http://portal.monodukuri-hojo.jp/
(2)スタッフの雇用に関わる助成金
厚生労働省では、中小企業や小規模事業者を対象に雇用に関する助成金を用意しています。コンサルタントとして独立する時点では個人で活動することが多いと思います。しかし、将来事業を拡大する時がきたら、スタッフの雇用を検討することもあるかもしれません。こうした場合に備えて、雇用関連の助成金についてもチェックしておきましょう。
就職が困難な人をお試しとして3か月雇用すると受けられる「トライアル雇用助成金」や、非正規のスタッフを正社員化したり処遇を改善したりすると受け取れる「キャリアアップ助成金」などがあります(※6)。
※助成金制度の継続状況については、オフィシャルサイト等でご確認ください。
※6:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
(3)地方自治体が実施する助成金
政府が実施する補助金、助成金と合わせて検討したいのが、地方自治体が実施している独立や起業のための支援制度。東京都、神奈川県といった都道府県レベルのほか、千代田区、横浜市といった市区町村レベルで実施している場合もあります。
補助金や助成金の種類によって異なりますが、地方自治体が実施する助成金、補助金は国によるものと比べて条件が少なく、申請しやすいケースが多くなっています。そのためフリーランスのコンサルタントが独立起業する場合にも使いやすいかもしれません。ただし、支給される金額は国の助成金に比べて少ないことが多い点は留意しておきましょう。
・東京都 創業助成金
都内で創業予定、または創業して5年以内の中小企業・小規模事業者が対象の助成金。最大300万円まで助成されます。オフィスの賃料や広告費など幅広い経費が助成対象です(※7)。
※7:https://startup-station.jp/m2/services/sogyokassei
補助金や助成金を申請するときに気を付けたいこととは?
ほとんどの補助金、助成金には予算に限りがあり、書類審査や面接によって採択する事業者が決定されます。人気の高い制度になると、ライバルが多く狭き門というケースも。そこで補助金・助成金の申請を成功させるため、まずこれだけは気を付けたいというポイントをまとめました。
(1)補助金、助成金は申請書類がカギ!審査に通りやすい書類とは?
審査の対象になるのが申請書類。優れた事業アイデアでも申告する内容でしっかり伝わらなければ通りにくくなります。一般的に広く公募される補助金、助成金は申告書類だけで審査が行なわれることが多く、書類次第と言っても過言ではありません。
もちろん公募の内容をしっかり読み、申請できる資格があるかを確認するのが大前提。その上で、より採択に近づくために気を付けたい3つのポイントをご紹介します。
・妥当性
上記でご紹介した経済産業省の「ものづくり補助金」の場合、中小企業が革新的な製品・サービスを生み出せるように資金を提供する目的で公募しています。つまり提出する書類においても、事業の革新性や独自性を申告できるかどうかで審査に差が出てきます。
一方で地方自治体が実施している補助金や助成金の場合、「地域社会の課題を解決したい」「地域経済の活性化につなげたい」という目的が考えられますよね。中には社会起業家に特化した補助金や助成金もあります。それぞれの目的にあわせた申告になるよう、書類を作成しましょう。
また補助金や助成金の使い道が妥当かという点も書類で診断されます。どのような経費に使う予定かをわかりやすく申告することが大切です。
・実現性・具体性
優れた事業計画でも、実現できそうにないと思われてしまうと採択は難しいでしょう。どの程度の市場規模があって、ターゲットがどのくらいいるか。こうしたデータで実現性を申告することも大切です。また事業として仕事を推進していくために、どんな体制かというところも実現性のアピールにつながります。「有識者と連携して具体的な仕事のアドバイスをもらっている」「取引予定の企業がいくつかすでにある」といったように、共同で仕事をする外部パートナーがいれば書類に盛り込みましょう。
・継続性・収益性
起業家向けの補助金や助成金は、あくまで起業した時期の資金不足をサポートするためのもの。その後は事業者がビジネスを軌道に乗せ、自力で事業を継続できる経営力が問われます。その事業が収益化して継続していけるか、申請書類で判断できるようにしましょう。
(2)面接審査がある場合は、事前にしっかり面接対策をしておく
一部の補助金、助成金では、書類審査と合わせて面接が行なわれることもあります。例えば東京都の創業助成金では面接を実施することを募集要項で明記しています。もちろん申請書類の作成時に事業計画や資金計画がまとまっていれば、大きな心配はいりません。ただし外部の経営コンサルタントや税理士などに書類作成をまかせてしまうと、面接でうまく対応できないことも。面接を受ける代表者があらためて申請内容を理解するなど、基本的な準備をしておきましょう。
また面接では事業計画や資金計画以外に、信頼できる人物かどうかという点も審査される可能性があります。代表者自身がこれまでやってきた仕事や起業に至るまでの経緯、起業家としてのビジョンなども整理しておくと安心です。もし同様の補助金、助成金の採択経験がある起業家仲間がいれば、どんな面接だったかヒアリングしておきたいところです。
(3)手続きに手間と時間がかかることを前提に動く
多くの補助金や助成金は手続きが煩雑です。また公募期間が決まっているためタイミングが合わないと利用できません。仕事を継続しながら起業を目指す方にとっては、準備や手続きにかかる手間と時間は課題のひとつでしょう。
まずは、申請する資格があるかどうかをよく確認。また、助成金や補助金は、実際に資金が手元に届くまで時間がかかるのが一般的です。このあたりのスケジュール感をあらかじめ念頭に入れておく必要があります。
なお補助金や助成金が採択された後も、資金の用途や利用状況について申告が求められるケースがほとんどのようです。事後申告も意外と手間と時間がかかるので気を付けたいところ。また所得としてみなされる場合、所得税の申告が必要な場合もあります。こうした申告については、税理士などの有資格者に確認しておくと安心です。
補助金・助成金だけじゃない!広がるベンチャーや起業家への支援策
起業予定の方や起業間もないベンチャー企業向けに、多くの補助金、助成金が用意されているのはなぜでしょうか?
