業務改善やBPRの事例から見る「企業の在り方」を変える手法

作成日:2019/06/07

 

現在多くの企業が業務改革を図り、RPAなどさまざまなツールの導入やITの活用に乗り出しています。ただし、いきなり現場にツールを導入しても意義のある業務改革とは行かないでしょう。取り組みに際して重要なのは、スタート時に必要な要素を洗い出し、有効な改善案を定めることです。業務改革を成功させるITシステムやツールの導入事例などを含め、理想的な業務改革の進め方を解説します。

 

 

目次

■企業が知るべきは業務改善とBPRとの違い
(1)これからの業務改革にはITが必要不可欠
(2)業務改善とは何か
(3)BPRとは何か

 

■抜本的な働き方の改革はbprが主体
(1)業務プロセス改革「BPR」
(2)BPRの原型と普及の背景

 

■業務改革の事例と得られるメリット
(1)最大のメリットは、作業時間の圧倒的な圧縮
(2)チャットやSNSツールの導入事例
(3)RPAの導入事例
(4)BPRの実施事例

 

■BPRを成功させる要因・失敗させる要因
(1)全体で目標を共有できるかが成功、失敗の分かれ道
(2)コンサルタントが、トップから現場までを縦につなぐ

 

■まとめ

 

 

企業が知るべきは業務改善とBPRとの違い

企業が知るべきは業務改善とBPRとの違い_1

(1)これからの業務改革にはITが必要不可欠

「業務改革」と聞けば、仕事効率化や業務改善、作業の自動化など、従来の働き方を変える手段がおぼろげにイメージできます。ただ法人ビジネスにおいて業務を効率化するために何が必要か、具体的な改善案まではなかなか思い浮かばないのが実情でしょう。

 

政府の働き方改革方針を受け、現在多くの企業が業務改善に取り組み始めています。RPAなど作業の自動化による業務改善策もいろいろと登場していますが、やみくもに業務支援ツールを導入しても導入後に仕事効率化が図れるとは限りません。

 

どんな企業であれ、法人ビジネスを行なっている企業であれば大なり小なり業務改善には取り組んでいます。そんな中、良い改善案がなく、どこから手を付ければ良いかもわからなくなっている企業も多いのではないでしょうか。

 

法人ビジネスにおいて、これからの業務改革にはITが必要不可欠ですので、基本的には専門のITコンサルタントを活用するのが一番です。ただ取り組みにあたっては企業側が業務改革とは何かをしっかり理解する必要がありますし、ITコンサルタントもその点について最初にクライアントに提示することが重要です。

 

特に、業務改革では、業務改善とBPRとは混同されがちですが、双方はまったく異なるアプローチですので相違ないようにしておきましょう。

(2)業務改善とは何か

業務をフロー化すると、組織の間を情報が時系列で行き来する様子が見て取れるようになります。

 

業務改善を行なう場合、その個々の業務の中から「無理」や「無駄」を削減し、情報がムラなく流れるようにすることが基本となります。例えば業務において発生しがちな無理は、情報が一つの部署や担当など1点に集中し、他が手薄になる状況です。また、情報が整理されていないために処理に時間がかかったり、同じ作業を他部署で何度も繰り返し行なったりすることが無駄に該当します。

 

これらは「人」という資源と「時間」の無駄になりますが、紙資料の二重作業であれば物資の無駄にもなります。またデータ化されていても、各部署が管理をバラバラに行なっていると保管作業の無駄やデータ検索時間の無駄にもなるでしょう。業務の中からこうしたムラを削減し、業務を平準化させるのが業務改善、仕事効率化の取り組みとなります。

 

業務改善においてITの役割は、企業の人・物・金・情報といった資源をスムーズに流すこと。現行業務のフローから不適切な部分を洗い出し、IT技術やシステムの導入により理想の形に改善するのが業務改善です。

