“仕事の楽しさ”へのこだわり 長きにわたりネットビジネスと並走してきたからこそ目指すリアルへの回帰

発展するネットビジネスと押し寄せる効率化の波。その波の中でもがきながらも新しい境地を模索し続ける。

「コンサルタントのワークスタイル」、今回のインタビューは野中嘉勝さん。
インターネットが普及し始めた頃からネットビジネスに携わり、ネット関連の新規事業立ち上げや広告業務などを手掛けてこられた野中さんですが、最近では敢えて業界の流れに逆行する方向性に舵を切る新たな挑戦をしていらっしゃいます。ネットビジネスの成長と共に歩んできた野中さんが感じる現在のネットビジネスの課題、そして打開策とは。

野中 嘉勝

今回のインタビューにご協力いただいたプロフェッショナル人材・コンサルタント

電子マネー事業や中古車関連ネットサービスの新規立ち上げ、及びネット広告関連業務を経験後、2001年にフリーランスとして独立。2002年には法人化し、コンテンツ企画や中小規模案件に特化した業務受託・ビジネスプロデュースなどに従事。2012年以降はフリーランスに戻り、O to O企画や戦略立案、ネット媒体の営業テコ入れ、サイトの陳腐化対策などネットビジネス全般を手掛ける。

野中 嘉勝

“ミレニアム”をきっかけに勢いで独立

-キャリアの大部分をフリーランスや会社代表として活動してこられた野中さんですが、一番初めはどのような経緯で独立なさったのですか?

野中さん(以下、敬称略):2000年末に、当時在籍していた会社で立ち上げを担当していたインターネット事業が軌道に乗らずに結果的に退職することになったのが理由です。当時はネットバブルがはじける前で、仕事には困らない状況でした。金銭面にも余裕があったことに加え、周りに「ミレニアムだから」という理由で独立する人が多かったこともあって(笑)。「じゃあ自分も独立するか」という感じで決断しました。「何かを成し遂げよう」とか「独立した方が楽になる」とかそういった考えがあってのことではなく、単純に勢いと言いますか、憧れに背中を押されたような感じでしたね。

-「ミレニアムだから」という理由での独立というのは初めて聞きました(笑)。創世記からネットビジネスに携わっているからこそ感じる当時と今の違いはありますか?

野中:当時と今の違いは大きく二つあると感じています。一つ目は当時と比較してより利益に直結する“数字”としての結果を求められるようになったことだと思います。KPIという言葉が盛んに使われ始めた頃からこの傾向が一気に強まってきましたね。もちろん営業であれば結果を求められるのはどの分野でも同じだと思いますが、ネットビジネスの場合、それがとても短いスパンで露骨に出てしまうがゆえの状況なのではないかと思います。

もう一つの違いは、CMS(Contents Management System)などの自動化のツールが導入されたことにより、ネットコンテンツにおいてもデータ入力などの単調な作業が増えている点です。昔はもっと大きな単位で仕事を依頼されて、それを僕のような“何でも屋”がさばいていたのですが、今は「データ入力で時給いくら」「画像の加工で作業費いくら」というように、どんどん仕事が細分化されてきています。結果として仕事量は増えているものの中身は単純作業ばかりという今の状況は、20世紀からこの手の仕事をしている僕から見ると、どうしても「つまらない仕事が増えたな」と感じざるを得ません。

効率化によるつまらなさを打開するため、敢えてネット以外の分野を志向

-産業として成熟してきたからこそ効率化が求められ、結果としてつまらなくなったということですね。

野中:おっしゃるとおりです。効率化を過剰に求めてしまっているのかもしれません。
僕は今では「ネットではなくもっとリアルを志向しよう」という考え方にシフトしています。

オムニチャネルやO to O(Online to Offline)といった標語を掲げるクライアントから仕事をいただくことが多かったのですが、ネット内でのあらゆる対策が出尽くした段階で「さらなる売上加増、規模拡大」という課題に直面すると、結局は「輪をかけてネットに再投資をする」という選択をされるケースが非常に多いと感じます。

そういう場合、最近では「ネットもいいが、テレビや新聞といったマスメディアへの露出やイベント開催・協賛、店頭・店内告知を検討しませんか」といったリアルを活用した提案をするようにしています。中には冗談だと思われてしまうこともあるのですが、結局、周りと同じことをしていたのでは、最終的にはネットの中に多くのコストを使った方が勝つだけですし、なにより「作業ばかり増えて楽しくない」と思ってしまいます。最近のインターネットビジネスやコンテンツの世界には作業が仕事となってしまい、仕事に対する“熱”のようなものが足りない気がします。夢や希望を追い求めるべきだと言うつもりはないのですが、いつまでも楽しい仕事をしていたいですね。

-自治体関連のお仕事もしていらっしゃるかと思いますが、そちらはどのような内容なのでしょうか?