その理由の一つが、他の先進国と比べて日本の起業数が圧倒的に少ないという現実があります。「ベンチャーチャレンジ2020」という資料によれば、日本の起業数はアメリカの約半分となっています(※8)。政府などもこの状況を踏まえ、起業家を増やす施策を進めています。
(1)個人投資家によるベンチャー投資を後押しする「エンジェル税制」
起業家を支援することで新しいビジネスモデルや革新的なサービスを生み出すグローバル企業を増やし、日本経済を活性化させるのが政府の狙いでしょう。補助金や助成金といった施策のほかに政府が力を入れているのが、起業家への投資の促進です。起業家から見ても、まとまった資金を投資家から集められるという点で大きなメリットがありますよね。
起業家やベンチャーの投資推進策としてよく知られているのが、「エンジェル税制」(※9)。これはベンチャー企業へ投資する個人投資家に、投資や投資の回収で税金を優遇する措置のことです。海外で起業したばかりの企業へ投資する個人投資家を「エンジェル投資家」と呼ぶことから、「エンジェル税制」と呼ばれています。
※制度の継続状況については、オフィシャルサイト等でご確認ください。
(2)将来の起業を目指す人を増やすための「起業家育成」
政府では資金以外でも、起業家を増やすため「起業家育成」にも取り組んでいます。起業家育成によって将来起業家になりうる人材を発掘し、若者の経営力を上げるというのが政府の狙い。中小企業庁では、高校生向けに起業に関する講演(出前事業)をできる起業家や起業経験者を公募したケースもあります。
一般的な起業家だけではなく、社会起業家を育成する取り組みも増えてきました。社会起業家とは、さまざまな社会問題をビジネスで解決するために起業する人たちのこと。NPO(非営利団体)が一般的ですが、一般企業として社会貢献を目指すケースもあります。
例えば花王では、若手起業家の発掘・育成を目指す「社会起業家塾」を2010年から実施。事業を始める直前・直後の若手社会起業家を公募し、サポートする取り組みを行なっています(※10)。他にもNECや埼玉県といった企業・地方自治体では、社会問題をビジネスで解決する社会起業家の育成に力を入れています。
起業家育成は、今後日本でも活発になっていくのではないでしょうか。起業やベンチャーに関わる仕事の成功体験はもちろん、失敗体験も新たな起業家の育成に役立つかもしれません。こうした仕事の公募があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
※8:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/venture_challenge2020/pdf/venture_challenge2020_pamphlet.pdf
※9:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/angel/index2.html
※10:https://www.kao.com/jp/corporate/sustainability/society/community/entrepreneurship-school/
海外と比べて、起業やベンチャーの数が少ないと言われる日本。起業数を増やすため、補助金や助成金の種類も増えてきました。仕事をしながら独立起業の準備を行なうのは大変ですが、ぜひ申請資格や手続き方法などをチェックして活用できるか検討しましょう。
ただし補助金や助成金は、あくまで創業間もない時期の一時的な支援です。事業を成功させ継続していくためには、仕事のスキルだけではなく経営力なども求められます。
最近では個人投資家による投資や起業家育成など、新たな起業家支援の取り組みも広がっています。フリーランスのコンサルタントとして起業を目指すなら、こうした国や自治体などの施策をうまく使っていきましょう!
(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)