(3)BPRとは何か

BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、業務や組織、戦略を抜本的に再構築(リエンジニアリング)する行為です。つまりBPR実施の意義は「組織構造の見直しレベルで業務フローを再構築すること」にあり、ここが業務改善との大きな違いです。

 

業務改善では業務プロセスの中から無理や無駄を削減し、問題解決的に少しずつ改善を進めますが、BPRでは業務プロセスそのものに問題があるという認識で進められます。BPRの取り組みはプロセスそのものの再構築からスタートとなり、顧客観点で非付加価値業務の削減を目指すのが大きな特徴です。そうした意味では、業務改善はあくまでもBPRの一環と捉えることもできるでしょう。

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抜本的な働き方の改革はBPRが主体

抜本的な働き方の改革はbprが主体_2

(1)業務プロセス改革「BPR」

業務改善ではなく業務改革と銘打つ場合、基本的にはBPRが主体となります。BPRは業務プロセス改革とも呼ばれますが、現状を否定する立場からのアプローチとなることが重要なポイントです。BPRで目指すところは、社内業務プロセスの抜本的な見直しすべての法人ビジネス活動を顧客志向に一貫することです。

 

具体的には研究開発や製造、品質管理、サービス供給方式などの他、人事管理や人事評価などもすべて含めて顧客志向や市場志向の観点で最適化を目指します。業務改善では現行の業務フローを重視しますが、BPRでは法人ビジネスのすべてを対象にビジネスルールの改革を行ない、経営効率のアップや生産性の向上を得られます

 

例えばBPRでは、法人ビジネスの一部または全部を外部企業に委託するBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)なども選択肢の一つです。ここ数十年で見られるようになった、総務や経理関連など特定の業務プロセスを自社から切り離し、外部委託する手法などがこれに該当します。

 

他には大手企業などが各組織の共通業務を一部門に集約して効率化を図る、シェアードサービスなどもあります。これらの経営手法もまたBPRの一環として導入が検討されやすい手法です。

(2)BPRの原型と普及の背景

BPRは、1990年初頭にアメリカの元マサチューセッツ工科大学教授マイケル・ハマー博士と経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏が提供した概念が原型と言われています。当時アメリカは長期不況の真っ只中で、国内の企業経営を立て直すための革新的な手法として提唱した理念は世界的に普及しました。

 

日本でも、ちょうどバブル崩壊後の景気低迷期にあたり、革新的な理念は政府を始め公共団体や民間企業に歓迎されました。ただそれがリストラを始めとする社会的混乱や波紋を生んだことも事実で、結果的には日本国内のBPR導入は真に成功したとは言えないでしょう。

 

しかしながら、現在政府が提唱する働き方改革は、BPRを再注目させる原動力となりました。2014年頃から国内企業の約7割が何らかの形でBPRに取り組み始めており、超高齢社会による労働力の低下も相まってBPRが見直されるようになりました。

 

長時間労働の削減やワークライフバランスの実現、さまざまな働き方に柔軟に対応できる労働環境を整備することは、本来のBPRの目的を実現できる理想の形と言えるでしょう。BPRの根底には、顧客満足度の向上だけでなく従業員満足度の向上もあることを再認識すべきです。

 

 

業務改革の事例と得られるメリット

業務改革の事例と得られるメリット_3

(1)最大のメリットは、作業時間の圧倒的な圧縮

 

それでは業務改善やBPRの成功事例からメリットをまとめていきましょう。

 

まず、現行の業務フローを肯定し、その中から削減できる作業や業務を洗い出すことで仕事効率化を実現するのが業務改善ですが、これはITツールの導入で比較的容易に実現できます。社内コミュニケーションツールやフォーマットの共通化で情報を共有するなど、IT関連のアプローチで生産性を向上させる導入事例が非常に多く見られます。

 