野中:自治体の方を交えた勉強会に参加しており、そのつながりで仕事のさまざまなご依頼をいただくケースがあります。

例えば、定住化施策を担当している自治体の方からの依頼で、現地でのディスカッションに参加してきました。国から支援を得て移住希望者を募る取り組みをしていらっしゃるのですが、なかなか定住にまでは至らないという課題を持っていました。移住者向けにどういう仕事を用意しようとしているのかを詳しく聞いてみると、データセンター事業の誘致やある程度の環境整備をしたうえでのIT人材の移住促進とか、幹線道路沿いに物産館を立てて物販とECを両立させるという計画のようでした。もちろんそれらは立派な仕事ですし、現地の経済活動にはプラスになるのでしょう。ただ私からはすれば「もう少し楽しそうな仕事の方が人も集まるのではないか」「単に移住する人のための支援や対策ではなく、ファンになってくれそうな人を増やした方が本来的な定住者が増えるのではないか」という意見を述べさせていただきました。

やはり現地に直接伺うことで、定住者を求める地方の切実さも直に伝わってくるものがあり、感じるところも大きかったです。中でも特に違和感をぬぐえなかったのが、活気のないシャッター街で全国規模のコンビニとファミレスだけに長蛇の列ができているという点でした。人は集まっているのに地元の店は閉まったまま。過疎化しているとはいえ、車は多いし人口もそれなりにいる町なのに、なぜこんな状態になるのだろうと。

-効率化を求めることによって豊かになっているかと思いきや、人とのつながりが薄れている寂しい世の中になっているというのは、都心でも地方でも同じなのかもしれませんね。

目的のために一直線に突っ走ることだけがいいことではない

-今後はどのような働き方を考えていらっしゃるのでしょうか?

野中:以前は資本金をうん千万積んで、役員もおいていざ起業、といったように、会社を興すことに対してハードルが高かったからこそ、憧れや思い入れが強かったと思うのですが、これからの起業は、今よりも誰でも気軽にできるようになるでしょう。だからこそ、次は逆に組織の中で大きい仕事ができればと考えています。大きな組織で働くとなると、年齢的にも今がラストチャンスかもしれません。組織の中での仕事のスキルを改めてきちんと身に付けておきたいという思いもあります。

-これだけ長い間フリーで活動してこられても、やはり「組織じゃないとできないことがある」「組織で働いてみたい」と感じていらっしゃるのですね。

野中:そうですね。やはり寂しさもありますよ。フリーでいるとどうしても仕事はこもりがちになってしまうので、このまま死んでしまったらどうしようと思ったりもします(笑)。フリーランスであれば家の中でも喫茶店でも仕事ができる状況だと思うのですが、だからといってそれで完結するのではなく、意識的に遊びに行ったり、組織に混ざったりという行動を起こすことが、ひとりきりにならないためにも、すごく大事なことだと今更ながら思いました。

-昔は非効率なことをするプロセスの中で自然に人と人とが出会っていたと思うのですが、今は出会うことを目的にして行動しないと出会えなくなっていますよね。これも非常に本末転倒なのではないかと感じます。

野中:おっしゃるとおりだと思います。気が付けばネットは「物を買う」とか「人と出会う」とか「儲ける」とか、何かの目的が紐づくようになってしまっていますよね。目的のために一直線に突っ走ることだけがいいことなのかと言うと、そうではないはずです。ネットは本来そういうツールではなく、もっとクリエイティブで楽しいものだったはずです。例えばSNSというのは、各々が自由にアップしたものが自然に盛り上がる、といった偶発的な楽しさがあったはずなのに、今はもう商売のための場になっているように見える。やはり、何らかの目的のためのツールに、楽しみを見出すのは難しい。インターネットの仕事も同じで、最近は私が進むべき道と違うのではないかと感じるようになってきましたね。

 

 

-本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー中、「パソコンを置いて外に出ることが大事」「ネットですべてが完結してしまうのは不健全」という旨のお話をされていた野中さん。創世記からネットビジネスに関わり、当時の楽しさもよくご存知の野中さんだからこそ、当時との違いや現状への違和感もより強く抱いていらっしゃるのかもしれません。“仕事の楽しさ”にこだわりを持っていらっしゃるところがとても印象的でした。

拭えない違和感から、携わるビジネスの方向性を変えた野中さんのように、生き方や考え方の変化に応じて働き方も柔軟に変えていくことができれば、人生はより楽しいものになるかもしれません。みらいワークスも、そのような社会の実現に向けて微力ながら貢献していきたいと考えています。

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