RPA導入は、人の業務そのものを省くことができますので、作業時間の無駄を圧倒的に圧縮できるのが最大のメリットです。ITツールによってかかるコストにも幅が出ますが、比較的リーズナブルに実施可能で、導入後は即効性のある業務改善をできることが魅力でしょう。

 

一方、BPRの実施事例は、企業再編レベルになるためそう簡単ではありません。投資額も大きくなりますし、大規模な改革を必要とするでしょう。

(2)チャットやSNSツールの導入事例

業務フローにおいて頻繁に登場するのが社内会議です。

 

どんな業務においても必ず発生するのが社内コミュニケーションですが、日々の打ち合わせや作業確認に都度集まって多くの時間を割くのは無駄としか言えません。意思の疎通を密に行ない、なおかつ時間を効率化するのに役立つのが社内チャットやSNSなどのITツールの導入です。

 

リアルタイムに報告・連絡・相談が可能となり、導入後はコミュニケーションがスピーディでフラットになったと感じる企業が多くあります。特に全国に営業拠点を持つ企業の場合、情報がタイムラグなしに必要部署へ伝達され、共有できることは非常に大きなアドバンテージです。

 

また、やり取りのデータが文字で残されるため、過去に遡って事実を検証しやすく、問題解決が的確に行なえるのもメリットです。業務を進める中で資料や画像データなどを探す必要に駆られる事態は多々ありますが、共通の情報ツールにアップしておくことで検索しやすくなります。情報が常にオープンなため仕事が属人化しにくく、互いにフォローすることで仕事の効率化も実現します。

(3)RPAの導入事例

一昔前は、表計算ソフトウェアなどのマクロを活用することで、ルーティン作業を自動化して業務効率化に繋げていました。ここが現在RPAの導入により、自動化に加えてさらに正確でスピーディな仕事効率化の実現が期待されています。

 

例えば、毎日全国の営業所から送られて来る資料や請求書を一つの表にまとめて上長に報告したり、部署内で共有したりする作業は単純作業でも手間がかかり数も膨大です。往々にして事務を担当している人員しかやり方がわからず、担当者がいなくなると業務が滞るような属人化も多く見られました。ここにRPAを導入することで作業を自動化し、飛躍的な業務改善を実現した企業は多くあります。

 

とある銀行では紙帳票のデータ化をRPAで自動化し、導入後に約1,500人分の余力を捻出することに成功しました。他にも金融業界では、RPAの導入が進んでおり、導入後に約20業務で合計2万時間もの作業効率化を図っています。

 

間違いが許されない業界において正確に業務をこなすRPAはもはや必要不可欠ですし、データベースへのアクセス証跡を残さなければならないコンプライアンス部門での実用化は非常に大きなメリットを生んでいます。

 

また、販売流通業界においては、POSデータ処理にかかる時間をRPAで約70%も削減に成功した事例もあります。卸先企業約50社ごとにPOSデータのダウンロードサイトにアクセスし、1社20分かけて情報処理を行なっていたところが、RPA導入後は1社5分にまで短縮しました。

 

このように膨大な情報量を持つPOSシステムデータのダウンロード操作にRPAを導入する企業は多く、年間約1100万円ものコスト削減に成功した事例もあります。

(4)BPRの実施事例

日本国内でのBPR事例は数多くありますが、大別すると主にシックスシグマによる事例やシェアードサービスによる事例、SCM(サプライチェーン・マネジメント)による事例などがあります。

 

シックスシグマというのは1990年代後半にアメリカのモトローラ社が体系化した手法ですが、ミスや欠陥品の発生確率を100万分の3.4レベルにし、経営品質を改革するというものです。経営品質には製品やサービスだけでなくプロセスや組織、人、システムなどもすべて含まれ、顧客満足に根差した本質的な課題解決策です。

 

日本のとある製造企業はこの手法に則り経営改革推進本部を新設し、徹底的な無駄の排除を実施して成功しました。同時に社員のモチベーションを向上させるために表彰制度や研修なども積極的に実施した結果、年間数千億円というコスト削減と同時に社内コミュニケーションの向上も果たしています。

 

また、シェアードサービスによる事例では、人事・総務など間接業務を提供する専門子会社を設立し、グループ全体を横断する業務標準化を実施して間接コストを大幅削減した事例があります。

 

SCMによる導入事例では、国際拠点の再編成と事業プロセスの改革、IT技術を駆使した業務プロセスの改革を2軸として、100億円を投資し1人も解雇せずに再編を果たしました。結果的にこの企業は製造固定費数十億円の圧縮に成功し、BPRへの投資も約3年で回収しています。

 

 

BPRを成功させる要因・失敗させる要因

BPRを成功させる要因・失敗させる要因_4

(1)全体で目標を共有できるかが成功、失敗の分かれ道

業務改革には規模の大小がありますが、紹介した成功事例のように良い結果を招く場合もあれば、失敗に終わる場合もあります。

 

成功要因として挙げられるのは、まず初めに業務改革の必要性や目的を明確に把握し、企業全体で目標を共有することです。これには現場スタッフに至るまで積極的な協力が必要となりますので、改善案には社員のモチベーションを向上させるアプローチも必要でしょう。

 

改革推進の過程では、新ルールの策定やインフラの整備なども行なう必要があります。つまりは業務改革プロジェクトの成功の鍵は「目的やゴールの明確化と浸透」、「断固たる経営者のリーダーシップ」、「法人ビジネスとしての事業戦略」と言えます。

 

反対に失敗要因は、企業内で目的やゴールが理解されていないことや「とりあえず」で始めてしまう見切り発車です。RPAなどいかに有用なITツールを活用しても、これでは導入後に期待した成果が得られないばかりか、企業内に無用な混乱をもたらすことになるでしょう。

(2)コンサルタントが、トップから現場までを縦につなぐ

業務改革にコンサルタントなど第三者的視点を持つ協力者を得ることにも、大きな意義があります。経営陣が全社的な視点でのみ改革を進めると、現場が重要性を理解できないまま振り回されることになりかねません。実際に変わるべき現場に即さないツールを導入しても、やはり改革案は失敗に終わるでしょう。

 

企業のトップから現場の一担当者まで、すべてを縦軸で繋ぐことができる存在は必要不可欠です。改善案は作成したが実施が難しかった、プロジェクト方針が定まらず右往左往したなどといったことにならないよう、万全の体制で臨みましょう。

 

RPAに限らずさまざまなITツールを効果的に導入するためには、現行のフローからボトルネックとなっている業務を探し、流れが悪い部分や全体の流れを阻害している業務を洗い出す必要があります。ボトルネックは流れが集中している業務や人手が多くかかっている業務をトリガーに見つけることができますが、ここがコンサルタントの真価が問われるポイントのひとつです。

 

また、第三者だからこそ非付加価値業務を洗い出すこともできます。「非付加価値業務」とは、いわば現場スタッフの自己満足や習わしがもとになっている業務です。昔からある、「何となく引き継いで行なっている業務」や「どこにも活用されない資料の作成業務」などが該当します。

 

業務改革は顧客の視線から見て必要かどうかという観点で実行しますので、第三者であるコンサルタントが見て初めて、バッサリと切り捨てるべき業務が見えて来る場合もあります。生産性が上がり、従業員の満足度も上がり、それにより高品質の製品やサービスが提供できることから、結果として顧客満足度に繋がるというのが真の改革と言えるのではないでしょうか。

 

 

まとめ

 

真の業務改革は簡単なことではありませんが、目標を定めて最新のITツールを有効活用することで実現を目指します。そのためには経営陣とコンサルタントが協力し、全社一丸となって同じ場所を目指すことが重要です。そして、そうした経験を積み重ね、顧客から必要とされる「市場価値」を手に入れましょう。

 

(株式会社みらいワークス Freeconsultant.jp編集部)

 

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